ただただ高山でチャッピーなテント泊がしたい。(第一希望)
それ以上は贅沢言わないけどできれば綺麗な稜線を歩きたい。(第二希望)
もう一つだけ挙げるとしたら雷鳥が見たい。(第三希望)
あ、本当に最後のお願いなんだけど美味しいコーヒーが飲みたい。(第四希望)
そんな緩くて贅沢な欲求を満たすべく2人の男が向かったのは北アルプスの燕岳、大天井岳だった!!
(文・若旦那)
[toc]
ホワイトフェアリーこと若旦那の自己紹介
BBGをご愛読してくださっている皆様、ホワイトフェアリーこと若旦那です。
とうとうBBGの記事を書く日がやってきてしまいました。
BBGを愛読してくださっているなら私をご存知の方もいるかと思いますが、実は記事を書くのは初めてになります。
まずは自己紹介をしておきます!
高所恐怖症で虫が苦手、色白で日焼けに弱い。
どう考えても登山に不向きな37歳、中年男。
妻と4歳の娘の3人家族。
神奈川県小田原市在住。
海も山もあって良いところ、小田原。
その小田原で1850年に創業した「加藤兵太郎商店」という味噌蔵がございまして、私はそこの七代目を務めております。
味噌蔵の若旦那なのでCEOから若旦那と命名いただきました。
BBGメンバーからは「若旦那」や「若(わか)」などと呼ばれていますので、同じように呼んでいただけたら嬉しいです!
冒頭でホワイトフェアリーって言ってるけど何のこと?
そう思った方は妙高山の記事を見て頂けたらと思います。
これを理由にBBGユーザーさんからフェアリーとか妖精さんとか呼ばれることもありまして、複雑な心境ですが嬉しいです笑
登山歴はざっくり10年くらい。
クラシックな登山もトレイルランニングも大好き。
クライミングや沢登りは全くやったことがありません。
16歳からBMXという自転車スポーツをストイックにやっていたクセなのか、山でも体力の限界までいきたいタイプ。
とにかく体を酷使するのが好き。男塾大好き。
そのせいで暑苦しがられることも多々。
私とBBGの出会い
ネットで登山関連の情報をよく調べていた私。
その中でも頻繁にヒットするBBGは、山行記事でもギアレビュー記事でも他のサイトと比べて異彩を放っていた。
多くの記事で下ネタを連発しているし。
なんて尖ったサイトなんだ・・・。
仲間と山談義する時も、BBGであのギアが紹介されていたとかあの山に行っていたとかよく話題になっていた。
そんな時期の2018年、BBGがトレイルランニングするために箱根外輪山に来るという情報が舞い込んだ!
箱根は私が住んでいる小田原からマジで近所!!
「これは参加するしかない!」ということでCEOに参加したい旨を伝え、実際に参加!
その時の記事(前後編)はこちら。
こんな経緯でCEOやBBGメンバーと出会い、そのままお付き合いが続いて今に至る。
さて、ようやくここからが今回の記事になります!
お待たせしました!
今回のコース説明
大学からの古い友人が登山を始めた。
いま現在の登山回数は10回に満たないくらい。
そんな彼に最高のテント泊登山を味わってもらいたい。
お互いの居住場所や時間、コースとテント場の魅力など、あらゆることを総合的に計算。
私なりに必死に考えた結果、テント場は北アルプスの大天荘を選定した。
コースとしては中房温泉登山口から入山し、燕山荘を経由、長い稜線を経て大天井岳に登頂したら大天荘のテン場で一泊。
翌日は来た道を戻り、途中で燕岳を登頂したら後はひたすら下山する、いわゆるピストンコースだ。
一般的に燕岳から大天井岳、そしてそのまま槍ヶ岳まで繋がるルートを「表銀座」なんて呼ぶ。
登山開始までのアレコレ
私も友人も忙しい社会人。
予定を合わせるなんて針の穴を通すような難しい作業だ。
だけど今回はそのチャンスが訪れた!!
それなのに・・・・、1週間ほど前から小まめにチェックしている天気予報は雨、雨、雨。
・・・・・クソが!!
