ココ数年であっという間にその地位を確立した「アルトラ」。
トレイルランナーやスピードハイカーに人気のその理由を探るべく、登山やファストパッキングで積極的に使えそうな「ローンピーク3.0 ミッド」をチョイスして、アルトラCherryBoyのアツシオガワがフィールドテストした。
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シューズ選考基準
前回ホカのシューズでユーコンカワイがお伝えした通り、今回BBGは、スピードハイク&ファストパッキング用のシューズ選考にあたり以下の6条件を出した。
- トレラン用ではなくあくまでスピードハイク用
- 足首の保護を考慮したミッドカットのもの
- 悪天候を考慮に入れて防水のもの
- だけど透湿性の高いもの
- 軽量なのは大前提
- 評価も高く注目度のあるもの
この条件に合ったのがホカ オネオネの「Tor Speed 2 Mid WP」とアルトラの「ローンピーク3.0ミッド」。
今回取り上げるのがアルトラ「ローンピーク3.0ミッド」である。
ローンピーク3.0ミッドの特徴
特徴①フットシェイプデザイン
何と言っても一番の特徴はトゥボックス(つま先)の広さ。
シューズの形を見るだけで、つま先部分の広さがお分かりいただけると思う。
最大の特徴であるこの「フットシェイプデザイン」は足指部分が自然に広がり、リラックスする事で、最高のバランスと安定感を得る事が出来、着地時のショックを和らげる能力も高まるというメリットがある。
実際にホカの中敷きと重ねてみるとさらによくお分かりいただけるだろう。
アルトラはこれだけつま先部分が広く設計されている。
僅かな差のようにも感じるが、この差は大きい。
ホカの中敷きと比べるとハーフサイズ大きいアルトラだが、長さはほぼ同じだ。
メーカーによってサイズ感が異なるため、購入の際は試着されることをおすすめする。
特徴②ゼロドロップ
二つ目の特徴が「ゼロドロップ」である。
地面からの高さがヒール部分とつま先部分の比率1:1のシューズのことをゼロドロップシューズと呼び、自然で正しい姿勢とアラインメントを保ち、関節、腱にかける衝撃を劇的に減らす効果がある事が証明されている。
初めてゼロドロップシューズを履くと、やたらかかとに体重がかかっている気がする。
普段いかにドロップの高いシューズを履いているかがよくわかる。
特徴③ポーラテック ネオシェル
現在市場に出回っている多くのシューズの防水メンブレンといえばGORE-TEX。
そのGORE-TEXより何倍も透湿性のあるポーラテック社のNeoshellをメンブレンに使用している。
ただし、縫い目のシーム処理は行われていないため、完全防水ではない。
ネオシェルの実力はウェアで体感しているだけあって、実際にどれくらいシューズ内が快適になるか非常に興味深い。
その他ミッドだけの特徴
ローカットよりもより強度のある素材でつま先が補強されていたり。
ヒールカップが樹脂パーツで補強されていたり。
足首周りのクッション素材がたっぷり増量されてたり。
と、ローカットモデルと比べ明らかにタフな状況下を想定した作りとなっている。
フィールドテスト
以上の特徴を踏まえ、実際のフィールドでその実力を検証してきた。
テストフィールドは南アルプス「大無間山」日帰り登山、長野県「富士見台高原」トレッキングである。
大無間山は南アルプス最深部らしい樹林帯メインだが急な登り降りが幾度も続くタフなコース。
いっぽう富士見台高原は緩やかな登りが続くトレッキングコース。前日の雨でコース上は若干ウェットなコンディションだった。
検証①フットシェイプデザイン
トゥボックスの広さは本当に快適だった。
締め付けられる感覚が全くなく、常に足がニュートラルな状態で疲れにくさを実感した。
大無間山は往復で約9時間の行程であったが、足の疲労がいつもよりも確実に少なかった。
特に登りではしっかり足裏の力が伝わっているのか、普段よりも登りやすく感じた。
しかし、下りになるとこのメリットはデメリットへと変わる。
当然ながら広めのトゥボックスは下りで足が動いてしまう(靴の中で)。
若干の前後の動きはどの靴にも起こり得ることだが、このシューズは前後左右につま先が動いてしまう。
トレッキング程度であればつま先の動きによる危険性は少ないと思うが、登山での急な下りでしっかり踏ん張らなければならない状況下ではいつもの登山靴よりも慎重にならざる得なかった。
