北アルプスの「三大急登」を遥かに凌ぐ超マゾステージが存在するという。その名も「世界三大激痛」。三大激痛とは「心筋梗塞」「群発頭痛」そして「尿管結石」。中でも尿管結石は「King of Pain(痛みの王様)」と恐れられ、その者を強制的に絶望という名の大縦走へと旅立たせると言われている。そのステージに今、BBGのユーコンカワイが「その新競技、俺がしっかりレビューしてみせる!」といざ挑戦!ロッククライミングはもう古い。これからは己の石と向き合い、そして排出する「ロックアウティング」の時代なのである!!(注:ヒマな人だけ読んでください。あとお食事中の方は読まないでください。)
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ROCK OUTING 〜マゾストーリーは突然に〜
第1ラウンド 予兆
何の変哲も無い朝だった。
私はいつものように朝の準備を済ませ、出勤時間まで少し時間があったのでちょっと横になってスマホをいじっていた。
その時急に右の腰辺りに「ギュムゥ」という痛みを感じた。
寒い時期の朝は不意にどこかが痛くなることは良くあることなので「まあすぐ治るだろう」と思っていたが、なんとも言えない嫌な痛みだ。
とりあえず中々痛みが引かないので、痛み止めのロキソニンを飲んでそのまま出勤した。
この時まだ私は気づいていなかったのだ。
すでにロックアウティングの競技がスタートしていたということに。
ロックアウティング協会の審査員たちが見守る中、私は何事もなかったように出勤。
この日は新しいインサレーションジャケットが届いていたので、私は早速それを着て「ハイクアップの行動時も蒸れないのか?」の実験を開始。
敏腕CEOのアツシオガワに対し「ちょっと階段往復してくるわ」と宣言し、6階建ての施設の非常階段を何往復もした。
今思えばこの時だったんだろう。
朝方落ちかけていた「アイツ」が、階段運動によってスタンバイを完了したのは。
特に痛みもないまま、やがてお昼を過ぎた。
敏腕CEOアツシオガワが「ちょっと郵便局とコンビニ行って来ます。」とオフィスを出て行く。
私も「さあ、そろそろお昼ご飯でも食べようか」と椅子から立ち上がった。
その時である!
突然「ピーーーーッッ!」というホイッスルが鳴り響き、私は唐突に「ロックアウティング」の競技を強制スタートさせられたのである。
第2ラウンド 開幕
一瞬、何が起きたのかわからなかった。
無人のオフィス内で、私は何者かに背後からナイフで刺されたのだ。
もはや気分は「振り返れば奴がいる」のラストシーン。
しかし振り返っても誰もいない。
誰も私をナイフで刺してはいない。
じゃあこの突如襲った半端ない痛みは何事なのか?
私はただ、「うわ、うわ、うわ、何?え?なになになに?なにこれ!なに、イタ!イタタタタ!」とその場でうずくまる。
ロックアウティングの審査員たちが固唾を飲んで私の演技を採点する。
あえて痛み止めを飲んでせっかくの予兆を見過ごし、散々昇降運動して「痛み止めの効果が切れたらそん時はすごいぜ」という状況をセッティングしてからの競技スタート。
これは高ポイントだ。
そして背中に刺さったナイフを、さらに何者かがグッグッ〜っと押し込んでくるような痛み。
私は「グギギギギギギギ…..ぃぃぃぃいッッてえええええええっっっっ!!!!」と絶叫。
隣の部屋に人がいたとしたら、間違いなく殺人事件が起きたと思って通報するレベルだ。
ピクリと動くだけでほとばしる激痛。
ピクリと動かなくても果てしない激痛。
何かを掻きむしらないとどうしようもない痛みで、オフィスの擬似芝生をガリガリとしながら「うぐぐぐぐ….ギギギギギギ….」と悶絶。
即座にロキソニンを飲むが、中々痛みが引いていかない。
やがて競技開始から30分。
敏腕CEOがコンビニから帰って来てオフィスの扉を開けると、そこには土下座をするユーコンカワイの姿が。
アツシオガワは「また何かミスやらかしやがったな!」と怒りかけたが、明らかに様子がおかしい。
しかもこの土下座野郎は、「アツシくん….と….とりあえず…写真撮っといて…」と謎の要望。
BBGの社訓である「何かあったら助ける前に撮影せよ」を守り通すプロ根性だ。
撮影を終え、敏腕CEOは「流石にこれはやばそうだぞ」と即座にインターネットで痛みの原因を調べて読み上げる。
「えーと、虫垂炎…尿管結石….あと腸回転異常症…」
すると土下座野郎は「ちょ…腸回転異常ってなんだよ…腸回転って…クッ…クックック…イタタタタ…笑かさんといて…」と腸回転がツボにはまって一人で勝手に追い討ち激痛に邁進。
これには審査員たちも「この状況で笑ってる!」とどよめき、さらに高ポイント獲得。
やがてロキソニンが効いたのか、腸回転が効いたのか、なんとか一人で立ち上がれるまでに。
そして「痛みが引いてるうちに病院行って来ます。」と彼は市民病院へと向かって行った。
第3ラウンド 激闘
私はそのまま救急の診察受付へ直行。
診察をしてくれたのは若い女性の研修医さんで、その時はまだ「やった、可愛いぞ、ラッキー。」なんて思うほどに余裕だった。
しかし診察開始3分。
まさにウルトラマンのカラータイマーが急に鳴るかのように、我が右脇腹に「ピコーンピコーン」と突然の違和感。
そして即座に「アムロ行きます!」って感じでドッカーンと激痛ガンダムが急発進!
