挑戦的な素材を積極的に取り入れ、常に革新的な進化を続ける日本の雄「ティートンブロス」。そんなティートンが2017年新作ベースレイヤーに使用して来たのは未知なる素材「Dry Action」。その注目素材を使った「PPP」という名の超軽量ベースレイヤーは、ベースレイヤーのくせに超絶的な撥水性を誇るという謎だらけの試し甲斐あるウェアだった。そいつはまさに酷暑の夏に持ってこいな「着るクーラー」だったのである!

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新素材 Dry Action(ドライアクション)

Dry Actionとは?

2017年夏に向け、BBGは「さて、ベースレイヤーは何を試していこうかな?」と悩んでいた。

正直どこのメーカーのもある程度お馴染みの素材を使っているから、あえて試さなくてもなんとなく結果が見えている。

「吸湿速乾!適度な保温もあってモーサイコー!」なんて一行で事が済んでしまう。

だから「まあ好みのデザインで選んじゃえばいいよ」なんてのが正直なところだった。

 

しかし今年、そんな我々の前に挑発的な新素材が現れた。

その素材の名は「Dry Action」

独自視点と見事な立体裁断&高いデザイン性のウェアを発信し続ける「ティートンブロス」さんのオリジナル素材だ。

別にこれがただ「ドライになるぜ」ってだけの素材なら買う気にはならなかった。

我々もここまでにいろんな素材を見てきて相当スレているから、ありきたりな餌には食いつかない。

しかしこのDry Actionの説明を見て「???」が止まらなかった我々は、見事にその素材に興味をそそられてしまった。

その説明とはこんな感じである。

Dry Action の主な特徴としては1㎡あたりわずか90gという軽量素材であり、優れた通気性とグリッド構造によるべたつき感のない快適性が特徴です。この素材に世界最高水準の撥水加工Dry Actionを施したのがPPPシリーズに採用されている素材です。防水と呼べる程の撥水性と超速乾性を有し、優れた通気性との相乗効果でオーバーヒートを防ぎます。また極薄なグリッド形状により体表面を常にドライに保つベースレイヤーとしてもDry Action機能を発揮します。 引用:Teton Bros.

ベースレイヤーなのに防水と呼べる程の撥水…?

なんだそりゃ、聞いた事ねえ。

そもそもベースレイヤーが撥水する意味はあるのか?

ってことは、あのファイントラックのドライレイヤー的な感じってことか?

ドライレイヤーとベースレイヤーを二枚重ねしなくても、これ1枚で完結するってことなのかい?

気になる!気になってしょうがねえ!

 

ってなわけで、こりゃ実際の使い勝手を知りたいと思うユーザーも多いだろうと…てゆうか我々が気になってしょうがなくなったため思わず購入したのであります。

アイテム名は「PPP Half Zip S/S」。(S/Sはショートスリーブで、L/Sはロングスリーブ、クルーネックタイプもあり)

PPPが何の略かわかんないんで、とりあえず我々はこいつを「ペンパイナッポーペン」と呼んで各所でテストした。

2017.8.17追記:PPPの意味がわかったんで追記しておきます!PPPとは、Pole,Pedal,Paddleの略。Teton Bros.のブランドのルーツでもあるWyomingのJacksonholeでは、春にPole-Pedal-Paddleレースが開催されます。内容は、3人一組でPole(山でのスキー)Pedal(道での自転車)Paddle(川でのカヌー、カヤック)のレース。このマルチなシチュエーションにも対応できる!したい!という意味を込めて、PPPという名前を付けています。とのこと!ペンパイナッポーペンじゃなかったっす!

まずはそのテストの模様の前に、もう少しこの素材について見て行ってみよう。

驚異の撥水性

生地の表面はこんな感じで、細かなグリッド状になっている。

生地は薄く、説明文に「1㎡あたりわずか90g」と書いてある通りスペシャルに軽い。

実測は95g(JP M size)。

ほんとベースレイヤーを持ってるってよりは、ドライレイヤーを持っているって感覚だ。

 

そして説明文で「!」「?」って感じた「防水と呼べるほどの撥水」ってやつを見てみよう。

何度も使用して、何度も洗濯した状態のPPPにピピピッと水をぶっかけてみる。

するとこの驚きの撥水力!!

