長期縦走とかロングハイクの時の軽量メシのレパートリー、正直もう飽き飽きしてません?3日目のラーメンとかもう腹立ってきませんか?大丈夫。そんなあなたにBBGから「ドライフード」のご提案。縦走3日目でもモリモリ野菜が食える!魚も食える!果たしてその選択肢はアリやナシや?ユーコンカワイが人柱となってレッツ・リポートなのであります!(文:ユーコンカワイ)
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Road to ドライフード
僕はうんざりしていた。
ラーメン、ラーメン。
アルファ米、アルファ米。
パスタ、パスタ。
ああ!もうたくさんだ!
多くの人を悩ます長期縦走中&ロングハイク中の「メシ事情」。
当たり前の話だが、軽さを求めれば求めるほど飯は簡素で不味くなる。
同じようなもん食っては訪れる圧倒的な飽き、慢性的な野菜・タンパク源不足、そして華やかさ不足。
この味気ない炭水化物オンリー攻撃は、縦走3日目ともなると鳳凰幻魔拳レベルの精神攻撃へと進化する。
ラーメンを見るたびに、「日々が味気ない…。どんなに取り繕ってもお前の存在自体がもはや気にくわない!」といった倦怠期夫婦状態となってしまうのである(実際に言われたことあり)。
やっぱりラーメンにしろアルファ米にしろ、華やかさとボリュームをブーストするための「野菜」が必要だ。
しかし野菜なんて担いで行った日には、水分多くて重たいしすぐに傷んでしまう。
そこで僕は「フリーズドライ野菜」を探し回った。
しかし出てくるのは丼物の具だったり味噌汁だったりと調理済みのものばかりで、野菜はちょろっとしか入ってない。
スーパーとかで探しても、「基本的にワカメとわけぎです!」といったものばかりで、結局入れても食うもの全部がワカメ味になってしまう始末。
僕が欲しいのは「味付けされてない多種多様な野菜」であり、全てをワカメで誤魔化そうとするその場凌ぎの野菜ではないのだ!
そこで次に目をつけたのが「乾燥野菜(ドライフード)」だった。
水気が飛んで軽い上に保存力もあり、何より素材の美味しさがギュッと凝縮されてヘルシーで長期縦走にも持ってこい。
ほら、よく晴れて乾燥した日に軒先きでおばあちゃんとかが色々干して作ってるアレね。
だがしかし、めんどくせえッ!
そもそも僕は極度のめんどくさがりだし、こんな気の遠くなる作業を何日もやれるほど気の長い男ではない。
“山と道”のアイテムが欲しくても「待てない」という理由だけで手を出せないせっかちな僕が、たかが野菜ごときのためにそんな手間と時間は費やせない。
しかも「晴れた乾燥した日」なんて条件は僕にはよほど縁のない状況だし、干せたとしてもPM2.5や黄砂が蔓延する現代ではヘルシーに作りきるのは至難の技だ。
そこで「もっと手軽に屋内でササっとできないか?」と思い立ち、色々調べたら「ドライフードメーカー(もしくはフードドライヤーとかディハイドレーター)」なるものの存在を知ったのである。
ざっとAmazonとかで検索すると、4000円代のピンのものから、9万円代のキリまでのものが結構出てくる。
そこで僕は「ようし!実際にこいつでちゃんとドライフードが簡単にできるかどうか実験だ!もしちゃんとできたらBBGユーザーにとって貴重な情報になるはずだ!」と人柱になる決意をした。
しかも“BBG貧乏レビュー担当”の僕は、「せっかくだからあえてクソ安いやつでちゃんとできるかやってみよう!」と心に決めたのである。
で、アマゾンの中で最安だった4180円のものをゲット。
ドライフードメーカーは基本的に乾燥室内に温風を送り続けるだけというシンプルな構造。
その中でも「ドライフルーツとドライ野菜を作る用」と「ビーフジャーキーも作れる用」の2種類が存在する。
こいつは最安値だったにも関わらず、肉や魚を調理するのに必要な温度設定可能(70度)の、ジャーキーも作れる方の一品だ。
なぜそんな価格でこの機能が実現できたのかというと、そこはもちろん中国四千年の神秘パワーのおかげである。
わずか4000円程度で乾燥野菜がガンガンに作れるなら最高じゃないか。
それではそんな四千円の四千年パワー、果たしてちゃんと物になるのかBBGがしっかりチェックだ!
