長年高い評価を得て来たテラノバの超軽量テント「レーサーフォトン1」。ダブルウォールでありながら720gという驚異的な軽さを叩き出し、なおかつそのフォルムはアマノジャク心までも刺激してやまない。そんなソソる英国産のお宅を、今回は久々に渡辺篤夫が建物探訪してしまうのである!
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渡辺篤夫の建物探訪〜TERRA NOVA 「Laser Photon 1」〜
オープニング
おはようございます。渡辺篤夫です。
今日訪問するお宅は、岐阜県のユーコンカワイさん邸で1.9㎡一人用住宅。
なんでも「英国の香り漂う超軽量住宅」だそうですよ。
それでは早速拝見してみましょう。楽しみです。
渡「初めまして、渡辺です。」
ユ「ユーコンカワイです。今日はよろしくお願いします。」
渡「それでは早速外観から見せていただきましょう。」
ユ「どうぞ、こちらが一人用ダブルウォール住宅“レーサーフォトン1”になります。」
渡「ほほ〜、こりゃまた奇抜な形状のお宅ですね。やっぱりハードゲイなんですか?」
ユ「いや、それはレイザーラモンですね。これはレーサーフォトンです。」
渡「おっとっと、失礼しました。ではこの住宅に決めた経緯をお伺いしてもいいですか?」
ユ「はい、実はここ最近簡易的なフロアレス住宅で寝ることが多くてですね。そうなると軽いのは良いんですが家の中の結露がすごいんですよ。で、一旦ダブルウォール住宅に戻ってみたくなったわけです。」
渡「わかります。尻軽な女と浮気してみたのは良いけどやたらベタベタしてくると。で、結局は適度にドライな奥さんの所に戻っていく感覚ですね?」
ユ「よくわかりませんが、まあそんな感じです。とは言えもう軽量な住宅が癖になってますからね、今更重たいダブルウォール住宅なんて嫌なんですよ。」
渡「そうですね〜。いくら最近1kgちょいの住宅が増えて来たと言っても、さすがに500g程度のフロアレス住宅と比べたらそりゃ重たいですから。」
ユ「そうなんですよ渡辺さん。しかも僕はとある2つの難病に侵されていましてね…。それが“ドーム型そそらない病”と“他の人と被りたくない病”なんです。」
渡「うわ〜。それはご苦労されたことでしょう。」
ユ「ええ、こればっかりはもう不治の病なんでどうしようもないんです。で、導き出されたのが以下の条件です。」
- ダブルウォールテントであること
- 1kg以下の軽量さ
- 奇抜な形状&他の人とあまり被らない
- そしてカッコよくて建てやすい
渡「わがままですね〜。」
ユ「よく言われます。そんな中でもその条件を全て満たしていたのが、今回のレーサーフォトン1だったわけです。」
渡「わかりました。それでは次は建築風景を見せていただきましょう。」
建築風景
ユ「まずこちらを見てください。これが建築図面になります。」
ユ「そしてこれが建設前の状態ですね。」
渡「おっ、これはまた随分と余裕のある収納サックですね。」
ユ「良い所に気づいてくれました、さすが渡辺さんです。最近の住宅はやたらキチキチの袋で出し入れが大変なんですよ。しかも僕はバックパック内でテントはべちゃっとさせて平積みしたい派なんで、このくらいの余裕がベストなんですよ。」
渡「しかもシルナイロン製だから、出し入れがシュルッシュルな訳ですね。」
ユ「参ったなぁ、やっぱ渡辺さんにはかなわないや。まさにその通りで、もうこの収納時点で僕のコーフンはMAXでしたよ。」
渡「随分コアな部分のフェチなんですねぇ。収納の時点でハァハァ言っちゃってますが、ちゃんと最後まで解説できますか?」
ユ「失礼しました。では早速建築風景を見てもらいますね。中身は付属のポールとペグがあって、最初はこのようにフライとインナーが別々になってます。」
ユ「でもこれ別々なのは最初だけで、一回セットしちゃえばフライとインナーは出し入れの度に別々にする必要はないんです。」
渡「ほほう、ほぼ一体型ってわけですね。そりゃあ設営の早さに影響して来ますね。フライを後からかぶせるのって風がある時は結構めんどくさいですからね。」
