涸沢モツ鍋パーティーで終えたゆるふわチャッピーハイクから一晩、いよいよ主峰“奥穂高岳”への挑戦が始まりました。立ちはだかる雪壁に急峻な岩場、立て続けに起こるギアトラブル。やはり一筋縄では行かない男塾に、いよいよピンチを迎えた2人。結局ビール飲んでる場合じゃないぞ鬼ころし。残雪期の穂高は、伊達じゃない!

[toc]

第4章 運命の二日目

前回の続きより。

午前3時、辺りはまだ暗いですが早々と起床。

しんと静まり返ったテント場、明かりはまだ我々のテントだけのようです。

ブーブー言ってたCEOも目を覚ましました。

山頂直下の穂高岳山荘までは約3時間の登り(しかも雪の急登!)が待っているので、朝からガッツリとガパオ。

余談ですが、以前職場の後輩の女の子(20代)に得意な手料理を尋ねたところ「ガパオライス」という答えが返ってきてビックリしたことがありました。

「肉じゃが」って言えば嫁に行ける時代は終わったのか・・・

午前4時。いよいよ奥穂高岳のピークへ向かいます。

気を引き締めて、いざ出ぱ・・・

「あれ?あれ?GoProの電池が無い」

ちょっと、またですか・・・このゴ・・・CEO・・・ゴリラ。

毎回置き忘れたり、データが満タンのSDカードしか無かったり、大事な所でバッテリーが切れたり、いつも何かしらのトラブルを引き起こしてくれるCEOとGoPro。

せっかく早起きしたのに・・・。

固く締まった雪とは裏腹に、全く締まらない出発準備。

ゴープロの電池を探している間に4時半、明るくなってきちゃいました。

内ポケットにあった♡てへぺろ

「絶対下山したらビール買ってくださいね。ロング缶で」と約束をしました。

そういう私も尻に羽毛をフサフサさせて歩こうとしてたみたい。

「ケツ毛生えてるよ」と言われて脱力。

コルの右には涸沢岳、そしてトッキントキンの涸沢槍と続く

開始早々、まあまあな急登が続く。

昨日山小屋で尋ねた通り、直登ルートの小豆沢はまだまだ雪崩の危険があるようなので、少し遠回りですがザイテングラートの右側を登りコルに出るルートを取ります。

振り返ると、前穂高岳の北尾根が空と雪の間にコントラストを作り出しています。

はぁー、ため息出ちゃう♡

後ろからは「もぉ〜アイゼン外れた〜」っていうボヤキが聞こえて来ました。

毎回雪山へ行くたびに毎回外れてしまう、アツシオガワのアイゼン。

なんで他のアイゼン持ってこないんですか?(怒)

はぁー、ため息出ちゃうわ・・・

アツシオガワ

だって軽いんだもーん(てへぺろ)

「アツシさん足早いと思うので、私、ゆっくり先に行ってますね。」と一言残して、歩みを進めることにしました。

って、全然来ないと思ったらまたアイゼン外れてますやん・・・。

上司想いで心優しくて可愛い部下は、少しだけ待つことにしました。

ああ、私って本当に部下の鏡だわぁ。

そろそろ「部下にしたいランキングNo.1」の受賞連絡が来るかな?

そんな上司思いの行いが功を奏して(?)、休憩している間に、前穂方面から青空が!

この長い長ーい登り、この絶景が無ければきっと心が折れていることでしょう。

直登ルートでないとは言え、かなりの急登が続きヒーヒー言わされるぽっちゃり2人組。

「もっと登りくれよぉ〜」「傾斜が足りねぇ」とドMごっこしてるけれど、とってもツライ笑

前穂といよいよ目線の高さが同じになって来たら、もうすぐ。

6時半。ようやく穂高岳山荘の建つ、白出のコルへ到着!

山荘は雪に埋もれちゃっていて、夏場とは随分様子が違いますね。

山頂を目の前にもうクタクタなので、小屋で大休止。

優しい小屋のお姉さんがストーブを点けてくれました。

穂高岳山荘に訪れる度に増える、魅力的なおみやげコーナーのラインナップ。

渋いタオルと可愛いハンカチをGETして、ぜんざいを注文しました。

冷えた体+甘いもの×温かいもの=最強。

体の芯から温まる〜!

一体どこの芯から温かさを感じているのか

恍惚の表情を見て、とにかく今は目を合わせない方が良さそうだ・・・と無言でぜんざいをすする鬼ころし。

とにかく色々な方法で温まったら山頂へ向かいます。

ここから先が正念場!

第5章 岩と雪の頂へ

時刻は7時過ぎ、いよいよピークに向けて出発。

後ろの聖帝十字陵・・・もとい奥穂高岳へ向けて、核心部に迫って行きましょう。

どう見てもやばそうな岩稜と雪渓

先ほどの登りとは打って変わって、山頂への道のりに待っているのは難所ばかり。

右の雪渓を登るソロの先行者、その下に滑落防止のネットが見えて、手に汗握る。

しかしこの日のために頑張って来ました。

いざクライムオン!

