「冬山登山」───それは夏とは別世界の猛烈な美しさが存在する世界。危険な世界だとは知りつつも、一度その甘い汁を吸ってしまうともう人はその世界から逃れることはできない…。そこで「今年こそ冬山デビューを!」と目論んでいる冬山中毒予備軍の皆さんに向け、今揃えるべき冬山装備を「ウェア編1,2」と「ギア編」の全3回にわたってご紹介!今回はウェア編part1であります!
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日帰り冬山登山装備〜ウェア編part.1〜
先に言っておこう!
冬山は非常に危険な世界だ!
何が危険かって?
雪崩?滑落?ホワイトアウト?ブリザード?低体温症?
もちろんその全てが危険だが、最も危険なのは「散財凍傷」である。
そう、色々冬山装備を集め出すとそりゃあもうお金がかかって、貯金が凍傷になって定期を切断(解約)なんて事態にもなりかねないのだ。
最悪の場合、鬼嫁持ちの家庭では山に行く前に殺される可能性だって大だ(実体験済み)。
誰もが「でも命に関わるものだから…」という言い訳の剣を振りかざし、気がつけば部屋の中は雪山装備だらけなんてよくある話。
でもそれは至極正論で、夏は良くても冬は中途半端な装備では本当にヤバい状況に陥ることもしばしば。
で、山に行って帰って来ては「今回はあれが足らんかった。ここが不満だった。」などとブツブツ呟きながらWEB大縦走に突入し、夜な夜なポチりポチりを繰り返してしまうのである。
こうなってしまったら、もうあなたは散財の沼から這い上がることは不可能だ。
しかし予め「これ買っときゃ間違いない!」てな情報があれば散財凍傷も少しは抑えられるというもの。
今自分が何を優先して買えばいいのかも分かれば、段階を追って買い足しても行ける。
そこで今回、「散財凍傷」や「家庭内ホワイトアウト」から冬山初心者たちを守るため、BBGが厳選した王道系ウェア&ギアをご紹介して行くことになったのである。
選定基準
今回BBGがアイテムを選定するにあたり、以下のような基準を設けました。
- 基本的な夏山装備は既に持っている人向け。
- 冬山未経験者に向けたアイテム選定。
- 日帰りの装備を想定。
- 低山から八ヶ岳クラスまでの山行を想定。
- あまり尖ったものではなく王道的なアイテムを選定。
これらの基準をもとに、比較的手の出しやすい価格帯のものからピックアップしてご紹介。
そして、各カテゴリーごとに星の数で購入優先度も示していきます。
- ★★★・・・これがないと始まらない!
- ★★☆・・・余裕があったら行っときましょう。
- ★☆☆・・・あると便利ですぜ。
まずは星3つアイテムから買っておけば、夏山装備との併用でエントリー低山に行くことは可能。
例えばこんな感じの素敵なスノーハイクが楽しめますよ。
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それで張り切って行ってみましょう!
