ダイエット王は超UL装備で素敵な稜線を満喫し、負け犬奴隷は目一杯その屈辱を肩と腰と心に刻み付けられた前半戦。しかし王へのご褒美はまだまだ終わらない。王が夢見る「夕日&星空&ご来光」に向け、ここからは奴隷と五竜岳による素敵なおもてなしが始まってしまうのである!

[toc]

王と奴隷の「唐松岳〜五竜岳」縦走 後編

第4章 魂のSUKIYAKIリカバリー

これから始まる「夕日ショー」に向け、王のために特等最前線にシェルターを張った奴隷。

やっとこさ天気予報通りに晴れ渡り、これでもはやダイエット王の夕焼けニャンニャンは確実なものとなった。

今までどんなに晴れ予報だろうとモクモクにまみれてきた悪天候王にとって、アルプスから見る夕日は実になんと3年ぶり

この3年間、何度もアルプスに登ってるのにずっと白かったのである。

 

さあ、そんな報われない男にいよいよ3年ぶりにその時が近づいて来た。

いざ、夕日に向けたカウントダウン!

 

10、9、8、7!

6、5、4…

3…2…1…

「なんじゃこりゃあ!」

現実を受け止めきれず、その場に崩れ落ちて「何事じゃ!ご褒美じゃなかったのか!余の夕日はどこじゃ!」と号泣するダイエット王。

夕日が見える最前列に陣取って、あえてスーパーホワイトを満喫する羽目に。

五竜はそうやすやすとこの王に良い思いをさせる気は無いようだ。

 

うなだれる王は「ええい!もうよい、飯じゃ!おい、名前なんて言ったか…まあよいお前!さっさと余に飯を食わせろ!」と奴隷に命令を下す。

白の風景に同化しそうなシェルターの横で、奴隷は「はい..作らせていただきます…」と納得いかない顔でおもてなし調理を開始。

そしてクソ重いバックパックの中から取り出したのは、牛肉、大量の野菜、生卵、柿安の高級すき焼き割り下。

他にも水をたっぷり含んだ豆腐やシラタキなど、王のリクエストに応えるため、彼が7時間近く担ぎ続けて来たこの重くかさばりまくる食材たち。

普段山ではガール相手にしかおもてなしを料理しない奴隷オガワ。

それが今、散々苦労した末に中年のおっさんに対して料理をすることになり、必死で殺意を押し殺しながら「では…作らせたいただきます…」と調理開始。

肉はなんと1枚1枚が包装されているという高級さ。

それが今、重い厚底フライパンにて見事にすき焼きと化して行く!

これにはたまらず、ダイエット王もホワイトの絶景を楽しみながら「美味じゃ!余は幸せじゃ!」とご機嫌回復。

やがてこの大量のおもてなしすき焼きを食べ終わる頃にはこんな事に。

これにはたまらず奴隷も「てめえ!その腹の一体どこがダイエット王なんだ!!」と壮絶なツッコミを入れざるを得なかった。

もはや破水寸前のダイエット王。

「こんなだらしない男のためにこのクソ重いすき焼きセットを担いで来たのか…」と、悔しさをのぞかせる奴隷オガワなのであった。

 

第5章 満天の星空とご来光

食うだけ食ったダイエット王はそのまま眠りについた。

しかしジジイの彼はこの日も夜中に尿意で目が覚めてしまう。

 

シェルターから出ると、あの白く覆われていた霧が晴れているではないか。

これはこちらもアルプスでは3年ぶりとなる「満天の星空」を見るビッグチャンス。

ダイエット王はドキドキしながらシェルターを這い出て、一旦目を閉じて息を吐いてから静かに空を見上げた。

 

スーパー満月で星まばら!

ここに来てまさかの満月が猛烈な光で星の光をシャットアウツ!

