「雪山は危険だから」と言う理由で、冬はぱたっと山に行かなくなる人も多い。しかし行く山を選び、適切なクランポン(orチェーンスパイク)があれば珠玉のお時間を楽しむことができるのだ。今回はそんな「雪山興味あるけど不安…」と言った人向けにお勧めする、ライトに大満足できるスノーハイクの世界をお送りします。
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浅間山の展望台!「黒斑山(くろふやま)&蛇骨岳(じゃこつだけ)」
癒しのスノーハイクを求めて
今までの僕の雪山は、暴風とホワイトアウトの中でいかにマゾり切るかの世界だった。
例えば僕の平均的なテント設営風景はこんな感じだ。
毎度ランドネのような爽やかパステルチャッピー登山を期待して行くんだが、結局いつもこのような嵐の中でテントと乱取りをする羽目に。
しかし数年に1度、たまーに天が「たまには飴をあげないと鞭の威力が半減してしまう。存分に浮かれてこい!」と人並みの快楽を与えてくれる時がある。
BBGとしても毎度マゾ行為ばっかお送りして、肝心の山の魅力をお伝えできていない。
実際に友達から「お前の記録見てると山やりたいという気が起きない。だって辛そうだもの。景色も全部白いし。」と言うごもっともな意見をもらうことも。
そこで今回は「雪山って怖いことばっかじゃないんだよ」「スノーハイクって最高の浮かれアクティビティなんだぜ」「山って楽しいところなんだよ」ってのをお送りしたいと思います。
と言うか、腹に石が詰まってていつ発作が起きるかわかんないんで、ライトなスノーハイクしかできない裏事情があるんですけどね…。
そんな中、長野と群馬の県境に「黒斑山(くろふやま)」ってのと「蛇骨岳(じゃこつだけ)」と言う名のスノーハイク初心者に最適なチャッピーマウンテンがあることを知った。
名前だけ見たら「黒斑蛇骨」っていかにも男塾感が漂ってしまうが、実際はライトな行程で楽しめる山らしい。
しかもこの時期なら、粉砂糖が振りまかれたような浅間山が堪能できると言う。
ツライ入院生活、嫁による「顔がでかすぎね?」というディスり、子供達に「尿臭い」と言われた傷を癒すため、僕はその山に向かったのである。
腹下しガールと腹石ボーイ
今回は秋の「高妻山」に引き続き、本意気山ガール&悪天候フォグガール&急登ニヤリマゾガールとして著名な「低血圧Mちゃん」に撮影サポート隊として来ていただいた。
前回は登山開始前から車酔いで嘔吐し、登山中も常時吐き気と戦いながら稜線まで上り詰め、そして「さあ!これからだ!」と言う段階でフォグを大発生させた女版ユーコンカワイ。
今回も撮影サポートで来たにも関わらず、早速駐車場の段階で「うお!カメラ忘れた!」とユーコンばりのスカスカスポンジ脳を披露。
しかも今回はお腹を下しているらしく、事前の仕込みも万全のようだ。
こうしてスタートラインに立った、腹下しガールと腹石ボーイ。
平和なスノーハイクとはいえ、二人ともいつ腹内で反乱が起きるかもしれないというスリルと隣り合わせのスタートである。
ちなみに低血圧Mちゃんはチェーンスパイクで、チキンのユーコンカワイは「12本爪以外は信用できねえ」と通常の12本爪クランポン。
これからスノーハイクを考えてる人は、まずこの辺りから揃えて行くのがいいだろう。
黒斑山へはそんなに激しい急登もなく、久々の雪のサクサクとした感触を楽しみながら、ゆっくりとしたペースでハイクアップ。
こういう時は通気性のある薄手の化繊ジャケットがとても重宝する(二人とも極度の冷え性)。
僕のパタゴニア・ナノエア・ライト・ハイブリッド・ジャケットや、低血圧Mちゃんが新調したアークテリクス・アトムLTフーディ(近々レビュー書いてくれます)が実に調子よく体温を維持しつつ熱がこもらない。
晴れた日の雪山の樹林帯は本当に気持ちがいい。
写真では分かりにくいが、雪に光がキラキラと反射して星空みたいになるのです。
毎度低血圧Mちゃんを連れてくると「悪天候男+悪天候女」の相殺効果で結構晴れるからありがたい。
彼女も約数年ぶりにサングラスをかけて「眩しいという感情を久しぶりに思い出しました。」と感慨深げ。
しかし彼女がサングラスをかけて浮かれた時はたいがいフォグが大発生するので、今後も彼女が浮かれないように注意深く見ていく必要がある。
フォグvs代償兄妹
やがて樹林帯を抜け、外輪山の稜線上に到達。
ここで僕は思わず「おお!黒斑山方面がとんでもなく晴れてるぞ!」とコーフンしてしまったのがいけなかった。
低血圧Mちゃんが「え、ほんとですか〜。」と浮かれた状態で稜線に到達。
すると「浅間山が噴火したのか?」というくらいの勢いで、急激にモクモクが大発生。
僕は慌てて「やめろ!浮かれるな!」と制止するが時すでに遅し。
20XX年、世界はフォグの炎に包まれた。
このままでは「浅間山を見に来たのに浅間山が見れない」という大惨事に。
スノーハイクの楽しさを伝えるための記事が、またしても放送事故のような白い世界に支配されてしまう。
しかし尿管結石になって以来、何気に「開運」してしまったのか晴れ続きのユーコンカワイ。
さらには腹下しだけでなく、ここに来て己のiPhoneを故障させる追加代償を払った低血圧Mちゃんのプレーのおかげで、
稜線上は良い天気をキープ。
やっぱ青と樹氷の白のコントラストって最高。
本来はこの稜線を楽しみつつ横目で浅間山を見て楽しむスタイルなんだが、横見ても浅間山は相変わらずモクモクの中に埋まっている。
こんなに晴れてるのに、あんなにでっかい浅間山が1mmも見えないというまさか。
しかしである。
低血圧Mちゃんが凹み始め、腹の下しっぷりも「ぎゅるるるるるる」とはっきり聞こえるようになって来た段階で、ようやく彼女の「山場のフォグ力」の力が半減。
すると目の前のカーテンが「サーッ」と開いて行くかのように、フォグが消えて行く。
そして目の前には「ずっどーん!」と浅間山のお姿が!
