山に沢に川にとハードに暴れまわる冒険野郎たち。そいつらの背中の相棒はいつだって「濡れに強いタフガイ」だった。そして2018年。そんな“冒険野郎の相棒最前線”に進撃してきたのが、質実剛健ゲルマン軍団ことオルトリーブが放つ防水タフバックパック「ギアパック32 & 40」!通常登山はもちろん、沢登り、藪漕ぎ登山、アイスクライミング、川下り、SUPなどでハードに遊ぶ奴らに最適なそのギアパックを、今BBGがハードテストにてレッツ・レビューなのである!(文・ユーコンカワイ )
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オルトリーブ(ORTLIEB)「ギアパック32(GEAR-PACK 32)」
ボーダーレス時代到来!
一昔前までは「山ヤ」「沢ヤ」「源流釣り師」「カヤッカー」など、遊びや冒険のスタイルは明確に別れて独自の世界を形成していた。
しかし道具の進化や価値観の変化で、現代の遊び人たちはその境界を軽々と飛び越えて冒険をするようになってきている。
山釣りやパックラフトのブームがあり、それに伴って日本独自の文化である沢登りも再び脚光を浴びたのもその要因の一つ。
中には軽量なパックラフトやテンカラを背負って山を越えて沢に入り、山釣りを満喫してからパックラフトで川を下って帰ってくるなんていう忙しい遊びをする人も存在する(僕のことね)。
そうなってくると、その相棒(バックパック)には、「タフ」で「防水」で「シンプル」で「汎用性」があって「それでも軽量」っていう、アウトドアギアの本質的な要素が求められる。
計算高い女性が、「アタシが相棒に求めるものは〜、頼り甲斐があって〜、優しくて〜、でもちょっとワルで〜、お金持ちでイケメンってことだけかな〜」って言ってるのに等しいワガママ要求だ。
しかし2018年、そんな遊び人たちのワガママ要求に高いレベルでお応えしてきたタフガイが登場。
それがこのオルトリーブの「ギアパック」なのである。
ロールトップ式の防水バックパックで、容量展開は32Lと40L。
「ギアパック」というネーミングもシンプルで質実剛健さを感じさせてくれる一品。
重量は32Lが1,200gで、40Lが1,280gと、この手の厚手生地の防水バックパックとしては非常に軽量だ。
今回は32Lを中心にレビューして行くが、まず登山メインの人は「オルトリーブってどこのメーカー?」って人もいるだろうから、その辺りから解説していこう。
オルトリーブとは?
先ほど遊びの境界がなくなってきてるという話をしたが、アウトドアメーカーだって最近はボーダーレス。
カーキャリアメーカーの「スーリー」がバックパック作ったり、建築設計事務所の「ミキクロタ」がテント作ったりと、山一筋のメーカーとは違った視点だからこそ面白いアイテムが生まれたりしている。
このオルトリーブも、登山ではなく「自転車」がメインの防水バッグ専門メーカー。
山やってる人は知らなくても、少しでも自転車をやってる人にはお馴染みのドイツのメーカーなのである。
オルトリーブはとにかく「防水であること」に徹底的にこだわりまくっており、愚直なゲルマン魂を有したアイテムの数々は質実剛健なものばかり。
創業の発端は、創業者のハートムート・オルトリーブさんが、自転車旅行中に豪雨で荷物がずぶ濡れになって「あー!もう!チッキショー!」ってなって自転車用の完全防水バッグを作ったのがきっかけ。
そこからは親の仇のごとく徹底的に水を嫌った研究を重ね、独自の素材と溶接技術を確立。
その防水性はヨーロッパでも高く評価されており、バイクパッカーをはじめハードに遊ぶ自転車野郎どもからの信頼度は高い。
彼らが培った防水技術は、自転車業界だけに留まらず、「冒険」という名のアウトドアボーダーレス時代にマッチするように進化しようとしている。
今後の展開が非常に楽しみなメーカーであり、今回のギアパックはその第一歩とも言えるアイテム。
創業者オルトリーブ自らが開発に携わったという力作なのである。
ギアパック32〜スペック〜
タフな生地と防水性
それではそんなギアパックの仕様の方から見ていこう。
まずこのギアパックを初めて見た時の第一印象は「こりゃ丈夫そうだ!」というシンプルな感想だった。
最近頼りないUL系のバックパックを多く見てきたから、久々にこの堅牢頑固で無骨な雰囲気を目の当たりにしてハートが熱くなった。
軽さやデザインにこだわるのもいいが、丈夫さってのはやっぱりアウトドアギアの根本的な要素だ。
そのタフなボディーのメイン素材を見て行くと、ラフトボートの生地ような頑丈で厚手のツヤツヤした素材(赤い部分)と、
耐久性と折り曲げ強度に強いザラザラとした素材(黒い部分)の2枚で形成されているのがわかる。
