天気と出会いに恵まれた東北百名山巡りは福島から岩手へ。さらに未知なる絶景と美酒を求めて山形、宮城、そして群馬へと続く。見知らぬ土地での一人旅を通じて「登山とは、そして人生とは」を己に問いかける。果たしてその答えは見つかるのか?そして仕事も見つかるのか?暗雲立ち込め、台風迫り来る後半も鬼ころしSがお送りします。

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第4章 花の早池峰山

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前回の続き。

安達太良山で熊ちゃんと別れ、次なる目的地『岩手県』を目指して出発した鬼ころしS。

めちゃくちゃ遠いぞ岩手

同じ東北地方だと思って甘く見てました・・・。

果たして今日のうちにちゃんと岩手県に到着できるのか?

それともサービスエリアで沈してしまうのか。

ここで秘密兵器投入

俺のターンだ!ドロー!

「封印されしコリコリ系」「封印されしヒーヒー系」これらが揃うと「封印されし鬼ころし」が発動し、トラップカード「睡魔」は効力を失うのだ。

アツシオガワ

よく分からんけど、ググらずに進もっと。

あとは貝ひも、スルメなども個人的にロングドライブのお供にオススメです。

盛岡に到着し、晩ご飯にご当地グルメの冷麺をいただく。

元職場の友人で、岩手出身のNちゃんから教わった焼肉屋「ヤマト」さん、美味しかった!

この日は道の駅でおやすみなさい。

翌朝は早池峰山(はやちねさん/1,917m)へ登りに行きます。

早池峰ダムから綺麗な朝日がこんにちは。

今日は平日なのでマイカーですが、ハイシーズンの土日祝にはマイカー規制がかかり、シャトルバスでのアクセスになるよう。

2年前の大雨で河原の坊ルートは崩落してしまったため通行止め。

駐車場は『河原の坊』にしかないため、小田越ルートの登山口まで徒歩で40分ほどのアプローチです。

アクセス方法は安達太良山でお話しした地元の方に教えていただきました。ありがとうございます!

本日は工程が短いのでトレラン装備で出発。

序盤は気持ち良い樹林帯の木道をトコトコ。

ルート上にお手洗いはありませんが、登山道に携帯トイレ用のブースが1つ、山頂の避難小屋にもブースがいくつか設置されているとのこと。

樹林帯を抜けると、想像しなかった荒々しい岩場の風景が目の前に広がる。

しかし他の登山者たちは皆足元を見て歩き、時には足を止めている。

その理由は、この日ちょうど見頃を迎えていた「ハヤチネウスユキソウ」があちこちで岩の間に可愛い花を咲かせていたからでした!

ウスユキソウにも色々な種類がありますが、このハヤチネウスユキソウは岩手県特産の希少種だそう。

実は登山を始めるずっと前からNちゃんに聞いていたこの山の独特な名前と「ハヤチネウスユキソウ」が気になっていたので、ウン年越しの憧れがここで叶ったわけです。

これでもう思い残すことは無いかなと思ったけれど、もう1つ若い頃からの憧れ「誕生日に彼氏とディズニーランドへ行く」という夢がまだ叶ってない事を思い出してしまいました。

えっ、カップルでディズニーランドへ行くとケンカするって?

ディズニーランドに連れて行ってくれる彼氏がいるだけで大満足だからそんなの関係ないね、と思う夢見がちな三十路。

さらに登って行くと、ビッグサンダーマウンテンもビックリのBIGな岩場。

そして写真では伝わらないのですが風が非常に強く、稜線を凄い勢いで雲が流れて行く。

こんな日に限って被るタイプのベストしか持っていないという悲劇。吹き飛ばされそうになりながら必死で着用。

「姉ちゃん頑張れよ〜」と言い残して颯爽と先を行く、なんと御歳78歳のお父さま。この方ももちろん地元の方でした。

「もう少し行くと風避けられる場所があるから、俺そこでゆっくりしてるわ!」とのこと。無理せずそこでベスト着れば良かった・・・ガビーン。

そしてチャッピーな花畑からは全く想像し得なかった非常にスリリングな梯子。

聞いてないよ〜(ダチョウ倶楽部風)

顔とか髪型とかどうでも良くなる程すんごい風に吹き上げられながらの登攀。

もはや気分はブルジュ・ハリファの外壁に張り付くトムクルーズ。

アツシオガワ

ここで己撮りするとは、鬼ころしも腕を上げたな!

追っ手の諜報部員が来た!

