「Endurance」=耐久・持久・忍耐・辛抱・我慢。この言葉に、さらに「Ultra」という冠を施したマゾヒスティックなシューズが存在する。それがノースフェイスが「雪上や気温の低い山岳シーンにおけるミドルからロングディスタンス用の寒冷地シューズ」という位置付けで打ち出した「ウルトラエンデュランスGORE-TEX」だ!秋冬のロングラン&ハイクにもってこいのこのタフ野郎を、家庭内でウルトラなエンデュランスを強いられてるマゾ仲間のユーコンカワイが徹底チェックである!
[toc]
The North Face「Ultra Endurance GORE-TEX」
タフで滑らねえやつはいねが!
2017年、BBGのシューズ選びの旅は難航を極めた。
スペックを見て、これは!ってやつを数多くピックアップして来たが、そのどれもが一長一短で「ベストバイ」を宣言できるシューズに出会うことができなかった。
BBGの基準が厳しすぎて、やたらグリップにうるさすぎるってのもあるんだけどね…。
そんな中「秋はロングハイク強化月間だ!」ってことで、行程がアホほど長い「信越トレイル」と「下ノ廊下(台風で中止になったけど)」への挑戦が決定。
そこでBBGが新しいシューズ選定にあたって出した条件は以下の通り。
- 100kmくらい歩き通してもへっちゃらなタフさ!
- ファストハイクだからそれなりにちゃんと走れるやつ!
- 軽装につき、動きやすさ重視でローカットのもの!
- 秋冬に向けた寒冷地使用に耐えうる防水性と防風性!
- もう滑るのはごめんだ!確実にグリップ力の優れたやつ!
その条件を元にほうぼう探し回った結果、一足のシューズにたどり着いた。
それが大御所、ザ・ノース・フェイスの「ウルトラエンデュランスGORE-TEX」だったのである!
商品名からして「超忍耐(UltraEndurance)」ってのがいいじゃない。
養子&鬼嫁&言うこと聞かない子供たちに囲まれて、家庭内で「超忍耐」を強いられる僕にはもってこい。
このシューズならご両親の前で嫁から「おい、そこのハゲ野郎」とか「死んだ魚の眼の男」と言われても、頑強に持ちこたえられそうな雰囲気。
まさにユーコンカワイモデルと言っても過言ではない、この「超忍耐」シューズを早速じっくり見て行こう。
フィット感
こいつのフィット感に対しては、なかなか一概に「こうだ!」と言えない不思議さがあった。
まず先に僕の足型から言っておくと、甲低・幅細め(ワイズE・ギリシャ型)の実測26.5cmで、普段は27か27.5cmのシューズをチョイスしている。
自分の足型がわからない人は以下の記事を参考にするといいだろう。
[kanren postid=”4798″]
その上で、まずノースフェイスのシューズは全体的に“細め”なのが特徴だ。
御多分に洩れず、このウルトラエンデュランスも細めの設定。
今回は27cmをチョイスしてワイズEの僕でジャスト、もしくはややきつめな印象(前後はちょうどいい感じ)。
履いた時の感覚としては「親指には余裕があるけど、小指から小指の付け根に対して少々きつさを感じると言った印象。
最初慣れないうちは、ちょっとこの辺りが痛くなることはあった。
しかしここも後述するが、「靴の馴染み」と「靴ひもの調整」で気にならないレベルにまで緩和できる。
一方、インソールを見るとわかるが、エジプト型にも対応しつつ人差し指が突出した僕のようなギリシャ型にも適合する足型。
逆にボックス型(少ないけど)やワイズE以上の幅広の人には合わないかもしれない。
そしてアーチの部分は、激しくはないけどやや高めの設定。
扁平足の僕はここが上がりすぎてると、靴内で何度かずれ落ちて暑い時期の長距離だと擦れて火傷的な感覚になっちゃうんだけど、この高さなら問題はなかった。
実際に長時間履いた上でもそこに関する不満感は一度も感じたことはなかった。
そしてシューレースシステムが秀逸、と言うかこのシューズの肝に感じた。
まず調整が非常に固くて、一度セットしてしまえば少々のことでは緩むことがない。
それは一方で脱ぎ履きがしにくいと言うデメリットもあるが、履いてる時間のが長いんでそこは豪快に目をつむっておく。
他のシューズにも言えることだが、このシューズは特に「靴ひもの調整次第でだいぶ表情を変える」と言うのが僕の印象。
全体をきつく締めると靴中での足のズレは減るんだが、やはり前足部分の締め付けが気になるし、甲も痛いしベロ部分も痛くなる。
一方で緩めにすると前足の締め付けがなくなって楽に歩けるが、不意に足が斜めったりすると靴内で足が動いたり、かかとが少し浮くような感覚になる。
