かつて世界中が驚き絶賛したプレヒート不要の革新的ガソリンストーブ「MUKAストーブ」。その発表からおよそ7年。MUKAを生み出したSOTO(新富士バーナー)が2018年3月、満を辞して発表したのが“マルチフューエルストーブ”の「ストームブレイカー 」だ。その名の通り「嵐をものともしねえ!」ってな自信作。こいつは再び世界を震撼させてしまうのか?BBGがリアル目線でレッツファーストインプレッションだ!
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SOTO「Storm Breaker(ストームブレイカー)」
君はあの「地獄絵図」を覚えているだろうか?
そう、2月半ばの厳冬期、入笠山で行われたイベントでのあの「豚汁拷問の悲劇」の事だ。
当時30人分の豚汁を3つの鍋で作っていたが、本厄ユーコンのせいで現場は大寒波&寒風祭りに。
ガス缶は寒冷地用のものを使用して保温カバーもしていたにも関わらず、あまりの寒さのために全てのバーナーの火力が全く上がらずにいつまでも沸騰しないというまさか。
そのせいでタイムアップによって5人の途中撤退者を輩出してしまい、ガスバーナーも2台が機能を失って残すところ1台に。
その虎の子の1台を必死で守りきり、なんとか豚汁の完成までこぎつけたんだが…
豚汁はぬるい状態で、大根なんて「たくあんじゃねえか!」と叫んでしまったほどにカチカチだった。
もうこの時のような悲劇を繰り返してはいけない。
このような「遭難の記録」から我々は多くを学ばねばいけないのである。
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そこで我々は「流石にそろそろガソリンバーナーが欲しいな…。寒さに強い子はいねが?風に強い子はいねが?」と模索し始めた。
そんな時である!
あのMUKAストーブで一斉を風靡したSOTOが、7年ぶりに強烈なガソリンストーブを出すという情報をキャッチ。
いや、正確にはそれはガソリンでもガス缶でもどっちも行けてしまうという、「マルチフューエルストーブ」という新ジャンル。
それがこの、「ストームブレイカー」だったのである。
まさに寒さに強く、風に強く、そして両刀使いという、大谷翔平みたいなマルチ野郎。
果たしてこの大谷くんのプレーはBBGを満足させてくれるのか?
いざ、ファーストインプレッションの開始である。
セット内容を見てみよう
ストームブレイカーのセット内容はこんな感じ。
- 箱
- スマートポンプ(実測170g)・・・ガソリン時使用
- バーナーヘッド(実測225g)
- ガスバルブ(実測55g)・・・ガス缶時使用
- 袋
- 説明書
- バーナーベース(実測10g)
- メンテナンスキット
3のバーナーヘッドを基準にして、ガソリン時は2を、ガス缶時は4を携行する。
なので実際には、ガソリン使用時のバーナーセットは「実測396g」。
同社のガソリンストーブ「MUKAストーブ」に比べたら63gほど重い。
じゃあ重量アップした分何が違うかって言ったら、ガス缶に対応してるって事はもちろん、やはりその商品名通り「耐風性能」が格段にアップしている点だ。
炎が出る口がなんと300個も空いており、形状もすり鉢状になっているため(山なりになってるMUKAとは逆の形状)、風の影響を受けにくいヘッドとなっているのだ。
ただ構造上の問題なのか、火力に関してはMUKAの4,000kcal/hに対して、ストームブレイカーは3,000kcal/hと低下している。
数字上は低下しているが、状況によっては耐風効果が上がった事でトントン…なのかな?(100万パワーのウォーズマンより95万パワーのキン肉マンの方が火事場のくそ力がある分強かったという原理と同じ)
って事でMUKAと比較した時、「ガス缶対応+耐風性」=「63gの増量+火力低下」をどう捉えるかはあなたのスタイル次第やね。
一方、ガス缶使用時のバーナーセットは「実測282g」。
これも「単体」で考えた時、正直決して軽いわけではない。…てゆうか重い。
アツシオガワも愛用する同社のウィンドマスターなら「67g」で済んでしまうところ。
じゃあこれも重量が重くなった分の利点は何?って考えると、「圧倒的な耐風性」「寒冷地にも強い」「火力が強い」って事が挙げられる。
ウィンドマスターだと火力は2,800kcal/hだが、こっちは耐風性が強い状態での3,000kcal/h。
で、その火力アップに貢献してるのが、この「ガス缶ひっくり返っちゃってるぜスタイル」なのである。
まさに「6を9にする」という発想でキン肉バスターを破ったバッファローマンのようなファイトスタイル。
こうすることによってガスが液のままホースを伝ってジェネレーター部分に達し、そこで気化するからガス缶が冷えても威力が衰えないってな寸法だ。
って事でこれもウィンドマスターと比較すると、「ガソリン対応+耐風性+寒冷地仕様+火力アップ」=「215gの増量+かさばる」ということになる。
これもどう捉えるかはあなた次第なのである。
別売り付属品は何がいる?
