いよいよ熱気を帯びてきた九重連山男塾中盤戦。
命がけのバリカタラーメンで男を見せたかに見えた田沢だったが、中岳ではまさかの物言いで痛恨の金落とし。一方松尾は圧倒的な強さで土付かずの5連勝で勝ち越しに王手。(途中から読んだ人は意味わからんと思うけどこれは登山の記録です。)
いよいよ「くじゅう17サミッター」まで残り半分の5座とした松尾&田沢コンビ。しかし6番目の「白口岳」ではついに手押し相撲で初の犠牲者が出てしまい、その後の
「坊ガツル」に至るまでの道は猛烈な試練がわんこそば状態に。
果たして二人は無事に桃源郷「坊ガツル」にたどり着くことができるのか?
九重連山が今、本気で二人の息の根を止めに来たのである。

[toc]

第7話 男塾名物「腐嶺夢亜羽人」

火星のような荒野の中、故障したC-3POのようにカクカクと移動して来る田沢。

世紀の誤審によって金星を取り損ね、いよいよ気力も体力も限界を突破している。

そんな田沢に対し、次の白口岳はすぐ横手前に見えておきながら大きく右側から大迂回しなくてはならないという嫌がらせ。

ブランクのあったテン泊縦走にしては、いささか夢を盛り込みすぎた行程だった気がしてならない。

初めて立ったクララに対し、「よし、じゃあフルマラソン走ってみようか。」と命じるような厳しい仕打ちである。

しかも白口岳に向かうこのルートは、「枝漕ぎ」という新ジャンルの嫌がらせ満載の道だ。

なんだか数千人規模の人が菜箸を持って両サイドから激しく突っついてくるような鬱陶しさ。

疲れた体にビシバシと枝が当たりまくるが、それを振り払う元気もない田沢は無抵抗にその攻撃を浴び続けた。

 

そんな厳しい戦いの末、ようやく本日1日目の最終峰「白口岳」到達。

くじゅう17サミッツ「6番目」の山の制覇である。

さあ、のんびり休憩して景色見ている場合じゃない。

早速3つの山頂儀式スタートである。

 

儀式一.「山頂数字寫眞」

初日のラスト「6番」白口岳。

これは見る角度によってはかなりヤバ目の写真となってしまった。

もしこの状況を他の登山者が松尾の後方の方角から見ていたとしたら、もはや言い逃れはできない。

たちまち通報されて二人の「山頂わいせつ罪」は確定だ。

 

儀式二.「山頂表現寫眞」

白口岳(しらくちだけ)のテーマは、「口から白いエクトプラズムを吐き出す男たち」である。

いよいよネタ切れも激しさを増し、現場で考える能力がなくなってきていることが伺える一枚。

しかもこの時、無理をしてしまった全力男田沢は、得意の顎関節症を誘発して昨日に引き続き顎を痛めている。

もはや体も顎もガクガクなのである。

 

儀式三.「手男死相撲十番勝負」

そんなガクガク田沢だが、この6番目の勝負に対しては並々ならぬ覚悟で臨んでいる。

なんせこの勝負に負けたら、6敗目を喫することになって負け越しが確定してしまうからだ。

そうなったら一号生筆頭の座は松尾のままとなり、また辛いヒラ塾生の日々を送ることになってしまう。

残った全てのエネルギーをつぎ込み、全力で横綱を倒してみせると激しく意気込んでいた。

 

その田沢の覚悟が、この一番を歴史的なものにすることになる。

後に「史上最も美しい負けっぷり」と語り継がれることになるこの一番。

 

いざ、「第六番 白口岳場所」。

始めィ!

 

 

惨敗はしたが、田沢の美しい「全力吹っ飛びフレームアウト」は見る者を熱く感動させた。

しかも彼は吹き飛んだ勢いで右肘と右膝を岩に痛打し、右肘からは出血してしまうほどの男塾っぽさ。

これぞ苦渋十七連山第7の試練。

世に言う「田沢のFlyAway」である。

 

土俵下でピクリとも動かない田沢だが、男を通し切った事でその顔には満足げな笑みが浮かんでいた。

死亡確認。

田沢丸、負け越し決定。

 

一方、見事全勝で勝ち越しを決めた横綱松尾山

田沢の死を確認すると、奉納と弔いの土俵入りである。

松尾山、本名ドルジ松尾。

16歳で祖国モンゴルを飛び出し、名門明徳義塾高校へ入学。

やがて高校を中退し、男優としてスカウトされて宇宙企画に入門。

以来、数々の作品に出演し、やがてBEST BUY GEARの社長に就任。

そして今、見事に九重連山場所を全勝で勝ち越し、男塾一号生筆頭の座を死守!