と思ったら先ほどのお父さまでした。国際スパイのようにスルスルと難所をクリアするこのお父さま、何者なのでしょうか。

難所を越えた途端に風が止んで、青空も見えてきました。

今日は山頂をピストンしますが、剣ヶ峰への縦走も出来るみたい。

赤い屋根の避難小屋が見えている辺りが山頂。

ここからは癒しの木道再登場にホッと一安心。

再びお花なんかを見る余裕も出てきました。木道脇ではコバイケイソウが綺麗。

東北での3座目、早池峰山(1,917m)に登頂!今日もなんだかんだで青空が顔を見せてくれました。

登山道を整備中だった小田越山荘の管理人さんと、先ほどのお父さんが一緒にやって来ました。

事情を説明してお話を聞いてみると、なんとスーパーお父さんは小田越山荘の元管理人さんだったそう!そりゃ詳しいわけですね。

「東北の山じゃ、俺みてぇな五十代はまだまだ若手だ」とのこと(!)

管理人さんの言う通り、私が下山する間にはオーバーフィフティと思われる沢山の皆さまとすれ違う。

みんな揃って「ハヤチネウスユキソウが見頃ね〜」と嬉しそうに写真を撮っているのを見ていると、地元の方に愛されている山なんだなぁと感じることが出来ました。

第5章 霞の八幡平

さて、遠野市の方へ降りてきました。

この辺りは友人Nちゃんの地元ということで、彼女のお母さんに教えていただいた遠野名物はなんとジンギスカン!

北海道のイメージが強かったけれど、岩手でもジンギスカンが食べられるんですね。

お肉大好きな鬼ころしSは早速『ジンギスカン あんべ』へ。

と思ったら、まさかの準備中・・・ガビーン。

と思ったら「鍵開いてるから入って〜」と声を掛けられました。

田舎のおばあちゃん家に遊びに来た時のようなノスタルジーが凄いぞ。

店内はもちろん私だけ。せっかく開けてくださったので、一番お高い「ラム肩ロースセット」を注文。

説明書き通りに羊脂をしき、見よう見まねで並べてみる。お肉の焼ける音は食欲をそそりますな〜。

そしてお肉から出た脂を下の野菜がキャッチして吸い込むと言う、余すところなくお肉の旨みを頂けるよう計算され尽くした鉄板。

生肉大好物の私はレアな焼き加減で頂きました。柔らかくてジューシーなのにあっさりしているラム肉、こんなに美味しいなんてもう北海道へはしばらく行かなくてもいいかもしれないな。

アツシオガワ

しゃべーーーー!

食後は市内の神社で旅の安全祈願を。

ちょうど七夕前だったので、七夕飾りの笹がお供えしてありました。

“お願い事を自由に書いて飾ってください”との事だったので、ニート卒業を願掛け。

名古屋に帰ったらお仕事しなくちゃ・・・。

ビールの原料となる「ホップ」も遠野市の名産

さらに酒屋さんへ寄り道して、地元で原料から作られたクラフトビールを自分へのお土産に購入。

しかし時間はまだまだお昼と余裕があるので、思い立って同じく岩手県の百名山、八幡平(はちまんたい/1,614m)へハシゴ登山しちゃいましょう。

初心者でも気軽に散策ができるこの山は、独特のアスピーテ地形と呼ばれるなだらかな山容が特徴。

しかし怪しい雲行き・・・

到着する頃にはガスガスワールド

地上では晴れてたのに何でこうなるの?という山あるある。

逆パターンとして、下山したら晴れるあるあるもございます。

アツシオガワ

雨予報見て中止にしたら、以外と天気がいいSNS投稿を見てキィー!ってなるあるある。

ど平日の午後という事もあって、もちろん誰も居ない八幡平の登山道。

今回は「週末は人でごった返すはずの絶景の数々をゆっくりと皆様にご紹介する」というテーマに決めました。

勝手に身の引き締まる思いで歩いて行きましょう。

皆さんこんにちは〜!鬼ころしSです!

本日は岩手県の八幡平から中継ですよ!

今日はあいにくのお天気ですが、私と一緒に自然が織りなす絶景をめぐって行きましょうねー!!

まずはあちらご覧ください、八幡平の雄大な山並みを!

左手にひときわ大きく尖っているのが岩手山ですね!

こちらは鏡沼、その名の通り青空がクッキリと映り込んで綺麗ですね〜!

こちらは雪解けの短い季節にだけ見られるという貴重な現象『ドラゴンアイ』です!

確かにバハムートの眼みたいですね〜!メガフレア!

カラ元気での中継ごっこももそろそろ限界なので晴れた日の画像に差し替えちゃいますね。

出展 八幡平リゾートオフィシャルサイトより

順調に雪解けが進んだ当たり年のドラゴンアイは、お天気が良ければこんなに美しく見えるそうです。

皆さんもせっかく登るなら、お天気のいい日に行ってみてくだいね〜!

