男が男であるために避けては通れぬ九重連山大縦走。その長く苦しかった旅もいよいよ最終章。
くじゅう17サミッターの称号獲得まで残された試練はあと「2座」。そして快晴の代償となる田沢の苦渋十七連山の試練は残り「3」。舞台は九重連山最後の大ボス「三俣山」。
果たして松尾と田沢の二人はその試練に耐え抜き、無事に「くじゅう17サミッター」として生還できるのか?
血で血を洗う最終決戦が、今ここに幕を開けるのである。

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第12話 男塾名物「銅鑼権墓于流五星球」

最終決戦地「三俣山」。

朝、大船山から見たその三俣山の全貌がこれである。

麓に広がる盆地が今松尾と田沢がいる坊ガツル。

二日間テン泊装備担いで8座落とした後に、ここを再び一から登っていくという精神的な重たさよ。

散々大量のすき焼きを食った後にデザートで牛丼特盛が出てきたに等しい胃もたれ感。

残すところ2座となった「三俣山南峰」と「三俣山本峰」は、この三俣山に集中しているのである。

 

決戦を前に、坊ガツルにて精神統一するドルジ松尾と厄年田沢。

泣いても笑ってもこれが最後の戦い。

ここまで生死の境でお互いを励まし合ってきた(主に田沢が励まされてた)二人。

お互いに無言で頷き合ったかと思うと、坊ガツルを後にしてその一歩を三俣山に向けて踏み出した。

男が男である以上、避けては通れぬこの最終試練。

必ず生きてこの苦渋の連鎖から脱出してみせる。

 

しかしスタートするなり、いきなり超絶的な心臓破りの坂という先制攻撃。

さすがの松尾も「ぐえ…ぐええ…」と昨晩の馬乳酒を吐き出しそうな勢い。

当然松尾でこうなのだから、田沢などは幽体離脱寸前だ。

それでもなんとか踏ん張って実体を維持させ、果敢にその急登パラダイスに突っ込んでいく。

しかし、当然早々に燃え尽きて灰になる田沢慎一郎。

もはや口をパクパクさせるばかりで、何を言ってるのか聞き取れないほど老衰が著しい。

その時である。

突然「ぬおおおおおおっ!そこのおじいちゃぁぁん!」と、やたら元気なピッコロカラーの男が登場した。

彼は「オッス!オラ、大分在住のピッコロってんだ!今九重連山の各地でドラゴンボールを集めてて、中岳の山頂でシェンロン呼んで世界征服してやろうと思ってるんだけど五星球(ウーシンチュウ)だけ見つからなくて困ってるんだよ!おじいちゃん、知らない!?」と聞いてきた。

それを聞いた田沢は「そうか…。我々は男塾の方の人間だからジャンプ違いだな。今そこで拾ったこいつで良ければくれてやるぜ。」と五星球を差し出した。

ピッコロはその五星球を受け取ると、「ありがとう!宮下先生にヨロシクね!」と言って去って行った。

という一連の小芝居をやって、しばしドラゴンボールと男塾の夢コラボを楽しんだ。

のちに彼のインスタグラムを見ると、その後しっかり各山でドラゴンボールを入手して見事中岳にて悲願を達成した模様。

彼はわざわざこのためだけに、あえて余計な7つのボールとこのシェンロンを担ぎ上げるという彼なりの「設定」を貫き通したのである。

どうやらこの九重連山は、似たようなタイプの色んなジャンプ世代の男達が集う所らしい。

やはり李苦渋の時代から、この地は男度を上げようという猛者たちが集まる修験山なのである。

 

やがてピッコロと別れて進んでいくと、二人の眼前にはナメック星のような荒涼とした世界が広がった。

SF感満載のこの世界で見ると、いよいよカクカクの田沢がリアルなC-3POに見えてしょうがない。

しかし荒涼フェチの田沢としてはかなりテンションの上がる区間だ。

そしてこの「罠じゃないのか?」って思ってしまうほどの“やりすぎ案内マーカー”に沿ってがっつり急登。

しかしここらの景色は本当に独特で、日本なのにアラスカか中東のどっかを旅しているようで凄くお得な雰囲気。

そんな景色の中に松尾がいると、中東のゲリラかモンゴル奥地の山賊にしか見えない。

「通りがかる旅人を襲撃しようと待ち構えている山賊」という映画みたいなこの光景。

やがてそこにたまたま通りかかった旅人の田沢。

もちろんその場でゲリラ松尾の襲撃を受け、胸を撃ち抜かれて大往生。

で、その旅人は身ぐるみ剥がされてこんなことに。

….的な感じで、ただ休んで休憩して地図見てるだけで「胸を撃ち抜かれて身ぐるみ剥がされたけど秘宝の地図を発見した男」という映画のワンシーンを展開させることが可能な風景。

