川旅やパックラフトには興味はあるけどご予算が…。なんてお嘆きのあなたに朗報!トータルバランスに優れ、最高のコスパを誇るドイツのパックラフトメーカー「nortik(ノルティック)」がついに日本上陸!今回早速BBGがnortikの代表モデル3艇を渓流と激流で乗り回しチェック!他社との比較も交えて、その詳細と乗り心地をつぶさにレポートいたします!(文・ユーコンカワイ)
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パックラフト第4勢力「nortik(ノルティック)」登場!
ここ数年ですっかり日本に根付いた感のあるパックラフト。
その軽さと収納性がもたらす気軽さは、従来のカヤッカー達には革命をもたらし、一方で川を知らなかったハイカー達には新たな遊びのスタイルとして浸透。
そんな中、数年前まで「パックラフト=アルパカラフト」と言ってもいいくらい一社独占だったこの世界も、今や数多くのメーカーが世に出てきて業界自体も盛り上がりを見せている。
アルパカを猛追する形で近年勢いを増す「ココペリ」、手頃な価格帯でエントリー層を狙う「NRS」や「クライミット」、アルパカとほぼ同形状なのに手頃な価格を実現した中国の「MRS」。
これらは日本でも購入可能なものばかりだが、海外にはまだまだ名の知れぬ新興メーカーもいくつか登場。
カナダでは「DIY Packraft」というレイウェイのバックパックみたいに自分でパックラフトを作ってしまおうぜ!っていう自作キットを販売しているところまで出てきている状況。
ただここまで選択肢が増えるとユーザーとしては嬉しい反面、どうやって選んだらいいのか悩ましいところ。
そりゃ王道のアルパカラフトを選択すれば性能的にも話は早いんだが、いかんせん値段がお高い上に常時品薄状態。
じゃあアルパカより安くてモンベルが代理店で比較的安定供給があるココペリってなるが、それでもスタンダードモデルのキャストアウェイで128,000円+税もする。
かと言って安すぎるものに関しては上記の二者に比べて性能や快適性は劣るし、生地的な不安などもつきまとう。
新興メーカーに関してもまだ日本に代理店がないものも多く、購入のやり取りやアフターケアの面で不安が残る。
ってことで、まとめると以下のような感情で悶々としている人は多いんではないだろうか?
- 性能はアルパカやココペリに匹敵するものがええねん!
- でもそこまでのご予算はありませんねん!
- つっても安かろう悪かろうもあきまへん!
- 日本に代理店があって色々聞けるところがええで!
- アマノジャッキーだから他の人とは被りたくないんや!
そんなワガママさんなあなた。ご安心ください、あるんですよ。
そのパックラフトメーカーの名は「nortik(ノルティック)」。
ドイツのメーカーで、欧州では恐らくアルパカに次いでメジャーなパックラフトメーカー。
nortikは欧州の市場では高評価を得ながら、今まで日本への供給ルートがなかった。
しかし今年ようやく日本にも代理店が出来て、安心して購入できるようになったのだ。
nortikがまず他のメーカーと違うのは「パックラフトだけ作ってるわけじゃない」っていう点。
アルパカやココペリのようにパックラフト専門ではなく、基本的にはファルトボート(折りたたみのカヤック)をメインで作っているところ。
nortikは長年この業界で蓄積してきた技術力が他二社をはるかに上回り、それをパックラフト作りにもフィードバックしている。
そしてガレージメーカーでもないため対応も早く安定した供給が可能で、かつ素材的にも良いものを使いながらも値段が抑えられているっていうわけ。
この辺りはNRSも同じような環境で値段も近いものがあるんだが、nortikの方が圧倒的に形状がアルパカやココペリ寄りってのが注目したいところだ。
ちなみに代表各社のスタンダードモデルの現在の日本販売価格比較はこんな感じです。
アルパカ | ココペリ | NRS | nortik |
スタンダード(デッキなし) | キャストアウェイ | NRSパックラフト | トレックラフト |
164,100円+税 | 128,000円+税 | 97,750円+税 | 71,600円+税 |
なんとアルパカの半額以下!
それでいてアルパカ・ココペリと形状を同じくし(大きな括りでね)、安心の質実剛健ドイツブランド!