ユ「そうなんです。ではもうすでにセットされた状態で説明していきます。まずセンターのスリーブにポールをシュシュシュっと入れていきます。」
ユ「で、両端のハトメにぶっ刺して固定します。」
渡「ほほう、ポールがこれ一本って事は自立式ではないって事ですね。」
ユ「そうです。非自立式ですが、設営は全然難しくないんですよ。長辺側センターのガイラインを石かペグで固定して…」
ユ「反対側も固定すれば、ほれこの通りもう自立しちゃってます。」
渡「うれしーなー!こんなに簡単に立ち上がるんなら強風時でも簡単ですね。いやぁ、むしろこれフライとインナーが一体になってること考えると、通常の自立ドーム型のテントよりも立ち上がりがスピーディーじゃないですか。」
ユ「そうなんですよ!軽量化を図るための非自立スタイルでありながら、うまいこと工夫して立ち上がりスピードまで早まっちゃったんですね。しかもドーム型じゃないし他の人とも被らないしで、もうコーフンして僕の股間も立ち上がっちゃってますよ!」
渡「ユーコンさん、朝の番組なんでほんと困ります。一旦CM挟みます。」
渡「鎮まりましたか?」
ユ「先ほどは大変失礼しました。パンツも履き変えてきました。それでは続けて解説していきます。実は先ほどのポールの他に2つの短い補助ポールがありましてね。それを使って両端を立ち上げていきます。」
渡「なるほど。こいつで両サイド立ち上げることによって中の居住性が確保されるんですね。ありがたいな〜。」
ユ「内側から見るとこんな感じですね。」
ユ「で、四隅+長辺側2箇所をペグダウンするんですが、インナーからもコードが伸びてて、フライとインナーは一本のペグでまとめて固定できます。」
ユ「たったこれだけで、もう基本的には完成です。」
渡「非自立住宅ってもっと難しいイメージがありましたが、結構簡単なんですね。嬉しいですね〜。」
ユ「ちなみに付属のチタンペグがあるんですが、このペグがまた軽量化にこだわりすぎちゃってましてね。ちょっとあまりに頼りなくてそれは使ってません。最初見たときは鍼灸師さんの針かと思ってしまいました。」
渡「これはペグというよりみんなでチーズフォンデュとかする時の串として重宝するかもしれませんね。ありがたいな〜。」
ユ「で、立地がアルプスのテン場だった場合、もっと住宅の耐風性をアップさせたいじゃないですか。そんな時はこれですよ。このポールカバーを被せてあげてですね…」
ユ「こうして両サイドをガイラインで引っ張って固定してやれば、強風もへっちゃらです。」
渡「なあるほどぉ〜。しかもこれ、風の少ない樹林帯で張るような時は持って行かずに済んで荷物の軽量化にもなりますね。さっすがだなぁ。」
ユ「しかもですよ。フライに直接ガイライン引くわけじゃないから、このカバー内でテントが揺れて柔軟に風を受け流すし、幕体自体も損傷しないってなもんですよ。」
渡「素晴らしい。ただ軽量化だけ考えるメーカーにはできない発想ですね。」
ユ「ありがとうございます。これにて建築は完了です。」
ユ「一応建築時の動画もありますんで、よかったらどうぞ。」
渡「なあるほど。これ見るとよりその簡単さがわかりますね。」
ユ「ええ、この動画の時が標高1,776mで、下が2,800mのテン場です。時折風が強まり、小雨も降りましたがへっちゃらでした。」
渡「周りのテントがモンベルやエスパースなどのドーム住宅率が9割を示す中、このあからさまなアウトロー感がたまらないですねぇ。」
ユ「ええ、もうその光景見てるだけでアマノジャクな僕はビンビコビンでしたよ。もう…ガイラインで固定しないとトレッキングパンツを突き抜けそうで…ハァハァ…」
渡「一旦CM入ります。」
外観&お部屋探訪
渡「鎮まりましたか?」
ユ「はい…渡辺さん…良いパンチ持ってますね…いててて….」
渡「それでは続いて外観の方をご紹介していただきましょう。こちらが玄関ですね。」
ユ「そうです。外玄関のジッパーはダブルジッパーになってまして、上から開ければ雨の日とかに中で炊事してる時の換気口になります。」