当たり前だが、バーナーセットだけあっても火はつかねえ。
ここでは揃えるべき付属品と、あると便利な付属品を見ていこう。
- 広口フューエルボトル
- ポータブルガソリンボトル
- ガス缶(パワーガス・トリプルミックス)
- ライター(ガストーチ)※基本的に自動着火機能は付いてないから必須。
まずはガソリンを手に入れないと何も始まらない。
ストームブレイカーで使用できるガソリンは「レギュラーガソリンとホワイトガソリン」。
安価でどこでも手に入る自動車用のレギュラーガソリンが使えるってのがまた強みで、何かと高かったり中途半端にガスが残っちゃうガス缶に比べてはるかに経済的。
消防法に適合しているSOTOのポータブルガソリンボトルをガソリンスタンドに持って行き、スタッフの人に声を掛ければガソリンを入れてもらう事ができる。
で、次にフューエルボトルに必要な分だけガソリンを移すわけだけど、ボトルに満タンに入れちゃダメ。
700mlのボトルで言うと、入れていいのは最大で480mlまで。
なんでかって言うと、圧力を入れるための空気室ってのが必要だからっす。
で、こいつにスマートポンプを差し込んでセット完了。
この「工業感」がなんとも男心をくすぐりますね。
一方ガス缶の方だけど、SOTOのガス缶は「プロパン、イソブタン、ノルマルブタン」という沸点が異なる3種のガスが配合されたトリプルミックス仕様。
この3種のガスがミックスされたガス缶はSOTOだけで、寒冷下はもちろん刻一刻と変化する気温条件の全てに対応できる優秀さ。
男塾で言えば「雷電・飛燕・月光」が1缶に配合されているに等しい仕様で、相手がどんな奴でも安心して出撃させられるのである。
ストームブレイカー 着火方法
ガソリン使用時
さあ、準備は整ったんで実際に着火してみましょう。
MUKA同様、従来のガソリンストーブに必要だったプレヒート(余熱)作業は必要ありませんよ。
まずは下に熱反射効果のあるバーナーベースを敷き、その上に五徳を開いたバーナーヘッドをセット。
次にコントロールダイヤルがロックされてて「Stop」の位置にある事を確認し、
レッツポンピング!
ポンピングの目安はおよそ70回(ボトルの大きさ、給油量によって異なる)。
従来のものだと内部にどれくらい圧力が得られたかわかんなかったが、ストームブレイカーにはありがたい機能が備わっている。
それがこの圧力インジケーターのボッチ部分。
ポンピングして中の圧力が上がってくると、このボッチがニョキニョキと出てくるのだ。
ここを我々は勝手に「乳首」と命名し、「どう?乳首立ってきた?」「まだ行けそうです。」なんてセクシーな会話を繰り広げていたのである。(西穂独標の記事参照)
中の圧力が十分になると乳首に刻まれた赤いラインが出てくるから、それを確認したら次はバーナーヘッドから伸びるホースとの接続だ。
スライドリングをスライドさせながら接続し、離すとカチッとロックされる仕組み。
あとはスタビライザー(土台)を下にして、ボトルを水平なところに横にしたら準備完了。
ううむ、このいかにも「山やってます!」感がたまんないっすね。
で、ダイヤルを引っ張ってロックを解除し、「Start」に切り替えてシュゴーっとガスが出てきたらライターで着火。
着火直後は不完全燃焼で赤い炎が立ち上がります。
ここから約40秒ほど(外気温や風の影響で変動)で炎が青くなるまで待ち、炎が青く落ち着いてきたら、
ダイヤルを「Run」モードへチェンジ!
あとは「Run」のツマミで強火や弱火を調整します。
連続燃焼を維持させるため、追いポンピングを行えばさらに火力は安定します。
消火の際はダイヤルを「Air」に切り替えれば、空気の放出とともに徐々に消火していきます。
消火を確認したら「Stop」に戻して完了でございます。
ガス缶使用時
簡単になったとは言え、やっぱり普段ガソリンバーナーを使用してない人からすると「めんどくせ!」って思った人もいるかもね。
でもガス缶の方ははるかに簡単。
まずガスバルブをガス缶にセットして、足をジャキーンジャキーンと開いてやる。
バーナーヘッドのホースとの連結はガソリンの時と一緒。
ガソリンとガス缶とで、いちいちノズルを交換しなくても良いのがこのストームブレイカーの最大の特徴だ。
あとは通常通りツマミをひねってガスを出してライターで着火するだけ。
で、ここからが見せ所。
着火して5秒くらいしたら、ここでバッファローマン流「ガス缶ひっくり返っちゃってるぜスタイル」へとチェンジ!
