かつて「走り始めた、醤油はうす塩に変えた。」なんてCMがあったが、今現在一部のトレイルランナーの間では「走り始めた、ソールはうすっぺらに変えた。」なーんて状況が展開している。近年流行りの「走れるサンダル」を用いたベアフットランニングの思想だ。今回はそんな走れるサンダルの中でも耐久性に優れた「ウマラZトレイル」を、足筋肉キモ夫のユーコンカワイがレッツテストなのである!
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ベアフットランニングとは何ぞや?
一言で豪快にまとめてしまうと、「ヘイ!みんな!裸足で走ろうぜ!」ってことだ。
そうすると足指の付け根部分を意識した人間本来のフォームで走れるんだぜ、っていう話。
で、そうすることによって着地の衝撃を和らげて、関節への負担も軽くして怪我も防止する考え方なのである。
かといっていきなり初心者がリアルに裸足で走り出したら、怪我の防止どころか怪我まみれになってしまう。
街で裸足で走ってたら、それこそ家を追い出されて必死で逃げてる人と思われかねないし。
そこで近年、より裸足に近い「走れるサンダル」が広まり(有名どころだとルナサンダルとか)、たまに街や山でもサンダルで走っている人を見かけるようになったりならなかったり。
で、そんな中でBBGが目をつけたのが、新進気鋭のシューズブランドXEROSHOES(ゼロシューズ)の「ウマラZトレイル」なのである。
XEROSHOES(ゼロシューズ)にした理由
そもそも大して走れない僕が、ベアフットランニグをネタにしようなんざ思ってもいなかった。
実はただ単に「なんかテン場用の良いサンダルねえかなぁ」から始まった事だったりする。
その時の流れはこうだった。
- とにかく軽量でかさばらないもんがいいなー
- 靴下履いたまま履けるタイプのものはマストね
- テン場から簡単な山頂往復できるくらいのものならいいねえ
- なんだったら走れちゃったりしちゃたりしてね
なーんて流れで突き進むと、見事にこのゼロシューズのウマラZトレイルにぶち当たったわけであります。
重量は実測で153.5g(片足)と軽量。
なぜかメーカー公称170gよりも16.5gも軽いという謎があるが、まあ軽い方だから大いに許そう。
ぺらぺらなんで2足重ねてパッキングすれば全然かさばらない。
そしてテン場でソックスのまま履けるZタイプのストラップ形状。
夏場でもアルプスのテン場は冷えるからね。鼻緒タイプはNGなのだ。
このように軽量でZストラップだったってのが採用の大きな理由だが、他にもメーカーが謳う「8,000キロ(5,000マイル)歩いても大丈夫!壊れたら直してやるぜ!」っていう強気なキャッチフレーズに惚れたってのもある。
何やらイナバ物置のような強気さだが、じゃあ実際に丈夫なの?これで本当に山走れんの?ってのを試してみたくなったわけ。さすがに8,000キロは無理だけど。
それではそんなゼロシューズのウマラZトレイルを、じっくりと観察していってみよう。
3層のFeelLite™ソール
これが「8,000キロ歩いても大丈夫!」っていう自慢のソールだ。
厚みは10mm厚で、3層構造になっている。
- トップのBareFoamはクッション性と足の保護。ヒールカップもあり。
- 中間層のTrailFoamは足に沿いながら地面の衝撃を吸収。
- 着地面のFeelTrueはグリップ力と推進力をサポート。
出典:XEROSHOES
特に足の指の付け根で歩く上で重要な箇所に、2層目と3層目がうまく配置されていて、実際に歩いていても「確かに着地と蹴り出しのスムーズさを感じるな」ってのが感想。
全体がたった10mmしか厚みがないから足が痛くなりそうなイメージだったが、1層目と2層目のクッション性が生きてか十分に快適だった。(もちろん薄いなりの衝撃はありますよ)
比較的ソールも硬めなので耐摩耗性にも優れている印象。
さすがはサンダル界のイナバ物置である。
フィット感はどうなのよ?
ソールの形状がわかったところで、続いてはフィット感。
ウマラZトレイルは「Zストラップタイプ」なので、正直テストするまでは鼻緒タイプに比べて横ズレがあると思っていた。
しかし実際にはそこまでの横ズレも感じることなく、全く気にならなかった。
下りでは若干ズレは感じるが、登りと平行移動時はシューズとほぼ同様のフィット感。
その理由はここの調整部分が結構な硬さで、いい感じのストッパーとなっていてズレて来ないからだ。
そのぶん調整する際は少々力がいるが、パッチリと調整が決まるとその状態がしっかりキープされる。
そしてこのZパターンが、足の上下とかかとの後ろに適切な張力を与えて安定感をもたらすわけね。
しかもどこか一点にエッジが効くってこともないから、足が痛くならない。
なおかつ「ヒールカップ」がついていることにより、悪路でもかかとのズレも防げて安定感があるんですよ。
もともとランナーだった創業者の目線で徹底的に考えられてたフィッティング構造になっており、全体的には十分ランニングに対応していると感じた。
ただ、やはり濡れたトレイルの、特に下りにおいてはなかなか思い切ってスピードに乗れないところもある。
濡れた木の根でソールが滑るのもそうなんだが、足裏が濡れるとどうしてもサンダルとの間がぬるっとして足が前にズレてしまって快適に走れない。
シューズタイプなら全体がホールドされるし、鼻緒タイプなら指の股でストップがかかるんだが、Zストラップタイプだとどんなに固定してもそこはどうしても前にズレてしまう。
なので実際には晴れた日の乾いたトレイルでの使用がベストでしょう。
実際に走ってみて
じゃあ実際に山で走ってみた時はどうか?