こうして美しい雲龍型が白口岳に奉納された。

同時に、その場で荼毘に付された田沢慎一郎。

彼の魂は、その後星となって星生山方面へと消えていったという。

※なお、山頂手男死相撲は専門家(本人たち)による指導のもと、安全を確保してから行っております。その割には怪我してますが、良い登山者はくれぐれも真似をしないように。







 

第8話 男塾名物「顔面引攣男」

田沢が見事な死を遂げた白口岳山頂。

しかし死ぬことすら許されないのがこの男塾。

もちろん今回もどこからともなく王大人(ワンターレン)が登場し、しれっと田沢を蘇生させる。

 

こうして再び彼らは修行を再開させられ、テン場がある坊ガツルまでの「壮絶急降下ロング下山」へと突入して行った。

その急降下道は地図上では「破線ルート」になっている箇所で、生半可な塾生が立ち入ってはいけない領域。

そこに今、体力限界ガクガク怪我男の田沢が挑むのである。

 

で、早速現れたのが、思わず二度見してしまったほどのこの「超絶大急降下」だ。

このとてつもない恐怖がちゃんと写真で伝わるだろうか?

ずっと下まで続くほぼ崖のような急斜面に、「さあ、張り切って滑落しましょう!」と言わんばかりの雪と氷の競演。

かろうじて1本か細いトラロープが設置されているが、全く信用できない。

 

さっき蘇生したばかりの田沢だったが、これを見るなり即座に西川くん状態になって気絶している。

なぜなら彼は、この伏線として苦渋十七連山の試練の4番目でしっかりと愛染恭子こと軽アイゼンを片方失っている。

なので、このツルツル急降下の試練に「片足軽アイゼン+ギリギリ肉体疲労+相撲による負傷」で挑むことになったのである。

これぞ苦渋十七連山8番目の試練、「肉体疲労時のマゾ補給」なのである。

 

とりあえず田沢は、武闘派の松尾を先に行かせて様子を見る。

さすがは百戦錬磨の横綱、落ち着いたルートどりで安全な場所まで降下を成功させ、下から田沢に適切な指示を送る。

やがてガクガク負け越し男の根性下降スタート。

下で見守っていた松尾はのちに語る。

かつてこれほどまでに「リアルに恐怖に支配された人間の顔」を見たのは初めてだったと。

その顔からは1mmたりとも心の余裕を見出す事がきず、今にも本物のエクトプラズムを吐き出しそうな勢い。

なんせ最初の一歩が、どう考えても背中のザックが岩に当たって押し出されてしまいそうだからである。

 

なんせ脚立の一番上にも立てない高所恐怖症+豊かすぎる想像力の彼は、一歩一歩進むたびに「滑る→落下→松尾巻き込み→FlyAway→死亡→露頭に迷う子供達」という所まで鮮明に想像してしまうのだ。

もはや彼のネガティブ思考は、男版「いけない!ルナ先生」と言っても過言ではないのである。

 

それでも頑張って何とかその難所を越えるが、ここで安心したのも束の間、即座に次の試練が田沢に襲いかかる。

安全圏に出たので安心してポールを出した直後、岩と岩の間に滑り込んだポールが「バキッ」と小粋な音色を奏でた。

そして訪れたのがこのポールポッキリの悲劇である。

田沢が以前から「壊れてもまた同じものを買う!」と言い張ってやまないお気に入りのローカスギアのCP3。

どうやらその念願が叶い、本当にまた同じものを買う事になってしまったようだ。

田沢は「なあに…1本立ったの7千円くらいさ…。失踪した愛染恭子も2千円くらいだ。送料含めて合計1万円くらいの奉納か…。その程度でこの大快晴が手に入るなら安いもんじゃない。」と目を真っ赤にして言う。

これぞ9番目の苦渋十七連山の試練「1万円ポッキリの哀愁」である。

 

で、そんな「ボッタクリ奉納パブ・KUJU」の店内でプルプルしている田沢の前に広がるのが、この雄大なる世界。

そのはるかはるか遠方に見える広大な盆地が、本日のテント場である「坊ガツル」だ。

遠い…。

遠目で見てもその素敵さはしっかり伝わって来るんだが、なんせ遠すぎて田沢は口から吹き出てくる泡を制御できない。

今日はなんてクソ長くもヘビーな1日なんだろうか。

 

第9話 男塾名物「滑落下痢聖奴」

もちろんただクソ長いだけじゃない。

このように、その道のりは破線ルートらしくしっかりと男らしさをキープし続けて来る。

しかもこの下山破線ルート上は、田沢に対しての「苦渋十七連山の試練」の追い討ちが大集中。

 