そこで僕が信越トレイル80kmを通して見出したベストな結び方はこうだ。
これで足は疲れにくくかかとも浮きにくいしベロも痛くならない。
ただこの形だとどうしても足が斜めってしまうような時は靴内でグニンって足が動くことはあるが、大して気になる範囲じゃない。
ってことで、何が言いたいかと言うと、お店で試し履きした時「あ、これきついな、ダメ」と速攻で判断せず、色々と靴ひもの絞り方を変えて試してみて欲しいんです。
正直僕も第一印象は「足先ちょっときついな。多分80km歩いてたらそこらじゅう痛くなるかも…」なんて不安に思っていたが、実は今では僕の足にすっかりシンデレラフィットしている。
ある程度距離を歩いて靴が足に馴染み、靴ひものベスト位置を見出せた時、こいつは初めて「真の相棒となる」のだ。
花の慶次で言えば、慶次が暴れ馬の松風をあやしたあの感じ(わかる?)。
恋人に例えるとしたら、最初はツンツンしててちょっときつめな印象の子でも、長く話し込んで理解が進むほどにデレデレしてやたらくっついて(フィットして)くるという可愛らしさ。
履き始めは菜々緒だったのに、80km後にはさとう珠緒になってる感じだ。
先日アツシオガワもこれ履いて餓鬼岳に登ったんだが、やはり「最初は違和感ありました」と言ってたのに「本当だんだん馴染んで来ました。今は形状記憶シューズみたいにフィットしてます。」と感心していた。
ちなみに靴ひもの結び方は「ロングハイクメイン」なのか「ランニングメイン」なのかでベスポジは変わってくるんで、そこは自分の用途に合わせて徐々に合わせていくといいだろう。
ちなみにこのフラットな靴ひものおかげで、甲に対する圧力も軽減されている。
この辺りも何気に地味にいい仕事をしていたりするのである。
ホールド感
まずかかとのホールド感に関して。
かかと部分は「ウルトラプロテクトヒールテクノロジー」ってのと、下部にはかなり固い「クレイドルテクノロジー」ってのが採用されている。
これはノースさん曰く「着地時の踵にかかる衝撃を吸収して和らげ、快適な歩行を促します。踵を囲むようにサポートパーツを配置し、その中央にクッション素材を入れることで、 シューズ内での踵のポジションを安定させます。」てもの。
ただ僕の場合、着地時の衝撃緩和よりも、この「ダブルかかとカチカチテクノロジー」のおかげで、ハイクアップ時に「固く包まれるおかげで、かかとにストップかかってずり落ちずに前に押し出される感覚」って方に恩恵を感じた。
これは従来のトレランシューズになどには感じたことのない感覚で、割と好きな感覚。
ただ急登が長く続くような時は、もしかしたら靴づれの原因にもなるかもしれない。
実際80km歩いた時はすこーしだけ左のかかとが靴擦れ気味になった。
あと当然伸縮性はないんで、下りの時にちょっとだけかかとが浮くような感覚がたまにあった。
でも考え方を変えると、80kmも歩いて「たったそれだけで済んだ」って言うメリットの方のが強く感じている。
ちなみに80km歩いて気になったのはそれくらいで、他は一切痛くなることもやたら疲れるってこともなかった。
続いて足首のホールド感に関して。
足首周りのクッションはこんな感じで、厚くもなく薄くもなくって感じ。
ベロの部分はこの独特の「ガゼットタン」ってやつで、かなり薄めになっている。
これに関するメリットは、まあ履いた後で引っ張りやすいってことくらいで、
逆に靴ひもを締め付けた時の下りの時に、クッションがないからちょっと痛く感じたこともあった。
この辺は靴ひもで調整可能だが、ベロ付近の紐を緩めることでどうしてもかかとが浮きやすくなるので、ここは普通のクッション付きベロでもよかった気がする。
ちなみに何度か走ってもいるんだが、元々ランニング想定で作ってあるシューズってこともあって総じてとても走りやすかった。
ただ前述の通り若干靴の中で足が動くんで、その辺りの踏ん張りを気にする人はうまく靴ひもを調整してやるといいだろう。
クッション性&推進力
長い距離を走ったり歩いたりってこととなるとある程度のクッション性は欲しいところ。
ここまでBBGがテストして来たファイブテンやイノヴェイトはミッドソールが薄めなので、やはり長時間は足の疲れに影響が出てしまっていた。
このウルトラエンデュランスは圧縮成型EVAミッドソールで、クッション性と言う意味では上記2足よりも優れているが「可もなく不可もなく」といったところ。