その途端、面白いくらいに火の勢いが増して炎が安定するのだ。
ね、ガス缶の方は超簡単でしょ?
消火する際はガス缶を元通りにひっくり返してから、ツマミをひねって消火すればいいっす。
ファーストインプレッション動画
ガソリンストーブとかに慣れてる人はいいけど、普段ガス缶ばっかの人でも扱いは簡単なのか?
って事で、ガソリンストーブ童貞のBBG二人が「箱の開封からお湯を沸かすまでの模様」を動画で撮ってみました!
せっかくだからと、あえて猛烈な強風が吹く日をチョイス。
撮り直し一切なしの「リアル」な模様をお送りします。
(注:強風下を選んだはいいけど防風マイクすら用意しておらず、動画は風の音に支配されて声が全然聞こえないっす。テロップ入れてるんでそれ読んでね。そして内容的に「深夜番組感」溢れるグダグダさがありますが、どうか暖かい目で見守って欲しいのであります。)
まさかまさかの「ストームの中ではお湯が沸騰しなかった」という事実。
まさにリアルを追求するBBGらしい結果になってしまって、「これじゃ入笠山と変わんないじゃないか!」という模様が撮影されてしまった。
はっきり言えることは「確かに耐風性は高くて風で火が消える事はよっぽど無いが、やっぱ風で火があおられるために強風下では絶対に風防が必要だ!」ってこと。
そもそもMUKAストーブには風防が標準で付属されてるのに、なぜかこのストームブレイカーには付属されていない。
風防を持ってない人は、風防もセットで購入することを強くオススメします。
というか標準で付属してほしいっす。
あとは一番どうにかして欲しかったのはユーコンカワイのモノマネのセンスですかね。
あれはどんな風防で囲んでも寒風が吹き抜けること必至です。
現場テスト
平地でのファーストインプレ動画はまさかの結果になったが、それを踏まえて現場でもテストしてきました。
場所は2,367mの冬季北アルプス西穂高山荘テン場と、1,100m付近の雪原。
ともに2〜3人用の鍋を作るという状況だ。
まずガソリンの方から順を追って感じた事を書いていこう。
まず現地でフューエルボトルにスマートポンプをセットする際、高所でそれなりにボトル内の気圧が上がってるから、キャップを外す際にバシュッとガソリンが漏れた。
これによりテント内とダウンパンツがもれなくガソリン臭にまみれることに。
説明書には書いてないんだが、これってあらかじめフューエルボトルにスマートポンプをセットした状態で持って行った方が良いんだろうか?
一連の細かい作業は、ごついグローブを着けたままでもノンストレスでこなすことができた。
冬季に出番が多いであろうガソリンストーブにとって、これは大きなアドバンテージだ。
五徳に関しては、大きな鍋を乗せても安定感は抜群だった。
今までは別で鍋用の土台を持参してたんだが(こいつのことね↓)、おかげでそいつを持っていかずに済んだ。
この土台分の重量が減ることを考えると、多少の重量増でもやっぱ大鍋料理の際にはストームブレイカーはアリアリだと感じた。
で、一番心配だった「ちゃんとお湯沸くんですか問題」に関して。
そこまで風が強く無い中だったが、やっぱ風防つけたら抜群の安定力とパワーを見せつけてきたストームブレイカー。
もちろんなんの問題もなく、スピーディーに沸騰。
やっぱ風がない状況や風防ありきの状態なら安定した威力を発揮。
動画では全く沸騰しなかったビッグサイズの黄金の鍋も、かなりスピーディーに沸騰!