岩で足を滑らせた田沢。

滑った先はほとんど土だったが、なぜか1箇所だけ「木がむき出し」に。

もちろん田沢はその僅かな一点めがけて強烈なニードロップを放って、激しく膝を負傷したのは言うまでもない。

なぜこの一点だけ土じゃなくて木が出っ張ってるんだ…。

しかも白口岳の相撲で痛めたのと全く同じ場所にジャストミート。

これが苦渋十七連山10番目の試練「出る杭はマゾれる」なのである。

 

もはや満身創痍で全身がボロボロだが、そこは彼もプロフェッショナル。

痛みに耐えながらも、まずは治療より先にしっかりとその模様を記録することを怠らない。

かつて広大な北海道の釧路川で、「たまたまジャンプして着地した場所に板に刺さった五寸釘が上向きで設置されていた」という大流血の過去を持つ田沢。

この程度のトラブルに今更驚く男ではないのである。

 

しかし苦渋十七連山の試練はまだ終わらない。

いよいよ九重連山の神々が、二人を殺しにかかってきた。

それが本日最大級、かつ最長となる「ハイパー下痢リングロード」である。

ぐっちゃんぐっちゃんでヌルッヌルで超絶滑りまくるという、下痢とスリリングが夢のコラボレーションを果たしたハイパー下痢リングロード。

大げさではなく、もう一歩一歩が20cmほどズル滑っていく有様で、転ばないために常時腿の筋肉はパンプアアップ状態。

ここまで6座も大縦走かましてきた二人に対する、腿と膝の強制筋トレ強化タイム。

そしてそんな過酷な状況下で田沢に炸裂したのがこの試練なのである。

 

一度勢いに乗った田沢は完全に制御不能となり、思いがけず「ゲリセード」という画期的な新スタイルで滑降。

しかし当然耐えきる事ができず、絶対に転びたくない場所で無残に転倒。

それがこの苦渋十七連山11番目の試練「田沢の肥溜めボッシュート」なのである。

テレッテレッテ〜という悲しい効果音とともに、肥溜めの中にボッシュートして行った田沢くん人形。

全身泥まみれ、傷だらけ、余力ゼロというボロボロの姿は、ある種神々しさすら感じてしまう美しさ。

やはり男塾はこうでなくていけない。

 

やがてその後もひたすら筋トレゲリセードを繰り出しながら、キリキリ舞いで下山していく松尾&田沢。

やがて松尾はクソ長いハイパー下痢リングロードを突破すると、やっと乾いた水平の大地に到達して安堵のため息が漏れる。

そして松尾が後方を振り向くと、下痢との戦いに疲れ果ててゲッソリとした一人の中年のふらふらの姿が。

まるでついさっきまで数人の若者に囲まれて、オヤジ狩りでも食らっていたかのような衰弱っぷり。

現金からカード、果ては人間の尊厳まで狩られたそのオヤジは、乾いた大地に着くなり静かに息を引き取った。

ボロ雑巾のような美しい死に様。

その足元にズームインしてみれば、ここまでの壮絶だった戦いの一端を推し量る事ができるだろう。

どう見ても肥溜めに落ちて溺死した変死体にしか見えない。

 

こうして田沢はとうとう本日二度目の「死亡確認」。

もちろん即座にまた王大人が現れて、強制蘇生。

田沢はいつまでも安らかに眠る事が許されず、まだまだたっぷりと生き地獄という名の九州を満喫させられてしまうのである。

 

さあ、そんな彼らの壮絶な初日も間も無く終わる。

次回はやっと「桃源郷」坊ガツルにてやすらぎの時が訪れ、翌日再び二人は修羅の世界へと旅立って行くのである。

 

くじゅう17サミッターの称号まで、残り「4座」

田沢への苦渋十七連山の試練、残り「6」

 

荒ぶる二人のふるえるハート。

そして燃え尽きるほどヒートする九重連山。

次回、二人の波紋が山吹色に疾走するとき、

北大船山で、魂の「大相撲」が炸裂するのである。

 

九重連山男塾4へ 〜つづく〜

 

アイテム紹介

それでは今回は横綱松尾山の勝ち越しを記念してこちらの一品。

たまにはアウトドアギアのサイトらしく、厳しいアルパインクライミング時でもしっかり活躍してくれそうなバックパックをチョイス。

シネマコレクションの「お相撲さんリュック」である。

1週間程度のアルプス縦走から、バックカントリー用ザック、またはアタックザックとしても力強く活躍してくれます。

両手はピッケルホルダーにもなっており、抱きつきスタイルにすればボードやスノーシューも簡単に取り付け可能。

これで海外のロングトレイルを攻めれば、高確率で多くの外人さんとお友達になれる効果もあり。

背面調整ができなかったりリザーバーにも対応していないが、日本人としての魂が宿っています。

 

これであなたも気分は松尾山。

横綱の強さにあやかって、これ背負って北アを縦横無尽に駆け抜けてみてはいかがだろうか?

 

それではまた次回お会いしましょう。