ハードシェルジャケット&パンツ ★☆☆
風雪から身を守るための、まさに「勇者のよろい」。
その中には10万円クラスの高級鎧もあり(平均すると5〜6万円)、これから冒険を始めようって奴にはいきなり散財遭難の予感がプンプンだ。
しかしここはとりあえず今使ってるレインジャケット&パンツで十分。
初心者の人は「冬は寒いから厚手のシェルじゃないと」って思う人もいるかもしれないが、ここの役割は防寒というより「防風・防水・耐久性」が重要な部分。
レベルアップして、森林限界以上の雪山にチャレンジしたくなったら購入を検討しても良いでしょう。
ってことで、一応今回は手を出しやすい王道系と良コスパ系の2着をピックアップ。
パンツに関してはこだわったらきりがないんで、とりあえずジャケットに準じたものを選んでます。
- The North Face(ザ・ノース・フェイス)「オールマウンテンジャケット」
オールシーズン使用可能の安心の定番ジャケット。ゴアテックスC-ニットの高い透湿性としなやかさ、そして70Dのしっかりとした耐久力が魅力。脇下にベンチレーションもあり。まず持ってて間違いのない一品であります。
出典:The North Face ※画像クリックでメーカーサイトへ
- The North Face(ザ・ノース・フェイス)「オールマウンテンパンツ」
余裕がありつつすっきりとしたシルエット。サイドにはダブルアクションロングファスナーがあって、脱ぎ履きの際やベンチレーションとしても使い勝手がいい。
出典:The North Face ※画像クリックでメーカーサイトへ
- Mont-bell(モンベル)「ストリームパーカ」
防水性も透湿性も素晴らしいゴアテックスプロが使用されてて耐久性も十分。このレベルのものが3万円代前半で買えてしまうというモンベルの脅威。サイズもメンズは10展開!相変わらずすげえなあ。
出典:Mont-bell ※画像クリックでメーカーサイトへ
- Mont-bell(モンベル)「アルパインパンツ」
こちらもゴアテックスプロ仕様でサイドはベンチレーションも兼ねたロングジッパー。内側にはタフなエッジガードも。クランポンに慣れないうちはレインパンツをクランポンの歯でズタズタにしてしまいがちだから、このパンツなら安心ね。こっちもサイズ展開半端ねえ。
出典:Mont-bell ※画像クリックでメーカーサイトへ
ミッドレイヤー(フリース&化繊) ★★☆
冬季登山の快適さを決める上で結構重要になってくるのがこのミッドレイヤーの部分。
シェルの下に来て保温性を維持するのはもちろん、汗をかくハイクアップ時はこれ単体で適切な体温調節ができるかがポイントとなってくる。
低山系だと実際ハードシェルを着る場面は少なく、行動時はこのミッドレイヤーの状態でいることが多いからだ。
冬山だっていっても、登ってる最中は体から湯気がでまくるくらいに暑くなるのですよ。
そこで重要になってくるのが、透湿性と適度な保温性。
ど定番はフリース素材のものだけど、ここ最近は透湿性も維持しながら適度な防風性を有する化繊のジャケットもアツい存在だ。
ここはわりかしお金かけても良いところなので、フリースと化繊それぞれの大定番をご紹介です。
- Patagonia(パタゴニア)「R1」
もうずーっとど定番!こいつの対抗馬を探そうと思ってもなかなか現れないってくらい快適な1着。通気性がいいから行動中は蒸れないし、それでいて適度な保温性を与えてくれる。伸縮性もあって動きやすく、耐久性もあり。1つ持ってれば何かと役に立つこと間違いなし!フーディタイプならバラクラバの代わりにもなって何かと便利。
出典:Patagonia ※画像クリックでメーカーサイトへ
出典:Patagonia ※画像クリックでメーカーサイトへ
- Arc’teryx(アークテリクス)「アトムLT」
さっきのR1に弱点があるとすれば、逆に通気性があり過ぎて寒がりな人はシェルを羽織ったり脱いだりの回数が増えちゃうってこと。ってことで、防風性もありつつ適度な透湿性も維持させたド定番がこいつ。化繊中綿入りで適度に暖かく、低山ならこれ単体で済んでしまうことも。以前低血圧Mちゃんがレビューしてくれてるんでそちらを要チェック!
