「私は仕事を辞めるぞーーーっ!社長!!」この一言でついにスタンド能力『ノー・ジョブ』が目覚めてしまった鬼ころし・ジョースターS。旅に出るのはその血の運命、職を失い自由を手にした女の歓喜の声は、遠く九つの州にこだまする。軽自動車のエンジンが燃え尽きるほどヒートする往復2,600km、12日間の山づくしパラダイス前編。
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第1部 鳥取ブラッド
山を愛しすぎた私が脱サラを決意したのは去年の暮れ。
あれよあれよと甲斐駒ヶ岳男塾の翌日には最終出勤日を終え、大した貯金もないまま車中泊の旅に出ることにした。
10年間の会社員生活の中で「仕事にとらわれず、天候を見ながらスケジュールを組み自由に山に登る」これを何度夢見たことか。
しかしもちろん、無職には沢山のデメリットがあります。
1、金銭的余裕・・・車中泊とテント泊を中心に節約
2、社会保険と福利厚生・・・保険証の切り替えが間に合わず、”保険証不携帯”というデンジャラスな状態での出発を迎えることとなってしまったので、とにかく怪我や病気は「しない」が目標。
3、世間の冷たい目・・・「婚活する時間も欲しくて・・・」という崖っぷちすぎて家族が文句を言いにくい理由でカバー。
雪山大好きな私も平地の寒さにはめっぽう弱く、夜間の車内での凍死を恐れて暖かい西日本へ向かうことにした。
幸いスケジュールにも制限がなかったので、この際距離のことなんて考えずに行ってみたかった山へ全部行く!と決め出発。
初日は京都で呑んだくれ、二日目に岡山での車中泊を経て友人と合流し夜中に鳥取へ到着。
まずは一座目、伯耆富士とも呼ばれる百名山の大山(だいせん)へ!
積雪量の多い大山は、ピッケルやアイゼンが必要となる本格的な雪山。
ここでの目的は山頂からのご来光を見ること。辺りも寝静まった午前3時、ヘッドライトを頼りに出発。
真っ暗すぎて写真も撮れないため、黙々とただひたすら登り続ける。
そして午前5時半、頂上避難小屋に到着!
日の出が迫ってくると、稜線のオレンジ色もピークを迎える。
「わぁー。」剣ヶ峰から朝日が顔を出す瞬間は、思わず感嘆の声が漏れてしまった。
雄大な中国山地の稜線から放たれた朝日を浴びると、悩みも全て洗い流されるような開放的な気持ちになる。
山頂でしか味わえない清々しい朝の時間。それを妄想の世界で存分に味わったのち、”諦めて下山すると晴れる”という山あるあるまでフルコースで味わうこととなってしまった記念すべき一座目だった。
3日目は天候が悪かったため移動日とした。目的地を博多にすると、カーナビが叩き出した驚異の数字は「480km」
1時間に80km走ったとして、480km走るには・・・
算数が苦手な鬼ころしSは3秒で考えるのをやめた。
「モツ鍋、ビール、屋台のラーメン」という魔法の言葉ドーピングを繰り返し、現世へ意識を引き戻しようやくハンドルをジョッキに持ち替える事が出来たのはすっかり辺りが暗くなってしまった頃だった。
その夜は長旅で傷ついたポケモンたちをポケモンセンターへ預けることにした。お金を入れ、待つこと1時間・・・
テッテッテッテー テッテッテッテー♪
・・・おや!? せんたくものの ようすが・・・!
おめでとう!スポブラが 別々のパッドに 進化した!
。。これ、取れちゃうと元どおりに収めるのが大変なんだってば〜。
第2部 熊本潮流
涙をちょちょ切らせながら暴れた洗濯物を拾い集め、午後3時前に熊本へ向けて230kmのドライブに出発。
目指す2座目は霧島連山の最高峰、韓国岳(からくにだけ)。
[aside type=”warning”]2018年3月31日現在は霧島周辺で火山活動による入山規制がされています。登山に行かれる際は事前にお調べ下さい。[/aside]
ほとんど寝られてなかったのでサービスエリアに寄り道しては10分ずつホイミを唱え、ようやく登山口に到着したのは明るくなった頃。
本日は大浪池を半周して山頂へ、下山では反対側を半周して登山口に戻り、トータルで池を一周しちゃおうという欲張りルート。
”ここ数日の冷え込みで池が凍っていて、池の上を歩ける”という情報をゲットしどんなイナバウアーを決めてやろうかとワクワクしながら出発!