夏道と同じ岩場も、アイゼンを装備しているとワケが違います。

残雪期は岩と雪が交互に出てくるので、岩場をガリガリしながら進む。

鎖だってありますよ。これにもアイゼン引っかけたら大変!

鎖を持っているだけなのに、なぜか怖いお仕事の人にしか見えないCEO。

アイゼンがハシゴをひっかく音に顔をしかめながら、1本目のハシゴを登ります。

2本目のハシゴは、もはや見ていられないほどの高度感。

あえて言おう、めちゃくちゃ怖いと!

岩についた雪がさらに奥行き感を増長させて、ずっと高いところにいるように感じます。この時点で3,000mを超えているので、それはもう充分高いのですが。

そんな高度感の中で強いられる細い足場のトラバース。見ている方がヒヤヒヤします。。

細いボルト見えますか?チビ助はこれ踏まないと登れません。

が、アイゼンで踏むのをためらうほど、頼りない短さ。ひーん泣

あれに見えるは笠ヶ岳

足元のボルトの写真を一生懸命撮っているところを撮られていました。

改めて見ても全く安心感のない場所笑

そんな岩場を登り切れば、最初の核心部・ひとつ目の雪渓。

この斜面、これまで涸沢から登って来た道とは全く次元の違う、すごい斜度で立ちはだかっています。

この場所で滑落してしまう人の多さを静かに物語る、滑落防止ネット。

小屋の方いわく「引っかかればラッキーというくらい」との事でした。

そもそもそういう状況にならぬよう、慎重に三点支持で登ります。

私のクライミングの師匠は、いつも「おすし」と教えてくれました。

お・・・おちない

す・・・すべらない

し・・・しなない

どれも当たり前のようですが、山では全部大切な事。

なんとか一つ目の核心部を越えました。

アツシオガワ

オレ涸沢でビールが飲みたかっただけだったんですけど!四国以来まともに登ってないんですよ!なんでこんな恐ろしいとこに連れてきた!怖すぎてちびるかと思った…。

・・・おや?後ろ後ろ!

槍ヶ岳とのご対面!

ここまで来た甲斐がありました。

登山をしていて、素直に嬉しい瞬間!!

って、またまたアイゼン外れてますやん・・・

無駄なツッコミで無駄なエネルギーを使うのももったい無いと思い、気付かないフリをしました。

私が見てないと思ったのをいい事に「なんだか今回の男塾は一味違うね」ってカッコつけてるけど、今日アイゼン何回付け直したんですか?

アツシオガワ

外れてへん!次の核心部に備えて調整しただけや!

雪と風が作り出す芸術作品、シュカブラ。

雪面を描く波模様にしばし心癒されます。

最後の難所である、ふたつ目の雪渓に取り付く。

上から見て左側はすごい斜度だったので、我々は出来るだけ右の岩場に寄せて登りました。

こんもりと深く積もった雪にピッケルが効かず、悪戦苦闘!

アブ!アブゥー!!と必死に蹴り込みます。

小屋でも除雪に追われていましたが、上でもたっぷり積もったようです。

5月中旬とは思えないモサっとした重たい雪が、行く手を阻みます。

下りでロープ出すことを決意

怖かった・・・。

アツシオガワ

アテント装着してくるべきだった…コワスギ

雪の状況にかなり左右されるところではあると思いますが、降雪後に登った我々はここが一番ヤバイと感じました。

祠が見えればそこはビクトリーロード。

憧れ続けた山頂を目前にして、脳内で鳴り響くBGMはロッキーのエンディング。

ああっ、涙で前が見えない。

午前8時、奥穂高岳3,190mに登頂!

ここに登るきっかけ “雪の奥穂” の写真を見て一目惚れしたのは、実は私が登山を始めるうーんと前。

「こんな世界があるんだ」と知って、その頃から憧れだった山頂に立てて、とっても嬉しい!

二つ返事で一緒に登ってくれたアツシオガワ氏(と、モリオ)にも感謝です。

晴天不敗神話はまだまだ記録更新中!

しかし、山頂めっちゃ寒ぃー!風がしゃべー!

絶好の条件とはいえ、稜線上は強風でした。

下山で使うロープを準備して、雪が緩む前に降ります。

雪渓まで戻りクライムダウン開始。時間はかかる方法でも、安全が第一。

その必死さと言ったらもう、ここまで長文を読み進めてくださった皆さまが楽しみにしていて下さったであろうジャンダルムの写真も撮りそびれるほど。(おい)

いざ降りるとなると、ものすんごい傾斜!