さっきまで普通に診察受けていた男が、突然「あ…あ…..あああ!やばい!やばいっす!来てます!来てますぅッーー!」とMr.マリックと化した。
慌てて研修医さんは私をベッドに寝かせる。
その時何気に研修医さんの胸が密着して来たんだが、そんな素晴らしい場面でも痛みがエロさを凌駕して何の感情も巻き起こらない。
今の私なら目の前に全裸の石原さとみが現れても完全無反応を貫けるほどの痛みの聖者だ。
ここからがいよいよロックアウティングの本番だ。
審査員たちもその競技にジッと目をこらす。
私は人目もはばからず、「あああああああッッッ!!イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ!」と絶叫。
即座に強烈な痛み止めを打ってもらったが、全く効果がない。
あまりの痛さに、手で顔をバリバリとかきむしる。
2本目の痛み止め、3本目の痛み止めの注射を打っても全く事態は好転しない。
食いしばる唇から少し血が滲み出す。
研修医さんも慌て気味に「痛いですね!痛いですよね!死ぬほどの痛みが10だとしたら今どこらへんですか?」と聞くから、私は全力で絶叫。
「ジュウゥゥゥッッッ!!!ジュウ!ジュウーーー!わああああああああ!!!」
そっからは何が何だかわからないままに両腕からバスバス血を抜かれ、ストレッチャーで運ばれて、CT検査スタート。
「はい、息吸って〜、トメテッ」のトメテッの力みだけで「ぎゃああああああああ!」と悶絶。
もはや油風呂に入ってる富樫源次状態で、毛穴という毛穴から血が吹き出て来そうなほど我慢の限界を突破。
もういっそ俺、失神してくれ!と念じるのが精一杯。
状況としては、レイが延命のためにトキに心霊台の秘孔を突いてもらった時の苦しみといえば分かりやすいだろうか?
やがて検査結果をもとに医師は妙にヘラヘラしながら「尿管結石ですね」と言って来た。
そう、これが噂に聞く「King of Pain」。
医師は「頑張って石出しちゃいましょう!」と、ロックアウティングの開催をここに宣言したのである。
第4ラウンド 凝視
ガンダム出撃からの壮絶な1時間戦争の末、痛み止めが効いて来たのか多少楽になった。
そこで「じゃあカワイさん、尿検査行けますか?」と言われ、ぐったりとしたまま車椅子でトイレに連行。
しかしトイレに入っても、「倒れちゃいけないから」という理由で看護師さんが真横にスタンバイ。
そしてその看護師さんは、すっかり小さくなった我が相棒をひたすらにガン見してくるのである。
こんな状態で出せるか!
全く落ち着かず、相棒をボロンと出したままひたすら無言でガン見されること30秒。
恥辱プレイの限界に達し「ごめんなさい…出ません…」とギブアップ。
これが次なる地獄へのステップとなるのである。
そのままベッドに寝かされたが、すぐにまたアムロが「もう一発行きまーす!」と勝手にガンダムを発進させる。
周りに人がたくさん人がいるから、最初は声を押し殺して「ううううーーーーうううううううーーーーうううーー」と冬彦さんスタイルで乗り切るが、すぐに限界点を突破し、「グアアウウウウッッ!!ドウアアアアッッ!ギギギギギギ…..ヌアオオオオウウウウウウウッッ!」と人目をはばからず大絶叫。
もはや「一人ジョジョの効果音劇場」状態で、我がベッドの周辺だけ「ドドドドドドド」という逼迫した雰囲気が漂う。
そんな中、採血しに来た若い男の研修医が、注射針を刺すなりこう呟いた。
「あ、ヤッベ」と。
私は「おい、お前今何つった?なんかミスしたんか!そもそもその言い方は何だ!!」と言いたいんだが、痛みの方が勝ち過ぎてそれすらツッこめない。
やがてその激闘は、1発目にガンダムが出撃してから実に3時間以上も続いた。
ずっと腹にナイフが刺さって、それをずっとグッグッと押し込まれるような痛みが3時間以上だ。
過呼吸気味になって手足から頭の先まで痺れまくって意識も飛びそうだ。
でもいっそ意識飛んで欲しいこういう時、無駄に頑丈な体のせいで意識は飛ばずに生殺しタイムは続く。
まさに地獄のような時間で、その長さは信越トレイルの80kmなんて軽く超えるほどの永遠さだった。
第5ラウンド 挿入
やがて悶絶真っ最中の私の元へ男の研修医がやって来た。
そして「尿採りますねー」と、おもむろに我がパンティをずり下げてくるではないか。
しかし痛みのあまり抗えない。
顔を赤らめて歯を食いしばってプルプルと受け入れる。
やがて男は何かヌルヌルしたものを我が天保山に塗りたくり、「すっごい気持ち悪いですけど頑張りましょーねー。すっごい気持ち悪いですよー。」とめちゃめちゃ恐怖を煽って来た。
むしろ何も言ってくれない方が良かったのに「すっごい気持ち悪いぞ」と言われると猛烈に恐ろしい。
そして次の瞬間。
私の中に何かがインサートして、体験したことのない感覚が大スパーク!
