まーあかん!
いい加減、山行かんと発狂してまう!
本オープンに向けてインドア生活が続きすぎてしまったBBG編集部の二人。
すっかり山から離れて心は荒みまくり、前回は何を思ったか突然「ダイエット企画だ!」と叫んで、オフィス内でパン1になって撮影会を始めてしまうという迷走感。
このままではアウトドアギアとは全く関係ない方向に脱線して行きそうだったので、急遽二人は“現場入り”することを決断した。
これはすっかり体力と筋力が衰えてしまった男達による、本来の自分を取り戻すための戦い。
今後の活動が大いに不安になるであろう、痛々しい「中年」というギアのリアルなレビューなのである。
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第1章 青き仙人と陶器職人
正直山に行ってる暇はない。
相変わらず本オープンに向けてやるべき事は山積状態。
しかしインドア生活が長すぎて、何かがプチッと弾けてしまった。
で、ハッと気づいた時にはすでに100名山「伊吹山」の登山口である。
そしてここで猛々しく駐車場で自立しているのが、2017年注目のバックパック「ビッグソリスト」だ。
ソリとしての主張が強すぎて、完全にバックパックが隠れてしまっているという画期的な一品。
通常雪山でのシリセード(ケツで滑って下山すること)は、携帯性を考慮して小型のヒップソリが使われる。
しかし何事も欲しがりの我々としては、そこをあえて「本意気のビッグソリ」を無駄に担いで行って極上のシリセードを楽しみたいのである。
半年近く山から遠ざかると、誰だってそのような思考回路になるはずだ。
しかもこのバックパックスタイルなら、不意に鈍器のようなもので背後から襲われたとしても鉄壁の防御力を誇るというおまけ付き。
嫁だったり、嫁だったり、嫁あたりから何かと恨みを買ってる僕としては、お山だろうと背後に対してゴルゴばりの警戒心を持って過ごさねばならんのである。
そしてこのバックパックは、風の強い日だと「体の持って行かれ度」は当社比2.5倍増。
余すことなく風を受け止めてしまうから、体力も消耗しまくってマゾに優しい仕様となっている。
吹きっさらしの独立峰伊吹山にピッタリのアイテム。
何やらフライパン山に向かう亀仙人ようで、軽いコスプレ気分も楽しめてしまうのである。
しかしその青き亀仙人は、まだスタートしたばかりなのに顔までみるみる青くして行く。
四十を越えてから、体力の低下が往年の野茂のフォークくらいに鋭く落ちまくっているこの男。
「あれ?俺ってキング・ザ・100トンだったっけ?」って思ってしまうほどに体が重い。
上がりまくる心拍数がまるで落ち着く気配もなく、早くも朝食べたおにぎりを「返品」してしまいそうな表情に。
半年もまともに山に登ってないと、ここまで人は衰えるものなのか?
