九死に一生スペシャル 前編〜もうチェリーなんて言わせない〜

両サイドが切り立った崖の中を流れる一筋の清流。ここは道無き道を分け入って辿り着いた者にのみ許されるイワナ&アマゴパラダイスである。
その沢に今強力な援軍を引き連れて挑んでいるのが、テンカラ源流釣りを始めて3年のユーコンカワイ。夢の30cmオーバーを釣り上げ「尺童貞卒業」を目指す彼だったが、そこで展開してしまったのは「人生卒業」に向けた“九死に一生スペシャル”だったのである!
これはそんな彼の今シーズンラスト源流泊釣行&奇跡の生還に迫るドキュメンタリー。まずは事件前日の模様から振り返ってみよう。



木曽川水系某谷 九死に一生マゾ釣行 1日目

第1章 いざ!桃源郷へ

“事件”前日の2017年9月27日。

その日は風もない穏やかな初秋の日で、絶好の沢釣り日和だった。

 

その日木曽川水系の某谷に源流泊釣行に出かけたのは、会社員のユーコンカワイさん(41)とジャンダラKさん(41)の厄年二人。

3年もテンカラ釣りやってて未だに尺イワナを釣り上げていないユーコンさんは、「お相手はどこの誰でもいい!超尻軽のイワナでもいい!とにかく尺童貞を卒業させてくれ!」と源流事情に詳しいジャンダラKさんに頼み込んだ。

すでに尺童貞を卒業して“大人の余裕”を手に入れていたジャンダラKさんは「とっておきの場所があるんじゃん。そこなら間違いないだら。ついてきてみりん!」と三河弁丸出しでそれを承諾。

ただし「そこは簡単に人が入れない両側絶壁の沢。侵入箇所も脱出箇所も一つしかなく道無き道を突き進む茨の道じゃん。それでも行く勇気があるかん?」と念を押す。

ユーコンさんは「はい!兄貴!脱童貞できるなら茨の道でも突き進みます!」と受け入れ、その結果、今このように茨の道を突き進んでいるのである。

林道の脇の何の目印もない場所から「バキバキバキ」っと突然の急降下していくジャンダラKさん。

ズルズルに滑りまくるとてつもない急斜面と、落石必至のガレ場の連続。

万一足を踏み外したら「真っ逆さまに落ちてディザイア」コースだ。

過酷な脱童貞への道程。

しかしすでに“大人”のジャンダラKさんは、荷物満載のIKEAの袋を手提げで持ったままこの難関を小慣れた感じで突破していく。

「ユーコンさん!そんな弱腰じゃイワナ嬢は振り向いてくれんだら!もっとこう強気で攻めるじゃん!」と童貞くんを励ましながら下降を続ける。

ユーコンさんも「さすがオトナ!童貞ができない事を平然とやってのけるッ。それにシビれる!あこがれるゥ!」と、羨望の眼差しでジャンダラKさんに付いていく。

やがてバキバキバキバキと落ちるように降り続けていくと、

ついに大量の尺イワナ嬢が乱舞するという桃源郷に降り立ったのだ。

ユーコンさんはこれを見てコーフン状態となり、頭の中ではすでに「大量のアマゴが詰まった浴槽に入って両脇に尺イワナ嬢をはべらす」という、週刊誌の広告的成功者妄想が止まらない。

即座に荷物を降ろして釣りを開始したいところだが、ジャンダラKさんが「まあ待てやい。焦るなって。これだから童貞くんはよ。」と何事か準備開始。

そして「イワナ嬢としっぽり戯れてる時に怖い人(熊)に出てこられてポッキー代1万円とか言われたらかなわんじゃん。」と、大量の爆竹をかき鳴らしたのである。

そしてIKEAの袋からサクサクっとブルーシートを取り出してタープ設営。

今夜は少し雨が降りそうだから、安心して中で焚き火できるようにと安いブルーシートをチョイス。

ユーコンさんもはやる気持ちを抑えながら、薪を集めて濡れないようにタープの下に溜め込み、しっかりテントも設営。

とかく童貞野郎は焦ってすぐ事に及ぼうとしてしまうが、紳士な大人はこのように事前の「雰囲気づくり」を重視するものなのだ。

釣りは技術ではない。

イワナ嬢に対し、どこまでスケコマシ的「誠意大将軍」になれるかが勝負なのである。

 

第2章 尺に向けて勝負開始!

やることはやったから、あとはひたすら釣りに集中するのみ。

3年間も童貞を守り続けているユーコンさんも、この今シーズン最後のチャンスにやる気満々だ。

ジャンダラKさんは野営地付近の滝つぼを狙い、ユーコンさんは下流から釣り上がるスタイル。

もう「一体何匹釣れてしまうんだろう…。尺に出会ったらこうしてああして…。ああああ、もう!ワクワクが止まんない!」と、ホットドックプレスを読み込む高校生のような状態で釣り上がっていく。

そして10分経過、20分経過….

1時間経過… 1時間半経過…..

全然釣れやしねえ…

というか魚影すらねえ…

この気持ちは何だ…なんか身に覚えがある…

学生時代「彼女作るぞ!」と言ってワクワクでコンパに行って、毎回ポケベル番号すら聞けずに終わって帰る時に味わったあの虚無感に似たこの気持ち。

もしくはコンパ中に、水牛のような顔した女に「130Rのホンコンに似てるよね」と言われた時の屈辱感に似たこの気持ち。

童貞だからってなめられてるのか?