もう私は腐っていた。
この世の終わりくらいに絶望して生きていた。
腐敗した日々を過ごしながらも天気予報だけはチェックしていると、なんと!!!!
直前になってこの天気予報!!!
YES!!YESYESYES!!!!!!!!
持ってる!!俺ら持ってる!!
友人とLINEで大盛り上がり。
腐敗していた日々がウソのよう。
登山前日。
おかしいぞ。
自宅を出る1時間前だというのに、荷造りが終わっていないじゃないか。
天気のことに気を取られ過ぎて、荷造りの時間を計算していなかった。
おかげで仕事した後に一睡もせずに登山口へ向かうことになってしまった。
しかも、前日に味噌の仕込みがあった(味噌屋なもんで)為に登山前にもかかわらず身体中がバキバキに悲鳴を上げている。
狙ってもいないのにいつの間にか大好きな男塾になってきた。
AM3:00、長野に住む友人を車で拾い、登山口となる中房温泉へ向かう。
車道がグネグネの細い道になってから車を走らせて30分弱、有明荘という宿泊施設に到着した。
ここから登山口に近づくにつれて第3、第2、第1駐車場と番号が小さくなる。
この日は日曜のAM5:00の時点で第1、第2駐車場はいっぱい。
さすが燕岳への登山口。大人気だ。
仕方ないので少し離れた第3駐車場に停めた。
第1、第2までも徒歩数分で大してロスにならないのでむしろオススメだ。
登山口まで歩いたら「中房温泉登山相談所」があるのでここで登山届を提出。
ようやく登山開始だ!
やっと始まった登山
AM5:50
まずは燕岳手前にある山小屋、燕山荘を目指す。
距離5.5km、標高差1,260m、コースタイムでは約5時間とのこと。
歩き始めて気が付いたが、登山歴が短いはずの友人がずいぶんとこなれた雰囲気を醸し出している。
所々に山と道のウェア、ザックはトレイルバム、サコッシュはアライテントと渋い。
あ、紹介します。
私の大学からの友人であり山仲間でもある、「ワクワクさん」です。
もちろんBBGによって命名。
彼は優れた映像クリエイターで、「それ見たことあるぞ笑」っていうようなCMとか作ってたりするが、BBGにかかれば無関係にあだ名がつけられてしまう。
でも「ワクワクさん」に決定したことを伝えたら喜んでいた笑
映像クリフハンガー?ちょっと何言ってるかよく分からないけど、下界の肩書きはガン無視されるから気を付けてね!
逆に私はどこかのスポーツ少年かよ、っていう出で立ち。
明らかに私の方が初心者に見える。
しかも約2年前の八ヶ岳全山縦走から6キロも太ってしまってガチムチが加速している。
やっぱ太ったよね
加えて気付いたけど、私の装備が八ヶ岳の時とほぼ変わってない。
よく見るとキャップだけが違う。
なんか色々と恥ずかしくなってきた。
まあ気にしないことにしよう。
燕山荘まではよく整備されて歩きやすいものの、のっけから急登が始まる。
寝不足な上に、すでにバキバキに疲労が溜まった身体。
歩を進める度に身体が脳内に「やめなさい」と危険信号を送ってくる。
こういう時はハイテンションになるとアドレナリンが分泌されて危険信号を遮断できる気がする。
妙にハイテンションな私をワクワクさんが不思議そうな目で見ていたのを覚えている。
第1ベンチ、第2ベンチ、第3ベンチ、富士見ベンチという休憩場所を全てスルーし、一気に合戦小屋まで歩いた。
コースタイム4時間くらいのところ、2時間もかからずに登ってきた。
明かなオーバーペース。
チャッピーな山行にしようと話し合っていたのに、もう男塾感満載だ。
マズい、ワクワクさんが登山嫌いになってしまう!
と、そこですかさず差し出したのがキンキンに冷えたゼリー!
「夏山で冷えたゼリーほど美味しいものはないよねー!」と言っている私。
本音を言えば合戦小屋名物のスイカの方が食べたいんだけど、ゼリーを消費して早い段階でザックを軽くしたい。
だからスイカの存在をワクワクさんには黙っておいた。
まんまとゼリーで喜んでいるワクワクさん。
さて、合戦小屋から燕山荘まではコースタイムで90分。
実は数日前ワクワクさんに
「今回の山行はそれなりに距離があるから体力付けておいてね」
なんてプレッシャーをかけていた。
すると素直なワクワクさんは、普段やらないランニングを一生懸命取り組んでくれていたそう。
これには凄く感激した。
その成果なのか、ここまで明らかにペースが早い!