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出典:Arc’teryx ※画像クリックでメーカーサイトへ
出典:Arc’teryx ※画像クリックでメーカーサイトへ
ベースレイヤー上下 ★★☆
こちらも肌に直接着る部分なのでとても重要。
求められるのはやはり体温を維持するための保温性であり、やっぱり着心地の良さ。
冬のベースレイヤーの定番はやはり「メリノウール素材」で、濡れても保温力が落ちず、かつしなやかな着心地。
吸った汗が熱とともにすぐに蒸発していかないから、化繊のものに比べて汗冷えもしにくい。
防臭効果もあるから、電車とかで帰宅する人は周りの人のヒソヒソ声に対して「俺のオイニーのせいか?」という不安から解放されることだろう。
ちなみにユニクロのヒートテックじゃあかんの?って人もいるだろうけど、あれは吸水性の高いレーヨンが入っていて乾きが悪い。
運動量の少ない平地ならいいけど、大量に汗をかく冬季登山ではそこから体温を奪われるんであまりオススメはしない。
ってことでメリノウール+コスパってところを考慮してこの2つをピックアップです。
- Smartwool(スマートウール)「メリノ250ベースレイヤー」
ミッドレイヤーに化繊系を着る場合は薄手のものの方が快適な場合があるが、ここでは厚手のものをご紹介。上質なメリノウール100%のベースレイヤーで、しなやかな着心地と保温性も高くバランスがいい。ジップタイプのものは開閉で体温調節がしやすい。
出典:Smartwool ※画像クリックでメーカーサイトへ
- Smartwool(スマートウール)「メリノ250ベースレイヤーボトム」
アイテム名 | Ms メリノ250ベースレイヤーボトム | Ws メリノ250ベースレイヤーボトム | ||||
アイテム画像 | ||||||
素材 | ウール100% | |||||
重量 | 220g | 190g | ||||
サイズ | S、M、L | XS、S、M | ||||
カラー | ディープネイビー、チャコールヘザー、ブラック | ロックネスヘザー、ブラック、チャコールヘザー | ||||
メーカー価格 | 10,500円+税 | |||||
BUY NOW |
出典:Smartwool ※画像クリックでメーカーサイトへ
- Mont-bell(モンベル)「スーパーメリノウールEXP.」
モンベル独自の伸縮性のあるスーパーメリノウールが使用されたフィット感とコスパ高しな一品。肌面に約2割ほど化繊が混紡された生地が使用されており、速乾性にも優れている。トータルバランスも良くてお手頃価格なので、初心者の人も手を出しやすいし長く着られるだろう。詳しいレビューは↓を見てね。
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出典:Mont-bell ※画像クリックでメーカーサイトへ
- Mont-bell(モンベル)「スーパーメリノウールEXP.タイツ」
アイテム名 | スーパーメリノウール EXP. タイツ Men’s | スーパーメリノウール EXP. タイツ Women’s | ||||
アイテム画像 | ||||||
素材 | スーパーメリノウール79%+ポリエステル18%+ナイロン2%+ポリウレタン1% | |||||
重量 | 174g | 140g | ||||
サイズ | S、M、L、XL、M-S、L-S、XL-S | |||||
カラー | ブラック(BK) | |||||
メーカー価格 | 7,000円+税 | 6,800円+税 | ||||
BUY NOW |
出典:Mont-bell ※画像クリックでメーカーサイトへ
ちなみに近年ではメリノウール(保温性・着心地・防臭性)と化繊(速乾性・耐久性・通気性)のいいとこ取りをしたハイブリッドベースレイヤーも注目されている。この辺りも選択肢として要チェックである。
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ドライレイヤー ★☆☆
常に体をドライにキープしたい夏場などはこれがあると快適だが、冬場は必ずしも必須なものではない。
というのも、こいつでぐんぐんと汗を送り続けても、乾きの遅いメリノウールをベースで着てた場合は汗処理が追いつかないから。
そうなると汗をよくかく背中側が逆にヒヤッと感じてしまう事もあったりしちゃったり(アツシオガワ体験談)。
ベースにメリノウールを着る場合は、むしろ単体で着た方が暖かさをキープできたりする。
ただしベースレイヤーをメリノじゃなくて吸水速乾性に優れる化繊系を着た場合は、かなり最強なタッグになるのでオススメだ。
ここでは代表的な2アイテムをご紹介します。
- Millet(ミレー)「ドライナミックメッシュ」
ここ数年で一気に王道中の王道となったスケスケセクシードライレイヤー。さっきヒートテックはオススメしないて言ったけど、ヒートテック着てエベレストに登った南谷真鈴さんは、何気にこいつと組み合わせての合わせ技一本だったりする。パタゴニアのR1的な薄手の吸水速乾フリース系ウェアをベースレイヤーとして着た場合は最強の相性を誇る。その辺りの検証はアツシオガワのこちらの記事↓をチェックしてね。
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出典:Millet ※画像クリックでメーカーサイトへ
出典:Millet ※画像クリックでメーカーサイトへ
う〜ん、女性のドライナミック、セクシー!