 

しかしその時!

ついにビッグヒット!

 

わずか20cmの小物が何となーく引っかかった。

先に言っておくが、この小さな1匹がこの日のユーコンさんの「全ての結果」

わざわざあんなハードな崖を必死の思いで降りてきて、散々「大量のアマゴが詰まった浴槽に入って両脇に尺イワナ嬢をはべらす」という妄想をした挙句の結果がこれである。

 

そんな失意にまみれるユーコンさんの元に、野営地から釣り下ってきたジャンダラKさんが合流。

彼は「野営地にある網の中を見てみりん。」と言ってニヤリと笑い、それ以上何も言わなかった。

ユーコンさんは慌てて上流の野営地に行く。

そして叫んだ。

松田優作のように叫んだ。

 

「なんじゃこりゃあッ!」

尺だ!尺イワナだ!初めて見た!

玉ねぎ袋がまるで網タイツのようにその豊満なボディを包み込み、セクシーに童貞野郎を見下してくる。

ユーコンさんが一生懸命公園で小学生(20cm)を口説いてる頃、ジャンダラKさんは銀座の高級クラブでしっかりとNo.1ホステス嬢(30cm)を口説き落としていたのである。

 

慌ててユーコンさんはジャンダラKさんが通っていた銀座の高級クラブ(滝つぼ)に行き、必死で「よろしくお願いします!」と竿を振り続ける。

しかしうんともすんとも言わないホステスさんたち。

まるで相手のいないキャッチボールをやってる気分。

ここでユーコンさんの「ねえ…誰か!…誰か僕の相手をしてくれ…よ…」という独り言は日没まで続いたという。







 

第3章 土砂降りナイト

結局はるばる桃源郷にまできて「1匹」しか釣れなかったユーコンさん。

彼は「別に釣りがしたかったわけじゃねえもん。夜の焚き火が目的なんだもん。」と、唇を歯で噛みすぎて流血させながら語る。

釣果が酷くても、夜の焚き火が楽しけりゃそれでいいのである。

 

しかし「何をやっても裏目な男」のユーコンさんが焚き火担当になったことで、見事に風向きを見誤ってタープ内は煙まみれに。

このままでは燻されまくって2匹の「スモーク中年」が出来上がってしまう。

しかもこの段階でいよいよ雨が降り出し、やがてそれは土砂降りに。

タープの中は煙だらけで、外に避難すればずぶ濡れになるという素敵な拷問タイムが始まった。

しかもユーコンさんがチョイスした場所なんだが、タープ内にどでかい石がいっぱいあって人間の入るスペースが少ないのなんのって。

それでも二人は狭い空間の中で煙に耐え、目を涙でいっぱいにしながら頑張って晩飯作り。

ジャンダラKさんも串職人のような手つきと顔つきで、巧みにイワナを塩焼きにして行く。

一番右の「尺物」だけ、他のイワナに比べてラオウのような圧倒的存在感。

ちなみにそのラオウの隣にいる一番小っちゃい「めざし」みたいなやつがユーコンさんの彼女です。

 

あとはもう散々酒を食らいながらイワナ嬢たちとの楽しい夜が更けて行く。

腹も満たされると、あとはもう焚き火こねくり回しながら酒飲んでゆっくり談笑。

かと思いきや、どんどん雨脚が強くなってきて、いよいよタープ内も雨の浸水が激しいことに。

そしてついにはブルーシートの防水力が耐えられなくなり、雨漏り祭りが始まった。

みるみる着てる服はビチョビチョになってくるし、相変わらず煙はモクモクだわで全然落ち着かない土砂降りナイトに。

それでも「やっぱ焚き火の夜がロマンだから」と強情な二人は、煙で目を開けられない状態になっても夜遅くまで頑張ってアメトーーク。

やがて限界が来て、ようやく観念した二人はおとなしくテントの中に入って行ったのである。

 

こうして桃源郷の初日が幕を閉じた。

ユーコンさんとしては、ウハウハの爆釣予定が20cmの小物1匹で終わり、楽しみにしてた宴会場も拷問場と化して踏んだり蹴ったりな1日だった。

しかし翌日の天気予報は、朝のうちは少しまだ雨が残るようだが、そのあとは晴れてまたがっつり尺にチャレンジできる。

雨の後の方が釣れるっていうし、全てを翌日に賭けて眠りについたのである。

 

しかしこの翌日。

彼はこの初日なんて目じゃないほどの、「もう釣りどころじゃねえ」ってなスペシャルマゾに突入して行くことになる。

それはもう童貞卒業どころか、色々飛び越えて「人生卒業」への道まっしぐらの壮絶体験だ。

 

果たして彼は生きてこの沢から脱出することができるのか?

次回、後編。

本厄男の「九死に一生スペシャル」が、今幕を開けるのである。

 

 

九死に一生スペシャル 後編へ  〜つづく〜

 

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ABOUTこの記事をかいた人

ユーコンカワイ

低体温・低血圧・低収入というギアレビューにもってこいの人体サンプル。いつも顔色は土色だったり汗冷えのスペシャリストだったりするが、今日も持ち前のマゾん気を武器に山に川にと出没する。 素材がどうとかの専門的な事より、フィーリングやロマン重視のあまり役に立たないギアレビューを得意とする男である。