渡「ほほぅ、それは地味にポイント高いですねぇ。しかも開け閉めも噛むことなくスムーズだなぁ。」
ユ「そうなんですよ。そして一般的なテントと違って、開けた玄関はくるくる巻いて固定するんじゃなくて、このようにマジックテープでくっつけてから固定するやり方です。」
ユ「ただどうしてもその構造上、扉がダリーンとなってくるんでちょいと邪魔です。」
渡「これは入口が狭い分、もう一工夫欲しいところでしたね。惜しいなぁ。」
ユ「そして内玄関ですが、これも一般的なL字に開けるタイプじゃなくて、このようにガッパリ開いて下でくるくるしておくタイプです。」
ユ「このタイプは初体験でしたが、意外に邪魔にもならないし開放感もあってよかったですね。これならくるくる留める必要もなく楽チン。ジッパーの開け閉めも片手でスムーズにやれるんで、非常に気に入ってます。」
渡「良いですねー。どうしてもミニマム設計だから居住性は我慢しなきゃいけない部分があるけど、ミニマムな中でもやれる事を徹底的に考えてる感じが良いですねー。しかもこの色!」
ユ「お!そこに気づきましたか渡辺さん!」
渡「何年も建物探訪してますからねー、わかりますよー。日陰を作って中の温度を上げすぎないというモスグリーンをフライに持ってきて、インナーは明るいイエローで閉塞感を感じさせないという配慮。まさにブリティッシュガーデンのようなきめ細かい配色ですねぇ。」
ユ「そうなんですよ!テラノバがそこまで考えてこの配色にしたのかは謎ですが、実際内部のイエローのおかげで閉塞感もないし気分が明るくなります。暗いテントだと狭く感じるし、赤いテントだと落ち着かないし、青いテントだと寒々しいしで、この配色は気分的にもパーフェクトなんですよ!」
渡「ああ、ユーコンさん、あまりコーフンしないでください。もうCMに入る予定ないんで。」
ユ「大変失礼しました。では次に前室の方をご覧ください。最長部分で26cmあります。」
渡「お一人住宅なんで必要最低限の前室ですね。」
ユ「そうなんです。ただスペース的にはまあ十分なんですが、なんせ高さがないから雨天時はバーナーの熱がフライに近くてちょっと苦労しそうです。」
渡「わかりました。お部屋の中はどうでしょう?」
ユ「まず寝る事に関しては当然必要十分で、枕+125cmマット+バックパックのスリープシステムが完璧に設置可能です。」
ユ「両サイドには小出しの荷物を置くのに十分なスペースもあり、先述のイエロー効果もあって窮屈な感じはしません。」
ユ「むしろ小さい頃から狭い場所や押入れで寝たりするのが好きな少年だったんで、このくらいのが逆に寝つきがよかったりします。でもね…」
渡「でも?」
ユ「やはりこれだけの軽量住宅ですからね。ある程度割り切りが必要というか、居住性って意味じゃあ決して快適ってわけじゃないです。一番高い場所でも87cmしかないですからね。胴長短足の僕としては着替えるときとか頭がつっかえて中々大変です。」
渡「なるほどぉ。ここは最低でも100cmは欲しいところですね。」
ユ「そうなんですよ。着替えるだけで色んな所ツるんで大変です。雨の日とかの炊事もずっと猫背になっちゃうんで中々しんどいす。優雅にくつろいでる時も、頭がジッパーに挟まれて動けない人みたいな情景になってしまいます。」
渡「これは確かにしんどそうですね。寝ることに特化したカプセルホテルタイプと割り切った方がいいですねぇ。」
ユ「まあそこは軽量住宅の宿命的なもんがありますが、ただフライは引裂強度6kg(10Dナイロン6.6)で他のペラペラ軽量テントに比べて生地がしっかりしてるので安心感はありますよ。」
渡「わかりました。他にお部屋に特徴はありますか?」
ユ「部屋の内部は、頭側と足側にベンチレーションメッシュパネルがついてて、換気はバッチリです。」
ユ「ダブルウォールでこのベンチレーションですから、久々に結露のない快適な朝を迎えられましたよ。しかも暑い時は外のフライをこのように持ち上げてやれば、そりゃあもう快適な風が足から頭へと抜けていくって寸法でございます。」
渡「いいなあ、これは嬉しいですね〜。」
