男が男であるために避けては通れぬ激流がある。CEOアツシオガワの疲れた心を癒してあげたい!というウソの名目で執り行われた「川素人童貞を激流に突っ込ませてみたらどうなるか?」という人体実験本番の日がやって来た。そのステージは関西屈指の激流スポット「北山川上流域」。別名「オトノリ男塾」と言われるその修羅の国で、純朴なCEOは荒ぶる男になれるのか?激流直進行軍、いざ始まりの時である!(文・ユーコンカワイ)
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北山川パックラフティング/音乗〜田戸
第1章 穴があったら入りたい
二日目の朝が来た。
大塔川のロングロングダウンリバー、そして小川口での激しいアラビアンナイトを乗り越えた塾生一同。
疲労と二日酔いの色は濃く、この男などは生きてるのか死んでるのかわからない状態だ。
しかし死んでようと二日酔いだろうと、王大人によって強制蘇生させられてしまうのが男塾。
塾生たちは重だるい体に鞭打って、本日のゴール地点である「田戸」へ移動。
そこで川装備に着替えるのだが、ここで早くもお約束の試練に立ち向かうことになる。
そう、それは「冷たくなった昨日のずぶ濡れの靴下やウェットスーツを着る」という苦行モーニングのことだ。
田戸の駐車場に響き渡る男たちの「あ、ああ〜」「うううう」「ぬはぁッ」という黄土色の喘ぎ声。
この瞬間だけは何度やっても嫌なものだ。
そして本来は「さあ!これから楽しい激流下りだ!」っていうこの段階で、ユーコンカワイだけはご覧の切ない不安顔。
かつて彼は長良川で激流に挑み、アンダーカットロック(えぐれた岩の下に水流が巻き込まれてる所)に吸い込まれて人間洗濯機になって死にかけた過去がある男。
彼はそれ以来激流トラウマ野郎と化し、「私はあくまでのんびり清流派です。えへ、えへ。」と言っては激流を避け続ける人生を歩んで来た。
なので本日はもう不安のあまり二日連続のモーニングゲロまで5秒前といった仕上がり。
もちろん風邪の諸症状は相変わらずで(タープ泊したせいで悪化している)、頭痛と吐き気と瞼ピクピクを従えてのスペシャルマゾ仕様である。
そんな不安が立ち込める中、昨日合流したレスキュー隊以外にもここで二人の心強い援軍が合流。
左の女性が「アングラCさん」で、右の男性が「アガタさん」だ。
この二人、常に「穴があったら入りたいです。」と公言しているが、決して何か恥ずかしいことをしてしまったわけではない。
なんと彼らは現役バリバリの洞窟探検家。
テレビなどでおなじみの吉田勝次さんの隊に所属するモノホンの探検家たち。
本物のアンダーグラウンドの世界で活躍するアングラCさんは女性洞窟探検家の第一人者であり(文字通り地下アイドルの先駆けである)、アガタさんに至っては日本各地の未知の洞窟を発見・調査する吉田隊の副隊長さんだ。
実は前回紹介したnortikパックラフトの代理店さんってのがアガタ(縣)さんのことで、今回は「パックラフト貸しますよ。なんなら僕も行きましょう。」と急遽参戦。
BBGはなぜか色んな変態系の人が集まってくる場所だが、ついに洞窟探検家まで加わっていよいよカオスなサイトになって来た感がある。
ちなみにそんな凄い人達に対し、もちろんアツシオガワは「アミアミスケスケスタイル」にて変態返しのご挨拶。
大会ごとに人数が増えていく元祖男塾のように、次々と強力な援軍が加わっていくBBG男塾。
ひとしきりお互いに挨拶が済んだら、スタート地点の音乗付近へ移動。
その眼下には荒々しい渓谷の姿と、オトノリへの狭き入口が見て取れる。
緊張感が増す塾生達。
この音乗は激流いかだ下りの場所としても有名で、一般の人たちでも安心して激流を楽しめる場所としても有名だ。
ただ安心して楽しめるのは連結されてるしっかりしたイカダだからであり、ここを通常のカヤックなどで下るにはそれなりの経験と技術が求められる。
そんな関西屈指の激流に、「なんちゃって川下り道具」のパックラフトで挑もうというBBG男塾。
しかもそのうち1名は川下り経験2回目の素人童貞で、他1名は激流を避け続けて来たチキン野郎。
恐れを知らない素人童貞はこの時点でも結構平常心をキープしていたが、もう一方のチキン野郎は恐怖のあまり本気でえづいてしまっている。
沈脱時を想定して事前にスカートがさっと外れるかのテストをし、全然外れなかったため恐怖倍増。
持ち前のネガティブシンキングの洪水に飲み込まれ、「恥の多い生涯を送って来ました。どうかBBG読者の皆さんによろしくサヨナラをお伝えしておいてください。」と勝手にダークな世界に入り込んで悲壮感が凄まじい。
それでもここまで来たからには後に引けぬが男の花道。
左からレスキュー部隊の「レッドブギ兵長」「麻婆軍曹」、「インリンオブジョイ鯉」「素人黒童貞」、探検部隊「アガタ」「アングラC」、「テスリンY」「チキンカワイ」。
教官2名、塾生4名、探検家2名の合計8人の豪傑達。
さあ、男塾、男意気。
己の夢を魁よ!