決してその衰えを認めたくはなかったが、早々に限界に達して乳下に汗を滴らせながら早くも大休憩。
なんとここはまだ「1合目」。
この段階でここまで世界の終わり的な表情ができる社員を見て、敏腕社長も「もう、こいつ内勤決定だな」と腹を決めたという。
そんな冷たい視線に晒されても、体力の回復に精一杯な彼は、ただの着替えですらまるでシェークスピアの舞台を熱演してる名優のような状態に。
そしてすっかり老けてしまって、もはや死を目前にした人間国宝の陶器職人のようなこの渋みある表情。
もうすでに彼の限界は近い。
何度も言うが、ここはまだ1合目なのである。
第二章 さまよう老人
見渡すかぎりの雪原の斜面にて、極上のシリセードをかますべくここに来た我々。
しかしそんな我らの前には1mmの雪も積もっちゃいねえというまさかが展開。
やはり冬眠が長すぎたか。気分は浦島太郎だ。
肝心の雪が全くない中、背中にビッグサイズのソリを背負ったヘロヘロの老人が雪を求めて徘徊して行くという切ない光景が展開。
場所が場所なら「ちょっとそこのおじーちゃん!近くに家族の人いる?わかる?かーぞーくーのひーと〜!」なんて言われて家に連れ戻されるところだ。
しかしおじーちゃんは負けずに突き進む。
想像以上に体がついて来ず、2合目到達時に早くも2度目のダウンを喫した。
おじいちゃんは「ハァ…ハァ…俺…この仕事…向いてないのかな…」と虫の息で呟くのが精一杯。
ちょっと前までこの伊吹山を元気にトレランで往復してた彼だが、時とは実に無情なものである。
そんな時、普通の社長なら「まあ、ゆっくり行こうや。一歩一歩確実にさ。」なんて優しい声をかけてくれる所だが、我が社の社長は「マジ情けないっすよ。ホラ、さっさと歩け!」とサディスティックに追い込み並走。
「こいつはとんだブラック企業だぜ。」と呟きつつも、ちょっと嬉しそうなマゾヒスティック社員。
我が社はこの関係性でガッチリと歯車を噛み合わせて回しているのである。
で、3合目付近ともなると、そのマゾ社員は絵に描いたような「行き倒れの人」になっている始末。
まるで未来から江戸時代にタイムスリップして来たJINのような世界観。
しかし、今この時点で最も医療による救助が必要なのはこの人本人である。
「うう、ここは…どこだ…?」とでも言いそうな表情で、すっかり生気が失われて目も虚ろな廃人最前線。
こんな男がこれからガンガン山や川に行ってギアレビューして行こうってんだから世も末である。
しかし屈強なオラオラ系山男や、体力ガンガンのトレイルランナーたちでは決して書けない「庶民のレビュー」は彼にしか書けないはず。
あっという間に限界に到達できる彼だけが、ギアの真の力を引き出せるはずだ。
すごい人たちは正直「しまむら」の半袖短パンでも平気でアルプスを大縦走できてしまうが、このか弱い子豚は優れたギアに頼らないとアウトドアでは生きて行けないのである。
そんな常時限界男の必死の踏ん張りは続き、いよいよ眼前に伊吹山がドスン。
そしてこの時、東屋で休憩してまた着替えをした。
その際に、庶民レビュアーのユーコンカワイがその実力を発揮する。
彼は常々声を大にして訴えたいことがあった。
例えばアウトドアウェアって、モデルがいつもこんな感じ↓のシュッとした外人さんばかりじゃない。
出典:patagonia
しかし私は訴えたい。
実際にこれを見て、僕のようなシュッとしてない中年日本人がこのアイテム買って着るとどうなるか。
それはこのような「イメージと全く違うじゃない」という悲劇が待ち受けているということを意味するのである。
出典:shirobuta
世界よ、これが日本だ。
全体のムッチリ感にプラスして、腹の出具合が酷すぎてチャックも半開きだ。
そもそもシュッとしてない人にとって、ぴっちりアンダーウェアだけになる事は非常に痛々しい結果が待っているのである。
しかもDカップの彼は、乳下空間に汗が溜まりまくってアンダーウェアの吸湿性が追いつかずに内臓を冷やしまくる結果に。
ヘソに溜まった汗も実に見苦しい。
しかもこの腹のせいでいつのまにか裾がめくれ上がって来るから、気付いた時にはヘソ出しルックになって腹部を激しく冷やして下痢になることもしばしば。
