誰しも「こいつだけは失うわけにはいかない!失っても同じものを買う!」と言い張ってやまないアイテムがあるはずだ。例えば嫁とハードな喧嘩をして山や川に籠る時が来たとしても、僕はこれだけは必ず持って家を出よう思っている。それがロータスの「アルミポット」なのである。
パスタ?ホットサンド?しゃらくせえ!日本人なら米を食え!
そんなアルミポットを、お米にうるさい大塩平八郎さんが解説します。
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平成の大飢饉
こんにちは、大塩平八郎です。
今日は私とアルミポットとの出会い、そして美味しい炊飯のお話をさせていただきます。
当時民衆はとにかく米に飢えていました。
長年山や川でいろんな飯を食って来た彼らですが、どれもこれも何かが足りない。
基本的に「権藤・権藤・雨・権藤」を彷彿とさせる「ラーメン・ラーメン・パスタ・ラーメン」というお決まりのローテーション。
たまにアルファ米を挟んでみるが、はっきり言って美味しくないし力も湧いてこないのです。
それでもなんとか10年以上、民衆たちは我慢してそんな権藤スタイルで食い凌いで来ました。
しかし、ついに彼らの中の大和魂が「まーあかん!いい加減米食わせろや!」と暴動を始めたのです。
世に言う「平成米騒動」でございます。
しかし下界ならともかく、荷物制限のある登山のことも考えるとさすがに飯盒炊飯じゃデカすぎます。ソロ登山ならなおさらです。
そこで幕府は「じゃあその筋で人気のトランギアのメスティンでも与えておけ」ってことになったんですが、残念ながらこれだと今度は焚き火で使えないんです。
出典:Trangia
焚き火で使うには木に吊るせるような取っ手(ハンドル)が必要ですが、メスティンでは吊るせないし持ち手の部分のラバーなんて一瞬で溶けてしまう。
民衆たちはとにかくわがままで、登山でも川や沢の焚き火でも炊飯できる物を求めていたのです。
そこで私は民衆のために立ち上がりました。
以下のような条件を満たす物で米を食わさないと、即座に米蔵に押し入って打ちこわししてやるぞと幕府に脅しをかけたのです。
それはのちに「大塩平八郎 五箇条の訴状文」と言われることになった、炊飯への愛がこもった訴えでした。
- 軽量コンパクトでそこそこ頑丈なもの
- 山でも焚き火でも積極的に使えるもの
- 1合炊ければ十分なお一人様用
- 熱伝導率のことを考えてチタンじゃなくてアルミ製のもの
- とにかく美味しく簡単に炊けるもの
この訴状文に対して心を打たれた幕府は、ついに重い腰を上げて「ニッポンの力」を結集して一つの製品を作り上げました。
それがロータスの「アルミポット」だったのです。
一揆の鎮圧
米の味に飢えた民衆たちは、すでに豪商の米蔵の前にまで押し寄せていました。
そして私が「いざ、打ちこわしじゃ!」と号令をかけた瞬間、「あいや、待たれい!」と幕府の役人が颯爽と現れたのです。
そしてその役人は我らの前に一つの鍋を置きました。
これに対しすっかり興奮してしまっている民衆たちは、「もうメスティンみたいなのじゃごまかされないぞ!焚き火で炊飯できなきゃ意味ないんだ!」と口々に叫びました。
しかしその役人は「ニヤリ」と笑ったかと思うと、無言でその場で焚き火を開始。
そして静かにその鍋の取っ手部分に流木を通したかと思うと、そのまま焚き火で炊飯を開始したのです!
どよめく民衆。
そこには私が「五箇条の訴状文」として上訴した条件を満たした、ありそでなかったお鍋の姿が展開していました。
やがて15分ほど鍋を火にかけた役人は、戸惑う民衆たちをあざ笑うかのように「蒸らし」を開始。
そして5分後。
役人は大声で「控えおろう!」と叫んだあと、静かにその蓋を取ったのです。
するとそこにはツヤッツヤの白米が、これどもかとふっくら炊けていたではありませんか。
民衆たちはその場で「ははっーー!」とひれ伏しました。
今まで泣く泣くラーメンやアルファ米で飢えを凌いで来た彼らにとって、それはもはや菩薩のご降臨のような光景だったに違いありません。
しかもあんなに激しい焚き火の中に無造作に放置していたにもかかわらず、まるで焦げていないのです!