第2章 出会い頭のズギャン
全員で男塾塾歌を斉唱してから、パックラフトを担いで大移動開始。
実はここからでもスタートできるのだが、そこはもちろん男塾。
鬼教官麻婆軍曹の「お前達のようなクズはさらに上流の荒くれ部から始めるべし!かつてそこをパックラフトで下った奴は一人しかいないというオツな場所である!」という指示のもと、さらに上流部へと移動。
当然川に入るにもまともな道はなく、急峻な山肌を下降していくと、
「ゴウッ!ゴウッ!」という川の轟音とともに、いかにも男塾といった荒くれた世界に到達。
写真では驚くほど迫力が伝わらないが、これを見た時の鯉さんの表情を見れば多少は我々の恐怖が伝わるだろうか?
今回彼は嫁迫害に対する鬱憤を晴らすためにこの企画を立ち上げた張本人だが、何気に彼自身激流は初めてでドン引き状態。
チキンカワイに至ってはその顔から表情が消え、兵馬俑のように立ち尽くしている。
その青ざめた兵馬俑の後ろにいるアングラCさんの視線の先にあるのが小森ダムで、観光イカダの運行に合わせてここから放水しているという。
麻婆軍曹は「今回はいつもより水量は少なめですね」と残念そうに言っていたが、塾生達にとっては十分な迫力。
で、スタートして直ぐに試練が訪れるということで、その場所を事前に下見。
そこには激しい落ち込みがあり、左は岩壁、右に隠れ大岩で、センターをいかに漕ぎ抜けられるかが勝負といった瀬。
まずは麻婆軍曹が「僕がお手本で先に下るんで、ルート取りとかよう見といてください」と突入。
まさに「THE激流」といったこの絵面。
見る分にはいいが、ここと同じ場所にこれからふにゃふにゃのパックラフトで突入せんといかんのか…。
結局この見本を見たことで「あの世へのルート取り」が見えてしまって余計ビビるチキンカワイ。
そして次に、「僕が下で散乱したパドルとか拾いまーす」と怖いことを言ってレッドブギ兵長もGO。
もはやカヤックすら見えず、ただただ激しいジャグジーに浸かってる人にしか見えない。
さあ、心臓はバクバクだが、下で屈強なレスキュー隊がいると思えば安心して突っ込める!はず。
それではトップバッター、一号生チキンカワイ、行きます!
ユーコンカワイ、「小手調べの瀬」を無事に突破!
最後の最後は突然川が無くなったかと思った先でズギャンと落下するという恐怖。
まだスタート前のアツシオガワから目線だと、アガタさんが順調に漕いで行ったと思ったら…
突然ズギャン!と視界から消えるという恐怖。
さあ、果たして川下り経験2回目の素人童貞アツシオガワ。
一発目で見事轟沈し、我ら嫁迫害三英傑の日頃の鬱憤を晴らしてくれるのか?