そのnortikのスタンダードモデルが、この「トレックラフト」で、
そしてこのトレックラフトのスプレーデッキ付きなのが「バーデックラフト」。
そしてさらに小型軽量で、より探検道具寄りなアイテムが「ライトラフト」。
それぞれカラーはこのミリタリー感溢れる渋い「グリーン×ブラック」の他に、「オレンジ×ブラック」があります。
今回はこの3艇をお借りすることができたんで、渓流部の大塔川、激流の北山川にてテストしてきました。
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それでは使用感も含めつつ、まずは細かな仕様の方から見て行ってみよう。
収納袋と重量
まず最初はこのような専用収納袋に、本体・シート・ポンプバッグ・簡易リペアセットが入っております。
それぞれの収納サイズと重量は以下の感じ。
- ライトラフト・・・40x15cm/総重量2,550g(本体2,200g)
- トレックラフト・・・50x25cm/総重量3,240g(本体2,700g)
- バーデックラフト・・・50x30cm/総重量3,740g(本体3,000g)
ここで再びシートを含む本体重量の代表4社を比較してみよう。(※NRSは付属マットを除く重量)
アルパカ | ココペリ | NRS | nortik |
スタンダード(デッキなし・M) | キャストアウェイ | NRSパックラフト | トレックラフト |
2,450g | 3,400g | 2,500g | 2,700g |
構造がシンプルな分(主にシート部分)、他社に比べて全く遜色のない軽量さ。
後述するけど、生地を薄くすればもっと軽くなるんだが、そこは質実剛健ゲルマン魂。
ちゃんとした厚手の生地を使用しておきながらこの重量ってことに注目なのであります。
で、まずこの収納袋にギッチギチに入ってるわけですが…
これ、若干キツキツすぎて、使い終わった後に元に戻すのが結構大変だったりします。
もう少し余裕のあるタイプか、コンプレッションつきだったら良かったんだけど。
まあ正直実戦ではこういう収納袋ってあんま使わないからいいんだけどね。
むしろこのモデルさんの腹のキツキツさの方が気になって仕方ないですね。
ポンプバッグとバルブ
で、中からずるんと出てきた、このピーマンのおひたしみたいなやつが中身です。
そして、パックラフトを膨らますためのポンプバッグ(インフレータブルバッグともフィルバッグとも言います)がこんな感じ。
このポンプバッグが他社のに比べて明らかに超デカイ。
そして生地も割としっかりしててクチの部分がゴムチューブ補強されてるからちょっと重い。
なぜならこれ、ただのポンプバッグじゃなくて大型の簡易防水スタッフサックも兼ねてるんです。
ただあくまで「簡易的」って書いたのは、御察しの通り、空気入れるところには穴が空いているから水は入りまくりってこと。
このままじゃ防水バッグにはならないから、何かしら自分でホームセンターとかでキャップとか買ってやらないといけない。
というか発想は面白いんだが、こんなに大きくて中途半端なサックはいらないから、普通にシルナイロンとかのシンプルで軽量なやつが良かったかななんて…。
で、上の写真の空気口の部分を見てわかる通り、アルパカやココペリみたいにスクリューロック式じゃなく、ここはシンプルに押し込んで固定するタイプ。
NRSもこのタイプなんだけど、これ結構空気入れてる最中にスポッと抜けるんだよね(NRSよりはだいぶマシだけど)。
ほんのちょっとのことだけど、ここはアルパカとかと同じような仕様が良かった。
で、空気の入れ方は他と一緒で、袋の中に入れ込んだ空気をくるくるプシューっと入れるのみでございます。
バルブ部分は内部に空気がたまると内側の弁が閉じて、外からの空気は入るけど中の空気は逃げていかないという構造。
そして先ほどのポンプバッグである程度中に空気を入れたら、こちらの空気ホースから息で空気を入れ込んでやる。
この辺りの使用はNRSとほぼ一緒でシンプルなもの。
でもNRSはこの空気ホースがなぜかコクピット内にあるため非常に空気が入れにくかったが、nortikは外側にあるから追加で空気が入れやすい。
一見、怪しい粉を鼻から吸い上げてる人に見えるけど、これは空気入れてるんですよー。
パックラフトは時間とともに萎んでフニャチンになってしまうんで、定期的に空気を入れて気合を注入してやる必要があるのであります。
ループとシート
船首側には4箇所のループがあるので、そこにロープなどを通して荷物を固定できる。
ループの数はライトラフトの方も共通で4つです。
そしてシートはこのように膨らますタイプで、
これを本体側のベルクロに固定するっていういたってシンプルなもの。