私は既に疲労感はありまくりなんだけど、偉そうな口を叩いていただけに弱音が吐けない。
乳酸溜まりまくりの身体にムチ打って残りの登りを駆け抜けた。
というかハイテンションによるアドレナリン分泌で誤魔化した。
AM8:44
燕山荘に到着!!
登山口から約3時間だった。
相変わらず綺麗な山小屋だなー!
この日は日曜日。
多くの宿泊者が帰った後だからか、中では山小屋の従業員さんたちが大忙しで何か作業していた。
写真の奥に見えているのが燕岳。
この景色最高の場所で30分ほど休憩した。
今日は燕岳には行かず、行程的に余裕のある明日に行くことにしてある。
画面に写っている黄色いショーツのお兄さんたち3人組(1人写ってない)と前後しながら大天井岳へ進む。
彼ら速くて早々にちぎられたけどね…。
ここから先は大天井岳まで繋がるお楽しみの稜線だ。
大天井岳の手前に本日のテン場となる大天荘がある。コースタイムで3時間30分ほど。
表銀座なんて煌びやかな名前ができるほどの稜線に興奮し、足に溜まった乳酸が吹き飛んだ(気がした)。
ワクワクさんはワクワクしていた。
ここから表銀座
AM9:14
表銀座へいざゆかん!
稜線しゃべーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!
綺麗に伸びる稜線は僕らの想像を超えていた!
これは今回の山行の第二希望「綺麗な稜線を歩きたい」を文句無しに達成!
稜線の右側にはこんな景色も広がっている。
あまりの雄大さにここを下ってみたい気持ちにすらなった。
どこを切り取っても良い絵になるから写真を撮りまくってなかなか前に進まない。
ワクワクさんはテンションが上がり過ぎてシュウペイポーズを炸裂。
私はハマらなかったので特に触れずにスルーした。
にも関わらず、彼は山行中にチャンスがあれば何度でもやっていた。
ハートの強い漢、ワクワクさん。
いや、でもこの景色は確かにテンション上がるわ!
もう楽しくってしょうがない。
海外ですか!?っていうようなトレイルをここ北アルプスで味わえる。
北アルプス最高。
日本最高。
この日は暖かかったけど稜線は風が強く、薄手のベースレイヤーにウインドシェルみたいな組み合わせがベストだった。
とか言いつつ、自分はレインウェアがあればウインドシェル不要派です。
途中樹林帯に突入すると風が無くなるんで一気に暑くなったり。
なかなか温度調整が難しかった。
大天井岳へ近づいてくると岩っぽくなってきた。
すると大天荘までの最後の登りが見えてきた。
写真では分かりづらいけど、一旦下ってからはかなりの登り。
終盤にこれはやってくれるぜ。
その登りのちょっと手前に高度感のある梯子がある。
これを通過し、この見下ろせる位置でワクワクさんが通過するのを待っていた。
同タイミングで雨が降り始めたので、ザックカバーを取り付けたり色々と作業していた。
その時!
ジャッジャジャッ!
という聞いたことの無い音がした。
バッ!とワクワクさんの方を見ると、なんと姿がない!!
え!!うそ!!まさか滑落!?
慌てて叫んだ。
「ワクワクさん!!ワクワクさーーーーん!!!!!!!!」(実際は違う名前)
これぞまさに絶叫と呼ぶにふさわしい発声だった。
すると「なに?」と言いながら写真左下の影からワクワクさんが姿を現した。
とっくに梯子を通過していて、先ほど聞こえた音はワクワクさんがザックカバーを取り出していた時の音だった。
・・・・・マジで焦ったーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!