まあ「それはお前の問題だ。痩せろ。」と言われればそれまでなのだが、きっと同じような苦しみを抱えている庶民は多くいるはずだ。
私は今後もこの“デブあるある問題”に全力で取り組んでいく所存。
まずはスポーツブラの導入からスタートしてみようと思っている。
第3章 激励の鞭遊戯
さあ、まだ半分の5合目なのに無駄に文章が長くなってしまって焦ってます。
どんどん巻いて行きたいところだが、相変わらずこのおじいちゃんのペースは上がらない。
そしてついにしびれを切らした社長が「もう介護に疲れました」と言って、そのいたいけな老人を置き去りにしてどんどん先に行ってしまったのである。
登山あるあるだが、早い方はある程度行ってがっつり待つからいつまでも体力は減らない。
しかし遅い方は追いつくのに必死で、なおかつ追いついても休憩せずにまた追って行くからいつまでも体力が回復しないという負のスパイラル。
壮大な景色の中、後方から風に乗って響くは「ぐえ..ぐええ」という老人の嗚咽声。
しかしそんな瀕死の老人に対しても、一切の優しさを見せないのが天下の伊吹山。
その鞭をしならせて打ち込んで来るのは、この「吐け」と言わんばかりの美しき45度の斜面。
いよいよ老人は遥か遥か後方でノミの糞サイズに。
彼は彼で頭の中に元気だった頃の過去の栄光が駆け巡り、今の己の不甲斐なさと徹底的に向き合わされる厳しい時間帯。
しかし根本的にマゾい彼は、「これだぁ…思い出して来たぜ…もっと…もっとだぁ!」と彼なりの快感に包まれている。
そしてやっとこさ社長に追いつくおじいちゃん。
しかし残念ながら、彼は精根尽き果ててその場で息を引き取ってしまったのである。
ケンシロウは静かにこの老人が持っていた種もみをその場に蒔いた。
それを見ていたバットが「ケッ、そんなとこ蒔いたって実るわけねえだろ。」と指摘するが、ケンシロウは静かに言う。
「実るさ…。下にあの老人が眠っている。」と。
しかしブラック企業の黒ひげ社長によって「ホラ、起きておじいちゃん。さっさと行きますよ。」と促されて、老人は蘇生してフラフラと動き出す。
基本的に悪天候男の彼だが、やっと平日の晴れ間を狙って登れる仕事に就いたというのに、今この晴天を楽しむ余裕はないようだ。
それでも根性だけは富樫源次にも引けを取らないと自負する彼は、最後の一踏ん張り。
しかしやはり山頂目前で力尽き、再び昇天してしまったのである。
彼は「さすがは日本三大急登だったぜ…」と言って血を吐いて絶命したが、もちろん伊吹山は三大急登でもなければ夏場は小学生でも登れる山です。
たかが伊吹山と舐めていたが、本日の伊吹さんはこの腑抜けた体に素晴らしい鞭を打ちまくってくれた。
きっとヤマトタケルからの、「もうちょっとその体どうにかしようぜ」という激励のメッセージだったに違いない。
やがてなんとか2度目の蘇生を果たした老衰社員は、思ったより衰えてなかった絶倫社長とともにゲリラスタイルでパシャり。
何はともあれ、久々すぎる登山をなんとか撤退せずに登り切ることができた。
一時は1合目撤退も覚悟したが、肉体が衰えても胸にひとしずくのロマンがあればジジイでもなんとかなるものなのである。
第4章 魅惑のシリセード
やっぱり山は良い。
長いこと狭い室内空間で逆風と戦い続けてきたが、同じ逆風ならやはり雪山の山頂付近の方がマゾ的にはたまらない。
背中のビッグソリのせいで、気を抜いたら一気に空に舞い上がって行きそうだ。
もちろん呑気に飯食える状態じゃないんで、避難スペースに移動して昼飯。
しかし、ここでもおじいちゃんはミスを犯す。
よせば良いのにチョイスしてしまったのが「塩ラーメンほたてバター」。
これのバターがことのほか濃厚で、四十を越えた胃にダイレクトにもたれかかるのである。
じじいは「う、うぷっ…ううむ…」などと呻きながらの必死の涙目ランチ。
次回からは薄味の流動食とかにしといた方が良さそうだ。
やがて下山開始。
さすがに山頂直下のこのハイパー急斜面をシリセードしてしまったら本気で死んでしまう。
なのでしばし下降して、そろそろ行けるかなって所からやっと念願のシリセード祭りが開幕。
いざ。
ドッ
パッーン!
凄え怖え!
