“心に決めた特別な山” あなたならどこを思い浮かべますか?私が長年憧れ続けたのは、雪景色の奥穂高岳!上高地から絶景の涸沢、そしてまだ見ぬその先へ。アツシオガワと共に岩と雪の頂を目指した2日間を、「今回ばかりはおちおち呑んでいられない」真剣勝負な鬼ころしSがお送りします!
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プロローグ 北アルプスシーズンイン
こんにちビア!
鬼ころしSです。
下界ではすっかり梅雨入りですね。夏を目前に、仕事帰りの1杯が美味しいシーズンが到来しました。
ところで、山を愛する皆様が一番好きなシーズンはどんな季節ですか?
私は厳しい冬が終わり、美しい雪景色を楽しめる残雪期の山が大好きです。
雪の白と、岩肌の黒のコントラストで山の形、尾根の形を存分に楽しめるこの季節!
そんな最高の季節に今年満を持して臨んだのは、穂高岳連峰の最高峰「奥穂高岳」 3,190m。
急峻で厳しい岩稜!
稜線から見下ろす大パノラマ!
圧倒的唯一無二の存在感!!
そういうものに、私はなりたい!!
私にとって奥穂は他の山よりも特別で、ずっと憧れの存在だったわけです。
GW明けの5月前半、男塾1号生筆頭・アツシオガワの元へと、1年振りに男塾の門を叩いてきました。
注:残雪期の奥穂高岳では滑落・雪崩の危険のある雪の急斜面を登るため、雪山経験と技術が必要です。
注:ダブルアックス、補助ロープ持って行って安心でした。
注:とにかく無理は禁物です!!
第1章 いつもここから上高地
まずは北アルプスの玄関口「上高地」へ向かいます。
通年でマイカー規制がかかる上高地への交通手段は、バスかタクシーとなります。
岐阜側からのシャトルバス乗り場、「あかんだな駐車場」へ到着したのは朝5時半。
連休中やシーズン中には賑わう駐車場も、さすがにGW明け直後はご覧の通り閑古鳥。
東にお住まいの皆様は「さわんど駐車場」の方が馴染みがあると思いますが、西からは「あかんだな」の方がアクセス良いような気がしますね。
今回は1泊2日のテント泊という事で、食材の買い出しは私が担当しました。
「え?俺が持つの?」と不服そうな表情ですが、きっと山を愛する心優しい男性陣の皆様なら、イヤな顔ひとつせず重たい荷物を持ってくれることでしょう♡
「今夜のメニューは社長の大好きなSEIYUのもつ鍋ですよ」とご機嫌を取りながら、その場を上手く丸め込むことに成功。
ヒムロックよろしく始発のバスに乗り込んだら、約35分で上高地に着き・・・
5分もしないうちにイビキGIGスタート。
ディストーションが効きすぎて私は全然眠れません。
一応上司なので、35分間ひたすら我慢・・・
いつ鼻の穴に指を突っ込もうかと悩んだまま、上高地に到着しました。
登山届を出して、いざ出発!
駐車場もバスもガラガラならば、玄関口であるバスターミナルにも人っ子ひとり居ません。
いつもは世界各地の観光客でごった返す河童橋の絶景も、今朝は独り占め。
歩き出してたったの5分で、雪化粧した穂高連峰がお出迎え。
冷たく澄んだ雪解け水が、ザーザーと音を立てて勢いよく梓川を流れて行きます。
川の音と鳥のさえずりを聞きながら、1時間ほどのハイキングで明神に到着 。
ここからも歩きやすい散策路を歩きます。
いつもは猿がたくさん居ますが、今日はゴリラに怯えて出てこないようです。
誰がゴリラだって…。
どこまでも気持ち良い風景。上高地には平和という言葉がぴったりと当てはまるような気がします。
明神からさらに1時間ほど歩き、徳沢に到着。
キャンプ場ではテントを干したり、芝生に寝転んで本を読んだり。みなさま思い思いに過ごしていて、気持ちよさそう。
最高の陽気に誘われてしまったので、私も思い思いに過ごすことにしました。
朝9時だけどガソリン注入。
美意識の高いアツコちゃんは「日やけしちゃ〜う」とお手入れに余念が無い様子。
それもそのはず、徳沢から先は逃げ場のないカンカン照りの道。
この私、これまで残雪の涸沢から北穂高へと通い、奥穂高に憧れ続けること早4年。
しかし横尾までのこの長ーーーーーい歩きには、毎度ながら心が折れます。
横尾大橋に到着。
ここからは穂高、槍ヶ岳、蝶ヶ岳と、登山者がそれぞれの目指す方面へと別れて登って行きます。
ここで出会う方々と「これからどの山へ?」と言葉を交わすのが楽しいもんです。
そんな定番スポットで「え、ここからどっち?これ渡るの??」とウロウロしているゴ・・・CEO。
「ちょっとちょっと、冗談は顔だけにして下さいよ〜」なんて笑っていたけれど、なんとビックリな事に今回が人生初の涸沢なのだそう。
あれ?CEO、登山初心者でしたっけ??笑
第2章 未知なる世界へ
これまで数々の名峰を訪ね、百高山を踏破したCEOがなぜド・定番の涸沢に行ったことがないのだろうか。
本人いわく「変なルートばっかり登ってたんだもん」との事。
変な人だから仕方がないか。
横尾大橋を越えてしばらく進むと、残雪が出てきました。
左手にはクライミングのメッカ、屏風岩。
「ほへー。漫画の”岳”でしか見たことないよ!」と登山初心者さんのような反応がとっても新鮮です。
残雪期のルートはトレースがずっと続いているので、我々はツボ足で涸沢まで行きました。
「ああっ。お許し下さいお殿様〜」
「よいではないか、よいではないか」
「あ〜れ〜〜」的にクルリと回って回避。
地味なトラップを越えれば本谷橋です。
橋はまだ掛かっていませんでした。
本谷橋(のある所)から涸沢までは、延々と登り。
ここまで4時間、きっちりコースタイム通りで到着。
そして、こんな道をひたすら2時間登り続ける修行はここから。しゃベー!