ワクワクさんは全く悪くない。
梯子を通過しているワクワクさんをちゃんと見ていなかったこちらが悪いのだ。
だけどワクワクさんが「どうした?」という顔でこっちに向かってきた時はイラっとした笑
ワクワクさんもデカい声で突然呼ばれてイラっとしたと思うよ。
梯子を通過して数分で分岐が出現。
本日のテン場である大天荘は常念岳方面が最短なのでそちらへ進む。
ここからは距離500mで標高差170mを登る。
最後の急登だ。
岩々してるなー。きっつー。
・・・・・・ん?
なんか動いてる・・・?
・・・あ!!
雷鳥いたーーーーーーーーー!!!!!!!!!
第三希望の「雷鳥が見たい」を達成!!!
マジで見れるんだから驚いたわー笑
どうやら写真のはメス、あと写真ではちゃんと写ってないけどもう一羽ずつメスとオスがいて合計3羽いた。
雷鳥を初めて見たワクワクさんは
「可愛いなー、たまんないなー、やったー!」
とリアルに感動していた。
俄然やる気の出た2人はガシガシ登る。
飛ばし過ぎて「グハァッ」となったけどもう大天荘はすぐそこ。
それにしても雲出てきたな・・・。
本日のテン場、大天荘!
AM11:30
燕山荘から約2時間20分で大天荘に到着!!
時間で見たら短いけど、存分に楽しんだ感がある。
看板の下にお食事のメニューがあるのは良いね。
疲れていたらお腹空いてなくても食べたくなっちゃうよ笑
小屋に入ってテントの受付を済ます。
テント場は現在1人2000円。
お菓子とか売ってて買いそうになったけど、まったりするにはまだ早い。
テントを建てて荷物をデポし、大天井岳へ行かなくては。
ここで、燕山荘付近で前後した黄色いショーツのお兄さん3人組とまた会った。
今から、来た道を戻るそうだ。
いいなー、最高の稜線をまた通るのか。
お気を付けて!
そんな会話をした。
本日のテントはローカスギアのハピ(シルナイロンVer)。
恐らくローカスギアで一番使われているモデルはクフだと思われる。
クフは基本は1人用、使おうと思えば2人でもイケるというサイズ感に対し、ハピは短辺を20cmほど広げた形状で、2人で使えと言わんばかりのサイズ感。
(クフ短辺160cm、ハピ短辺180cm)
また、出入り口がクフの場合は長辺側だがハピは短辺側という違いがある。
ハピの商品ページに書いてあるが「2人で使用する場合、従来のクフのように奥に寝ている人が外に出る際に手前の人をまたいで出るという煩わしさから解放されました。」とある。
実際に2人で使ってみると十分過ぎるほど広く、荷物の置き場に困らないし、テントの出入りでストレスを感じることはない。
にも関わらず、重量の公表値はクフ(シルナイロン)470gに対してハピ(シルナイロン)480gと10gしか違わない。
と、いうことでハピはかなり良いテントな気がしてるけど、何故かあまり見かけない。
まあ確かに、クフのあのガバッと長辺側が開く姿は格好良いよね。
綺麗に張れてワクワクさんもテンションが上がっている。
実はワクワクさん、まともなテント泊を経験したことがない。
私がアテンドして2回チャンスがあったが、2回ともひどい目にあった。
1回は北アルプスの蝶ヶ岳のテント場。
あまりの混雑で良い場所が無く、仕方なくテントの中に山の頂があるような場所に張った。
寝てはテントの端にずり落ち、起きてはテント中央の頂に登る。
そんなテント内登山を繰り返すというマゾを夜中に強制された。
もう1回は群馬の谷川岳馬蹄形の周回にて、残雪が多かったり、途中で雨が強くなったりで避難小屋に逃げ込み、テント泊は夢に終わった。
そして今回の山行だ。
ようやく、まともなテント泊ができそうでワクワクさんも大変喜んでいた。
ちょうど12:00になったころ。
さあ大天井岳を落とそう!
と、思ったけれど、2人ともお腹が空いていることに気付いた。
行動食を食べて我慢するか、それとも持ってきた食材で早めの夕飯にしてしまうか。
頭を悩ませて出た答えが…
大天荘でカレーを食う。
こんな場所なのにたった1000円で温かくてスパイシーで美味しいカレーが食べられるってね、最高。
こればっかりは下界での牛丼のコスパを遥かに超えちゃう。
この日は日曜日だったけど、お昼の時点では他のお客さんはいなくて、ほぼ貸切状態だった。
ふいー、満足満足!