ユ「しかもですよ渡辺さん、実はこのレーサーフォトンは今季からちょっとだけアップデートされましてね。この部分の換気をよりスムーズにするためにフライから小さい屋根が飛び出してそこに補助ポールを立てるように進化したようです。」
出典:TerraNova
ユ「他にも内部のベンチレーションが閉じれるようになってたり、入り口のファスナーがフルオープンできたりなどの細かいアップデートがなされているようです。」
渡「現状に満足せず、日々進化をやめないグレートブリテン魂。職人の多いお国柄だけあってさすがですね。いや〜お見それしました。」
ユ「以上が一人用住宅レーサーフォトン1になります。途中何度か粗相をしてしまい申し訳ありませんでした。」
渡「いやあ、お気持ちはわかりますから。これだけのテント、ビンビコビンになるのも無理はありません。今日はありがとうございました。」
ユ「こちらこそ。」
エンディング
渡辺篤夫です。
ユーコンさんのご自宅、いかがでしたか?
なかなか画期的かつ理にかなった構造で、長年高い評価を受け続ける理由が垣間見えましたねえ。
しかも今年はさらに便利にアップデートされているとのこと。
今回はその新レーサーフォトン1で、ユーコンさんのお宅を振り返ってみましょう。
岐阜県/ユーコンカワイ邸
建築設計:TERRA NOVA (テラノバ)
物件名:Laser Photon 1(レーサーフォトン1)
出典:TerraNova ※画像クリックで代理店カタログページへ
サイズ | 高さ / 40~92cm、長さ / 220cm、幅 / 74~87cm |
収納サイズ | 35cm×8cm |
重量 | 670g / 720g(min/max) |
使用人数 | 1人用住宅 |
レンジ | 3シーズンバックパッキング |
フライシート | Watershed Si2 R/S 3,000mm |
フロア | Watershed R/S 5,000mm |
ポール | 8.5 DAC Alloy |
ペグ | チタニウムペグ(1g)×12 |
ガイライン | 自在付リフレクティブガイライン×4 |
インナードア | ハーフメッシュ |
《ベストシチュエーション》
春から初秋における低山からアルプスまで。
《そんなお前にベストバイ》
・軽いのがいいけどフロアレスには抵抗がある。
・どうせ寝るだけだから多少居住性を犠牲にしてもいい。
・アルプスでも安心して使える耐風性と強靭さが欲しい。
・ドーム型そそらない病である。
・他の人と被りたくない病である。
・他の人のテントと見比べながらハァハァしたい。
ちなみに、「もうちょっと重くなってもいいから居住性アップしたバージョンが欲しい」ってな人向けに、このような住宅も取り扱っているようです。
建築設計:TERRA NOVA (テラノバ)
物件名:Laser Competition 1(レーサーコンペティション1)
こちらは250gアップする代わりに高さも前室も余裕のあるものになってて、強度もアップしてますね。
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サイズ 高さ / 90~100cm、長さ / 220cm、幅 / 62~93cm 収納サイズ 35cm×8cm 重量 860g / 970g(min/max) 使用人数 1.5人用住宅 レンジ 3シーズンバックパッキング フライシート Watershed Si2 R/S 5,000mm フロア Waterbloc R/S 6,000mm ポール 8.7 DAC NFL ペグ アルミペグ(11g)×10 ガイライン 自在付リフレクティブダイニーマ インナードア ハーフメッシュ
※購入に際しては新旧タイプご確認の上で。2017.8月現在アマゾンには旧タイプしかありません。
快適ラインを考えるとレーサーコンペティションもいいですね〜。
あなたはどっちのタイプの建物でビンビコビンしたいですか?
それではみなさん、またお会いしましょう。
次に探訪されるのはあなたのお宅だ!
渡辺篤夫でした。