ちなみにこんな格好してるのは、昨日までの冬の気候と打って変わって本日はインナータイツを脱ぐほどクソ暑かったから着替えてるんです。

 

さあ、ジャンプごっこと山賊映画ごっこが済んだところで、何気にこっからが三俣山への真の急登タイムの始まり。

この場所に荷物をデポして、いざ、ピストンにて最終峰である三俣山の南峰と本峰を落とす最終戦が始まるのである。







 

第13話 男塾名物「憂留腑乃涙」

戦闘開始直後、のっけからこの急登地獄と、

今日も元気に下痢道地獄。

九重連山も「急登×下痢」の安定の夢コラボで勝負に出た模様。

田沢はなぜかさっきの着替えの際に「もういらんでしょ」と勝手な判断してゲイター置いて来たから、早くもズボンはぐちゃぐちゃである。

それでもこの灼熱地獄の中、必死でそのズルズル下痢急登との戦いに明け暮れる松尾と田沢。

なんとか最後の根性を絞り出し、踏ん張りまくって急登を突破し、

ついに三俣山の「西峰」に到達。

素晴らしい景色だが、この「西峰」は1700m以下の山なのでくじゅう17サミッツにはカウントされていない。

故にまだまだ彼らの移動は続く。

途中で道を間違って小藪漕ぎを楽しむ羽目にはなったが、なんとかその試練も突破。

そしてついに第9番目の山「三俣山南峰」に到達なのである。

いよいよこれで「くじゅう17サミッター」の称号獲得に王手。

息を整える間も無く、いざお仕事の時間だ。

 

儀式一.「山頂数字寫眞」

くじゅう17サミッツ「9番」三俣山南峰。

もはやこの作業もベテランの域に突入し、彼らの表情には迷いはない。

 

儀式二.「山頂表現寫眞」

三俣山南峰のテーマは、「たっちゃんを応援する南ちゃん」である。

この作業もだいぶブラッシュアップされ、独特な世界観を展開するようになって来た彼ら。

もう疲れとめんどくささのせいで、「南峰かぁ…もう…南ちゃんでいいんじゃね?」となった模様。

無駄がそぎ落とされた非常に良い写真となった。

 

儀式三.「手男死相撲十番勝負」

そして念願の初金星に向けて、残すチャンスがあと二試合となった田沢。

もはややる方もこれ観る方も結果が見えてるかもしれないが、それでも田沢の目はまだ死んでいない。

ジャケット脱いで体型だけは立派な相撲取りとなった田沢の勇姿も必見。

 

それでは「第九番 三俣山南峰場所」。

いざ、始めィ!

 

揺れる腹と乳以外は今までの動画の再放送かと思うような負けっぷり。

取組後もヘロヘロで、彼の限界っぷりが容易に窺える一番となった。

 

そして即座に最終地「三俣山本峰」に向けて移動。

もちろん三俣山も、この「どこが道なの?」といった藪漕ぎ攻撃で必死の抵抗。


猛烈な藪にして足元は下痢をキープしているという合わせ技。

しかしここまで9座の試練を乗り越えて男度がうなぎのぼりの松尾と田沢には、もうこの程度の嫌がらせは通用しない。

 

そしてついに…

くじゅう17サミッツ最後の頂。

第10番目、「三俣山本峰」制圧である!