どこからともなく聞こえる三つの「チッ」という舌打ち。
なんだかんだとソツなくこなしてしまうCEOに苛立ちを感じながらも、「なあに、試練はまだ始まったばかり。次はこの川最大の核心部“オトノリの瀬”だ。次こそ貴様のギャフンを俺たちに見せてくれよ。」とほくそ笑むのである。
初っ端の挨拶がわりの瀬は越えた。
さあ、次はいよいよ修羅の激流オトノリの瀬。
しかしそこでは思いもよらない波乱が巻き起こるのであった。
第3章 探検家の乱
オトノリの瀬に到達したBBG御一行様。
早速上陸してスカウティングを開始。
その現場は、そりゃあもうワッショイワッショイと大いに賑わっていたのであった。
川幅が一気に狭まって一点に集中した激しい水流。
そこに1段2段3段と三連続で段差が現れ、我らの行く手を阻む。
もし1段目で沈でもしようもんなら、そこから先は数百mは延々と流されるというハードさ。
両岸は切り立っていて、当然途中で上陸なんてできやしない。
まさにここは「北山川の鎮守直廊三人衆」と言ってもいい難所であり、「男とはなんぞや」を天下に示す試練の場なのである。
塾生たちは「1段目のあそこで独眼鉄のヨーヨーをかわして、そのあと2段目で蝙翔鬼のコウモリ攻撃をくぐり抜けて、最後3段目は男爵ディーノのトランプの脇をこうやって抜けて…」とルートファインディングに余念がない。
その時である!
瀬にばかり気を取られていたが、真の敵は内に潜んでいたのだ!
なんとまだこのスカウティングの段階で、勝手に漕ぎ出した猛者がいるではないか!
しかも無人だあ!
一気に騒然とする塾生達。
このトリッキーすぎる勇み足スタートに対して、完全に対応が遅れるレスキュー部隊。
そう、この「無人くんパックラフト」の主人は、まさかのアングラCさん。
上流に停留していた彼女のパックラフトが流されてしまい、ここで想定外すぎるアングラ奥義「エアーパックラフティング」が炸裂してしまったのである!
これが洞窟探検の第一線を走り続ける女性による、「男はなんぞや?」に対する一流の答え。
これにはさすがの独眼鉄も「え?なになに?なにこの展開?」と動揺が隠せない。
しかしさすがは現役探検家による無人漕法。
あの天下のオトノリの1段目を難なくクリアーし、大慌てで追っていくテスリンYさんも振り切って颯爽と激流を乗り越えていく。
かつて「真の剣豪は剣すら抜かなかった」という言い伝えがあるが、ここで我々は「真の探検家はパドルすら握らない」という凄みのある技を見せつけられることになった。
今後「私もエアーパックラフティングを習得してみたい!」という人は、この見事な下りっぷりを目に焼き付けて参考にすると良いだろう。
移ろいやすい「女心と空きの舟」にすっかり翻弄され、アワアワと取り乱れる男達。
しかしこのアングラCさん流「男とはなんぞや?」の問いに対し、サッと動いたのはやはり探検隊副隊長「アガタ」さんだった。
彼は猛烈な速さで足場の悪い岩場を滑走して行き、天下の激流に向かってスーパーダイブ!
さすがは過去に自転車漕いでて車に轢かれそうになった時、大事な自転車を守るために自らの体の方を車に追突させた過去がある漢。
大事なギアを失うくらいなら、骨の一本二本はくれてやる!といった男気。
やがて彼は無事にパックラフトを救出し、流されたパドルは後で猛追していったレッドブギ兵長によって回収成功。
普通にパックラフトで下るのも困難なこの難所を、ボディ一つで乗り越えてパックラフトまで救出してしまう「探検家」という種族の驚異的能力。
全てをやり遂げて悠々と帰ってくる様は、独眼鉄も納得の「男」の姿だった。
オトノリの下見に来たつもりが、探検家二人による突然の「自作自演超人ショー」を見せつけられて唖然とする塾生達。
別にこれはアングラCさんが日頃副隊長に感じてる鬱憤を晴らす為にわざと無人ラフトを流したわけではなく、実は我々が下見中に図ったかのようにダムが放水したから。
で、増水したことによって河原に置いてた彼女のパックラフトが流されたという顛末である。
事実、この時他にも麻婆軍曹のカヤックも流される寸前状態だった。
あのタイミングで増水してしまうのがやはりBBG。
さらに増水していたら、この段階で全員船を失って壮絶なフィナーレを迎えるところだった。
しかしなんとか生き残り、この放流によって核心部オトノリの瀬は水量アップしてさらに賑やかに。
探検家たちによる壮大な前座ショーは終わった。
次は我らがCEOが流される番だ!