これがまた想像以上に快適だった。
今までは「絶対走りにくいでしょ。」とか「むき出しのところに石が当たって悶絶間違いなしでしょ。」と思っていたが、正直のっけかから大した違和感もなく走れたのだ。
登りや、このような起伏のなだらかなトレイル上ではむしろ爽快感もプラスされて快適この上なし。
テン場に荷物置いて、ちょっと近場のピークまでって時とか最高かも。
足むき出しゆえの打撃による不安感は思っていた以上に感じず、むしろ裸足に近いことによる爽快感の方が上回る。
つま先とかかとの高低差のないゼロドロップだから、かかと着地より足指の付け根付近での着地を自然と意識できて足への負担も少なく感じる。
ただ当然だけど、たまーに小石や小枝が足裏とサンダルの間に入り込むこともあるからそれはちょっとだけ面倒ね。
そしてグリップに関してだけど、もちろん濡れた岩場などは多少滑るけど想像していたよりはグリップ力があった。
たださすがに濡れた木の根っこや濡れた落ち葉は滑ったね。
クッション性があるとはいえ所詮10mm厚なので、当然木の根の出っ張りや石などを踏むと「いてて」ってな感じにはなる。
ただそのおかげで、今まで以上にトレイルの状況を事前に目視で確認・予測しつつ足の置き場や走り方を考えながら移動することになり、「おお、これは間違いなく山での技術力が向上するぞ」って感じた。
今までシューズの性能に頼り切って盲目的になっていた能力を、本能的に呼び覚まされる感覚っていうの?
より感覚を研ぎ澄まして自分の足と山と対話ができるこの感じ。
当然しっかりしたトレランシューズには快適性は敵わないが、これはこれで一つ別なアプローチとして山を楽しめるアイテムだとリアルに感じた。
そもそも日本人なんてつい最近までぺらぺらのワラジ1枚でそこら中走っていたんだから、ある意味トレランシューズよりこっちの方が性に合っていると思うのは僕だけでしょうか?
もう気分はバガボンドの宮本武蔵。
誰かに「おぬしどこでトレランを学ばれた?」と問われれば、思わず「我流ですが…強いて言えば拙者の師匠は山でござる。」と答えたくなってしまうほど、山と会話ができるランサンダルなのである。
ちなみにロードでも走ってみたがこれはこれで違った感覚で楽しめた。
普段いかにかかとからのドロップで走って負担をかけていたかがわかる。
いきなりしょっちゅうこれでロードを長距離走るのは負担をかけてしまいそうだが、時折フォームの調整用として取り入れてみるのも面白いかもしれない。
何よりサンダルで突っ走ってるヤンチャ感がたまらない。
よく考えたら子供の頃はずっとこんなスタイルで走り回ってたわけだし、まさに原点回帰なのである。
まとめ
前述の通り、裸足に近いゆえの開放感と大地と会話できる感はなかなか病みつきになる体験だ。
もともとはテン場用にピックアップしたものだが、ランニング、そして水にも浮くからカヤックなどの川旅にももってこい。
とにかく1つ持っていれば、普段使いからトレーニングに至るまでいろんな用途で活躍してくれるだろう。
ランのみの使用で積極的に使っていくならルナサンダルのがいいかもしれないが、いろんな用途でオールラウンドに使っていくならこのウマラZトレイルは大いにお勧めできるのであります。
XEROSHOES(ゼロシューズ)「UMARA Z-TRAIL(ウマラZトレイル)」
出典:XEROSHOES ※画像クリックで代理店カタログページへ
正直これ履いて山を歩いたり走ったりすると、それはもはや「トレッキング」や「トレイルランニング」とはまた別のアクティビティって感じで楽しめる。
むしろ「山頂」だったり「タイム」だったりを気にせずに、これ履いてリアルに大地を感じることの楽しさ。
そして自分の足や筋肉と向き合った時の発見。
負担なく走るべきトレイル上の快適ルートを見抜く力がついた時の感動。
何よりジャパニーズの血の中に潜むワラジ根性が復活することの素晴らしさ。
あなたも己の中に棲むサムライ魂を刺激して叩き起こしてみてはみてはいかがでしょう?
いつものトレイルがまた違った形であなたの前に広がりますよ!
さあ、今こそ裸足の少年のように陽気に大地を駆け廻れ!
生傷だらけになったっていいじゃない!
赤チン塗っときゃどうにかなるさ!
それではまたお会いしましょう。
全体的に「キモい足の筋肉」っていう写真集のような記事になったことはご容赦ください。
ユーコンカワイでした。