以上、ミステリーハンターの鬼ころしSでした。

ひょっこりはん!

第6章 嵐の鳥海山、蔵王山

駐車場に戻り、明日登る予定の鳥海山がある山形県に向けて出発します。

猿岩石世代には非常にグッとくるアイテム「県境」

車を走らせていると、突然何かがサッと横切る。

あ!やせいの イーブイが あらわれた!

たたかう

▶︎よける

という感じで華麗に避けましたが、キツネがいきなり車道に現れる岩手県ってすごい所。

山形県への移動中、下道で秋田県を通過。

道中で立ち寄った県内のスーパー、これもすごい品揃え。酒飲み天国です。

鳥海山の麓の道の駅に到着。

雨が心配だけれど、今夜はスーパーで仕入れた日本酒を寝酒にちびちびやりつつ車中泊します。

翌朝、風は強いし、どんよりしてるけれど、なんとか行けそうなので急いで登山口に向かう。

急いでいる理由はこちら、大型の台風が東北に向けて今まさに接近中。今年は本当に台風が多いですね。

滞在期間の期限も迫っているので、お願いだからもう少し待っててよ〜。

そんな願いも空しく、台風の影響で登山口は暴風そして雨。

ミノフスキー粒子が濃すぎて景色も何も見えません。

あまりの悪天候に車のカメラも作動せず、愛車から鳴り響く警告音。

まだだ!たかがメインカメラをやられただけだ!

ジオングとの戦いで逆境に荒ぶるアムロばりに、レインを装備し車から飛び降りる。

!?

目が、目がぁ!!

風が強すぎて目が開けられない。

唐突なバルスを食らい、飛び出した数秒後には車内へトンボ返り。

今日はもう登るなという事なのか・・・残念だけど撤退します。

台風接近は仕方ないので、気持ちを切り替えて東北観光を思いっきり楽しむことにします。

道の駅でゲットした、山形といえばのさくらんぼ!レロレロしたくなるけど自主規制。

次は行ってみたかった山形のボルダリングジム「FLAT」さん。おっしゃれー!

寄り道を繰り返しつつ、宮城県にやって参りました。

仙台市内にホテルを取って、今夜は繁華街「仙台市国分町」へ。

立ち飲み「ぼんてん」さん

例えばロールプレイングゲーム。

ドラクエなんかでも、酒場での情報収集って大事じゃないですか。

情報収集という名目ですぐ酒場に行きたがる勇者。

それは私です。

まずはビールとアテを頼んで周囲の様子を伺う。

重要な情報の多くは村人が握っていますから。

話を聞きそびれちゃうと、次に向かう城とか攻略すべきダンジョンが分からないじゃないですか?

だから酒場には長居しないとね。

気さくでお話上手な店長の「キューちゃん」

地酒をお願いします、とキューちゃんのオススメを注いでいただく。

会話するうち、なんとご趣味が登山(!)とのことで一気に意気投合し大盛り上がりに。

毎年アルプスにも登りに来ていて、今年の夏は北沢峠から仙丈ケ岳に行かれるとのこと。

「うちはね、お客さんも山好きが多いから!みんな、こっちに山やる姉ちゃんが居るよ〜!」と他のお客さんも巻き込み、たちまち店内はハイカーとトレイルランナーの飲み会に。

おすすめの山やトレイルコース、マラソン大会の話を聞いているとついついお酒が進みます。

貝も安くて美味しいから!と地元の方が力説中

地域の皆さまとの会話を通じて「明日も天気が悪そうだから、もし山に行くなら近くの蔵王山に行ってみたら?」と手がかりを得られました。

やっぱり酒場での情報収集は大事だと感じた夜。

この後、居合わせて仲良くなったお客様たちに二軒目まで連れて行って頂きました!

年齢も性別もバラバラだけれど好きなことの話で繋がった夜、とっても楽しかったなぁ。

久々にホテルのベッドでぐっすり眠った翌朝、新潟まで車を走らせ蔵王エコーラインの上の登山口に到着。

しかし何だろう、このデジャヴは・・・笑

もちろん誰もいない駐車場に、とりあえずレインウェア1つで飛び出してみる。

登ってみたかった蔵王の主峰、熊野岳へは徒歩約1時間。

対して刈田岳は駐車場から徒歩3分。雨も降って来たけれど、さてどうしよう。

!!??

目が、目がぁ!!