脳裏をよぎるは、長く苦しかったここまでの激闘の数々。

お互いの健闘を讃え、がっちりと握手を交わす二人の「漢」たち。

これにて「くじゅう17サミッター」を名乗って、堂々と大分の女性たちを虜にできる。

しかし喜びに浸るのはまだ早い。

真の「くじゅう17サミッター」になるため、最後も厳かにこの儀式である。

 

儀式一.「山頂数字寫眞」

くじゅう17サミッツ、ラスト「10番」三俣山本峰。

まさに二人でしか表現できないこの数字に、彼らも達成感とともに感無量である。

 

儀式二.「山頂表現寫眞」

三俣山本峰(みつまたやまほんぽう)のテーマは、「自由奔放」である。

自由奔放に本峰の頂きを満喫する二人。

これでやっとこの不毛な作業から解放されるかと思うと、彼らの喜びもひとしおである。

 

儀式三.「手男死相撲十番勝負」

さあ、とうとう訪れてしまった最終決戦。

横綱の全勝優勝か、それとも最後の最後で田沢の大金星となるのか?

 

注目の千秋楽。

待った無し、「第十番 三俣山本峰場所」。

いざ、始めィ!

 

とうとう安定的な弱さで全敗を喫してしまった田沢丸。

かつて角界で「ウルフ」と恐れられた彼も今はもう齢41の本厄男。

そしてこの千秋楽の後、緊急の記者会見が開かれた。

 

田沢丸は集まった記者たちに対し「皆様、長い間応援してくださりありがとうございました。月並みの引退ですが…」とまで言うと言葉を詰まらせた。

そして「体力の限界!」と声を絞り出し、

「気力も無くなり、引退することになりました…」と静かに涙を拭いた。

こうして田沢丸は若手の台頭を見届け、男らしく角界から引退。

そしてこの九重連山場所を最後に、以後「九重親方」と名乗って後進の指導に当たることになったのである。

 

九重親方は静かに、そして雄大にその場を去っていった。

横綱松尾は「親方!」と慌てて彼の後を追う。

すると下痢道に出たところで、松尾は地面にこのような痕跡を発見した。

そしてその先に視線を向けると…

「親方ぁッ!」

慌てて駆け寄る松尾山に対し、九重親方は言う。

「なあに、引退の挨拶がわりに九重連山にスライディングチョップをかましてやったまでよ。」と。

スタートの時は「ヒップアタック」で、ラストは「スライディングチョップ」。

松尾に敗れはしたが、九重連山には相当なダメージを与えてやったと自負する九重親方。

これが苦渋十七連山15個目の試練、「下痢まみれスマートウール」なのである。

 

最終話 男塾名物「九重連山大脱出」

身も心も服も全てボロボロになった田沢。

冥界を彷徨う亡者のように、ヘロヘロと荷物をデポしてある場所に向け下痢道を下山していく。

やがて荷物のデポポイントに近づくと、

デポしてある田沢のザックから何か「黒いもの」が飛び立つのが見えた。

「何事だ?」とザックに駆け寄る田沢。

すると田沢のザックのウェストベルトのポケット付近が、なぜか「ネバネバでドロドロの得体の知れない液体まみれ」という大惨事になっているではないか!

その謎の液体はポケットの中にもたっぷりと入っていた。

そう、

田沢が三俣山にアタックしていた頃、九重連山の刺客「カラス」も田沢のザックにアタックをかけていたのだ。

そしてポケットに入れといた「アミノバイタルのエネルギージェル」が急襲を受け、グッチャグチャに食い散らかされていたのである。

松尾は輝きを放ち続ける田沢に対して「この人、マジで神ってる…」としか声を出せなかったという。

これぞ苦渋十七連山16個目の試練「神のバイタル」なのである。

 

それでも田沢は「なあに、ちょうどザックにもアミノ酸を補給してやろうと思っていたところよ。」と男らしく強がってザックを背負う。

しかしもちろん貴重で残り少ない水を使って洗うことはできないから、田沢は瞬く間に両手ベタベタの不愉快最前線へとおどり出た。

体はボロボロ、服はドロドロ、手はベタベタ。

これぞ「男」の全力で戦う姿である。

くじゅう17サミッターとなった彼らだが、下山して温泉に入るまでは九重連山男塾だ。

九重連山も最後っ屁とばかりに、脱出を図る二人に対してしつこいまでの下痢攻めを繰り返す。

そしてジャングルのような藪攻めで、松尾もいよいよ限界近し。

もし他の登山者がこの場面にだけ出くわせば、驚いて即座にSNSに「突然藪の中からウィル・スミスが出てきた件www」と投稿すること間違いなしの状況。

そしてだいぶ割愛したが、やっっと国道が見えてきて、

長かった、ほんとうに長かった九重連山の戦いが終わる。

まさに精魂尽き果て、1mmたりとも体力に余力を持たせない状態でゴール!