こうなってくると今度はコーヒーが飲みたくなり、テント場に戻ってコーヒーを飲むことにした。
大天井岳のピークハントの時間はまだまだあるしね。
そしてテントに戻り、クッカーなどを準備している時、悲劇は起きた。
ビューッ、ババババッ!!!
テントに戻ってわずか2、3分だっただろうか。
急激に風が強くなってきた。
僕らがテントに戻るのを見計らったようなタイミング。
ザーーーーーッ!
ピカッ!
ゴロゴロゴロッ!!!
雨も降り、雷も鳴り始めた。
つい先程まであれほど穏やかな気候だったのに!
雷は遠くで鳴ってるけど、とりあえず山小屋の方に避難したいところ。
だけど風が強くていま出るとテントが飛ばされるかも。
風を受けている側をテント内から体で押さえたりしてやり過ごそうとするが、どんどん風が強くなってくる!!
「風がヤバい!!」
「WIND HARD!!!!!」
「ウインドハーーーーーード!!!!!」(僕が愛用している寝袋の商品名)
どのくらいそのまま耐えていただろうか、一向に風が治まってくれない。
天気予報を見てみると、風速が8mと出ていて、夜にかけて12mになると出ている!!
というか見返してみると事前の天気予報でも夕方から朝にかけて風速は7~11mと出てたじゃないか!!!
何でチェックしてないんだよ!俺のバカ!!
とにかく、これは仕切り直しのために外に出るべきだ。
しかし、あろうことか風上側に出入口を設けてしまったため、ジッパーを開けたらテントが根こそぎ持っていかれる恐れがある。
下手に開けられない。
「どうするどうする!?」
こんな時に、先ほど会話したお兄さん3人組の安否が気になった。
雨も強いし雷も鳴ってるし大丈夫かな?
いやいや人の心配をしている場合ではない!!!
さっきまでチャッピーだった我々は「山を舐めてはいけなかった」という気持ちで後悔しっぱなし。
このまま我慢し続けていても埒が明かないので、思い切って表に出て、テントも一旦回収することにした。
ちょうど雨が上がった!(風は強い)
「今だーーーーー!」
出入口を開け、1人はテントを押さえる係、1人は荷物を持ち出す係で瞬時に事を済ませた。
外に出て冷静に見回してみると、自分達がテントを建てた場所以外は、そんなに風が強くない気もする。
実は、テン場の中でも風が強い(抜けやすい)場所に張ってしまっていたのだ。
テン場に着いた時には風が穏やかだったし、疲れていて冷静な判断ができていなかった。
晴れ間も出たり、風も強弱があって落ち着く瞬間もある。
場所を変えて丁寧にペグ打ちすればなんとか一晩越せる気がした。
だけどここでワクワクさんからこう切り出された。
「どうせまともに寝れないから、もう小屋泊にしようよ。」
決断の早さがすごい。
こちらがテント泊したい旨を伝えても、もはや1人でも小屋泊すると言い出した。
この判断には、過去2回の失敗経験が少なからず含まれているのだろう。
「もう、お前の判断には頼らない。」
ワクワクさんの厳しい心の声が聞こえた気がした。
何だか申し訳なくなって、僕はこう答えた。
「小屋泊ご一緒してもよろしいですか。」
こうして、今回の山行での第一希望「高山でチャッピーなテント泊がしたい」は見事に崩れ落ちた。
ワクワクさんはいつになったらまともなテント泊が経験できるのだろうか。
大天荘に宿泊しちゃうよ
そうと決まれば話は早く、受付で小屋泊に切り替える手続きを済ませる。
素泊まりが1人9000円なので、テン場との差額1人7000円を支払い、係の方に山小屋内を案内いただいた。
ただし注意すべき点は、今現在(というか基本的に)小屋泊は予約制です。
今回はたまたま空きがあって宿泊できただけなのでご注意ください。
以下、大天荘のホームページより引用。
「※2021年度は、コロナウイルス感染防止のため、昨年同様収容人数を半分以下に制限の上、予約制とさせていただきます。空きがある場合は当日でもご宿泊いただけますので、事前にご連絡いただきご予約をお願いいたします。」
通されたのは「槍」部屋。
ヤリ部屋。
なんだ、音だけ聞くと不謹慎な部屋だな。ここは山の中だぞ!