まさかの2日連続バルスをくらう鬼ころし大佐。

この瞬間、私の中で心がボキッと音を立てて折れました・・・。もう迷うことはないよね。

とりあえずジョジョ立ち

来たぜ!刈田岳に・・・3分も・・・掛からなかったぜ・・・

この後の空模様はさらに荒れる予報という事で、諦めて下山。

私のタイムリミットも徐々に迫っています。ジョジョだけに。

アツシオガワ

やれやれだぜ…。

仙台の酒場で情報をゲットした「遠刈田(とおがった)温泉」に入って帰ります。

遠刈田温泉、遠かったなぁ〜。言いたいだけ・・・いいお湯でした。

予報通り、夜には地上でも雨が降り出してみるみるうちに水浸しに。

次に東北に来るときは、絶対に台風の季節は外して来よう。







第7章 幻の谷川岳

あっという間に1週間が経ち、ニートながらも日程のタイムリミットなのでそろそろ名古屋へ向けて出発。

でもただじゃ帰らないのが鬼ころし。そうです私が諦めの悪い女です。

♪草津ぅ〜〜良いと〜こ 一度〜〜はぁ おいで〜 ハーどっこいしょ!

というわけで、群馬県に寄り道!

お隣は生まれも育ちも群馬という山女・・・山ガールのカオリちゃん。

誕生日は1日違い、年齢も血液型も同じというマブダチです。

今年のゴールデンウィークは一緒に蝶ヶ岳にいました

今回も本当は一緒に谷川岳へ登りに行く予定だったけれど、あいにくの雨・・・というわけで群馬の温泉を案内してもらう事に。

こちらが有名な湯畑!って知らなかった私、ここで服脱いで入るのかと思ったけど全然無理そうな場所でビックリ。

伊香保の水沢うどん。ツルツルシコシコ美味しいおうどんで2人ともペロリ。

もちろんBBGも欠かさずチェックしてくれているのだけれど、なぜかアツシオガワのページで顔を赤らめる彼女。

「かっこいい・・・」

「このヒゲとか。お腹の感じとか。サングラスの下のつぶらな瞳もいいよね。」と語りだすカオリ。

野郎だけでなく画面の向こうの女子まで虜にしてしまうゴ・・・CEO、やっぱり凄いお方ですね。

でも、社長は本当に私服のセンスとかもオシャレで素敵なんですよ〜。

私、絶対シャバーニよりもかっこいいと思ってましたもん。

アツシオガワ

今すぐ群馬に向かいます!

夜はご近所の焼鳥屋で女の語らい

長旅の疲れを気遣ってくれる優しいカオリのお言葉に甘えて今夜はお家に泊めてもらい、翌朝ゆっくりと名古屋へ帰ることに。

今回もほとんどが車中泊だったので、フカフカのお布団でぐっすり眠れて嬉しかった〜。感謝!

アツシオガワ

私も長旅で疲れてると思います!

翌日はカオリにお昼ご飯までご馳走になりました。

彼女のイチオシで「絶対食べさせたい!」と言って買って来てくれた、群馬県民の皆さんに愛される「登利平」さんの鳥めし。

名残惜しいですが群馬にもお別れを告げ、名古屋に帰ります。

変わらずの雨模様ですが帰り道でもお世話になった、ヒーヒー系の方々。

名古屋を出発して7日後、ついに2482kmの工程を経て再び名古屋へと帰って来ました。

前回よりも良く走った今回ですが、移動にも慣れたのか今回は不思議と元気。

出会った人たちに沢山の元気をもらったお陰かなぁと思いつつ、こうして私のニート最後の旅が幕を閉じた。

エピローグ

今回も車ひとつ身ひとつ、行き当たりばったりの旅でしたが行く先々で色々な出会いや再会がありました。

安達太良山でお友達になった65歳の熊ちゃん

見知らぬ地でこそ、人と関わることの大切さを実感することだってあるのかも知れない。

山で、酒場で、現地でお世話になった地元の方々、友人知人。

福島の居酒屋では、お店の息子兄弟の弾き語りソングでおもてなしして頂きました

後半は台風の影響で思うように動けず悔しい思いもしたけれど、それもまた旅の思い出。

初めて訪れた東北の人たちは本当に暖かくて、一生忘れられない旅になりました。

後日届いた、熊ちゃんが撮ってくれたフィルムの写真とお手紙

決して足の早くない私にとっては、登山というのは必ずしも山頂が目的地ではなく「山を登ること全て」を楽しむ行為だと考えています。

目的地にたどり着くことよりも大切にしたい、そこへ至るまでの過程、道中の景色、人との出会い。

そういうものを全部ひっくるめて、私は山が好きだなぁと改めて感じた今回の一人旅でした。

安達太良山にて(撮影・熊ちゃん)

胸に残る人の優しさと絶景の数々。

これからも隙を見つけては名古屋を飛び出し、ステキな一期一会を求めて旅に出たいと思います!

以上、鬼ころしSでした。

押忍!!