今まで散々隠されてただけに、思わず「うおー!」と言ってしまうほどの感動。
まさに粉砂糖を振りかけたような雄大な姿と、麓に広がるアラスカのような原野の世界。
個人的にも今まで見た山の中でトップクラスの感動(というかほとんど白くて見てないんだけど)だ。
まさに今の時期だからこそ堪能できる、なんとも美味そうな粉砂糖浅間山。
これは知らない人には是非一度体験してほしい絶景だ。
そしてすぐのところにある「トーミの頭」に到達。
トーミの名前の由来はわからないが、恐らくここから見る浅間山が「白と黒」に綺麗に分かれてることから「トミーとマツ」のトミーから名を取ったと推察される。
だってこの先は「“黒”斑山」だからね。いっそ黒斑山も「松崎山」とか「シゲルの頭」って名前のが良かったのではないだろうか?
その後は、浅間山が見える場所で小休止。
ここで低血圧Mちゃんが「ああ…もう…浅間山も見えるし、空は青いし、アルフォートは甘くて美味しいしで最高!」と言ってしまった。
すると「調子にのるな!」とばかりに、再び下方からモクモクが大発生!
彼女の浮かれ発言からものの10秒程度で、浅間山はその姿を消した。
「アルフォートが甘くてうまい」って言っただけでここまで天候を操って「爽やか」に浸りきれない女。
浮かれた先にはマゾ来たる。
彼女がランドネから読者モデルの依頼が来ることはきっとないだろう。
白き黒斑と蒼き蛇骨
トーミの頭から黒斑山、そして蛇骨岳に至る稜線は、まさに「歩く浅間山展望台」と言っていい外輪山。
この稜線上を浅間山見ながら進むのがこのスノーハイクの何よりの醍醐味だ。
しかし先ほどの「浮かれアルフォート」の余韻のせいで、背景はフォトスタジオ並みに真っ白だ。
しかしご安心を。
スノーハイクの場合、こう言った低山の樹林帯では「樹氷のアーチ」というもう1つの楽しみもあるのです。
これはこれで好きな雰囲気でいい気分。
さあ、樹林帯を抜けたらきっとフォグも晴れてるはず。
黒斑山は「最も浅間山が美しく見える」山頂として多くの人が訪れる場所だ。
ってことで、黒斑山山頂にて雄大な浅間山をバックにパシャり。
撮影をお願いした人が「浅間山見えてないですけどいいですか?」と聞いてくるが「大丈夫です。僕らには見えてますから。」と少し声をつまらせながら答える。
さっき一度見てるから、あとは得意の想像力で補完すればいいだけのことである。
そしてその先の蛇骨岳目指して、再び浅間山を想像しながらのホワイトハイクは続いて行った。
するとである。
黒斑山で諦めて帰らなかった二人に、ついにご褒美の時間がやってくる。
フォグがなんとなーく「ボワ〜」と薄くなっていき、見えそで見えない絶妙なラインに。
これを見て低血圧Mちゃんが浮かれそうになっていたので、僕は慌てて「堪えろ!ニヤケてはいけない!」と必死で制止する。
するとその我慢の甲斐あってか、再びパーフェクトな浅間山がズドーン!
ううううむ、最高だ。
小躍りしてキャッキャウフフで浮かれたいところだが、二人とも眉間にしわを寄せて歯を食いしばり、浅間山を見て見ぬ振りをして先に進む。
1秒でも長くこの景色を堪能するために、悪天候人間たちは決してここで浮かれてはいけないのである。
二人は浅間山に背を向けて、黙々と蛇骨岳山頂を目指す。
そんな苦労もあってなんとか晴天をキープさせながら、やがて蛇骨岳の山頂に到達!