テスト1.フルーツの章
野菜とかの前に、まずは比較的簡単にできる「ドライフルーツ」から作ってみよう。
正直40を越えたおっさんが「ドライフルーツ作り」とか言ってる時点で若干の小っ恥ずさを感じてしまうが、これも全て美味しいドライフード職人になるため。
ドライフルーツは言わずと知れた行動食の王様。
スーパーとかで買うと高価だし甘すぎるから、自前でできたら最高じゃない。
で、早速家にあったフルーツをカットして5段のトレーに並べるとこんな感じ。
これを積み上げて蓋をし、温度をセットしてスイッチを押す。
あとはひたすら12時間くらい放置プレイするのみ。
音は「しゅご〜」と布団乾燥機的な音で、同じ部屋だと気になるけど隣の部屋だと気にならない程度。
部屋の中に広がる甘い香り。
ちなみに気になる電気代の方は、つけっ放しだから結構行くのかなと思いきや12時間で100円程度らしい。
で、記念すべき1回目のドライフルーツなんだが、実はこの翌日が入道ヶ岳登山で十分な乾燥時間をキープできなかった。
一応その中途半端な状態のドライフルーツを持って行って、
人体実験として、当時初対面の鬼ころしSちゃんに食わせてみた。
この時の彼女の第一声は「クソマズ!」だった。
乾燥時間が短すぎて、生とドライの中間が奏でる絶妙な歯ごたえの悪さが不快感を増殖させた結果である。
アツシオガワにも食わせてみたが、日頃からの僕に対する不信感というスパイスも加わってか「食えたもんじゃないです」と速攻で返品されてしまった。
こうして第一回目の実験は大失敗に終わったのである。
しかしこれで悔しさに火がついた僕は、気を取り直して2回目の実験に突入。
今回は万全を期して前回より薄めにカットし、何度も途中でチェックをいれながらじっくり乾燥させた。
すると「これぞドライフルーツ!」といった、完璧なものが出来上がった。
よく市販で売ってるやつは、なんか砂糖振ってんのかわかんないけどベタつくじゃない?
でもこれはまさにドライな感じで、いわゆる野菜チップス的なパリッとした出来栄えだ。
で、これをジップロックに入れて、行動食としてサコッシュにインして持ち歩いてみたわけですよ。
これがもう超絶ウマし!
疲れた体に酸味の効いた濃縮フルーツの甘みがパーフェクトに入り込んでくる。
パリパリとした食感もグッドで、そこそこ食っても喉も乾きにくい。
中でもスーパーヒットだったのが「輪切りオレンジ」と「トマト」。
特にトマトは酸味と甘みのバランスが絶妙で、栄養素も高いから行動食として最強な感じがした。
少し手間がかかるが、蜂蜜につけてから乾燥させた「レモン」もなかなかオツだった。
そんなレモンを紅茶とかに入れて飲んでみてもシャレオツである。
よし、これでいよいよこのドライフード作りも光が見えてきた。
次は念願の「ドライ野菜」に挑戦だ!
テスト2.野菜の章
いよいよメインイベント。
これが成功すれば、もう飽き飽き炭水化物攻撃に悩まされることもなくなる。
気合いを入れていろんな野菜を用意。
戦闘準備は万端。
さあ、見せつけるがいい!中国四千年のパワーを!
あれ?
なんか何時間経っても全然野菜が乾燥していかないぞ?
流石にこれはおかしいぞと、蓋を開けてみる。
すると温風じゃなくて「ただ普通の風が出てるだけ」という状態に。
そう。
中国四千年のパワーは、わずか3回目の使用にてぶっ壊れてしまったのである。
さすがは「Mr.安物買いの銭失い」と賞賛されるユーコンカワイ。
気合いを入れて買った野菜たち(いま結構高いんだぜ)もパアである。
ある意味別の角度から中国四千年の底力を見せつけられ、己の心が激しく乾燥させられてしまった。
しかし考えようによっては、「この価格帯のドライフードメーカーはちょっと賭けなんだぜ」っていうのをBBGユーザーにお見せできたのではないだろうか。
これぞBBG的リアルレビューなのである。
とりあえず即座に販売店に「3回で壊れたんすけど」とクレームを入れ、商品を交換してもらった。
そして再び野菜を準備してレッツ乾燥。
次はちゃんと温風が出て、見事にドライ野菜が完成したのである!
紆余曲折あったが、やっと本来の目的にたどり着いた。
ドライ野菜制作中の難点を言うと、部屋の中がなかなかに青臭くなるっていうところかな。
それでは初めてのマイドライ野菜を実食。
いつものBBG鍋(春雨、しゃぶしゃぶ餅、お好みのフリーズドライスープ)に、ブースト野菜として自作ドライ野菜を投入してみる。
乾燥野菜はある程度お湯で戻してやると美味いので、お湯を沸かしながら乾燥野菜を戻して行く。
で、春雨、スープ、しゃぶしゃぶ餅の順に投入したら出来上がり。
素晴らしきボリューミーさ!そして野菜が織りなすヘルシーさと彩りの良さ!
シャキシャキのネギ・白菜・オクラ・パプリカ、風味豊かで食感もいいしめじ!