皆さまは山に登っている間、どんなことを考えていますか?
私は長くてつらい登り坂では、ぼんやりとご飯やビールの事を考えていることが多いです。
え?いつもじゃないかって??
チッチッチ、ここ涸沢へ登る時だけは違うんですよね〜。
ここに来る時は100%「涸沢小屋のテラス席で大迫力の穂高パノラマを見ながら一気に流し込むキンキンの生ジョッキ」という明確な目的があります。
そう強く念じなければ、見えてるのにちっとも近づけない小屋にはたどり着けません笑
ようやく到着!久々のテント泊装備に、久々の「ほしーの」が炸裂。
テントの受付は前穂側の「涸沢ヒュッテ」で。
無風、快晴という過ごしやすい気候に皆さまテラスで談笑中。
この時期はもうお水もたっぷり使えます。
アツシオガワの「もつ鍋用の水、汲んで行く?」との問いかけに、「あ、水使わないんでいらねっす。」と適当に答えたことが、このあと波紋を呼ぶとは・・・。
第3章 絶景居酒屋「涸沢」
さて、受付を済ませたらテントの設営をしちゃいましょう。
「お客さん、空き物件お探しかい?上高地から徒歩6時間、ちょこっと歩くけど穂高見渡す一等地だよ。
即入居可能のお宝物件。今なら安くしとくけど、どうする?」
なんていううさん臭い不動産屋とのやり取りはもちろん不要です。
GW明けの涸沢は、居抜き物件の宝庫!先人たちの苦労に感謝です。
ちょうど良さげなスペースを見つけてサクッと設営。
設営が済んだら、今度は北穂側の「涸沢小屋」へ。
涸沢ヒュッテよりも小高い場所にあるので、ウッドデッキからの眺望が最高なんですよ!
「えっ、小屋が二つもあるの!?」と戸惑う涸沢チェリーのCEOを置き去りにして、本日最速ラップでガソリンスタンドに到着。
小屋でさっそく命の水をオーダー。
前穂に乾杯!
くぅーーーーこの眺めは最高のアテですわ〜♥
グイグイいけちゃうわ〜♥
GWには賑わったであろうテント村もまばらで、最盛期の10分の1くらいかも知れません。
小屋のデッキもガラガラだったので、ここでお鍋をさせていただくことにしました。
あたしが今からする話はね、世にも奇妙な出来事なんですけどね。
確かにそのパッケージには「水750m」と書いてあったんですよ。
変だなぁー、変だなぁー。って思いながら、CEO、お水汲んできてもらえますかー。って言ったんですよ。
水いる?って確認したよな!?自信満々に「いらねっす」って言ったよな!な!おい!
鍋を火にかけるとね、あれーいつもと違うなぁ、炎がゴウゴウっと恐ろしい勢いで燃えましてね。
なんだなんだって慌てたときにね、「ブシャー!ブシャー!」って鍋が吹きこぼれたんですよ。
で、ハッと見たら、ヒタヒタヒタァと滴るスープで、ガス缶がカバーまでビッチョリと濡れましてね。
アタシ怖くなって見ないふりしちゃったんですけどね。社長のものなんで。
そうしている間にビールが消えて行くもんだから、おかしいなぁー、おかしいなぁーと思いながらね、まぁ仕方ないなってもう一杯買いに行くんですよ。
…CEOは付けろや!
そしたらね、目の前の男が突然こう叫んだんですよ。
「おかわり!!!」
って。その手には、中身が、もう中身が半分もないんですよ!
さっき追加したばかりなのに、もうね、あたしゾクッとしましてね。
そしたらズルズル・・・ズルズル・・・って奇妙な音がずっと聞こえるものだから、いよいよ恐ろしくなって前が見られませんでしたよ。いやぁ、あれは恐かったですねぇ。
稲川淳二もびっくりな勢いで消えていく〆のちゃんぽん。
食事を済ませたら、明日のルートをチェックします。
見上げると中央にザイテングラート、その上のコルは穂高岳山荘の場所で、左に奥穂高岳が見えます。
積雪期はザイテングラートの左を直登する小豆沢(緑色)が最短ルート。
ザイテングラートの右は大回りでトラバース気味にコルに出るルート(赤色)です。
雪の状況次第で適切なルートは違うと思いますが、我々は小屋のスタッフさんに尋ねて赤色のルートを登りました。
初めての積雪期に、CEOも指差し確認に余念がありません。
つい昨日まとまった積雪があったようで、除雪作業に追われていました。
上部の雪はどうなっているのかな?核心部は?
想像すると緊張でお腹が・・・うぅ。
雪崩が怖いので雪が締まっているうちにピストンするべく、今日はさっさと寝ま・・・
すでにCEOはブーブーといびきをかいて、シュラフに頭までくるまっていました。
真っ黒な塊を見て、思わずこのゴ・・・と言いかけるのをグッとこらえます。
そら、テントも食材もビールも担がされたら塊になってブーブー寝るわ!
夜中にノソノソとテントを這い出ると、広がる星空!
北穂の頂上には、煌々と北斗七星が輝いています。
でも、いいんだ。私はあの北斗七星の横で、小さくひっそりと光っているあの星で・・・
って、死兆星見えちゃってますやん!!
明日、無事に山頂まで行けるのかしら。
後編に続く。