いや、むしろ普通に炊けてるだけでも満足なのに、なんと鍋底のお米は「ちょうどいいおこげ状態」になってました。
これには感激のあまり流れ落ちる涙を止められない民もいたほどです。
例えるなら「キン肉マンの映画を観た直後なのにキャプテン翼も始まったよ!ああ!Dr.スランプまで!」といった“東映まんがまつり”の状態と言えば感激が伝わりやすいでしょうか?
ワナワナ震える民衆たちに対し、役人たちは追い討ちをかけるように次々とその炊飯力で暴動の鎮圧に打って出ました。
例えばこのように「重し」代わりに缶詰を置けば、吹きこぼれ防止&圧力鍋効果が上がるばかりか、焼き鳥もちょうどいい感じで温められるのです。
ノーおかずで白米だけでも十分な美味しさなのに、そこにホテイの焼き鳥やいなばのカレーなどを投入された日には民衆はもう打つ手がありません。
中には小憎たらしい役人もいて、秋鮭炊き込みご飯を作りやがった挙句にその場に落ちてた紅葉を添えるなどという風流さで攻めて来る奴もいます。
こんな雅なことをされては、今まで素朴なアルファ米しか食ってこなかった者は軽く混乱すらしてしまいます。
それは純朴な童貞野郎が突然マジックミラーだらけの車に誘い込まれ、とてつもなくレベルの高い女優さんの相手をさせられるようなもの。
嬉しいんだけど気持ちが追いついていきません。
それでもまだ強気な民衆はいるもので、「焚き火で炊飯できるのはわかった!じゃあ山での使い勝手はどうなんでぃ!」と食ってかかる者もいました。
すると幕府の役人は不敵な笑みを浮かべながらそっとタニタの計量器にアルミポットを置いたのです。
実測141.5g。
この計量さなら山に持っていくのは十分すぎる軽量さ。
しかも熱伝導率の高いアルミ製なので、固形燃料の炎のような「一点しか温まらない状態」ですらしっかり炊飯を可能にしてしまうのでした。
山でホカホカの白米が食えるというこの事実。
一度これを体験してしまったら、もう二度とアルファな世界には戻れないのです。
先ほど役人に食ってかかった民も、「あっしが悪ぅございやした…こないなうまい米は食うたことあらしまへん。堪忍…堪忍や…。」と大粒の涙を流して泣き崩れました。
幕府の役人も「苦しゅうない、さあ、面を上げよ。あったかいうちに皆で食おうぞ!」と民衆の肩を優しく叩いたのであります。
炊飯の改革
こうして平成米騒動は幕府によって鎮圧されました。
のちに「炊飯の改革」と呼ばれるこの政策によって、米の味に飢えていた民衆たちはすっかり黙り込み、各地の暴動も収束の一途を辿ったのであります。
それはお米の味にうるさい私をもってしても、「おひとり様用炊飯ここに極まれり!」と言わしめた最高の出来栄えだったのです。
それでは改めてご紹介しましょう。
こちらが幕府が示した起死回生の一手、ロータスの「アルミポット」であります。
今日までかなりヘビーに使い込んできたので、もはやラオウのような風格が滲み出てしまっております。
このように「使い込むほどに味が出る」アイテムは、アウトドアで生きる者にとってはたまらないロマン。
私はかねがね「米の美味しさを決めるのは水の量でも蒸らしの時間でもない。どれだけそこに“ロマン”があるかです。」と訴えて来ました。
現場においても、このようにダイレクトに焚き火に放り込んでこそロマンという名の旨味がアップします。
こういうことができるのも、0.8mmという「直接焚き火に入れても歪むか歪まないかの絶妙な厚み」が成せる技。
薄すぎてはベコベコになってしまうし、厚すぎると重量も重くなってしまいます。
そんな安心感もあり、私はパーセルトレンチとかの台は使わずに毎度直火スタイルを貫いております。
台を使わない理由はもちろん、そこに「ロマンがあるから」です。
おかげで何度かひっくり返して絶望にまみれた事もありますが、それすらも男のロマン。