もうヘッドライトを点灯するまでもなくトイレまで行けてしまうほどの明るさ。

これにて「晴れてるのに星空見れず」という新境地を開拓したダイエット王。

結局あれだけの快晴予報で、ここまで夕日も星空も見ることができなかった。

残すチャンスは夕日や星空よりもブランクのある、実に4年ぶりとなる「ご来光」だ。

 

 

翌朝。

謎の悪夢と無呼吸症候群に苦しんだ長い夜が終わり、シェルターから出て稜線に立つダイエット王。

彼はワナワナと震えていた。

そこには「さあ!ご来光が来るぜ!」って言わんばかりの超快晴と大雲海が展開していたのである。

王は疲れ果てて眠り呆けている奴隷に対し、「起きよ!奇跡じゃ!4年ぶりの奇跡じゃ!」と叩き起こす。

正直ご来光なんてアルプス行く度に見ている晴れ男の奴隷としては、もっと眠っていたかった局面。

でも強制的に早朝登山に駆り出される。

そしてついにその時が!

王にとって、4年に一度の夢の祭典!

ああああああ、ご来光だああああっっ!!

王は「CGじゃねえ!想像でもねえ!こんな白くねえ朝は久しぶりだ!」と、膝をガクガクと震わせて立っているのがやっと。

感動のあまり失禁寸前だ。

一方でご来光慣れしてる奴隷は、あくびしながら「満足しました?じゃあもう五竜登っちゃいましょうよ。」とつれないそぶり。

王はこの無礼な奴隷を斬首刑にしてやろうかと思ったが、心が寛大になっているからそれは思いとどまった。

それほどまでに彼は感動していたのである。

 

次に王がご来光が見れるチャンスは東京オリンピックの年あたりだろうか?

こっからの数年間、しばらくは白い朝でもこの時目に焼き付けた光景で美しい想像ができることだろう。

 

第6章 感動のご褒美五竜

感動のご来光に大満足のダイエット王は、久しぶりの「白くない山頂」目指して五竜岳に挑む。

日が昇るにつれ、王の色彩感覚の中からすっかり消えていた「青」が頭上に大展開。

久々の蒼井そらにコーフンが抑えられないダイエット王。

そして岩場、鎖場を乗り越えるとこの超絶大絶景。

そしてあろうことか「影五竜&剱岳」をバックに、朝日に照らされて感動の五竜岳登頂!

長い登山人生、すっかり「朝日が眩しい」という感情を忘れていたダイエット王。

今にも陽光で爆発してサラサラの粉になってしまいそうな強烈な朝日。

ここ数年は日焼け止めなんて持ち歩いたこともなく、山頂滞在時間も「どうせ白いから」と平均30秒だった男に舞い降りた山頂の奇跡。

この時ばかりは30秒じゃあ足りない。

じっくり周りを見渡して見れば、はるか前方に槍ヶ岳!

目の前には美しき双耳峰の鹿島槍ヶ岳と、それに至る八峰キレット!

振り返れば、昨日歩いて来た稜線と唐松岳!

壮絶な雲海の中には浅間山や八ヶ岳が浮かび上がり、

その八ヶ岳の奥には富士子ちゃんが!

360度のハイパー絶景。

今まで脳内VRで想像することしかできなかった世界が、今現実のものとしてダイエット王の前に大展開。

奴隷が「良かったですね。」と話しかけると、王は「こっちを見るな!」と肩をプルプル震えさせている。

そして時折嗚咽交じりに「ウッ…ウグッ…生きてて良かった…白でめげずに山を続けて来て良かった…」という声が漏れて来る。

彼の足元にポタポタと落ちるものは汗なのか、それとも涙なのか。

3ヶ月、頑張ってストイックなダイエットして来て本当に良かったね。

おめでとう!ダイエット王!