素材はともにオルトリーブ独自のコーティングが施されたオリジナル生地であり、耐水圧は100,000mm(ネオシェルのレインウェアとかの10倍ね)で、引き裂き強度に優れ、摩擦や熱や冷えによる劣化にも強いというスグレモノ。
その二つの素材を一切糸を使用せず、世界最高峰と言われるオルトリーブオリジナルの「高周波3D溶接」技術で圧着。
他のメーカーも圧着でやってるところは多いが、こうした背面部分は糸で縫い合わせてバックパック内で防水処理していたりする。
そういう面でもこの圧着技術はタフで美しいだけじゃなく、軽量化にも貢献していると言えるのである。
ただしロールトップ式である以上、当たり前だが完全防水ではない。
ギアパックは防水の国際規格で言うところの「IP64」というレベル。(以下表の6番と4番)
要するに「完全水没すると水入っちゃうけど、雨や滝の飛沫程度じゃビクともしまへんで」というレベル。
この辺りのギリギリ限界ラインに関しては「これでもか!」ってくらい格闘して実験してますので、その結果は後ほどお伝えしますね。
で、そのロールトップ式の開口部は、全面ではなく部分的に硬めのプラ板が配置されていて、
ロールダウンする際にその部分がベースになって、柔軟素材の黒い部分が曲げやすくて留めやすいのだ。
ここが鋭角に曲がることで上で輪っかみたいにならず、防水性も高まる上に留めた時の姿が美しく仕上がる。
これも生地の折り曲げ強度が高い(100,000回の曲げ伸ばしにも耐えるってさ!)からこそなせる技。
さすがは堅実不屈のゲルマン魂。
こんなに安心できる相棒はそうはいないぜ。
背面調整と背面パッド
この「背負えるドライバッグ」的なカテゴリーでは、過去にもいくつかのメーカーが同様のアイテムを出している。
しかしそのどれもがドライバッグにショルダーハーネスがついただけってのが多く、タフさや防水性は高いものの、背負い心地や利便性という面は若干犠牲にして来たところがあった。
実際に12,3キロほどの荷物を入れて担ぐと「ちょっとこれで数時間歩くのはキツイな…」と感じることもしばしば。
しかし「ギアパック」は背負い心地の面でも手を抜かない。
まず背面の状況はこんな感じで、前述の通り一切の縫製をすることなくハーネス類は取り付けられており、
背面内部にはポケットがあり、そこに背面マットが内蔵されているのだ。
UL系のバックパックで背面パッドの恩恵を感じられてる人には分かりやすいだろうが、これがあるとないとで背負い心地は雲泥の差(特に重量が増えた時)だ。
泊時など、取り外したマットは座布団にもなるし、ショートサイズのスリーピングマットの拡張マットとして使ってもいいだろう。
個人的には「うお!ここにエバニューのFPmatが入ったら完璧じゃん!」って思ってしまったが、残念ながら幅が合わずにポケットには収納できなかった。
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ギアパックを使う人はUL泊するユーザーも多いだろうから、FPmatやOMMのDuomatなどが入る仕様、もしくは同等のマットが標準で入ってたら最高だった(そこまでは望みすぎかな)。
そして背面のショルダーストラップは3段階に高さ調節が可能。
これによってその人の体型にあった適切なポジションが得られ、背面パッドと相まって上々の背負い心地に。
さらに細かな仕様として、背中が当たる部分だけ何かしら薄いプレート的な物が埋め込まれており、これもステー代わりになって背負いやすさをアップさせている。
しかもこの部分だけ別素材が使われており、目が粗いため汗をかいてもべたつかずに不快感がない。
腰の部分は適度なクッション性があって、それなりに腰に乗ってくれる仕様。
この部分は何かしら滑らない素材であったらさらに腰に乗ってよかったが、これでも必要十分。
以上のように、ドライバック系のバックパックとしてはかなり背負いやすさを意識した作りになっているのである。
ショルダーとウエスト
ショルダー部分を見ると、やはりずぶ濡れを想定して可能な限り保水しない生地を使用しているため、厚みはこんな感じで決して厚くはない。
ここは背負い心地と防水バックパックとしての特性とのバランスの部分なので、これがギリギリの厚みか。
欲を言えばもう少し幅広でクッション性があったら、10キロオーバーの荷物を長時間担いだ時楽かなーとは思う。
チェストストラップはこんな感じで引っ掛けて段階的に調整可能。
ウエスト部分はこの手のバックパックにしては比較的幅広で、ストレスなく装着可能。
このモデルさんは肉付きが半端ないが(僕ね)、このウェストベルト自体は適度な肉抜きがされてて通気性もよく軽量だ。
こちらもショルダー同様厚みはこんな感じで、保水しにくい仕様です。
なお、ショルダー部分もこのウェスト部分も取り外せるため、本体は通常のドライバックとしても使用可能であります。
拡張性