これは今後の長期縦走時やロングハイク時の飯に革命をもたらしそうだ。
ちなみにこの時ギャグ的に木綿どうふも乾燥させてみたが、それに関しては「ガム」みたいな食感になって最悪でした。
あとカボチャと芋に関しては、やっぱり短時間のお湯戻しでは硬いままだから山には不向きと感じましたね。
多分事前に茹でてからドライにすればいいのかもしれないが、めんどくさいからそんなことはやらない。
とりあえず1回目のドライ野菜テストとしては最高の結果だ。
今後どの食材がドライ野菜に最適で美味しいかを探って行くのも楽しそうだ。
さあ、勢いがついて来た。
次は上級編、ビーフジャーキー作りに挑戦である!
テスト3.魚肉の章
ドライフルーツが「行動食」、ドライ野菜が「主食」なら、ビーフジャーキーは「酒のツマミ」。
もうこのドライフードメーカー1台で、山でのお食事はほとんどまかなえてしまうのだ。
ただビーフジャーキー作りはちょっと他のと違って手間がかかる。
面倒くさがりの僕がどこまで耐えられるかわからないが、せっかくなんでやるだけやってみよう。
用意したのはジャーキー用のモモ肉ブロックの他に、ささみ、砂肝、塩銀さけ。
塩銀さけは味がついてるからいいけど、他のやつは事前に色々仕込んでやらねばならない。
ブロック肉はカットしやすいように少し凍らせ気味にしてから薄くカット。
で、本当はここで黒胡椒やらワインやら色んなもんに漬け込むんだが、そんなのはめんどくさいんで「焼肉のタレでいいんじゃね?」と判断してそれに漬け込んだ。
同じく「なんとなくそれっぽくね?」という理由で玉ねぎも一緒に入れて、これを冷蔵庫で1日寝かせる。
正直もうこの時点で僕は「めんどくさいな…。」という気持ちでいっぱいだ。
それでも一応頑張って待って、1日寝かせたのがこちら。
これだけ並ぶと圧巻だ。
大変だった分、期待も膨らむ。
さあ、再び中国四千年のお力の出番だ!
あれ?
なんか何時間経っても全然お肉の色が変わっていかないぞ。
僕は「いやいやいや、そんな馬鹿な」と呟きながら恐る恐る蓋を開けて見た。
そして叫ぶ。
「また温風出てねえじゃねえか!」と。
交換した商品が、今度はまさかの2回目でぶっ壊れるというまさか。
自分のことなのに、思わず「ユーコンかよ!」と突っ込んでしまったほど。
さすがは「初期不良品を引かせたら右に出る者なし」と恐れられる男。
結局彼は「この大量のお肉を腐る前に一気食いしなくてはならない」という使命を背負う羽目に。
一体何のために余計な出費をし、手間をかけて1日寝かせたのだろうか?
最終的にこのお肉は焼肉として大量に食い尽くしました。
結論として「一番安いやつ買ったらそこそこの確率で痛恨の一撃を食らう」ということが実証できた。
とりあえずもうさっきまでのやつはさっさと返品し、もう少しランクが上の4,924円のものを別途購入。
前回のものはタイマーがついてなかったから自分で時間測って消さなきゃいけなかったが、このタイプはちゃんと12時間まで設定できるタイマー付きだ。
で、再びお肉買って来て、めんどくさいけど同じ下処理を敢行。
そして乾燥させること20時間ほど。
見事にジャーキーが完成したのである!