ホカオネオネのようなとんでもないクッション性はないが、正直足に疲労が溜まったり不快に感じることはなかった。
逆に言えば、スピードラン&ハイクっていう面ではこの程度のクッションのがいいのかなとも感じた。
個人的には「もう少しクッションあってもよかったかなあ」とは思ったけど。
また下からの突き上げを予防するシャンクには「スネークプレート」という蛇腹式のものが採用されていて、横からのねじれに強い仕様となっている。
一方でその横方向への蛇腹式のおかげで、縦方向への湾曲には柔軟に対応していた感じがあった。
以前紹介したイノヴェイトの湾曲部分と比べると、広く、そして段階的に湾曲してくれるのがよくわかる。
ソール自体は固く安定感があるのに、しっかり段階的に曲がって反発してくれるから、推進力にも繋がった。
これなら踏ん張りも効くし、接地面も多いから、蹴り出してしまうような歩き方の僕でも最後までグリップが効いてくれたのだ。
この「固めのソール+横歪みに強い(岩場で安心)」+「縦柔軟湾曲(推進力)」のおかげで、ハイクから岩場まで広範囲に足さばきをサポート。
逆に言えばクッション性含めて全ての面で突出した特徴ってわけじゃないんだけど、オールマイティーな状況にアジャストできるシューズ。
そういう意味でも、変化の激しいロングラン&ハイクにはもってこいの仕様だと感じた。
ただここ、割と曲がりがいいもんだから、しゃがんだりする時にアッパーがグニャってなって小指の付け根がが痛かったりする。
歩いてる時は大して気にならないんだけどね。しゃがんだ時だけ。
ちなみにソールの反りはこんな感じで、そこまで反った形状ではない。
つま先と踵のドロップ差は8mm。
フラットフットに慣れた人には違和感あるだろうけど、一般的なシューズに慣れてる人には履きやすい高低差だ。
グリップ力
さあ、来ました、BBGが最もうるさいグリップ力。
アウトソールのパターンはこんな感じだ。
ウルトラエンデュランスは、もうすでにBBGが「滑らねえソール」と認定しているビブラムの「メガグリップ」を採用している。
とはいえ、同じメガグリップでもソールのパターンによっては滑りやすいものもあるので、その辺りがチェック項目。
例えば以下3足はいずれもメガグリップを採用しているものだが、ソールパターンは三者三様。
左の黄色の矢じり型ものは「推進力系グリップ系」で、右の黒の吸盤型のものは「岩場に強いグリップ系」ってことはすでに実証済み。
そしてどっちかと言えば、矢じり型の方が全体的にグリップは良いというのがBBGの見解。
もうすっかりグリップマニアになりつつあるBBGとしては、ウルトラエンデュランスのソールパターンを見た瞬間「あ、コレキタ!」とビビビッと来てしまった。
そもそもツルツルのフロアを歩くときの音が「ゴファッ、ゴファッ、ゴファッ、ゴファッ」って感じで、「こりゃあ滑らねえぞ」って期待を抱かせてくれる。
そこで今まで別の素材のアウトソールで滑りまくって来た砂礫帯の登りや微粒な砂がついた岩場などで、いざテスト。
滑らない!
わざと最後蹴り出すような歩き方をしても、メガグリップ+縦柔軟湾曲のおかげで接地面もキープできて滑らない!
少々滑りやすい岩場もなんのその。
今までならズルズル滑ってたような砂のついた斜度のある岩場でも無問題!
当然岩稜帯においても、安心して歩みを進めることができる。
薄々わかっちゃいたけど、やっぱりすげえぞビブラムメガグリップ。
そして矢じり型のソールパターンの素晴らしさよ。
最近めっきり滑るソールの靴ばっか履いてたから、なんかもうそれだけで幸せ。
余計な踏ん張りせんで済むから体力も温存できるし、安心して岩場も攻められる。
濡れた岩場でも結構なグリップ力を見せつけてくれた。
雪の道でもソールパターンが深く雪を噛んでくれて比較的滑らない。
ただ、この世に絶対に滑らないソールなんて存在はしない。
やっぱり登山者が通りまくってツルツルになっちゃってるような岩ではさすがに滑ったし、
雨でぐっちゃぐちゃになった道なんてもう、メガグリップは無力化して滑りまくること。(この状況だとどんなソールだろうと結果は一緒ね)
濡れた木なんて当然ツルンツルンだ。
ってことで当然100%滑らないってわけじゃないが、「ビブラムメガグリップで矢じり型パターン」はBBG的には猛烈にオススメしてしまいたいのである。
耐久性&防水性
なんせ名前が「超耐久」なんだもの。
80km、割と過酷な状況の中、4日間で合計32時間くらいぶっ通しで履き続けたにもかかわらず、目立った外傷や破損は一切なし!