思いっきり逆光ではあるが、ついに快晴と浅間山バックに悪天候兄妹が写真に収まった。
長年「俺のカメラってモノクロしか撮れないんだよ」と不満を漏らしていたが、晴れてたらちゃんとカラーで撮れるんだという事を知った瞬間だ。
浮かれポンチランチ
日帰りスノーハイクの良いところは、荷物も少ないから豪勢な飯を作れるところにある。
晴れた日に絶景を眺めながらの雪上ランチは、夏とは違った趣でとても楽しい。
今回は低血圧Mちゃんが「牛丼の具担当」で、僕が「炊飯担当」だ。
で、開始5分。
水で浸しておいた米を早速粗相してひっくり返すユーコンカワイ。
そしてそのまま「雪ごと米拾って入れれば水になるから問題ないっしょ」と汚れた雪ごと戻し出す。
このあたりの配慮のなさが、今まで数々の女性から「女心のわからない男」「デリカシーなし男」と呼ばれる所以である。
しかし今日はマゾガールが相棒なので文句は言われない。
前回の高妻山でも、低血圧Mちゃんはぬるくて固い餅を食わされてるてるが、なぜか喜んでいた。
一方そんな低血圧Mちゃんも味噌汁作りのために万全の準備をしてきたにも関わらず、
「うお!ダシを忘れた!」と、カメラに続くスポンジさを披露。
米をこぼす男とダシを忘れる女の、ボケとボケが織りなすランチタイム。
しかしダシなしでも寒い山頂で食えば、京都料亭にも勝るとも劣らない絶品味噌汁に。
体が芯からあったまっていく。
ちなみにこのように化繊のキルトシュラフを持参すると、特大膝掛けとなってコタツに入ってるような気分が楽しめる。
化繊だから濡れても平気だし、このヌクヌクは一度やったらやめられない。
こういう余計な荷物持っていけるのも、日帰りスノーハイクの楽しさだ。
そしてここで登場するのが牛丼セット。
これがBBGの男衆だけだと「昼飯なんて立ったままビーフジャーキーで十分だ!」となるが、やはり女性を連れていくと食事の華やかさが大幅にアップする。
一方、炊飯担当の僕の米は、米を入れすぎたがゆえに膨張しすぎて、もはや蓋が持ち上がっちゃって「蒸らせない」というまさかな状況に。
最近炊飯の失敗率がイチローの生涯打率を上回って来て、すっかり炊飯下手になってきてしまった。
おかげで今日のご飯は芯が残りまくりの、またしても固い米になってしまった。
低血圧Mちゃんは、僕と来るたびに固い餅食わされたり固い米を食わされたりと、相変わらず巻き込まれ系マゾガールである。
しかしそんな固い米も「つゆだく低血圧特性牛丼」がかかれば、汁を吸ってちょうど良い塩梅に。
ううむ素晴らしい!これぞフォトジェニック!
野郎臭いBBGの記事に突如舞い降りたこのランドネ感!
前回の豚汁といい、急に山食レポートが増えてきたBBG。
これであとはラーメンとかわいい動物の写真でも展開していけば、視聴率アップ間違いなしだ!
そしてやっぱりこの状況で食うこの牛丼がうまいのなんって。
今後BBGのイベントは闇鍋的な僕じゃなく、彼女に担当してもらおう。
ただしいろんなものを忘れるので、豚汁を作るときに豚肉を忘れて来る可能性は大である。(ちなみにこの時のレシピも記事書いてもらいます!女性陣はそれを見て男心をゲットせよ!)
で、最後は冷え冷えのデザートで締め、
そして腹も満たされてゆっくりピストン下山。
あれほど真っ白だった黒斑山も今ではご覧の通り。
もちろんそのための事後代償もバッチリで、ここから低血圧Mちゃんの腹下しレベルが一気にアップ。
急に無言になったかと思うと、後方から「うう..うう…イタタタ」という声とともに「ぎゅるるるるるる」という爽やかなビートが聞こえて来る。
なんてありがたい。
彼女は快晴代償で僕が山中で石を排出しなくていいよう、その責任を一身に背負って肩代わりしてくれてるのである。
そのおかげで、最後まで快晴をキープしたまま下山完了!
あんまり晴れたもんだから、帰りの道で追突事故とかに巻き込まれんかと心配したが、なんとか無事に家に帰ることができた。
しかし翌日、僕の車が動かない。
JAFに助けてもらい、バッテリーが寿命を迎えていることを告げられ、その交換費用実に25,000円。
そして同時期に請求されたのが、餓鬼岳で壊したレンズの修理代1万円と尿管結石による入院費4万円。
怒涛の合計75,000円の損失。
あんだけ晴れたのは、結局はこのような「事後代償」が待っていたからってことだったのね…。
まあ、僕のような本厄男が75,000円で晴れたスノーハイクを楽しめたんだから、もしろ安く済んだと思うしかない。
ってな感じの日帰り黒斑山&蛇骨岳のスノーハイクでした。
色々あったけど良い山でしょう?
まだ雪山の世界に手を出してない人は是非、こんな感じのハッピーな一日を過ごしてみてはどうでしょうか?
それではまた雪の中でお会いしましょう。
スポンジ脳コンビ、低血圧Mちゃん&ユーコンカワイでした!