ここに関してはほんと必要最低限って感じで、アルパカやココペリのラグジュアリーさに比べてどうしても値段相応の安っぽさを感じてしまう。
まあ地味にこの部分を凝ったものにすれば値段も重量もアップしちゃうわけだから、ここは割り切りポイントの一つだろう。
ただベルクロ固定ってことは、パックラフト内部が水風呂状態になった際、水の圧力でシートが外れやすくなることを意味している。
事実、僕がそのテストのためわざと(?)沈した際、水圧に負けてシートが外れてしまった。
ここはバックルでの固定か、NRSのように本体との一体型で良かったんじゃないかと思った。
あと個人的には、本体がせっかくのミリタリー調でかっこいいカラーなのにシートだけ色が派手なのが無念。
できれば同色のグリーンかブラックで行って欲しかったなーって思っちゃったり。
(追記:って思ってたらどうやら現行のものからブラックに変更になったらしい!今となっては逆にこの派手カラーはレアアイテムとなった。)
TPUコーティング生地
生地は触った瞬間「お!これはしっかりしてるな」と感じられる十分な厚みのあるもの。
素材は「TPU(熱可塑性ポリウレタン)」という弾力性のあるコーティングで、防水性と堅牢性に優れていている上に汚れにも強い。
見た目の分厚さに反して軽量なのも特徴。
他のパックラフトは通常のPUコーティングな分、堅牢度はこちらのが高いように感じた。
その上で重量的に遜色ないんだから、さっきのシートのことは差し引いても本体2,700gは非常に優秀だと言えるだろう。
ボトム部分もしっかり補強されていて、ちょっとやそっとのことでは破れることはないだろう。
ちなみにパックラフトは保護+底冷え防止用にフロアにスリーピングマットを敷いたりするが、
正直サイズ的にワイドがきっちり収まらないし、鬱陶しいから途中から外して漕いだけど何の不便もなかった。
ボトム生地が厚手だし、特にフロアにマットを敷く必要はないでしょう。
ちなみに内部は1気室なので、パンクしたら完全にしぼみますよ。
よっぽど川下り中にパンクすることはないんだけどね。
大概穴が空く時って、搬送中に何かに引っ掛けた時でございます。
スプレーデッキ
続いてトレックラフトのスプレーデッキ(艇内への水の侵入を防ぐ)付きタイプの「バーデックラフト」を見ていこう。
基本的な仕様はトレックラフトと一緒で、ここまではセットアップの手順も一緒。
ここからは付属のアルミパーツをこんな感じで繋げて、
こう被せて、
ヒダヒダの下側に沿わせたら、後ろにあるコードを引っ張って絞り込む。
で、そのコードをクロスさせてから前側に引っ掛けてやれば完成。
アルパカなどのスプレーデッキはとても簡易的なものなのでそこそこ水が入ってくるが、このタイプは通常のカヤックと同様の状態だからスプレースカートを装着したらほぼ浸水しない。
その代わり、このように別でスカートを用意しなくてはならず、パックラフトの利便性を考えると少々オーバースペック気味。
ただ激流系をメインに考えているならすごい便利で、安心感が全然違う。
内部に水が溜まらないから、操船も楽でどんどん攻めていけた。
ちなみにオレンジカラーはこんな感じです。
自分の行きたい川や好きなスタイルが激流派の人は、迷わずバーデックラフトだろう。
旅派の人は、乗り降りが楽チンで軽量なオープンデッキのトレックラフトを選ぶといいでしょう。
サイズ感
サイズに関しては以下の感じ。(トレックとバーデックは一緒)
- ライトラフト・・・長180cmx幅91.5cm(内側:長さ116cmx幅39cm)
- トレックラフト・・・長230cmx幅92cm(内側:長130cmx幅39cm)
中に座った時の感覚的には、アルパカやココペリよりも幅に余裕があり、NRSよりは狭い感じ。
173cm72kgのアツシオガワがトレックラフトに乗るとこのくらいのサイズ感で。
ライトラフトに乗るとこんな感じ。
ライトラフトは本当にミニマムなサイズで、アルパカで言うところの「スカウト」に近いスタンス。
それこそ渡渉用アイテムとして担いで持って行ったり、探検用として使うのがベスト(もしくは子供用)。
180cm級のビッグサイズの鯉さんが座るとはみ出してしまうレベル。
いかつい男も、ライトラフトに乗れば何だか可愛らしく見えてしまうから不思議である。
使用感(ライトラフト)
じゃあそのチャーミングなライトラフトの方から実際に使って見た感想を。
4人で乗り回してみたんだけど、みんなの共通意見は「これ、面白い!」っていうものだった。
何が面白いかというと、ダイレクトに川を感じられるし、小さくて回転性も高い分操船が楽しいのだ。
初心者向きっていうわけではないが、ある程度他のパックラフトを漕いだ人なら「こっちのが楽しい」って感覚になるだろう。