 

最終章 新王の誕生

テン場に戻ってからも、まだまだ奴隷の仕事は続く。

ご満悦王が「余は大満足じゃ。絶景を見たら腹減った。朝飯を作れ。」というので、またしてもコツコツとロールサンドとコーヒー作り。

もちろんダイエット王はここでも一切手伝うことなく、与えられた食事をバクバクと食うのみ。

あとはもう下山するだけなので、ひたすらここでのんびり。

やがて遠見尾根から下山開始。

下山のことを「脱出」ではなくちゃんと「下山」と呼べるのも久しぶりである。

昨晩からの食材大量消費によってやっと荷物がマシになった奴隷も、ようやく穏やかな表情を取り戻す。

この下山道もまた最高で、「五竜岳&山荘&カール&高山植物」を見ながらの素敵さ。

そこにはアルプスの魅力がぎゅっと凝縮された気持ち良さが展開していた。

殺意むき出しだった奴隷も今ではご覧の陽気さで、

ダイエット王も気絶しそうな浮かれに酔いしれている。

本当に久しぶりに「ああ…登山って楽しいものだったんだ…。」と初心を思い出すことができて思わず目頭が…。

ここ数年、アルプスってただの「白いSMの館」だと思っていた彼にとって、このご褒美は最高のものとなったことだろう。

しかしここまで晴れておきながら、当然このあとしっかりとお約束のホワイトに包まれ、

地味に長くて景色の見えないアップダウンに苦しめられる王と奴隷。

下山のくせにやたら登り返しが多く、奴隷は再び「ブシュー!ブシュー!」と根性ハイクアップ。

さすがにこれを見て王の優しさが爆発。

「これこれ、お主もそれだけ重いもの担いでたら肩も凝っただろう。心いくまで余の肩を揉むがよい。」と肩もみを強要。

ことここに至っても止まらないキング・ハラスメント。

この2週間で「南ア大縦走→前鬼川男塾→北ア奴隷縦走」の大マゾ花びら大回転をやってのけ、疲労まみれの奴隷には過酷すぎるラストスパート。

奴隷解放まであと少しの辛抱だ。

やがてその地味に長い遠見尾根を下山完遂。

王と奴隷の二人は、めでたくこのご褒美縦走をやり抜いたのである。

大満足のダイエット王と、ようやくこの屈辱の奴隷生活にピリオドを打ったアツシオガワ。

ここまで何度かダイエット王を事故に見せかけて突き落とそうと考えて来た彼だったが、根性でこの試練を乗り切ったのである。

しかしこの後おしぼりで顔を拭きながら「ふぃ〜余は大満足じゃ。」と言うこの王の表情には、さすがにはっきりと「マジでムカつきます」と言っちゃったアツシオガワ。

しかしこれぞ勝者のみが味わえる快感。

確かに自分でもこの写真の男にはムカついてしまうが、ダイエットを頑張ったご褒美なのだから仕方ない。

 

その後、ご当地グルメの名店がことごとく定休日だったというお約束を経て、二人は温泉へ。

そこの体重計で測ると、この過酷な2週間を乗り切ったアツシオガワはダイエット企画終了時から2キロも痩せていた。

一方、ダイエット王は「4キロも太っていた」のである。

しかも彼は登山前よりも登山後のが太っていたというハイパーまさか。

そりゃあれだけ食いまくれば太るぜおい。

 

結局彼はあのダイエット企画で6.4キロ痩せ、そしてその後わずか2ヶ月で4キロも太ってしまった。

これにより彼はBBG初代ダイエット王の称号を失い、新たに「リバウンド王」の称号を手に入れたのである。

 

こうして結果的にアツシオガワはより屈強な体を手に入れ、リバウンド王は再びだらしない体を手に入れた。

おそらく次回からの登山ではユーコンは激しくアツシオガワに「追い込みお礼参り」されることは間違いないだろう。

しかし全体的に楽しかったこの縦走登山(荷物軽いからね)。

やはり晴れたアルプスは楽しいのである!

 

ということで、次回までにはもう一回痩せておきます。

それではまた山でお会いしましょう。

リバウンド王カワイ&下僕でした。

 

ダイエット王ご褒美登山  〜完〜

[kanren postid=”7071″]