第4章 オトノリの鯉
オトノリの正しい下り方は、先ほどの無人くんにしっかり見せてもらった。
彼のムービングを参考に、いよいよ緊張のオトノリチャレンジ。
今回もお毒味役のチキンカワイから突入である!
1段目で強烈なアッパーを食らってひっくり返りそうになるのを耐え、無事にクリア!
これは確かに1段目で沈したら、そのまま延々と流されて心を折られること必至。
安全圏に到達したユーコンは「こいつはCEOが流されてくるのが楽しみだぜ。さあ、早く嫁迫害三英傑よ、ここに集結せよ!ゆっくりCEOの情けない姿を見届けてやろうぜ!」とニンマリ待機。
そしてその頃、「じゃ、CEO、お先に行って待ってますぜ」と三英傑の一人鯉がスタート。
家庭内で6級レベルの猛激流(嫁)に翻弄されてる鯉にとって、オトノリ程度の瀬なんて屁のツッパリ。
さっさと下って、下から早くCEOの無様な姿を…
こ、
鯉ィーーーー!!
男塾一号生・鯉。
彼は見事に1段目で美しい沈をかまし、その後2段目、3段目と延々と流されて行った。
それはまさに鯉の如し。
所詮家の中でも、川の中でも、彼は激流に翻弄される運命なのである。
この記事を見ている「日本嫁の迫害に悩んでるの会」の皆様には、そんな彼の雄姿を見て大いに日頃の鬱憤を晴らして欲しいのである。
CEOをギャフンと言わせるためにこの企画を立ち上げた鯉の、見事なギャフンリターンバック。
続く三英傑残りのテスリンYさんは、塾生の中で最も貧弱なパックラフト・ホーネットライトのせいで2段目ではほぼロデオ状態に。
さすがは家庭内激流を長年耐えて来た年季の差で、船首がバッコンバッコンなっても乗り越えて行った。
さあ、約1名ミイラ取りがミイラになってしまったが、本来のミイラ野郎アツシオガワが下ってくる。
無様な様をじっくりと見てやろう。
結局無難に乗り切りやがった。
やはり身体能力の高い奴は何やってもうまくいきやがるのか。
こうなってくると嫁迫害三英傑以外にも、麻婆軍曹も「チッ、面白くねえ!もう次からはスカウティング禁止だ!」と憤慨。
スカウティングが禁止になれば、多分やばいのはCEOより三英傑の方だが、それでもやっぱり奴の沈が見てたい。
とりあえず核心部である鎮守直廊三人衆は乗り越えて、また一つ男度が増した塾生達。
次はこの区間、オトノリを含めて3つある難関の一つ「ナイアガラ」。
もうそのネーミング自体に激しい不安感を感じてしまうが、男達は愚直に前に突き進むのである。
第5章 ナイアガラを超えろ
オトノリの核心を乗り越え、ようやく多少の余裕が生まれ始める塾生達。
しかしこのような浮かれ状態を鬼軍曹は認めない。
「瀬がない場所は断崖絶壁から男塾万歳ダイブだ!」と、中々な高さからの身投げを強要。
鯉さんに至っては一度オトノリで長く波に揉まれているため、この程度はお茶の子さいさい。
この時間帯になってくると観光の筏下りも動きだし、邪魔にならないよう端に避けて先行してもらう。
手すりはあるが、普通におじいちゃんとかがイカダに立って激流に突っ込んでいく様はある意味すごい光景だ。
そんな中、二番目の核心部、白泡渦巻く「ナイアガラ」へ突入!