それにしても6人部屋・・・!?
僕ら2人だけなんだけど。贅沢過ぎない!?
いいの!?
うわ~!ガッツリ3畳ある!
翌日が平日だからなのか、コロナの関係なのか、他の宿泊者がかなり少なくて、テントの件で憔悴(笑)している僕らには有難かった。
でも、ワクワクさんは繁忙期の山小屋というものを全く知らず
「6人部屋って書いてあるけどたったの3畳じゃん。どうやって寝るの?」
とか舐めたことを言っていた。
ワクワクの野郎…
こちらは係の方が手渡してくれたバンダナ。
燕山荘が100周年ということで、大天荘を含む燕山荘グループに宿泊の人に配ってるんだって!
すごい良いデザインなんですけど!これは嬉しい!!
コロナ渦で山小屋は大変だと思われる。
今回は思わぬ形で宿泊となったけど、色々と考えたら結果オーライと思えた。
さて、小屋泊に切り替えてからというもの気分は一気にチャッピーに。
山小屋の中を軽く散策。
他の部屋は「燕」だったり「常念」だったり、山好きにはたまらんネーミング。
この通り、7月初旬なのに靴がスッカスカ。
立派な乾燥室があって宿泊者が頻繁に出入りしていた。
登山雑誌がめっちゃ置いてあるーーーーー!!!
読もうかな!
ふむふむ、やっぱりPEAKS(ピークス)は面白いなー、って・・・・ん??
うおい!我らがゴ…CEOじゃないか!
全然意識しないで読んでいたら載ってたのでマジで吹いた笑
ちなみにだが、このくらいの時間帯に編集長(コータロー氏)と連絡を取り合っていたら
「YOU、その山行をBBGで書いちゃいなYO!」
と無茶振りされた。
そう、ここでようやく記事にすることを意識し始めたのだ。
さて、落ち着いたのでようやくコーヒータイム。
実は売店でお菓子も買ってたりする。
何気に今回の山行では第四希望が「テン場で美味しいコーヒーが飲みたい」となっていた。
テン場でないのが玉に傷だけど、正直なところ山小屋内の方が快適なので願ったり叶ったり。
実は私とワクワクさんはコーヒー豆を自家焙煎しちゃうほど大のコーヒー好きだ。
2人の山行ではワクワクさんにコーヒー係をお願いしており、持ってきてくれるコーヒー豆に私はいつもワクワクしている。
今回も本当に美味しいコーヒーを淹れてくれた。
その後ダラダラと過ごし、何気に大天井岳へのピークハントを忘れているが翌日に登れば無問題!
PM5:30
いつの間にか夕飯の時間になっていたので準備を始めた。
夕飯は私の係となっている。
仲間と山に行く時は、食事係になっていることが多いので、大きいサイズのクッカーを結構持っていたりする。
ちなみに今日はトマト味噌鍋だ。
味噌屋だから狙って味噌料理にすることが多い。
味噌は保存性の高さ・吸収の良さ・食欲をそそる香りから山メシに使うのは理にかなっているのだ。
鍋だから冬向きのメニューに感じるけど、これはトマトの酸味で夏でも食べたくなる味。
ブラックペッパーのよく効いたソーセージを使ったら、トマト鍋との相性が良くて、ハンパじゃ無く美味だった。
最後にご飯(サトウのごはんみたいなやつ)と大量のチーズを入れて贅沢なリゾットに。
これが本当に美味しくてワクワクさんは悶絶していた。
わざわざ重たい荷物をここまで持ってきてるわけだけど、喜ばれると苦労が報われるわー!
そして食後にまたコーヒー。
今回の山行で合計4杯ずつは飲んだと思う。
そんなこんなで夜の8時頃には寝床についた。
なんだかドタバタだったけど贅沢な希望はほぼ達成!
第一希望だったテント泊が出来なかったけど結果オーライ!
2日目は後編で!
どうぞ読んで下さいね!
押忍!!