ただ携行性・回転性には優れるが、当然直進性はあまりないのでトロ場なんかは頑張って漕がないと進まない。
あとは後ろの部分が盛り上がった形状ではないため、重心が後ろに行って背後から水が入ることがある。
とは言え、パワフルな激流じゃない川なら全然余裕でいい仕事をしてくれる印象。
むしろこれに乗っていると、必然的に技術が向上して行くのを感じるほどだ。
こいつは川下りメインで考えてる人よりも、「川遊び」や「探検」という名目でパックラフトを考えてる人にはとてもお勧めできる川旅用アイテムと感じた。
これ担いで冒険に出たくなる、そんなパックラフトである。
使用感(トレック&バーデック)
一方、万人にお勧めできるスタンダードモデルは断然トレックラフトだ。
まず一言で言ってしまうと「バランスがめちゃめちゃ良い」ってこと。
突出して何かが素晴らしいっていうわけではなく、舟自体の安定性はもちろん、直進性も回転性も全てにおいてトータルバランスが良いのだ。
その実力は、ほぼパックラフト初心者のアツシオガワが、あの天下の大激流北山川をノー沈でクリアした事で実証済み。
アルパカより回転性があり、ココペリより居住性があり、NRSより直進性がある。
そして何より静水から激流までカバーできる安定感。
まさに現時点のパックラフトTOP3の中間にドシンと居座ったのがnortik。
それでいてあの低価格っていうのが素晴らしい。
不満があるとするとやっぱりあのシートくらいかな。
多少重くて高くなったとしても、あの部分がアルパカみたいな腰のサポートもあるラグジュアリーシートになったら最高。
まあそこまでは望みすぎかな。
快適に川下りしたいなら、通常のカヤックとかダッキーにすれば良い話で、パックラフトに求めるのは軽量さと冒険力。
それ考えると必要十分なスペックだと言えるのだ。
一方前述の通り、激流を目一杯楽しみたい人は断然バーデックラフト。
内側の幅がやや広めなので踏ん張り的にはアルパカやココペリに劣るが、船艇自体の安定性があるためそこまで気にならない。
むしろNRS同様、アルパカやココペリとかより沈の確率は減ると思うので初心者でも安心だ。
あとはスカート付きの何が一番気持ち良いかっていうと、オープンデッキの人たちが瀬を越えるたびに排水作業しているのを水の上から悠々と眺められるのがたまらない優越感なのである。
まとめ
本当、アルパカとNRSの中間ねえかなーって段階で日本に上陸した「ちょうど良いパックラフト」。
パックラフトメーカーとしては後発だが、だからこそ他のものを見本に「無駄を削ぎ落としたシンプル仕様」を突き詰め、「これでいいじゃん」っていうスペックが日本の環境下にはジャストな感じがした。
個人的にはパックラフトなんて所詮遊び道具なんで、本格的なカヤックと違って10万円以上は適正価格じゃないと思っている。
事実僕は当時8万ちょっとで買ったNRSで、日本全国の川で何不自由なくに遊びまくれてるし。
とにかくこれからパックラフトやろう!川で遊んでみよう!って人達に対して、nortikという選択肢が一つ増えたことは朗報だ。
そしてお金持ってないけど、エネルギーと感受性溢れる若い人にこそ川で遊んでみるきっかけになって欲しい。
登山だって、初めて登った時の感動、楽しさ、カップラーメンの美味さを知ってみんなハマったはずだ。
初めて水の上から見る景色、瀬を超えるスリル、川に潜ったり飛び込んだりする楽しさ、そして川原で食うカップラーメン(結局カップラーメンかよ)にぜひ感動してほしい。
アルパカだろうとココペリだろうとnortikだろうと正直何でも良いんだけど、とにかく「川を旅してみる」ってことを体験して欲しいとおじさんは切に願う次第であります。
nortikパックラフトの購入は、代理店の「元気商会」さんから購入可能です。
アフターケアの方も、ユーザーによる補修が不可能な場合は修理の可否判断を含めてちゃんと有償受付してるから安心だ。
ちなみに元気商会の代表の方は、前回オトノリ男塾の記事で「激流を泳いでパックラフト救出」という超人技で我々を驚かせた洞窟探検家の「縣(アガタ)智丈」さん。
第一線の探検家が選んだアイテム。
もうそれだけで何だか妙な説得力があるから不思議である。
パックラフトの現物が見たかったら要予約で直接元気商会さんを尋ねて行けば見せてくれますよ。
面白い洞窟話が聞けるんで、正直それメインで行っても楽しいですよ。
それではみなさん、素敵な川ライフを。
ただ川にハマりすぎると嫁さんが厳しくなって行く傾向ありです。
最近「あんたってさ、家族のLINEグループに入ってたっけ?」って言われました。
ずっと入ってるんだけどね。
もっと頑張って行きましょう。
ユーコンカワイがお送りしました。
押忍!