ここは見事誰も沈せず無難にクリア。
もちろんCEOも全員の期待を大きく裏切ってノー沈突破。
その後もすかさず迫力満点のシャクシの瀬などが現れるが、オトノリで男度が上がった我らは辛くも突破していく。
やがて観光いかだ下りのゴールである小松に到達。
下り終えたイカダは、こうして特殊なクレーンにて地上に運ばれていく。
この光景は中々他では見られない。
やがて唯一広い場所がある場所にて上陸し、やっとゆっくり昼休憩。
この川はこのようにのんびり上陸できる場所がほとんどないため、必然的に他のパドラーの人とも一緒にワイワイとメシを食う感じになる。
北山川を庭とする麻婆軍曹の顔見知りも多く、皆激流慣れした屈強な教官軍団だった。
ここでクラッカー程度の飯をサクッと食らい、最後の難関「小和田の瀬」へ向かって出発だ。
ここまでは「探検家のご乱心」「鯉の3段流れ」というトラブルはあったものの、なんとか死者も出さずに頑張っている塾生達。
しかし身体能力だけで操を守り通すCEOには、最後の瀬くらい壮大に素人童貞卒業をかましてほしいところ。
そしてその最後の難関では、とある男が「己の夢を魁る」こととなる。
その時は刻一刻と迫り来ているのである。
第6章 星になった男
やがてこの旅、ラストにしてオトノリに匹敵する難関の登場。
それがこの「小和田の瀬」である。
瀬の入り口右手には厄介な岩がせり出し、本流の流れに押し出されないように漕ぎ抜けなばならないというパワープレイスポット。
とりあえず斥候部隊として、今回もお毒味役のチキンカワイが果敢に突っ込んで行くのでる。
チキンだけに「絶対に沈してなるものか」という根性で強引に乗り切るが、最後は本流からはじき出されてフィニッシュ。
この時踏ん張りすぎて何気に腿をツッていたりする。
その後も「穴があったら入りたいコンビ」も無難に突破。
今回はエアーではなく、ちゃんと己の腕でパドリングして見事にクリアだ。
みんなここまで数々の試練を乗り越え、この頃には上達が著しい。
そんな中、オトノリで「鯉の三段落ち」を見せつけた鯉さんの番。
さあ、ここはサクッと乗り越えて、オトノリのトラウマを払拭しようぜ。
いざ、鯉さんスタート!
その逞しい背中からは、もう絶対に沈をしないという強い意志と自信がうかがえる。
しかし彼は見事に瀬の入り口で「行っちゃダメよ」と言われてた右方向へと突進。
彼の男気がまっすぐ進むことをヨシとしなかったのか。
見事にそのままその岩に激突し、即座に張り付いてパックラフトが激流に揉まれて変な方向に。
やがて鯉は消えた。
ユーコンの「こ、鯉ィッッーーー!」という声も虚しく、数秒経っても彼は浮上してこない。
そう、彼はここ小和田の地で星になったのだ。
もう誰も君を迫害などしない。
これからは嫁さんに追い出されて冷たい廊下で寝袋で寝る必要なんてないんだ。
この北山川で自由に生きる鯉となれ。
と、思った瞬間。
彼は思いがけない場所の岩の隙間から排出されてきたのである。
壮絶すぎる魁っぷり。
もう一度言うが、彼こそ今回の企画の発起人で、CEOを激流でギャフンと言わしてやろうと言っていたご本人である。
そして彼はそのまま荒波にもみくちゃにされながら、男らしく小和田の瀬を乗り越えて行く。
これぞ真の男だけが習得できるという奥義「鯉のから騒ぎ」。
空身で激流に揉まれ、心の中を恐怖で大騒ぎさせながら彼はただただ流されて行った。
そんな男気溢れる彼のビッグプレーをもう一度見て行ってみよう。
見事なり、鯉。
己の大事なパックラフトを置き去りにして、彼は見事なパックボディイングではるか下流まで流されて行った。
で、残されたパックラフトをユーコンがなんとか救出。
主人に置いていかれたパックラフトは、もがくアマガエルのようだったと言われている。
浮力のあるパックラフトだけこの場に留まり、彼はこの岩の下へと引きずり込まれ、そして岩の下をくぐって反対側に吐き出された模様。
岩の下で引っかかってたらと思うとゾッとする。
以来この岩は、我々の間で「アラブ岩」と呼ばれて恐れられることとなる。
で、そんな一部始終を後方からずっと眺めていた男がいる。
これから下るって時に、そんな恐怖体験アンビリーバボーをたっぷり見せつけられたアツシオガワである。
先輩の鯉が「ちょっくらあの子口説いてくるわ!」と先に行ったと思ったら、突然奥から出て来た怖いお兄さんたちに連れて行かれてしまった的な展開。
これには流石に恐怖が植え付けられたか?
さあ、鯉の後を追って、小和田の星となれCEO!
