白馬三山の縦走でヘロヘロになった1日目。だが、今回の山行の核心は二日目。日本三大キレットの一つ、不帰ノ嶮(かえらずのけん)の通過である。果たしてどんな場所なのか?無事に唐松岳まで辿り着くのか?白馬〜唐松縦走記、後編です!(文・コータロー)

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AM4:00

午前4時に起床。

本日の朝飯はシーフードヌードルBIG。

冒頭から華が無さ過ぎる見た目で申し訳ない笑

アウトドアショップで売っているレフィルは買いに行くのが面倒だし、量が少ない。

私はシーフードヌードルのBIGを、カップからジップロックに入れ替えて持って行きます。

 

山での食事は基本的にラーメンやフリーズドライばかり。

日常生活でも食べてる物を山で食べるのが好きなんですが、山だと何でこんなに美味しく感じるんすかね?笑

食べ物の味はロケーションで変わるから不思議。

だんだん明るくなる空を見ながらラーメンを流し込む。

日の出の時間になると山荘からカメラを持った人達が一斉に出てきた。

誰にとってもこの時間は特別。

 

気温も急に上がるから、太陽は凄い。

 

今日はこのルートの核心部である不帰ノ嶮を通過する。

ヤバイ場所なのかな?と言う緊張感と、大丈夫でしょ。と、いう自信が入り混じる。

 

ただ、あまり険しいと写真撮るの大変だな…。

そんな事務的な不安は強かった笑

AM5:15 出発。

朝日が登った途端に登山道はガスで包まれた。

風も強く、なかなか不安なスタート。

3m先しか見えない世界を進んでいく。

こんな経験も登山をしなければ、なかなか味わえないと思う。

稜線上で道は一本なので迷う心配は無かった。

ガスは次第に晴れ、進むルートがハッキリと姿を現した。

誰もいない稜線。

最高だな!!と、思いながら

「滑落したら、しばらく誰も見つけてくれない!!」

そんな最悪のパターンを想像するのは

ソロ登山あるあるなのか、私の性格なのか笑

天狗の大下り

程なくして「天狗の大下り」と言う場所に到着。

ここは不帰ノ嶮の玄関先。

「大下り」の名に恥じない下りっぷり。

人生が下り気味の私にピッタリの場所だ。

鎖も設けてあり、高度感もある。

スタートしてまだ1時間。

寝起きで、なかなかハードなルートである。

だが下流老人予備軍として、こんな下に怯えるわけにはいかない。

例の手袋です

手袋とヘルメットを装備してジャラジャラと下って行く。

鎖場は問題ないが、気を付けなければいけないのは鎖場以外の場所。

ザレザレで滑る滑る笑

 

今回履いて行ったTX4のソールがだいぶ減っているのもあると思う。たぶん笑

もう、ずいぶん履いてるからなぁ。

北鎌も八ヶ岳南北縦走もTX4で行った。他の山もバイクパッキングもTX4。

十分過ぎる位に元は取った。そろそろ引退だろう。

実際、この山行から帰ると新しい靴を買いにショップに向かった。

グローブがあるのと無いのでは安心感が全然違う

ジャラジャラ、ズルズルと、やかましい音を鳴らしながら下って行く。

なんとか天狗の大下りを下りると、細い道が続いている。

あまり長い区間ではないが、大きめの岩を四肢を使って乗り越える場面もあった。

何度かアップダウンを繰り返していると、不帰ノ嶮が全貌を現す。

不帰ノ嶮

かえらずのけん
ドーン!!

強い。

これ大丈夫なんすか?笑

 

「どこを登るんだろう?笑」思わず笑ってしまうレベル。

遠目ではルートがわからない笑

まさか右にずーっとトラバースするの…?

それはイヤだな…絶対怖い…。

 

ここで先行していたおじさん(おじいさん?)に追いつく。

「お先にどうぞ〜。私は後から行きますんでぇ〜。」

 

そうですか、それでは!

と、会釈をして岸壁に張り付く。

始まったー!ドキドキすんなぁ。

岩場、鎖場は2019年にみんなで行った八ヶ岳南北縦走以来だ。

遠目では全くわからなかったルートだが、いざ登り始めると進むルートが見えて来る。

どうも右には行かず、左に巻いて行くようだ。

ちょっと安心。

ビクビクしながら撮ってます

高度感はなかなか。これは怖いね。

必殺「下を見ない」を発動させてヨチヨチと進んで行く。

そう、下を見なければ怖くない。

下を見たらマジで無理です笑

とにかく、前だけを見て歩くのです。

張り付きながら岩の裏側に回る場面。

写真撮るのも一苦労。

 

色々な山行記事やブログで見た、一本橋を渡った後の一枚。

下がスケスケなので高度感はMAX。

でも「下を見ない」モードになっていたので、サクッと通過。

ふり返ってから「やだ!怖い!!」と、震えました笑

 

何となくここが核心っぽい雰囲気なんだけど

私はもう少し先の箇所がいやらしいと思いました。

君は「いやらしい目で見ないでよ!」と、漫画みたいなセリフを言われた事がありますか?