慎重にダブルアックスを打ち込み、キックステップで確実に一歩ずつ下ります。

やっと最初の核心部を終えて、ホッと胸をなで下ろす。

怖すぎて、家族友人同僚、ペットの犬から近所のおばちゃん、お気に入りの居酒屋のカッコいいお兄さん、色んな人達の顔が頭をよぎりました・・・

次はアツシオガワの番

今年40歳のお尻をひたすら眺めて祈る。

アツシオガワ

思ってた以上にフカフカ雪が付いてて怖さ倍増!!ダブルアックスとロープ持って行ってよかった〜。

気温が上がり、雪質もなんだか緩くなってきました。

無事に2つの雪渓を降りて来ました。

しかし、とんでもない所だったぜ・・・

少しずつプリプリと降りてくるお尻を見上げていたら、緊張の糸がようやく、少しずつほぐれてきました。

槍さま、またどこかで会おうね

私、槍ましたー!!

第6章 鬼ころしはかく語りき

小屋に帰還しました。

緊張の糸が解けると「ぐぅー」と五郎さんのように思いっきりお腹が鳴りました。

冷え切った体に嬉しい塩分。

こういう時のラーメンは、どんな行列のラーメン屋より美味しく感じるなぁ。もちろん汁完!

チルアウトしてたらうっかり10時過ぎてました。

上高地バスターミナルまでコースタイムは・・・7時間。

撤収もしなきゃだし、17時の最終バスに間に合わない!急げ〜!

はい、ワープ♡

鬼の下山ダッシュで、12時前にはテント撤収を済ませ涸沢を出発。やれば出来る子なんです。

アイゼン外した瞬間ハデにずっこけても気にしないわ。だって私はやれば出来る子、今は本気出してないだけ。

踏み抜いて泥だらけになっても気にしないわ。だって私はやれば出来(以下略)

このあと、股まで落っこちてCEOに救助要請しました。

13時半、目にも留まらぬ速さで横尾へ到着。

飛ばしすぎてさすがに疲れました。

ごほうビール(ご褒美ビール)

奥穂からの下山でかなり巻いたので、大休止。

約束のブツ(ロング缶)で生き返りました。

「ビール本当に好きだね〜」と言われたので、よくぞ聞いてくれました!とばかりに、私の熱い想いを語りながら歩きます。

「私が山でビールを美味しく飲む極意はですね・・・」レンズフードが回っちゃってても気にしない。もはやCEOが聞いていなくても、気にしない。

熱く語ること小一時間、CEOがいよいよ飽き始めたころ徳沢に到着。

徳沢園で頂けるソフトクリームは言わずもがな絶品ですが、もう一つの名物メニューをご存知ですか?

ちなみに今の時間は注文できません笑

10時から14時までの限定ですが、とっても美味しい「野沢菜チャーハン」!

野沢菜の程よいしょっぱさが、疲れた体に優しくてビールにも合うんですよ〜。

これのために早く降りて来たかったなぁ泣

無念を晴らす黄金の1杯。

アツシオガワ

どんだけ飲むねん!

ちゅめたくて、おいちい♡

アツコちゃんはソフトクリームにご満悦。

もう一つの徳沢名物、野生の猿に囲まれました。

威嚇されるゴリラ

今日の出来事を思い返せば、こんな光景すらも平和に思えてしまいます。

上高地に着いた頃には、もう足が棒。

毎年ここを歩くたびに長いなぁ、とげんなりしてしまいますが(特に復路)、それと同時に次はここからどこへ行こうかなぁ、という妄想も膨らませちゃいます。

ましてや初めての涸沢がこんな絶景だったら、また行きたくなりますよね!

残雪期の奥穂高岳に登るには、十分な知識と経験が必要となります。実際登ってみて感じましたが、決して気軽に足を踏み入れることは出来ません。

でも、ひとまずは「涸沢から穂高の大パノラマを眺めながらのんびり過ごす」なんていう、粋な楽しみ方も。

とにかくどんな時期だろうと美味しいこの “涸沢生ビール” を、ぜひ皆様にも味わっていただきたいものです!

おかわり必須ですよ!!

エピローグ ご報告

突然ですが、最後にご報告させてくださいませ。

私事ですが、先日入籍し、平成最後の4月末に挙式披露宴を行いました。

BBGメンバーのSHIMちゃん、スーちゃんも山梨から駆けつけてくれました

CEOであるアツシオガワ氏にも祝辞のご挨拶を頂いて、とっても楽しい1日になりました!

ゴリにも衣装
アツシオガワ

なんかコイツ腹立つわー。

とうとう私も、鬼ころしなんて物騒な名前から普通の女の子に戻ります。

・・・と言うところですが、旦那さんがめっちゃコアなBBGファンなので笑

これからもBBGで、TMEで、皆さまにお世話になりたいなと思います。

まさかピッケルも、ケーキに打ち込まれる事になるとは思わなかったでしょう

今後は山好き同士、登山も人生もお酒も楽しく二人三脚で頑張ります。

これからもどうぞ宜しくお願いいたします!

令和初、そして結婚後初の登山は、最高の奥穂でした!

この頂に一片の悔いなし!!

「おめでとう」よりも「よく結婚できたね」とビックリされがちな鬼ころしSでした。

押忍!

アツシオガワ

鬼ころしおめでとう!末永くお幸せに!