- Finetrack(ファイントラック)「アクティブスキン」
国産の王道と言えばやっぱりファイントラック。そんなファイントラックのドライレイヤーのシリーズの中で、厳冬期登山や沢登りなどの水系スポーツ用としてラインナップされてるのがこの「アクティブスキン」。濡れ戻りの防止力が非常に高い。どうしても着心地的には少し生地の化繊感は感じてしまうが、ストレッチが効いて動きを妨げることはない。夏場にウォータースポーツもやる人は、オールシーズン重宝する一品だ。
出典:Finetrack ※画像クリックでメーカーサイトへ
出典:Finetrack ※画像クリックでメーカーサイトへ
ダウンジャケット ★★☆
今回は日帰り特集なんで、ダウンジャケットの出番は長い休憩時や飯食ってる時って感じですね。
天気がいい日の低山なんかは今夏山で使ってるであろうダウンジャケットでOK。
ただ風が強い日の稜線上だったり、日が出てない時の森林限界以上となるとクソ寒いです。
一度奪われた体温は自力で戻すのは結構大変な作業になってくるんで、とにかく体を冷やさないことが大切になってきます。
ってことで、ここでは今後も視野に入れて(テント泊だったり)のモコモコ系ダウン1着と、コスパ重視しつつ最低限これあればなんとかこなせるぞってやつを1着ご紹介。
- patagonia(パタゴニア)「フィッツロイ・ダウン・パーカ」
800フィルパワー・トレーサブル・ダウンを使用したハイロフトなダウンパーカ。生地も非常に丈夫。とりあえずこれ持ってりゃ将来的にテント泊するような場面が来ても無問題。正直最初安いの買ってても絶対いずれいいもん欲しくなるんで、だったら最初からここ行くのもアリです。狙い目な時期を選んで買えば結構お得に買えたりしますよ。
出典:patagonia ※画像クリックでメーカーサイトへ
- Mont-bell(モンベル)「アルパイン ダウンパーカ」
とにかくコスパ重視って人はやっぱりここですね。モンベルのダウンジャケット系は羽毛が縫い目からすこーしづつ抜けて行ってしまうのが難点だけど、基本が日帰りばかりなら使用頻度も少ないしこれで十分活躍してくれますよ。
出典:Mont-bell ※画像クリックでメーカーサイトへ
ちなみにダウンは水に濡れるとロフトがへたって一気にその機能を失っちゃうから、現在はダウン自体に撥水処理を施した撥水ダウンの製品が増えている。
でもやっぱりお高いんですよね。
ってことで、時間ある人は自分で撥水処理を施しちゃいましょう!
- NIKWAX(ニクワックス)「TX.10ダウンプルーフ」
出典:EVERNEW ※画像クリックでメーカーサイトへ
【洗濯機で洗う場合】
【手洗いする場合】
ついでに言うと、ダウンジャケットの表面もそうなんだけど、ハードシェルとかも定期的に防水スプレーかけてあげましょう。
防水スプレーに関しては以前徹底比較してるんでそちらを参考に。
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という感じのウェア編part.1でした!
こだわり出したらきりがないんだけど、王道系とコスパ系を列挙するとこんな感じでしょうかね。
難しいのはサイズ感になってくると思うんで、その辺りはショップ等で確認してみましょう。
海外メーカーのものは大きいから、ワンサイズ下のものを買うと良いでしょう。
次回はヘッドウェア、グローブ、足回りなどの末端系ウェアをお送りします!
初心者のための日帰り冬山登山装備〜ウェア編part.2〜へ つづく