実はこの手の防水バックパックはあまり荷物を外付けができず、割とその部分で頭を悩ませてる人も多い。
事実僕も以前パドルを無理やり外付けしていた際、いつの間にかパドルが落ちてて流失させてしまった苦い経験が…。
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しかしこのギアパックの特徴としてあげられるのが、色々と外付け可能な拡張性。
最も外付けするであろうパックラフト使用時は、ご覧の通りパドルもパックラフトもしっかり外付けができる。
このギアパックには専用のオプションパーツが販売されており(メッシュポケットはバッグ本体にあらかじめ1個付属)、
それをバックパックのデイジーチェーン部分に接続してやると、自分好みに拡張させることが可能。
今までもこういったデイジーチェーンが設置された防水バックパックはあったんだが、こういった専用パーツがないと意外と活かしきれなかったから非常に助かる。
こちらの「メッシュポケット」は、下から物が落ちないようにポケット状になってて500mlのペットボトルがギリ2本入る感じ。
伸縮性があって出し入れがしやすいし、パックラフトにくくりつけたときなどは、目の前に常にボトルホルダーがある感じで地味に便利だった。
一方「コンプレッションストラップ」はその名の通り本体の圧縮にも役立ちつつ、大きめのパドルのブレード部分でもしっかり固定可能。
付属のポールホルダーもデイジーチェーンのどの部分にも取り付け可能で、
パドルのポールやトレッキングポールなどをしっかり固定できる。
受けはないけど下部はしっかり絞って固定できるため、落下の心配も少なくて済む。
あとはトップの部分にも標準でストラップが付いてるため、パックラフトだったりスリーピングマットだったりを固定できる。
ただちょっと長さが短いため、パックラフトだとキュンキュンだからもう少し長くしてほしいところだ。
後ライフジャケットやヘルメットも取り付けて、最大限外付けした状態がこんな感じだが、
ボトム部分にも何かしらくくりつけられるとさらに便利だなあとは感じた。
今回は内部にFPmatを入れてるけど、普通のロール式マットの人はボトムにマット付けたいものね。
ほんと、ちょっとした輪っかが4箇所あればいいだけなんで、可能なら是非設置して欲しいところだ。
ギアパック32〜現場テスト〜
背負い心地
お次は実際に現場で感じた感想でございます。
使用したのは岩場や渡渉の多い500mほどの低山、そしてこないだの「熊野古道パックトランピング」での小雲取越え&赤木川ダウンリバー。
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まず熊野の時の全装備はこんな感じ。
全体で約13キロほどで、この手の防水パックの装備としてはそれなりの重量だ。
この時の荷物の詳細は以下で確認してね。
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今までの防水バックパックだと、このくらいの重量を背負うと後ろに引っ張られる感(背中と腰に乗りきれてない)があった。
しかしギアパックに関してはそんな感じが全くしない。
ガッチリしたバックパックほどじゃないが、ちゃんとしたUL系のバックパック同様の背負い心地の良さを感じた。
13キロ程度の重量なら、なんの違和感もなく快適に背負うことが可能。
調整できるおかげでフィット感も上々で、こんだけ外付けしてても揺れも感じにくかった。
ただショルダー部分が薄くてちょっと硬めのため、この重量で4時間くらい歩き続けると少しだけ肩が痛くはなってきた。
なので実質1日6時間行程くらいで考えると、快適耐荷重は10キロ程度までがちょうどいいだろう。
ちなみに自宅にいる際試しに16キロ程度の荷物を背負ったが、そこまで行くと流石に突っ張る感はあったんで限界は15キロ程度かな。
そして岩場や鎖場が多い場所でも、思いの外体の動きに追従してきてくれてノンストレス。
これなら激し目の動きをする沢登りなどでも問題なく使用できそう。
トータルとしてこの手のバックパックとしては驚きの背負いやすさと言える。
これなら通常のハイクでもガンガン使っていけるから、やはり多様なアクテビティに対する汎用性はあると感じた。
堅牢度&防水性
やっぱり生地がタフってのは大きな安心感がある。
せり出した木の枝だろうと、藪だろうと、岩場だろうと、何も考えずにガシガシ攻めていけるのが実に良い。
ただ見てわかる通り、オプションのメッシュポケットだけはひ弱なもんなんで、どうしてもそこだけは気を使ってしまう。
そこ気にしちゃったらせっかくのタフさが生かしきれないので、この部分の素材、HMGのウィンドライダーに使用されてるような強靭なメッシュ素材(Hexagon Grid Nylon)だったらもっと安心感が出たかなあなんて思ったり。