この時の感覚はもはや「言葉」などという陳腐なものでは表現できない。
あえて言うならば「未知との遭遇」「小宇宙(コスモ)の覚醒」「色即是空」「冷静と情熱のあいだ」「1/3の純情な感情」「部屋とYシャツと私」と言った感情カオスの大渋滞。
そう、ついに我が尿道に管が通され、私は「新世界の住人」となったのである。
こうなると、もはや我が意思や理性を無視して尿が出るわ出るわ。
肛門もビクンビクンとなって、もうどこが痛くてどこが不快で何がどうなってんだかよくわかんない状態に。
私は今ナチスの拷問を受けているのだろうか?
股間はカオスだし、腹はナイフ刺さってるし、全身痺れて過呼吸だし。
今楽になれるなら、国家機密だろうと何だろうと迷うことなく吐くからもうやめて…。
やがて研修医の男が「じゃあ管抜きますねー。これはこれで気持ち悪いですからねー。頑張りましょうねー。」と余計な煽りアゲイン。
やがてピシャッと電撃が走ったかと思うと、ドルルルルルルルンッ!と私の中から何かが去って行った。
何だか死神に魂でも抜かれたような気分。
サウンド的に言えば、ドラクエで呪われた鎧を装備してしまった時の「デロデロデロデロデーデン」な気分。
そして研修医の「はい、お疲れ様でしたー」の声の先には、ぐったりとうなだれる一人の老人の姿。
私はナチスの拷問に耐え抜いたのだ。
第6ラウンド 入院
死神に魂を抜かれた後、さっきまでの腹の痛みが嘘のように無くなった。
ひょっとしたらさっきの拷問の時に、一緒に石が流れ出たのかもしれない。
ひとまず最大の修羅場は抜けたが、ここから38.5℃までぐんぐんと熱が上がって全く下がらない。
途端に襲いかかる猛烈な寒気。
救急のベッドの背中側が薄いのか、とにかく背中側から悪寒がすごい。
思わず医師の人に「すいません、ここ、サーマレストのリッジレストとかって置いてないっすかね?R値高めのやつ。」ってリクエストしそうになったほどだ。
医師曰く「こりゃまだ中に石がいる可能性有りですね。今日の夜あたりまた痛むかもしれません。」と無情な宣告。
そして「今日は入院することを強くお勧めします。」とまさかの入院指令が炸裂した。
案内されたのは4人部屋。
そしてそっからはずーっと点滴生活(石を小さくするやつと2つ分)に突入。
やがて夜が来た。
怒涛のような半日が過ぎ、やっと訪れた安息の時。
ぐったり疲れ果てた私が、ウトウトとしかけた時。
横のベッドから「グオオオオ….プシューッ…グオオオオ….プシューッ」というイビキが。
そしてそれに呼応するかのように向かいのベッドから「ズゴゴゴゴ..ズゴゴ..ズゴッ!ぱしゅ〜」という音。
そして満を辞して一番奥のベッドから「ガアアア!!ギイイイイイ!!ゴゴゴォォ!!」という大轟音。
突如4人部屋内で巻き起こった濁音三重奏の調べ。
まるで銃撃戦の真っ只中か、北京の交差点の真ん中にいるような気分で全く寝れる気がしない。
しかも折悪くお腹がシクシクと痛み出す。
熱もぐんぐん上がって朦朧状態。
それでも必死で寝ようとするが、後少しで寝れそうだって段階で奥のジジイが突然「も!もし!もしもし!もしもーし!!もしもし!」と大声で寝言スタート。
こうしてロックアウティングのナイトステージが開幕!