完全に燃え尽きた笑顔なき勝者たち。

実はまだ彼らには、ここから「30分の国道歩き(登り)」という余計なデザートが待っているのである。

のちに二人が「九重連山で一番きつかったのは国道です」と語ったように、苦しみから解放されたと思った直後の30分延長は肉体と精神を破壊する。

やがてそんな苦痛を乗り越え、昨日の朝我々が旅立ったスタート地点「牧ノ戸峠」へと生還。

ここをスタートしたのは昨日の朝のことなんだが、なんだかあれから2週間くらい時が経っているような気分。

だってスタートした時はあんなにツルツル雪道だったのに↓

たった1日ですっかりポカポカの春が来てしまっている。

九重連山も我々の挑戦に合わせて、無理して過酷な状況を1日だけ作ってくれたのだ。

余計な気配りをありがとう、九重連山。

 

さあ、これであとは無事に温泉に入れば二人の長く辛かった九重連山男塾は終了だ。

その温泉とは、秘湯と言われるこの「寒(かん)の地獄温泉」だ。

田沢がすごく楽しみにしていた温泉で….

そんなバカな!

毎度このパターンだから今回はちゃんとホームページで営業してるのを確認して行ったのに….。

 

この看板を認めたくない田沢は、わざわざ中まで行って「本当にダメですか?」と確認してしまったほど。

これが九重連山が仕掛ける、神ってる田沢への最後の快晴代償試練。

苦渋十七連山最終章、17番「神の地獄温泉」である。

 

今まで誰も耐え抜いた者がいないとされる男塾名物「苦渋十七連山」。

こうして田沢は見事にその試練の全てを受け切ったのである。

 

【田沢の苦渋十七連山の試練内訳】

01.「想定外凍結路臀部強打の舞い」
02.「下痢と雪道と私」
03.「裏切り介護放棄」
04.「愛染恭子の失踪」
05.「猛者猛者罵詈固拉麺」
06.「田沢の金落とし」
07.「田沢のFlyAway」
08.「肉体疲労時のマゾ補給」
09.「1万円ポッキリの哀愁」
10.「出る杭はマゾれる」
11.「田沢の肥溜めボッシュート」
12.「天国から地獄」
13.「1万円ポッキリ2〜延長料金7000円〜」
14.「田沢のテントのとこだけずっと日陰」
15.「下痢まみれスマートウール」
16.「神のバイタル」
17.「神の地獄温泉」

 

やがて松尾と田沢は普通の温泉にたどり着く。

そこで温泉を堪能し、風呂上がりに達成感に満たされた松尾は「いやあ、なかなか楽しかったですね九重連山。ねえ、田沢さ….」とふと田沢を見て言葉をなくした。

「お…おい…冗談だろ…返事してくれよ….」

「田沢ァァッッッッッッッ!!」

田沢慎一郎

苦渋十七連山の試練全てに耐え抜き

九重連山の大地で「男」を貫き通し

今、名もしれぬ温泉地にて

死亡

享年41歳

 

 

こうして田沢は名実ともに神となった。

彼の亡骸はその場でマッサージ器ごと荼毘に付され、松尾はその遺灰を岐阜へと持ち帰った。

それを彼の子供達に届け、「お前らの父ちゃん、立派な漢だったぜ」と言い残してひとしずくの涙。

その頭上では、一つだけひときわ光り輝く星ひとつ。

 

星はただ静かに

優しい光をたたえて

いつまでもいつまでも

微笑むように輝き続けるのであった…

 

 

九重連山男塾 〜完〜

 

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では、長々とご静聴ありがとうございました。

見上げた空にやたら光ってる星があったら、どうか手を振ってあげてくださいね。

あと腕に覚えのある人は、山で松尾見かけたら手押し相撲に挑戦して田沢の無念を晴らしてあげてください。

 

それではまたお会いしましょう。