ガラコを塗った車のフロントガラスみてえだ!

ドライレイヤーならまだしも、ベースレイヤーでこの撥水力は見たことない。

正直小雨程度ならトゥルントゥルンに弾きそうな勢いだ。

 

じゃあ、生地の裏側はどうか?

あれ?裏側も弾いちゃってるよ…。

と、思ったら、ちゃんと3秒後くらいにスウッと外に抜けて行きました。

最初裏側も撥水しちゃってるの見て「これじゃ逆に汗で体びちゃびちゃになっちゃうじゃない」って焦ったが、そこはやはりドライレイヤーのようにしっかり吸い上げてくれるようだ。

とはいえ多少圧がかからないと抜けて行きにくいんで、吸汗性はすごい優れてるってわけではなさそうだ。

 

ってことで仕組みとしてはこのように感じた。

  1. 汗をかく
  2. Dry Actionが汗を吸い上げて外へ排出
  3. 外から中への汗戻りなし
  4. 裏地の吸汗のスピードは遅い
  5. そのおかげで行動時は体温を下げてオーバーヒート抑制効果が
  6. 超速乾生地なので停滞時は乾いてサラサラに

 

ドライレイヤーなら一枚上の吸湿速乾ベースレイヤーに汗を吸わせて乾かせるが、こいつは単体でそれをやってのける。

しかもドライ+ベースのパターンだと「常時ドライ状態維持」を目指すが、このPPPは激しい運動時には即座に汗が吸汗されないため、その水分が外気に冷やされて体温を下げるサポートをするのだ。

でもそれじゃ汗びえしちゃうんじゃ?って思うけど、綿生地と違って常に濡れ続けてるわけじゃなく、通常行動時はしっかりとドライになるという絶妙ライン。

「暑い時のアクティブな行動時は涼しく、通常時はドライに。」

まさに今までになかった新感覚の素材なのである。







 

レッツ現場テスト!

快適シチュエーション

じゃあ実際に現場だとどうなのよってことで、低山から高山、乾燥した日からジメジメの日まで着倒して来ました。

それも踏まえ、今回はまず先に結論から言っちゃいます!

このウェアは「暑い時期の森林限界以下でのトレランやスピードハイク向け」だと感じました。

クソ暑い中で赤岳鉱泉から美濃戸まで走ったけど快適そのもの!

この日は結構な暑さだったけど、走ってる最中は何と「常に涼しい」んです。

爽やかな風が吹いた時なんて、まるでクーラーを着ているかのような清涼感。

オーバーヒートを防ぐっていう謳い文句はまさしくその通りで、一度も「あっついなあ」とは思わなかった。

かと言って立ち止まると、日光ですぐにウェアが乾いて汗びえもナッシング。

かつてMHWの「素材自体がほんのりクール」っていうベースレイヤーもあったが、それと比べても段違いの涼しさ。

これはクソ暑い時の街のランニングウェアとしても、相当重宝するウェアだと感じた。

 

一方前回の「一人ノンフィクション」の時も基本は1,000m近辺のスピードハイクだったわけだが、暑い時は涼しいし、普通の時はドライだしって感じで実に調子良かった。

走って移動する時は涼しく、撮影時やゆるい移動時はサラサラ!小雨も弾く。

この時は小雨も降ったが、ちょっとした雨なんぞスパンスパン弾いてくれたから、特にレインウェアに着替える必要もなかった。

 

じゃあもう最強じゃん?って感じだろうが、これはあくまで森林限界以下のお話。

あえて最初に「暑い時期の森林限界以下でのトレランやスピードハイク向け」と結論づけたのには理由がある。

 

適さないシチュエーション

決して森林限界以上で使用してはいけないってわけじゃないが、正直暑くない場所ではメリットよりもデメリットの方が多いと感じた。

まず樹林帯ハイクアップ時、高山の場合早朝から肌寒い段階でスタートするでしょ?

そうすると汗は出るんだけど、日が出てないとウェアがなかなか乾かないから、常時肌がベタベタする上に肌寒いんです。

正しくはウェアが乾かないっていうより、生地裏もそれなりに撥水しちゃうため汗が体にまとわりついた状態になっちゃうんです。

で、そんな状態で森林限界を抜けると、寒風が吹いてくるでしょ?