私はあります笑

カリマーパイセン

ここで、後ろから「あ゛あ゛っ!!」

と言う、叫び声が聞こえてきた。

さっきのおっちゃんだ!大丈夫なのか!?

 

断続的に「あ゛ぁ゛っ!!」とか「ひぃ゛っ!!」

という声にならない叫びが聞こえてくる!

なになに!?なんなの!?笑

岩を巻いた後だから姿が見えない

その後は「やだぁ゛っ!!」と、イヤイヤ期に突入!!

一体、何が起きてるんだ!?

 

声が近づいてきたので、チラッと振り返ると

「も゛ぉっ!!」と、叫びながら凄いスピードで登ってくるパイセン!!

 

「コイツ(失礼)!!速い…!!」

傷だらけのバリでかいバックパックを見て全てを悟った…!!

旧ロゴのカリマーのバックパック…!!

 

「昔、カリマーは高くてなかなか手が出なかった。」

登山用品店でそんな話をしていた店員さんを思い出す。

 

それでも買って使い倒したパイセンは恐らく、相当登れる…!!

だが、私にだってプライドはある!明らかに登山の後輩ではあるが、自分はまだ30代!

体力とスピードでパイセンに負けるわけにはいかんのです!

実は迫るパイセンに怯えている

だが、定期的に「い゛ぃ゛ーっ!!」みたいな叫び声を上げながら迫るカリマーパイセン!!

そのスピードは私のプライドをズタズタに引き裂いた。

 

岩場の登りがすげー速いんすよ。マジで笑

登山に年齢は関係無いと思いました。

さて、スタート地点の大きな岩壁を巻き、小さな梯子を登ると絶景ポイント。

歩いてきた稜線を眺められる。

その後も鎖場は続き、雨の日や下りでは使いたくないと思う箇所も出現。

力任せにジャラジャラと登って行く。

パイセンは体の使い方が上手いからひょいひょい登るんですよねー。

大きな岩を掴みながら進む箇所もあった。

岩はしっかりしている、ガシッと掴んでバランスをとりながら登って行く。

 

だが、「ん゛ぁ゛ー!!」というパイセンの叫び声が近づいてきて心のバランスが崩れる。

「ぽうっっ!!」みたいな、ジャクソンマイケル系奇声も発していて、その表現力とバリエーションの豊かさに、不帰ノ嶮はもはや彼のステージと化していた。

アツシオガワ

うちのSHIMといい、奇声をあげながらじゃないと登れない民族が一定数いるんだな笑

 

そんな中、コータロー落ち着け。と、言わんばかりにバランス感抜群の岩が出現。

なんとか心の平静を保つ。

 

この先が個人的には一番いやらしいと思った箇所でした。

腕の力で無理やりクリアした感じです。余裕なくて写真は撮れなかった笑

パイセンから激しい煽りもあり、オーバーペースでハァハァ言いながら

不帰2峰北峰に到着。

ルート整備用でしょうか?ハンマーが置いてありました。

とりあえず現場感あふれる一枚を撮影。

さあ、パイセンがいらっしゃる前に撮影場所を空けなければ!

そそくさと移動を始める。

ここから先は緊張感がある箇所はありませんでした。

とにかく眺めがいいルートを独り占め。

振り返ると、パイセンが遠くで大きなカメラを構えて写真を撮ってらっしゃいました。

パイセン、その体力。憧れっす。

暑い、眩しい。

不帰2峰南峰に到着。

この日も日差しがハンパじゃなくて、サングラスが欲しかった。

なんで落としちまっのたかな…。

次は何買おう…。オススメあります?

顔デカイ人用の…。

立山方面は日本海が見えた

この不帰2峰南峰は眺望が素晴らしかった。

不帰ノ嶮のルート上でも、個人的にはココが一番のお気に入り。

唐松岳からここまでなら、危険箇所も無いので行ってみるのもオススメです。

縦走してきたルートも丸見え。

すげーとこ歩いて来たんだなぁ…と、しみじみ。

何が凄いって、このルートを開拓した人達だと思います。

笑うおじさんの自撮りを撮る切なさよ

山を歩いていると「このルート考えた人凄くない!?」

そう感じる事ってありますよね。

この下りと登り返しは地味にキツかった。

さあ、もうすぐゴールの唐松岳。

お腹も空いたし先に進もう。

下山したらCoCo壱が食べたい。

豚しゃぶカレーほうれん草ミックス400g。

今回の山行は天気に恵まれていた。

でも、その代わりに凄まじい直射日光で体力を削られました。

暴力的に日差しが強い稜線では、長袖の方が結果的に涼しい。

改めてそう思いました。

唐松岳はもう少し。

なかなかの登りが待ち構えているが

杓子岳の登りに比べれば余裕でしょう笑

山頂の人たちが見えた。

あと少し!!