空腹に耐えながら、なすすべなく燃えていく米を眺めるだけでも夢は満たされるのです。
少しだけ涙が出ますが、それもまた旨味の一つと信じております。
で、そんな炎の中から木を使って取り出すのに便利なのはやはりこの取っ手。
しかもこの取っ手、片方は全部倒れるけど、もう片方は途中でストップする構造になっております。
実はこれが何気に便利でございまして、ストッパーがないと持ち上げた時に中身が寄ってしまったりした時に重さでひっくり返ることがあるからです。
そしてこの申し訳なさそうにピロっと端っこについてるこの輪っか。
「お米が炊けたかな?どうかな?」っと中身を確認したくても、炎の中に鍋があったんじゃ蓋を開けるのは命がけの行為。
油風呂に入った富樫源次ばりの根性がない限り、誰しもがあまりの熱さに蓋を開けることを諦めてしまいます。
しかしこの輪っかに長い枝や割り箸などを差し込んで上げれば、ほれこの通り。
熱々の鍋に触れることなく、サクッと蓋を開けることが可能。
このあまりにも細かすぎる配慮には、民衆に対する幕府の愛を感じて涙を止める事ができませんでした。
こんな素晴らしいアルミポットですが、一時生産中止だったのか購入できない時期がありました。
私や民衆は即座に「アルミショック」に陥り、慌てて買いあさろうかと検討した事もありましたが、今では再び生産が安定してしっかり購入できるようになってます。
いい時代になったものです。
出典:Lotus
あなたはイタリア人ですか?それともアメリカ人ですか?
日本人でしょう?
だったら迷わず下のボタンを押すことを私はオススメするのであります。
相棒
おっと、もう一つ大事なことをお話しするのを忘れていました。
水谷豊に反町隆史という相棒がいるように、アルミポットにも重要な相棒が存在します。
炊飯において一番重要なのはロマンだと話しましたが、その次に大事なのはやはり「おいしい水」ですよね。
昔は男らしく川の水をダイレクトに使ってましたが、元々が下痢体質なくせにそんなことするもんだから、そりゃあもう毎回腹が長渕の「ろくなもんじゃねぇ」を熱唱するわけですよ。
そこで私はそれ以来、川に行く際は浄水器である「ソーヤーミニ」を持参するようになったのです。
プラティパスのウォーターボトルに川の水を入れ、先っちょにソーヤーミニを取り付けて水を絞り出して浄水します。
絵的にもサイズ的にも放尿感がハンパないですが、水はとっても綺麗になります。
しかも煩雑なフィルター交換などもする必要がなく、清掃も付属の注射器みたいなもの使えば簡単にできてしまいます。
さらにその使用用途は炊飯のみにとどまりません。
私の場合沢登りや川下りに水筒などは持って行かず、ソーヤーミニをポケットに入れておいて喉が渇いたら「ダイレクト補給」をかまします。
浄水だけでなく「ワイルドっぽい俺」という心酔作用までもが働いて、きもーちお水が美味しく感じられます。
ただこの給水方法は、ワイルドさと引き換えに腰を痛めてしまうという諸刃の剣。
四十を越えたら大人しく水筒を持参しましょう。
さあ、いかがでしたか?
ついつい私も当時を思い出して熱がこもってしまい、長話になってしまいました。
やっぱり日本人は美味しいお米食ってなんぼですよね。
米が食えないだけで「打ちこわし」やっちゃうほどの国民ですから、そうなる前に大人しくアルミポット持って山や川でしっかり炊飯しましょう。
ちなみにものすごい余談ですが、わたくし大塩平八郎の身長は何センチか知ってますか?
実は217cmです。
平均身長150cmだった江戸時代においては、もはや「進撃の平八郎」ですよ。
なんでそんなに大きいかって?
もちろん…
米食ってるからですよ!
それではみなさん。
山でも川でも美味しいお米を食べましょう。
大塩平八郎でした。