ダウンか化繊か?この時期のインサレーションジャケット選びは毎度悩ましい。そんな中、とうとうこの2強中綿勢力に割って入ってきた“第3勢力”が登場したのをご存知だろうか?それはマーモットが提唱する「ウールラップ」という素材。そう、ダウン、化繊の次は「ウール」の時代が到来するかもしれないのである。ファーストインプレコーナー第5回目の今回は、そんな“インサレーション三国志時代”の到来を告げそうな「クライムウールラップジャケット」をじっくり観察してみよう!
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Marmot「Climb WOOLWRAP Jacket」
新素材「WOOLWRAP(ウールラップ)」とは?
ダウンは軽くてあったかいけど濡れると途端にその機能を失う。
一方、化繊は重量・嵩張り・保温力はダウンに劣るけど濡れに強い。
どちらも一長一短なんだけど、最近は撥水のダウンが出たり、超軽量なのにダウンに匹敵する保温性の化繊が出たりと、その進化はめざましいものがある。
そんな中、この40年間で多くの新しいスタンダードを作り続けてきた「マーモット」が、ダウンでもない化繊でもない新素材で勝負に出た!
その答えは「ウール」!!
そのウールとポリエステルの混紡でできている中綿こそが、第3のインサレーション素材「woolwrap(ウールラップ)」なのである。
まずウールってのは、ご存知の通り非常に「吸放湿性&発熱性」に優れた素材。
体から発せられる水蒸気を吸って、その蒸気(空気)を蓄えて発熱して保温する。
一方で適度に熱気が外へ放出されるから、蒸れも少なく済んで行動中の体温コントロールにも適している。
しかも吸湿性が高いってことは、ベースレイヤーでメリノウールのものを着てれば相乗効果でかなり広範囲に安定した体温維持が可能となる。
そしてこのウールラップはそんなウール(ブリティッシュウール)に、さらにエコなポリ乳酸(トウモロコシのリサイクル繊維)が混紡されているのが特徴。
硬度のあるポリエステルが入ることによって、中綿の嵩が確保されて空気の層ができやすくなるってな寸法。
そうすることでより暖かい水蒸気(空気)が中綿にキープされ、ウールによって発熱された熱の保温効果が上がるという仕組みだ。
ウールラップはもちろん濡れてもダウンみたいに保温力は落ちないし、化繊のように気兼ねなく洗濯も可能。
吸放湿性&保温性に優れた、まさに第3のインサレーションなんですよ!
で、そのウールラップを中綿に封入して今期リリースされたのが、この「クライムウールラップジャケット」だ。
シンプルかつ、マーモットの伝統カラーを配したデザイン。
それではそんなクライムウールラップジャケットの仕様を、じっくりと見ていこう。
仕様
まず特徴的なのが、部分的に異なる素材が使用されている点。
まずウェアの大半を占めるこの青い部分の素材は、非常に通気性の高い素材でできている。
せっかく吸放湿性に優れるウールの中綿なのに、通気性が悪かったらその効果を最大限に発揮できないからね。
肌触りとしては比較的柔らかめで、かといってすごい伸縮性があるとか薄いってわけではなくしっかりした感じ。
この生地のおかげで、行動中の蒸れが少なく済んでオーバーヒートを防ぐのだ。
そして、前身頃上部から肩にかけては、バックパックなどの磨耗に対する耐久性に優れた素材が使用されている。
この部分は撥水・防風素材でもあり、多少の小雨や雪程度なら問題なく着続けられる仕様に。
体幹の保温という意味でも重要な箇所だ。
襟は結構広めに設定されていて、首の太い僕でも窮屈さは全く感じない。
実は最初「あんま首元が広いんじゃ熱が逃げちゃうんじゃない?」って思ってたんだけど、この襟の付け根部分がしっかりと首回りにフィットしているためちゃんと熱は逃げないようになっている。
しかも熱がこもった時に一番熱気が逃げていってほしい後ろ首部分だけ縫製のない状態になってるため、そこからはしっかりとこもった熱が出ていく仕組みになっていた。
適度な熱は残し、青い生地の部分で湿気を緩やかに逃し、こもった熱は首元から排出。
とてもよくできたデザインだ。
ポケットはこんな感じで、特にベンチレーション的な感じになっているわけではない。容量は結構大きい。
裾の絞りは片側のみに配置されており、グローブつけたままでも調整しやすい感じだ。
ファーストインプレッション
サイズイメージとしては、袖が長めで裾が短めっていう印象。
フィット感的にはぴっちりでもなくゆったりでもなくといった感じ。
アウターとしてもミッドとしても行ける感覚だ。
最初着た瞬間は、すぐにあったかいっていう感覚ではない。
動かない状態だと適温がキープされて熱くなりすぎない。
一方で実際にこれ着て階段を何度も上り下りしてみたところ、やはり早い段階で水蒸気を吸ってすぐにポカポカとあったかくなって行った。
ある程度動き続けても、ウールの放湿性+透湿生地+首元換気のおかげか蒸れにくかった。
ただ当然階段を何度も往復し続けると流石に熱くなる。
ってことで、ずっと着続けるというより、肌寒い時のスタート時や休憩時、風の吹く稜線上の行動時に最適だという印象だ。
一方で、より行動中に使いたいって人にはベストタイプもありますよ。
ウールという特性を考えると、保熱しすぎずに体幹の温度だけちょうど良くキープさせるこのベストタイプは、なかなか使い勝手がいいように感じた。
ちなみにこのウールラップのシリーズにはネックゲイターもあったりする。
これが想像以上に暖かく、嫌な感じで熱気もこもらない。
ボタンで留めるタイプなので、ヘルメットしてる時だったり、髪型崩したくないとか化粧落としたくないなんて人には便利だ。
デイリーユースとしても使いやすいね。
まとめ
てことで、「ダウンじゃ行動中着れない!」「化繊じゃ保温が物足りない!」なーんて人は一度試してみる価値があるこの「ウールラップ」という選択肢。
果たして今後ニュースタンダードとなり得るか?
さらに詳しく知りたい人は、こちらの動画をどうぞ。アップルの人っぽい人がしっかり解説してくれてます。
https://youtu.be/bEN3s7_gsuI
Marmot(マーモット)「クライムウール」シリーズ
※画像クリックでメーカー販売サイトへ
さあ、インサレーションの世界もいよいよ新時代に突入した感がありますね!
今後の展開も楽しみであります!
超余談ですが、これ着て階段上り下りした後で例の尿管結石を発症して入院しました。
階段降りすぎて、降りて来ちゃいけないものまで降ろしちゃったんですね。
僕にとってはそんな思い出の1着です。
それではまた山でお会いしましょう。
ユーコンカワイでした。