ここ最近履いてた靴は数回の使用で必ずどっかにほころびや剥離なんかがあったけど、ウルトラエンデュランスはタフそのものだった。
まず第一の理由として、つま先についた厚手の「がっちりバンパー」の防御力。
ほんと、大げさに言えば車のバンパーみたいで、その辺の岩に思いっきりつま先キックかましてやっても大丈夫ってくらい強靭。
そしてアッパーのこのメッシュ部分もなかなかに強靭。
何度かこの部分に思いっきり枝が刺さったり石にぶつけたりって場面があったけど、それでも問題なし。
そしてメンブレンはゴアテックスで、当然防水性には問題なし。
信越トレイルでも一日中雨に降られたり、泥の中にシューズ全没の場面もあったけど、見事に内部への浸水はなかった。
これは相当行き過ぎな感じだけど、ここまで行っても浸水はないってことなんで安心ね。
ただ高地や寒冷地用というコンセプトで作れらてるんで、夏場の低山で使うとそこそこ中は蒸れるかも。
その分、秋山やちょっとしたスノーラン程度なら十分これでこなすことができる。
実際に11月の北アルプス餓鬼岳では、そこそこ雪も積もっていたが、全然これで行けた。
もちろん保温材入ってるわけじゃないんで寒いけどね。
トレランシューズのような頼りなさもなく、しっかりしてるのに実測「344.5g(片足/27cm)」とこのスペックとしては軽量である。
まとめ
BBG二人の感想は、「なんだかやっぱノースフェイスだなあ。しっかりテストしてしっかりしたもの作ってきたよ。大きな隙がない!」って感じ。
コンセプト通り、秋から初冬のロングラン&ハイクにこれほど適したシューズはないんじゃないだろうか?
なんだか久々にBBGで、堂々と「このシューズはオススメだ!」って言えるものに出会った気がする。
もちろん足型に寄って来るところは大きいが、ワイズE以下の細さの人にはわりかし広く対応可能な印象。
メガグリップのソール自体は耐久性がそんなにあるものじゃないけど、シューズ自体の耐久性を考えると、割と長く、そしてハードに使用していくことができるシューズじゃないでしょうか。
長期のロングハイクや、無雪期のアルプス縦走、初冬のライトスノーランまで。
きっとウルトラな忍耐力であなたの足元を支えてくれることでしょう。
The North Face(ノースフェイス)「Ultra Endurance GORE-TEX(ウルトラエンデュランス ゴアテックス)
アッパー | ゴアテックス®メンブレン、TPU&スエードミッドフッドサポート、プロテクションTPUトゥキャップ、ガゼットタン | |||
ボトムユニット | ULTRA PROTECT™ヒールテクノロジー、圧縮成型EVAミッドソール、Vibram®MEGAGRIPアウトソール、ESS Snake Plate™フォアフットプロテクション | |||
ファンクション | ヒール 17mm/フォアフット 9mm/オフセット 8mm/ミドルからロング向け/クレイドルテクノロジー/Vibram®メガグリップアウトソール/GORE-TEX®防水シューズ | |||
サイズ | 7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、105(USサイズ) | |||
重量 | 平均重量:322g(9インチ/片足) | |||
カラー | (BA)シャディーブルー×アシッドイエロー | |||
メーカー価格 | 20,000円+税 | |||
BUY NOW | メーカーサイト |
もしこのウルトラエンデュランスにミッドタイプが出て、メンブレンがゴアサラウンドなんてのが出た日にゃ最強じゃないだろうかな?
あとはもう少し中で動かないレベルのフィット感が備わって、ミッドソールとベロのクッション性が上がったら、もうある種それが答えなような気がする。
なーんてのが実は既にノースさんで「ウルトラ GORE-TEX サラウンドミッド」ってのが出てたりするだけどね。(約1万も高いから今回はテスト断念…いつか履きてえ!)
そう考えると、このウルトラエンデュランスがやっぱトータルバランス良いかな。
さあ、ロングトレイルで使うもよし、無雪期のアルプスで使うもよし。
せっかくの「超忍耐」シューズ、このくらいまで使い込んでやってなんぼですぜ!
ハードな遊び好きのあなたも、鬼嫁持ちの旦那も、心に強い忍耐力を!
僕もいくら嫁から「この顔でかプリケツ野郎!」とか「ヒルに食われて死んでこい!」って言われようとも、強いエンデュランスで乗り切ってみせる!
それではまた山でお会いしましょう。
耐え忍びすぎて白髪だらけになってしまった男。
ユーコンカワイがお送りしました。