難関アラブ岩をギリギリですり抜け、はじき出されることなく最後まで乗り切ったCEO。
結果的に鯉さんが先に危険箇所をしっかり示してしまったが故に、彼は完璧なルート取りでこの荒波を制したのである。
結局彼は最後までノー沈を貫き通して、見事に漢となったのである。
一方、下流の方まで漕いで行くと、精魂尽き果て、エクトプラズムまでも吐き尽くしてしまった憔悴した鯉の姿が。
男塾の洗礼を浴びて「二度と浮き上がれないかと思いました…」と吐き捨てるのがやっと。
再びパックラフトに乗ろうとしても、足が生まれたての子鹿状態で乗ることもままならずに粗沈。
全てを出し切ったこの男もまた、立派に漢としてオトノリ男塾ご卒業である。
この後彼は「なんか鼻水が止まらないです。」と訴え、見事に風邪をひいていた。
その男気には拍手を送りたいものである。
第7章 卒業
そこからは幽玄とした眺めが見事な上瀞(かみどろ)区間を悠々と流されて行く。
長くハードなこの戦いももう間も無く終了だ。
先ほどアラブ岩でアンダーカットロック童貞を喪失した鯉と、アンダーカットロック先輩による勝利のツーショットも炸裂。
皆がそれぞれの課題や夢を克服し、一皮向けて一つウエノ男になった気分。
この頃には鯉さんと共謀して「もう形はどうでもいいから、力づくで無理やりCEOを沈させよう」と企てたが、そもそもこの二人にそんな余力は残っていなかった。
やがて観光ジェット船の発着地、瀞峡がある田戸に到着してゴール。
こうして男が男であるための長きにわたる戦いに終止符が打たれた。
素人童貞アツシオガワは、オトノリを乗り越えたことで脱童貞を果たしてご覧の満足顔。
童貞を卒業し、今後は「オトノリをスカートなしパックラフトで乗り切ったジゴロ野郎」として勇名を馳せて行くことだろう。
清楚な女性からじゃじゃ馬な不二子ちゃんまで、今後彼が乗りこなせない女はいないはず。
これ以降「美濃のドン・ファン」と呼ばれることになる彼のサクセスストーリーは、この紀州の地から始まるのである。
そして観光客の衆目にさらされながらいそいそと撤収。
その後は駐車場で、マニアックすぎる「洞窟あるあるトーク」で盛り上がり、
ここで塾生たちは解散。
帰り道「いやあ、今回の旅ですっかり痩せちゃったよう。」と言うユーコンは牛丼屋に入って大盛りを注文し、
「これは上にヘルシーなシーザーサラダが乗ってるから大盛りでも0カロリーなんだよね。」とデブあるあるトークで旅を締めた。
こうして二日間に渡った「CEO慰労に見せかけたドッキリ仕掛け人が逆ドッキリ」というオトノリ男塾が幕を閉じた。
探検家の反乱、鯉患いの数々など困難の多い旅路だった。
そんな激しい戦いだったが、なんとか死亡確認を宣告される者を輩出することなく男たちは見事に漢となったのである。
一方、やはり大きな心残りは存在する。
結局今回の旅は全て鯉さんが汚れ役となってしまったため、CEOの慌てふためく姿が見れなかったのは無念だ。
彼はなんだかんだと初めてのことでも無難にこなしてしまうので、こっちとしては納得がいかない。
ということでBBGでは、そんなCEOを陥れられる自信のある方を募集します。
自分の得意分野で彼を慌てさせてみませんか?
この顔にピンと来た方、ぜひ「CEOギャフン係」までふるってご応募ください。
カヤックで滝落ちさせるもよし、柔道対決でぶん投げるもよし、アメフト危険タックルの標的にしてもいいでしょう。
CEOがその驚異の身体能力で、あなたの無茶振りを巧みに乗り越えてみせますよ。
とりあえず200mほど急降下する洞窟探検から始めさせてみようと思います。
後、「どうしてもユーコンを痩せさせたい!」というパーソナルトレーナーさんも同時募集してますよ。
ライザップさん、ここにいいモニターがいますよ!お待ちしてます!
それではまた川でお会いいたしましょう。
王大人から「脂肪確認」されてしまった男。
サモ・ハン・ユーコンがお送りしました。
押忍!