これがまた思った以上にちゃんと出来て、下味の付け方も適当だったにも関わらずそこそこ美味しかった。
でも玉ねぎ入れたのがいけなかったようで、変な甘い匂いがついて余分だった…。
おそらく通常の手順で赤ワインとか使ってやったら相当美味しく出来上がっただろう。
ビーフジャーキーはツマミはもちろん、実は行動食としてもなかなか優秀なんです。
硬くて顎動かして食べるから、胃がしっかり反応して満足度が高い。
夏場はちょっと水気が取られて食いにくいだろうが、比較的水分補給が少なくて済む冬にはかなり重宝した。腹持ちもいい。
ただビーフジャーキーに関して思ったのは、「何気に肉も高いし手間もかかるから、普通に売ってるビーフジャーキー買った方が早ええし美味いな…」ってのが正直な感想だったりしちゃったり。
一方、ささみジャーキーが実はビーフジャーキーよりも美味かった。
味付けもちょっと塩ふって乾燥させるだけで楽チンだから、これは面倒くさがりでも結構実用的。
山だけじゃなく子供のおやつにもいいし、味なしで作ればワンちゃんのおやつ代節約にもなるだろう。
ちなみに普段は僕に一切懐かず歯をむき出しにして吠えてくる我が家の犬も、狂ったようにそのササミジャーキーを頬張ってくれた。
この犬は嫁には逆らわないくせに僕には敵意がむき出しだ。家庭内序列というやつか。
それはさておき、スーパーヒットだったのが「鮭」ですね。
これがいわゆる「鮭とば」状態になっていいツマミになるし、お湯でも戻りやすいから、縦走時の飯の「ブーストタンパク質」として大活躍することに。
若干トレーが油でベトベトになる欠点はあるけど、この発見は大きかった。
ちなみにチャレンジ枠で出場した砂肝さんは、カッチカチになって食えたもんじゃなかったっす。
さあ、なんかまた色々と紆余曲折ありましたが、とりあえず「フルーツ」「野菜」「魚肉」のテストが終了。
結論としては「全然行けるじゃん!いいじゃんドライフード!」って感じだ。
それではこれ以降、実際に現場で活用して来たレシピ集をお送りして行きます。
現場レビュー&レシピ
何度かのテストを経て、現時点でたどり着いた「失敗のないドライフード」は以下の通り。
- オクラ
- 白菜
- ネギ
- パプリカ
- しめじ
- 鮭
他にも色々美味しいのを発見して行くのも今後の楽しみだが、現状こいつら持ってけば大方失敗はしないと感じている。
特に「オクラ」と「パプリカ」はどのメシに合わせても抜群の安定感を誇り、僕の中の二大スター野菜である。
それではまずはカップラーメンを華やかにしてみましょう。
お湯を沸かしつつ野菜(ネギ・白菜・オクラ・パプリカ・しめじ)を戻し、
しゃぶしゃぶ餅をちょっとしゃぶってやってから、ラーメンにお湯かけて3分。
これで餅入り野菜ラーメンの出来上がり。
寂しい具のカップラーメンでも、これなら量も見た目も大満足!
もちろん具がほとんどないリフィルラーメンだって、
こんなに華やかに!
しかもこれは鮭入りなので、味も食感も山とは思えないほどに豪勢だ。
上のようなやり方なら、ビバークレーションとかにぶっかけても最高の食材ブーストになることだろう。
長期縦走時とかはこんな感じで食料計画ごとに小分けにしてやると便利。
この時は畑のカレーとコラボ。
ただでさえ野菜が豊富な畑のカレーに、カレーとの相性最高なオクラとパプリカが加わってもう最高なの。
こいつと一緒ならアルファ米だって楽しみでしょうがないのです。
一方パスタだって行けますよ。
大概山のパスタの素ってろくに具も入ってない味だけのものが多いけど、
こいつにドライフード投入すれば(鮭多め)、珠玉の一品に。
この時はキューピーのあえるパスタソース「炙りサーモン」に、リアルサーモンを投入してのブーストパスタ。
ドライフードだから、縦走3日目でも魚と野菜が食えるっていう幸せ。最高です。
焚き火メシにだって対応。
シェラカップに鯖缶(汁ごと)とドライフードと少量の水と塩入れて焚き火に投入。
たったそれだけで、ご飯が進んで進んでしょうがないというよくわからない一品が誕生する。
僕の大好きないなばのカレー缶とともに食っても、最強のチームワークを見せつけて来た。
という感じで、味のついてない乾燥野菜や鮭はどんな料理にも対応する。
一週間くらいのロングハイクとかにドライフード一式持って行けば、もうメシで惨めな思いはしなくても済むだろう。
たくさん持って行っても大した重さもないし、とにかく日持ちする。
ドライフルーツも行動食になるし、手間をかけておつまみジャーキーを作って行けば素敵な旅を楽しめるだろう。
とりあえず、今回の実験で「だいたい5000円くらいのドライフードメーカー買っておけば気軽にそこそこ楽しめる」ということが実証できた。
今回僕が使用した2度目のドライフードメーカーを一応載せとくとこいつです。
メーカー名 | ROOMMATE | ||
アイテム名 | ヘルシーフードドライヤー EB-RM33A | ||
アイテム画像 | |||
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もちろん他のでもいいし、お金に余裕のある人は1万円以上するアメリカ製や日本製のものを導入してみてもいいだろう。
山メシだけじゃなく、普段からも使えるから汎用性は高いですよ。
一人暮らしの人とか結構野菜を腐らせがちだから、そういう人にももってこいね。
さあ、いかがだったでしょうか?ドライフード。
結構アリだと思いません?
面倒くさがりの僕でもここまで出来るんで、凝り性の人ならもっと素敵な活用ができそうですね。
ちなみに色々やったけど、一番ドライに仕上がってたのは僕に対する嫁の対応でした。
それではまた山でお会いしましょう。
ダイエットに大失敗して、リバウンドでついに80キロの大台に乗ってしまった説得力ゼロ男。
ヘルシーカワイがお送りしました。
押忍!