ただ本体に感じる堅牢度の高さはやはりハンパないんで、ハードなところに行くような場合は外付けせずにガンガン攻めるといいだろう。
続いて防水性のテスト。
前述の通り防水規格は「IP64」なので完全防水ではなく、「いかなる方向の水の飛沫によって有害な影響を受けない」というレベルで水没は想定していない。
ロールトップ式なので、クルクルするところからどうしても水は入り込む。
その辺りを十分理解した上で、「じゃあ実際どこまでハードにやったら浸水する?」っていう限界テストに挑戦してみた。
実際の荷物の上には「濡れたら一発でグチャグチャになりまっせ」というトイレットペーパーを設置。
ここからはこのトイレットペーパーがグチャグチャになるまで、僕とギアパックがひたすら格闘。
「絶対に大浸水させてやるぜ!」と、必要以上にハードなテストを実施しております。
まず川の中にドボンッと落水させ、パックラフトでギアパックを5分ほど「川中引き回しの刑」に。
もうこの時点でやってることはIP64ではなくてIP67に匹敵するテスト。
しかし戦いはまだまだ始まったばかり。
僕は「こいつ水に浮くし、さては乗って漕げるんじゃないか?」と思い、禁断の「ギアパックラフティング」にチャレンジ。
当たり前だけどそのまま沈んでいきました。
そこからは豪快にぶん投げて、
ボディプレス!
からのバックブリーカー!
そしてすかさずボディスラム!
これらの一連の流れを、平日の昼間に一人きりでやってるという背景は一旦忘れていただきたい。
誰かに目撃されてたとしたら絶対クスリ打ってる人と思われる局面である(実際外人ハイカーに見られてた…)。
さあ、まだまだ試合は終わっていない!
もう基準以上のテストしてるから中はずぶ濡れだろうが、ここからはトドメの攻勢。
くらえ!
タワーブリッジ!
からのパロスペシャル!
仕上げはキャメルクラッチだぁっ!
カンカンカンカーン!
試合終了。
本気で殴り合った2人にはすっかり友情が芽生えていた。
さあ、それではどこまで中に浸水させることができたのか?
緊張しながらロールアップさせて行く。
いざご開帳。
なんとほとんど濡れてない!
わずかに水滴は伝っているからトイレットペーパーの端っこだけは濡れてるけど、中の荷物はほぼ濡れの影響を受けていない。
IP67レベルの実験をしたにも関わらず、この結果は正直驚きだ。
どうしてもロールするときの黒く柔らかい部分から浸水はしてしまったが、ここまでハードにやってこの程度。
これなら滝にガンガン当たる沢登りや泳ぎ系の沢でも安心使用レベル。
とはいえあくまでIP64なので、そういう使用の時は荷物を防水スタフサックに入れとくことは推奨しときますよ。
まとめ
タフさも防水度もさすがと言ったところを見せつけてきたオルトリーブ。
それでいて確かな背負い心地と拡張性。
冒険野郎のアウトドアギアとして、実に信頼できる相棒だった。
ハイクやパックラフトやカヌー・カヤック、SUP、アイスクライミング、源流釣行などにもってこい。
ドイツで生まれたギアパックだが、特に日本生まれの沢登りなどでの使用にバッチリ。
まさにドイツのブロッケンJr.と日本のウルフマンがタッグを組んだ「モースト・デンジャラスコンビ」を彷彿とさせる相性の良さなのである。
アウトドアボーダーレス時代には最適な防水バックパックなのでありました。
オルトリーブ(ORTLIEB)ギアパック(GEARPACK)
アイテム画像 | ||||||
容量 | 32L | 40L | ||||
重量 | 1200g | 1280g | ||||
サイズ | H64×W29×D18cm | H66×W30×D19cm | ||||
カラー |
・ブラック/レッド
・ブラック
・ブラック/サニーイエロー
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メーカー価格 | 21,000円+税 | 22,800円+税 | ||||
BUY NOW |
※画像クリックでメーカーサイトへ
アイテム名 | メッシュポケット | コンプレッションストラップ | ||||
アイテム画像 | ||||||
重量 | 43g | 46g | ||||
サイズ | H27×W17cm | — | ||||
メーカー価格 | 1,600円+税 | 1,600円+税 | ||||
BUY NOW |
注:メッシュポケットはあらかじめバッグ本体に1個付属されてます。
さあ、日本のアウトドア・ウルフマンたちよ。
今こそその大和魂にゲルマン魂を注入して冒険してみないか?
タフに攻めていこうぜ!
それではまた、山や沢や川でお会いしましょう。
現場で空回りが止まらない男。
スクリューキッド・カワイがお送りしました。
押忍!