おかげで「食材が柔らかい」という、当たり前の幸福に包まれることができた。
雪から水を作る作業も難なくこなせましたよ。
ちなみに音に関してはそれなりにするけど、従来のガソリンストーブのイメージよりだいぶ静かに感じました。
使用したガソリンの量は、夜に二人分の鍋、翌日昼に二人分のラーメンを作って食べたんだが、だいたい白い点線のあたりまで減ってて200mlくらい使用したんかな。
メーカーサイトには「480mlで1.6時間燃焼」が目安と謳ってあります。
他に気になった点で言えば「タイムラグ問題」。
ツマミで弱火に調節するんだけど、ツマミを回してからそれが火力に反映されるまでの間に時間差があって慣れるまで時間かかりました。
「あれ?まだ弱くならない」ってどんどん下げてって、「あ、弱まった」と思って放置してるとそのまま消えてることも。
これ、消えてること気づかずにそのままだとガスが出っぱなしになって危険なんで、あらかじめ把握しておくことが大事だ。
あと「弱火の威力がそこそこ強い」ため、弱火で保温状態にするのがなかなかうまくいかなかった。
せっかくのカレー鍋も後半は煮詰まっちゃったり、底の方の具材が焦げてしまったり。
かと言って消火してしまうとすぐに料理が冷めちゃうんで、その辺りの調節がちょいと難しい。
ちなみに付属品のバーナーベースが結構良い感じ。
柔らかすぎず固すぎずで安定感も高く、ストームブレイカー使用時以外でも重宝しそう。
重量も10g程度なんで、普段からアルコールストーブのベースとして使用しても良いだろう。
ただ雪上では、鍋の重量やバーナーの熱で雪に沈んでくこともあり。
冬季は100均の鍋蓋とか敷いてやると安定します。
一方、ガス缶の方はすこぶる調子が良く、バッファローマンスタイルにした時に火力がアップするのは何度やっても気持ちがいい。
低温化でガス缶が冷えるような状態でも問題ナッシング。
重量とかさばりを気にしなくて良い状況なら、間違いなくオールシーズン使用したい一品だ。
まとめ
ガソリンでもガス缶でも行けるストームブレイカー。
ただここでふと思ってしまうのは、マルチフューエルであることの必要性。
山の現場でガソリンとガス缶を使い分けるなんて状況はそうそうないだろうし、二つの燃料持っていくこと自体重量的にナンセンス。
正直3シーズンの登山ではガスバーナー、鍋する時や冬季はガソリンバーナーと、それぞれ単体で使い分けた方が個々の重量は軽くて済む。
SOTOで言えば、ウィンドマスターとMUKAストーブを状況に応じて使って行った方が良いだろう。
じゃあこのストームブレイカーはどんな人にとってベストバイなのか?
思いつく限り列挙してみよう。
- 1台でオールシーズン全シチュエーションをカバーしたいワガママ野郎。
- 多少重くてもタフさ(耐風性)とロマン(山やってる感)を味わいたい人。
- パーティー登山が多い。
- 過酷な環境で調理することが多いガチ野郎。
- 逆に荷物制限のない平地キャンプで多用途に使いたいキャンパーさん。
- 変形・合体ロボットが好き。
- いつも暴風に見舞われる南斗五車星の風のヒューイさん。
と、いったところだろうか。
感覚的には冬もこなすアクティブ目のキャンパーさんがメインターゲットなのかなあと。
でも個人的にはやはりこいつにはロマン要素を感じてならない。
重いのが分かっていても、「その程度の重量アップなら…」とついつい山に持って行きたくなる一品。
不便と自覚しつつポンピングしちゃってる自分にも酔えるし、ガスバルブの足をガシーンガシーンとセットしてる自分も好きだ。
この辺りは女子には中々理解されない部分ではあるが、男にとっては重要な部分。
ああだこうだと「これが何gで、こっちのが軽くて…」とか言ったところで、そんなものは男のロマンの前では屁の突っ張りにもなりゃしない。
単純に「ストームブレイカーという名前がアメコミヒーローみたいだったんで…」って理由で選んだって良いじゃないか。
とは言え、性能的には文句なく満足できる一品(風防は標準でつけて欲しいけど)。
是非あなたもこのストームブレイカーとともに、嵐の中で目一杯ロマンを感じてみてはいかがだろうか?
SOTO(新富士バーナー)「ストームブレイカー」
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アイテム名 | ポータブルガソリンボトル750ml SOD-750-07 | 風防&遮熱板(吸気パイプ付) SOD-454 | スライドガストーチ ST-480 | ||||||
アイテ画像 | |||||||||
重量 | 270g | 風防40g、遮熱板11g、吸気パイプ22g | 55g | ||||||
メーカー価格 | 3,200円+税 | 1,700円+税 | 2,000円+税 | ||||||
BUY NOW |
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今後もBBGではストームブレイカーをしっかり現場で使用してギアログなどで追いレビューを書いて行きます。
目上の人だろうと誰彼構わず嵐の中に引きづりこむ男。
ストーム無礼講カワイがお送りいたしました。
押忍!