紐をしっかり締めれば多少違うかと試みたが、大きな改善は望めなかった。
ただ、下りでのデメリットを打ち消すほど広めのトゥボックスにはメリットを感じた。
検証②ゼロドロップ
はじめこそ違和感を感じたが、すぐに慣れた。
平坦な場所を歩いている時にゼロドロップを感じる。
いつものシューズに比べ推進力が少ない。
しっかり自分の足で蹴らないと前に進まない感覚がある。
ただこれはデメリットではなく、足が常にフラットな状態で均一に体重がかかるから、どこか一箇所だけ負担がかかって痛くなったりすることが少ないように感じた。
僕は長時間歩くとこの部分(土踏まずと指の間)が痛くなってくる。
ドロップが高いとこの部分に負担がかかっているような気がしてきた。
ゼロドロップであれば足裏全体で体重を支える気がするので、この部分が痛くなりにくいのではないかと推測する。
検証③ポーラテック ネオシェル
シューズの防水メンブレンで唯一ネオシェルを使用しているので非常に期待していたが、少々期待はずれな感が否めなかった。
まず、完全防水ではないという点。
軽量化と透湿性重視のために縫い目のシーム処理をしなかったようだが、それがなんとも中途半端な気がする。
実際水の中(沢や水たまり)に入ってみるとわずかに染みてくるのがわかった。
では、シーム処理よりも重要視した透湿性はどうかというと・・・ムレる。
休憩時に靴を脱ぐと中全体がしっとりと濡れている。
特に靴底(中敷きの裏)に汗が抜けきらず溜まっている。
やはり一番汗をかく足の裏に透湿性がなければムレて当然なのかもしれない。
そこに目をつけたのがGORE-TEX サラウンド。
一番蒸れる靴底にもGORE-TEXを使用し、靴全体に透湿性があるという構造。
実際にGORE-TEX サラウンドを使用したスポルティバのシンセシス GTXを所有しているので、その透湿性の高さと防水性は今回テストしたローンピーク3.0よりも明らかに優れている。
ネオシェルを使ったウェアの素晴らしさを実感しているだけあって、今後普及するであろうネオシェル使用のシューズがより良くなることを期待したい。
また、同モデルでネオシェルを使わない非防水バージョンも選べるとユーザーは割り切って使いやすいと感じた。
検証④ グリップ性能
グリップ性能もそれほど高くない印象を受けた。
悪くはない、悪くはないんだけど、なんでもない石でズルっと滑ったりすることが何度かあった。
特にウェットな路面でのグリップ性能は高くない。
今回比較対象となっているホカの方が明らかにグリップ性能は上に感じた。
車のタイヤと一緒でグリップ性能はソールパターンとゴムの硬さ(コンパウンド)で決まる。
まずソールパターンで見ると、気になるのが足マークの指からつま先にかけての部分。
写真だと若干分かりにくいかもしれないが、パターンが斜めにカットされている。
この斜めカットが原因しているのか、下りでのグリップ力が若干弱い。
またもう一つ重要なコンパウンドもホカの方が明らかに柔らかく、アルトラの方が硬い。
ただ、当然柔らかければ消耗も早いので、ソールの耐久性という意味ではアルトラの方が優れているだろう。
重量は27.0cm(US9)で片足368g(メーカー公表値347g)
DATA
ALTRA LONE PEAK 3.0 MID POLARTEC NEOSHELL
(アルトラ ローンピーク3.0 ミッド ポーラテック ネオシェル)
用途: | トレイルラン、ハイキング、ファストパッキング、コールドウエザー、ウェットコンデョン |
ラスト: | SD6-M |
スタックハイト: | 25mm |
ミッドソール: | デュアルレイヤーEVA / A-BOUND |
アウトソール: | デュラブルラバー・トレイルクロウ |
インソール: | 5mmマウンテン・フットベッド |
アッパー: | クイックドライ、耐摩耗性メッシュ、ポーラテック |
重さ: | 368グラム (27.0cm) |
結論
ハードな登山でなければ積極的に使える!
ただコイツが活きるのはロングハイク!
とにかくこの疲れにくさを体験してみてほしい!
コイツが一緒ならもっと遠くまで歩ける気がする。
そんな足に優しいイケメンくんのご紹介でした!
そんなあなたにベストバイ
- 今までのトレッキングシューズでは長時間歩くと足が痛い
- 10kg以上の荷物を背負ってロングハイクしたい
- とにかく疲れにくいシューズが欲しい
- ある程度の防水性は欲しい
- 登山(険しくない)でも使いたい