まだ急斜面だったからソリを使わず自前のケツで行ったが、思った以上にスピードが出て焦る。
危うく持ち前の痔が破裂して雪面に赤いシュプールを描いてしまう所だったが、なんとか無事にピッケルで停止。
そしてこの時、元々痛めている四十肩に負担がかかって激痛がスパーク。
絵面だけで言えば普通に滑落して苦しんでる人に見えてしまうが、一応これでも彼はこの状況を心の底から楽しんでいるのだ。
久しぶりのこの「現場感」に、偽芝生オフィスで悶々としていた彼らのストレス発散魂が躍動する。
長いカンヅメ生活で体力がじじい級にまで低下してしまった男も、この充実の(必死の)表情。
胃から遡上してくる「ほたてバター」を撒き散らないように必死なのだ。
しかも四十肩の痛みだけでなく、腿と脇腹を同時にツるというお得意の悶絶パターンでいよいよ満身創痍に。
しかし全身が傷だらけだろうと、心に輝くロマンだけは光を失わない。
傷だらけのエンジェルは、ついに背中のビッグソリを出動させて渾身のシリセードを発動なのである。
当たり前だが、そのスピード感たるやヒップソリの比ではない。
アイゼンが弾く雪しぶきが全て顔面を直撃するという実に激しいシリセードとなった。
チョー気持ちE。
全身は痛いし、顔も飛び散った氷を浴びて8往復くらいのビンタを浴びた後みたいに痛いけど、なんて充実したお仕事なのだろうか。
これは遊びではなく、誰がなんと言おうと我々のお仕事なのである。
私はこれで家族を養って行こうと思っているのです。
それではそんな彼らの「ストイックな仕事風景」。
ヒマな人はをご覧になると良いだろう。
一切の浮かれがない、実にストイックな仕事風景でしたね。
こうして彼らは本日の仕事内容に大満足して下山。
老衰社員はより一層表情が老け、ヒゲ社長もまた一つ朝青龍顔に磨きがかかったようだ。
しかしストレス発散のために来た伊吹山だったが、全体的に己の老いと不甲斐なさを痛感した山行となってしまった。
リアルに本気でダイエットせんと、マジで内勤命令が下ってただの電話番の人にさせられちゃう。
しかしこれからがいよいよアウトドアの季節到来。
今年の秋頃には例の外人モデルみたいにシュッとなってる予定なのでご期待いただきたい。
「あの頃はデブだったなぁ」とツイートできる日が今から待ち通しい限りである。
それでは今回も恒例の関連アウトドアギア紹介。
まずは2017年、バックパックに無駄に装着してアルプスを登れば目立つ事間違いなしの一品。
「ビッグソリスト」である。
これを手に入れれば、極上のシリセード、突風による耐風訓練、背後からの鈍器攻撃に対応可能。
そしてこれで滑る前に是非食べて欲しいのがこちら。
サッポロ一番「塩ラーメン ほたてバター風」である。
中年の胃を鍛えるのにもってこいの一品。
胃がもたれた状態で滑走するシリセードは、胃からの遡上との戦いも相まってなかなかスリリングでオススメだ。
さて、結局今回もただ「中年」の悲しさをレビューしただけになってしまいました。
でも今回使ったギアに関しては、ちゃんと近々別でレビュー記事書いていきますね。
本オープンに向けても変わらずしっかり作業していきます。
何気に伊吹山の後も、温泉にも行かずにちゃんと再びあの芝生オフィスに戻ってせっせと作業再開。
随分と長くハードな朝礼の末にたどり着いた通常業務は、正直マウスを持つ手がプルプル震えてミスも乱発。
眠たすぎて目もシパシパするため、結局ダウンして長い昼寝(夕寝)を敢行。
結局彼はその後なかなか目覚める事はなかったという。
結局ストレス発散して仕事が捗るどころか、疲労を溜めすぎて仕事にならなかったという着地点。
おまけに寝起きに腹減りすぎてて、ついつい「たけのこの里」を食ってしまったという体たらく。
彼のダイエットの道のりは長く険しいのである。
それではみなさん。
こんな感じで、私と共に老いに逆らってみませんか?
若い人は数年後の自分に想いを馳せてみましょうね。
またお会いしましょう。