おじさん頑張って!!

ぽうっ!!

唐松岳

AM8:50 唐松岳山頂

到着!!

不帰ノ嶮は緊張する場面もあったけど、眺望が良くて楽しいルートでした。

とりあえず、ヘルメットがキツくて頭が痛い笑

マジで誰かデカイ頭用の山ヘルメット作ってくれ笑

唐松岳の山頂は広く、色々な場所で登山者が休憩していた。

山頂は360度の絶景。

だが、絶景も見慣れてしまい、さほど感動しない自分がいた笑

美味しい料理でも食べ続けると飽きるのと同じでしょうか笑

全体を通してピリッとする区間は短いです。

それでも十分すぎる危険箇所。

 

唐松岳から白馬方面に向かうルートの方が高度感も感じやすく、難易度は高いと思います。

雨の日だったり岩が濡れてる時は特にご注意下さい。

唐松岳は途中までゴンドラやリフトで上がって来れるので、凄い人気。

どんどん人が登ってくる。

山頂が混み始めたので、そそくさと下山開始。

山頂直下の唐松岳頂上山荘。

大きな鐘が特徴的。

2021年は売店は営業しますが、宿泊営業はしていないそうです。

(テント泊は可能ですが、要予約)

 

今年は色々なパターンで途中から営業を休止する小屋も出ています。

山行前は最新の情報を是非、調べて下さい。

八方尾根

それでは八方尾根から下山開始。

コースタイムでは3時間半とのこと。

下山のタイミングでガスってきた。

歩いて来た稜線を横目にどんどん標高を下げていく。

途中には雪渓もあった。

溶けてぐちゃぐちゃだったので神経を使いながら下る。

もう、靴のソールがつるぺたなんすよ…。

どんどん人が登ってくる。

唐松岳は人気なんだなぁ。

すれ違いざまに人の装備を見るのが楽しい。

UL系のザックを使っている年配の方も見かけた。

1時間ほど下ると街が見えてきた。

樹林帯は死ぬほど暑い。

上半身裸で登っているアメリカンなおじいさんもいた笑

見てコレ笑

暑すぎてカメラがおかしくなっちゃったんです笑

せっかく撮った写真も何枚かはこんな感じでダメになっていた。

八方池が見えてきた。

意外と小さいんだな。

この辺りになると、普通の格好をした観光客も見るようになった。

みんなカメラを構えて八方池に写る山々を撮影していた。

絶景スポットなんだけど、マジで暑すぎて無理。

完全にスルーして先を急ぎました笑

もう水もないしバテバテ。

まさか暑さでここまで消耗するとは。

やっとリフトが見えて来た。

いやー、疲れた。

ここまで来たら後はリフトとゴンドラで下山できる。

乗り物好きの自分としては楽しいルートだ。

喉が渇き過ぎたのでコーラを飲んでから乗車。

グループ登山の若者達が眩しすぎたので、私はゴミ箱の前で休憩。

怖い…!!

今回の旅のトップ3に入る恐ろしさはリフトだった笑

最初に謎の加速をしながら飛び出して行くから死ぬかと思ったよね笑

この小屋には五輪のマーク

白馬は1998年に長野オリンピックが開催された場所。

今、20代前半の人たちは生まれてなかったから知らないかもしれない。

当時の熱狂は「ふなきぃ〜」で検索してみてね笑

 

この八方尾根はアルペンスキーの会場になったらしい。

所々に五輪のマークが付いた建物がある。

またリフトを乗り継ぐ。

どんどん下界が近づきます。

ラストはこちらのゴンドラに乗って下山!

良い雰囲気!笑

ウインタースポーツをやらない私には貴重な経験です。

キツい山行のラストがこんなカプセルに乗って終わりって、なかなか良いもんです笑

充実した山行だった…。

こんなに天気が良かったアルプス山行は初めてかもしれない…。

ソロだとけっこうな雨男なんです…。

下山

ゴンドラの終点に到着。無事に下山。

ゴンドラ駅の周辺のお店はほぼ休業。

それがコロナの影響なのか時期的なものなのかは分からない。

ゴンドラ駅から白馬駅まで歩いていると綺麗な建物が。

何だろう?と、思ったらスノーピークの店舗だった。オシャレだなー。

他にもノースフェイスやパタゴニアの店舗があったけど、余計な出費になりそうなのでスルー笑

ちょうど良いタイミングで新宿行きのバスがあったので帰路に着いた。

すっかり気に入ってしまった白馬エリア。

本当なら8月にもう一度行く予定だったんだけど、天気やもろもろの事情で中止にしました。

結局、私の2021年の夏山はこれが最初で最後。それでも、この一回で満足です。

 

今回の使用ギアはまた次回!

前後編とお付き合い下さいましてありがとうございました!

押忍!!