登山・アウトドアには欠かせないレインウェア。あなたのレインウェアはちゃんと撥水してますか?「新しく買ったのに撥水力が弱い!」「撥水しなくなってきたから、そろそろ新調しようか…」とお悩みのあなた!まだ早まってはいけません!撥水スプレーだけでも結構回復できちゃいます!試してみる価値アリです!撥水効果が落ちたからといって買い換えるのはエコじゃないですよ!
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実験の目的
今シーズン注目のレインウェアをテストしてきたBBG。
この時、どーしても腑に落ちない点があった。
「撥水力の弱さ、低下の早さ」である。
新品の状態でテストするにもかかわらず、どのレインウェアも1時間も経過する頃にはすっかり撥水力も失われ、表面生地はべたべた状態に。
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正直、新品を購入してあっという間に撥水力が失われる状態に納得がいかない。
なぜこんなにも撥水力が弱いのか?
某有名防水生地メーカーさんに話を伺った。
なんで新品のレインウェアなのに撥水力が弱いんですか?
近年、環境問題の観点から撥水剤への規制がヨーロッパを中心に厳しくなり、撥水剤のフッ素化合物がC8からC6へと切り替わったため、撥水力が以前のものと比べると落ちてしまったんです。
はにゃ?
ちっ。フッ素化合素材にわずかに含まれるPFOA(パーフルオロオクタン酸)という物質に対して地球環境や人体に影響を与える懸念が2000年頃から取り沙汰されるようになりました。米環境省はPFOAを2015年までに廃絶しようと、世界のフッ素樹脂メーカーに呼びかけました。これを受けて、PFOAを含むC8タイプを使わない撥水撥油製品が主流となり、繊維メーカー各社も従来のフッ素系撥油剤を使用せず、非フッ素系加工剤やPFOAを含まないC6タイプ(PFOAフリー)の撥水撥油素材を使用するようになったため、撥水力が落ちてしまったのが現状です。
言葉の意味はよく分からんが、とにかくすごい自信だ。
※「ちっ」なんて言われてません。ご丁寧にご返答いただきありがとうございました。
簡単に言うと繊維メーカー各社が昔のような強力な撥水剤を使用できなくなったということだ。
なるほど、どおりで昔購入したレインウェアの方がよく雨をはじくわけだ。
いくら地球環境の問題だからってこのまま弱りきった撥水効果を黙って受け入れる訳にはいかない。
なんでそこまで撥水性にこだわるのかって?
そらアンタ、透湿性に影響が出るからさ。
透湿性が30,000だ、50,000だって競い合っていても表面生地が乾いた状態での話な訳で、表面生地に水が染みこんだ状態では透湿性が低下しちまう。
透湿性が落ちるばかりか、保温力まで落ちるので表面生地が濡れた状態は最悪ってこと。
超軽量で透湿性抜群で・・・なんて高機能ウェアも表面生地が撥水しなきゃ元も子もないのさ。
だったら、おいらで撥水力を高めてやればいいじゃねーか!ってんで、今回の「撥水スプレー比較テスト」をやろう!って運びなのさ!
撥水スプレー紹介
最近は浸け置きするタイプのものも多く発売されてますが、より手軽に使用できるスプレータイプで比較検証します!
まずは簡単な特徴を紹介しつつ選手紹介。
- モンベル S.R.リキッドスプレー200ml
手軽に強力な撥水性/撥油性加工を施すことができるスプレー式撥水剤。 - モンベル SRスプレー170ml
水だけでなく油も弾くため防汚性にも優れた撥水・撥油スプレー。綿・ウール製品まで幅広く使用できる。
- コロニル カーボンプロ
コロニル史上最長の3~4週間持続する新世代強力防水スプレー。
- リバイベックス デュラブルウォーターリペレント
油分や土埃の汚れも弾く。ダウンジャケットや寝袋も撥水にも使用できる。 - リバイベックス インスタント ウォータープルーフィングスプレー
熱処理の必要がなく自然乾燥後すぐに効果を発揮。革製品にも使える。
- グランジャーズ パフォーマンス リペル スプレー
環境に優しいアクリルポリマーを使用し、高い撥水効果を発揮。
- STORM エコプルーファー スプレーオン
PFCフリーの環境に優しい撥水処理剤。
- NIKWAX TX.ダイレクトスプレー
自然乾燥でも簡単に、安全で、通気性と耐久性を確保しながらすぐれた撥水効果をもたらす。
- TOKO テクスタイルプルーフ
簡単に高持続性・高性能撥水・耐汚効果を発揮。 - TOKO ECOテクスタイルプルーフ
ドイツ・アウトドア産業省を受賞したエコロジカルな撥水スプレー。 - Mountain Warlock ハイクオリティ ウォータープルーフ
クリーンなフッ素成分を使用し水性・油性の汚れを弾いてくれる。 - ホルメンコール ハイテクプルーフ
ナノテクノロジーで開発された防水・防汚スプレー。
※商品名クリックでメーカーHPへ
実験方法
- 撥水処理のされていない20×20cmのポリエステル生地に各メーカーの指示通り塗布する。より差が出やすいように防水生地は今回使用しません。
- コインランドリーの乾燥機に60分間投入し乾燥させる。
- 試験装置で30分間水を散布する。(予選)
- ③終了後も撥水効果を持続しているものを選定し60分間水につける。(決勝)
- 再度試験装置で2Lの水を散布する。
さてさて、結果やいかに!?