審査員たちも「いいよ!いいよ!」と頷きながら採点を進めていく。
この奥のジジイがまた「感情を全て寝言でいう男」という特殊な相手で、いちいち「ううううう…かゆい…かゆい…かゆーい!」と叫んだかと思うと、「暗い…暗い…くらーい!」と叫ぶ。
思わず「北斗の拳のジャコウか!」と突っ込みたくなるほどうるさい。
しかも自分が一番イビキうるさいのに、他の人のイビキに対して「ああ!もう!うるせー!」と叫んで超うるさい。
結局私は2日入院することになったが、その間このジャコウ三重奏のおかげでほぼ一睡もしていない。
第7ラウンド 退院
入院二日目の夜。
やっっっっと、嫁と子供たちがお見舞いに来てくれた。
祝日にも関わらず、夜になってやっっっとである。
寂しい病室内でいつ起こるかわからない発作の恐怖に怯えつつ、発熱とジャコウ三重奏と戦い続けて気持ちの疲弊度はマックス。
通常の嫁ならそんな夫を癒すべく、優しく「大丈夫だった?」とか「具合どう?」とか「リンゴでも剥こうか?」とか言う局面。
しかし部屋に入って来るなり解き放った嫁の第一声は、
「あれ?なんかまた顔がデカくなってない?」だった。
そして続けざまに「石が詰まると顔が肥大するシステムになってるの?」とヒャッヒャッと笑っている。
そして子供たちは「なんかここ尿臭い」と言って早々に部屋を出て行ってしまった。
この世にもし「世界4大激痛」が存在するならば、ぜひその4番目にこの時の我が心の痛みを加えてほしいと強く思った。
やがて家族たちはあっという間にいなくなり、私は再びジャコウナイトフィーバーの一員となって長い夜を越えた。
翌日、医師は「まだ石が出た確証はないです。出てるかもしれないし出てないかもしれません。とりあえず退院でいいでしょう。」と退院許可を出してくれた。
翌日にBBG初のイベント「鈴鹿豚汁ミーティング」を控えていた私は、「実は明日イベントがあって山を登らなきゃいけないんですが、行っていいすかね?」と問う。
医師は「山ですか…?まあ本音言うとやめて欲しいですが自己責任ということで行ってください。」ということに。
こうして私はBBG初イベントに参加してくれる皆さんを「晴れ」でおもてなしするために、長くハードな「ロックアウティング」という事前代償を乗り切ったのである。
いや、正確には石が出た確証がないからまだロックアウティング中だ。
退院後、激闘の末のヘロヘロボディーに鞭打って豚汁の材料を購入して下ごしらえ。
その日まで「豚汁なんて適当に野菜切って鍋入れて煮るだけっしょ」なんて甘い考えをしていたが、いざやってみると超絶にめんどくさいことを知った。
結局夜の10時過ぎまで準備に時間がかかってしまい、二日間の激闘とジャコウ不眠の疲労を抱えたまま眠りにつく。
こうして私は、翌日、BBG初イベントに旅立って行ったのである。(この模様は次回お送りします。)
最終ラウンド 旅立
ロックアウティング….実に恐るべき競技だった。
この世にあんなとてつもない痛みの世界があるなんて知らなかった。
ロックアウティング協会の人たちも「良いプレーでした。初戦突破です!」と褒めてくれた。
今まで散々大袈裟な記事を書いて来たから、「今回もどうせ盛ってるんだろ?」って未経験の人は思うだろう。
しかし、今あなたのお腹の中にも石はいるんですよ。
Xデーが来たその日、あなたは「ユーコンカワイのレビューは間違っていなかった…」と思い知ることだろう。
ここまで書いておいてなんなんだが、一応このサイトは「アウトドアギア専門比較レビューサイト」です。
「一体今回の記事のどこがアウトドアギアなんだ」と人は言うだろう。
しかし己の体こそが最大のアウトドアギア。
石だって自分でMYOGった立派なギアだ。
日頃のメンテナンスを怠ると(高コレステロールが原因かと)、こうなるんだぞと言うことを身をもってお伝えしたかったのである!
今後このロックアウティングがオリンピックの正式種目にならないとも限らない。
我こそはという者は、今から心に大きな志(石)を育み、未知なる世界の扉を開いて欲しい。
私も今後この「いつ出るのか、それとももう出てんのかよくわからない石」とともに生きていく。
登山中に発症したらリアルに命に関わるんで、今後はさらなる慎重さが求められる。
もしあなたが登山中、登山道の脇にこういう人を見かけたとしたらそれは私だ。
その時はどうか全力で助けてください。
それではまた病院でお会いしましょう。
ニョーカンカワイでした。