ハイクアップの汗が冷やされ、もうみるみる体が冷えていくんです。なんせ「着るクーラー」ですから。

特にこの日のように太陽が出てないとウェアは中々乾いてくれず、体温も下がるから蒸発もして行ってくれない。

もしこれレインウェアとか防寒ウェア持って来てない人だったら、正直危険な状態。

この状態で寒風に晒され続けると、低体温症の危険もある。

僕のような腹冷やしてすぐゲリになっちゃう男は、それこそ「PPP」まっしぐらなのである。

 

だからと言って、ちゃんと日が出れば乾くし、縦走路になって運動量(発汗量)が落ちれば、ウェアは乾いて快適なんだけどね。

ってことで、森林限界以上での稜線までのハイクアップ時には注意が必要。

最近ロードランからトレラン始めてウィンドシェルすら持たずにこういうところ来る人がいるけど、そういう人は特に気をつけてほしい。

クールダウンさせることに特化された優秀すぎるウェアだけに、高地で使用する際は低体温症に気をつけてほしいのです。

それほどにこいつは「クールすぎる諸刃の剣」。

ということで、高地ではデメリットの方を多く感じてしまったため、あえてベストシチュエーションとして最初に「暑い時期の森林限界以下でのトレランやスピードハイク向け」って書いたんですね。

 

僕は比較的発汗量は少ない男なんで、こないだの仙丈ケ岳では「Mr.汗びちゃ夫」で有名なアツシオガワにも試させました。

目論見通り、樹林帯ハイクアップでびちゃびちゃになっていく男。

ドライレイヤーのように1枚上のレイヤーが汗を吸って拡散するわけじゃないから、表面はずぶ濡れ(弾いてるんだけど追いつかない)。

で、そのまま森林限界を超えると、寒さに強いびちゃ夫も「なんだか寒いっス」と窮状を訴えていた。

うっすら色が濃くなってるところは全部汗。そりゃ風吹けば冷えるさ。

汗が出続ける以上しっかり律儀にクールダウンしてくれるんで、日差しがガンガンで酷暑ってレベルじゃない時は中々厳しい。

一方で、やはり発汗量のない下山時には「サラサラで快適っス」と満足げ。

ハイクアップ時に比べウェアのサラサラさは一目瞭然。

ただまあどのウェアも、綿以外のちゃんとした素材ならそりゃ下山時は快適だろうて。

 

あと高山以外にシチュエーション的に適さないのは、梅雨時とかの高湿度で超ジメジメした時の低山ラン。

撥水実験の時に裏生地が3秒ほど抜けて行かなかった事でもわかるが、決して吸湿性が高いわけじゃないから常に体は全体的にジットリ。

水玉のような汗なら比較的早く吸い上げてくれるが、体に膜を張ったような汗は生地を手で圧をかけないと中々吸ってくれない。

こういう時はやはり吸湿に優れた素材の方が快適に走れるだろう。

 

まとめ

これは中々面白いウェアでした。

僕らもテストしながら「ムムム、中々判断が難しい!」と思うほど個性があり、シチュエーションを変えるごとにまた違った感覚を与えてくれる素材だった。

その上で何度も言うように、暑い時期の森林限界以下でのトレランやスピードハイクっていう使用時には堂々と「これすげえ!」と言い切れるまでに至った。

暑くなればなるほど、運動量が多くなればなるほど涼しくなるという摩訶不思議なDry Action。

これを着てる間、体が熱いと感じることは一度もなかった。

ってことで、自分のアクティビティ用途にマッチする人には、まさにベストバイなベースレイヤーなのでありました。

 

Teton Bros.(ティートンブロス)「PPPシリーズ」※画像クリックでメーカーサイトへ

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今年の夏はPPPで暑さを快適に乗り切ろう!

あ、あとついでに書いておくと、生地薄いんで胸張るとすげえ「B地区」が主張をしてしまいます。

涼しすぎるから立ち立ちになっちゃうんですね。

あんまり涼しく快適に走れるからって、胸張ってドヤ顔すると変態感出ちゃうんでお気をつけください。

 

それではまた会いましょう。

ユーコンカワイでした。