予選(30分水散布)
まずは、何も吹きかけていない生地の動画からどうぞ。
開始直後の映像と終了間際の動画をご覧いただきます。
当然サンプルの布はほとんど撥水せず、生地に染み込み色が濃くなってるのがお分かりいただけると思います。
これを基準にどう撥水するか見ていきましょう!
①モンベル S.R.リキッドスプレー
開始直後は明らかにサンプル生地と違うのがわかりますね。ただ、30分後にはすっかり撥水効果が落ちてしまいました。残念ながら予選敗退。
②モンベル SRスプレー
スプレーが多めにかかってしまったところが濃く変色しシミになっています。こうならないためにもかけ過ぎには注意した方がよさそう。
30分後、若干効果は落ちつつもしっかり撥水はしている。同社のリキッドスプレーに比べるとコチラの方が撥水力は高めだ。しかし惜しくも決勝進出はならず!
③コロニル カーボンプロ
最初こそ勢いよく撥水していたが、15分もすると全く撥水しなくなってしまった。個人的に本命かも?って思っていただけに残念。予選通過ならず!
④リバイベックス デュラブルウォーターリペレント
開始直後からそれほど撥水性が高くない印象。30分後にはほとんど撥水しなくなってしまった。ケア用品で有名なリバイベックスだけにこの結果は残念。予選敗退。
⑤リバイベックス インスタント ウォータープルーフィングスプレー
開始直後の撥水力はここまでで1番!しかし、30分後にはほとんど撥水しなくなってしまった。撥水力の低下が著しく残念な結果に。リバイベックス2アイテムともここで落選。
⑥グランジャーズ パフォーマンス リペル スプレー
撥水力の低下は見られるものの、30分後もしっかり撥水していた。初めての決勝進出!
⑦STORM エコプルーファー スプレーオン
グランジャーズよりも若干終盤以降も撥水力を維持している。決勝進出!
⑧NIKWAX TX.ダイレクトスプレー
開始直後もそれほど強い撥水力は感じなかったが、終盤の落ち込みも緩やかだった。モンベルのSRスプレーと似たような撥水力。残念ながら決勝進出ならず!
⑨TOKO テクスタイルプルーフ
開始直後の撥水力は素晴らしい!が、終盤の低下がやや気になった。残念ながら予選敗退。
⑩TOKO ECOテクスタイルプルーフ
開始直後の撥水力は⑨よりやや弱めではあるものの、終盤以降もほぼ変わらない撥水力と耐久性には拍手!文句なしの決勝進出!
⑪Mountain Warlock ハイクオリティ ウォータープルーフ
開始直後の撥水力は素晴らしい。終盤以降やや低下したが、それでも最後までしっかり撥水していた。決勝進出!
⑫ホルメンコール ハイテクプルーフ
思わず動画に声が入ってしまうほどの超絶撥水力。開始直後の撥水力は他を圧倒!30分後もしっかり撥水!こいつはスゴイ!
決勝
1時間水に浸し、再度試験装置で2Lの水を散布した時の撥水力をチェックする。
予選の撥水力は忘れて、フェアにジャッジしますよ!
こ、これは!
かなり僅差の勝負だぞ!
予選で圧倒的な撥水力を見せた「ホルメンコール」はなお高い撥水力はあるものの、予選ほどの撥水力はなくなっていた。
ただ、どれも60分水につけた後とは思えないほどよく弾いている。
正直、この5つならどれを選んでも満足する撥水効果を得られるだろう。
BEST BUY
撥水力&持続力では僅差の戦いになった為、他の部分で優劣をつけることとする。
まず、#2「STORM」は、環境安全性・撥水力・コスパどれをとっても素晴らしい撥水スプレーである。マイナスポイントは、より効果を発揮するためというのは分かるが「乾いたきれいな布に本剤をしみこませ、ウェアの上から擦り込みます。」という手順がやや面倒に感じてしまった点と、少々粘り気のある液体が生地を若干パリッとさせるため、生地の質感が変わってしまう点が△。
#3のグランジャーズ「パフォーマンス リペル スプレー」は、環境安全性・撥水力ともに十分な効果を感じることができる素晴らしい撥水スプレーだ。ノースフェイスやパタゴニアなど多くのODブランドが推奨しているのも納得である。スプレーノズルも優秀でとても細かい霧状で散布できるので吹きかけやすい。マイナスポイントは乾きが遅く余分に塗布してしまうと若干生地が白っぽくなってしまう点が△。
#4Mountain Warlock「ハイクオリティ ウォータープルーフ」は、若干スプレーの出が悪いものの、細かな霧状でゆっくり噴射されるので吹きかけやすかった。撥水力・持続力ともに十分な効果を感じられ、白くなることも生地がパリッとすることもない。あえて言うならコスパが若干悪いことぐらいだろうか。
撥水力だけで言えば#5「ホルメンコール」がNo.1だろう。予選の撥水力は他を圧倒していた。マイナスポイントは生地が若干白っぽくなってしまうのと、屋内では塗布を躊躇する防水スプレー特有のシンナー臭い感じが△。
#1「TOKO ECOテクスタイルプルーフ」は乾きは遅いものの、無色透明で白っぽくなることもなく、生地がパリッとすることもない。細かな霧状で塗布しやすいノズルも優秀で、なによりフッ素成分を使っていない環境安全性の高い商品であるにも関わらず、撥水力・持続力ともに文句なし!マイナスポイントは他のスプレーに比べ大容量のため、値段が高いという点ぐらいか。
ということで、今回の撥水スプレー比較。
BBGの結論 BEST BUYは「TOKO ECOテクスタイルプルーフ」に決定!!
皆さんもしっかりケアして、高機能ウェアの実力を十二分に発揮させましょう!
決勝進出のBEST 5