木漏れ日と鳥のさえずる声という爽やかなBGMにも関わらず、「私は自由だ・・・私は自由だ・・・」とブツブツ言いながらニヤついたまま歩く爽やかとは程遠い怪しい独女。
興奮しすぎて半分ほどのタイムで大浪池に到着!奥に見えるのが韓国岳の山頂でございます。
道中では某大河ドラマのロケハン現場に遭遇。その中でドローンをブイブイ言わせていた地元のおじさまによると、「池が凍るんたいぎゃ珍しいばい」とのこと。
「20年に1度ぐらいだけん、大学生のねーちゃんは見たことないと?」どうやら大学生に間違われてしまったようだ。
おじさま、見る目ないわね♡と思いながら嬉しかったのでそのまま女子大生になりきる事に。
「あの氷のヒビ、大槻ケンヂみたいですね♪」なぜか一瞬で年齢詐称がバレてしまった。
もちろんヒビだらけで今にも悲鳴を上げて割れかねん池の上でイナバウアーをかます勇気なんてものは無かったので、先を急ぐことに。
ご覧よ私は晴れ女♪ いかにも火山地帯らしい見事な景色を見下ろしながら、2座目の韓国岳に到着!
アイキャンフライっ!!!
ノーノー、名古屋と言ったら??
エビフラーーーーイ!!!
グッシャャァァァアア!!!!!
浮かれて飛び跳ねた着地先で泥沼にロケットダイブ。
きのう洗濯したばかりのパンツがおしゃれなリメイク風ジーンズにDIYされてしまった。
流行の最先端すぎて、私もいよいよパリコレのモデルデビューかな。また婚期が遠のいちゃう♡
そこで「モデルとして活躍するには身長が足りない」という大事な事に気付いた鬼ころしS(そこかよ)。
しかし今日もまた窮屈な車中泊だなんて考えたら、ただでさえ伸びなかった身長がだいぶ縮んでしまいそうだった。
今日こそは足を伸ばして眠り、いつかのパリコレデビューに備えるわよ!と意気込み、日が暮れるまでに鹿児島のキャンプ場に移動する事に。
コースタイムを1時間ほど巻いて下山。三十路のアタイ、まだまだ元気ばい!
Googleマップに「近くの温泉」と尋ねてたどり着いた、めちゃくちゃ摩訶不思議アドベンチャーな温泉。
しかしいきなり派手に迷子になり、服を着たまま混浴エリアに突入してしまった。
全裸の若い兄ちゃんがお尻丸出しで慌てて逃げ出すという非常事態・・・!
バッチリ見ちゃってごめんなさいねぇ。人類の夜明けだね!
第3部 鹿児島クルセイダーズ
ノー混浴エリアでさっぱりした後は、鹿児島最南端にある開聞岳の麓のキャンプ場を目指してさらに130kmの移動。
日没が迫っていたため、もう受付してくれないんじゃないか?とビクビクしながら受付のお姉さんに声を掛けると、「一人ですか!?大丈夫ですか?怖くないですか?」と心配されまくったため、何か出るのか?もしや”いわくつき”?と違う意味でビクビクしながらの設営作業となってしまった。
しかし目の前には一晩を共にする開聞岳の頼もしい姿。
その男らしさにすぐに一目惚れした私は「アナタ、新居は窓が大きくて開放的なシングルウォールのお家よ。子供が生まれたら、この広いお庭で遊ばせましょうね♡」と永遠の愛を誓ってゴールイン。
「お風呂にする?ご飯にする?それともワ・タ・シ?♡」熱い問いかけに対し、「ビール」という冷めた返答の旦那様に向かって晩酌タイム。
ちょっとイイお肉を仕入れたので、今夜のメニューはすき焼きにしましょうね♪
鹿児島なのに黒豚じゃないのかって?ノーノー!今いちばんナウでHOTなご当地肉は、この「鹿児島黒牛」なのです!
説明しよう!鹿児島黒牛とは、2017年の品評会で日本一に認定された超ブランド和牛なのだ!
お値段も超ブランド価格の1人前880円・・・無職にとっては超贅沢アイテム、レジで手を震わせながら千円札を差し出し大事に抱えて持ってきたお肉なのだ。
そんなブランド和牛と、男前な開聞岳と過ごす甘いひととき。いなせだね・・・
めっ!!
道の駅で見つけた明太子のおせんべい、その名も「めんべい」またビールに合うんだな、これが。
持ってきたぬるい缶ビールを飲みながら、久々に足を思いっきり伸ばしておやすみなさい。
夜中に目を覚ますと、満点の星空。感じるぜ!!心のコスモっ!!!
翌朝も無風、快晴という最高のお天気。やたらチャッピーなお花畑の道が続くキャンプ場の中を歩いて、開聞岳の登山口へ。
開聞岳は別名”薩摩富士”と呼ばれる百名山で、その名のごとくミニチュア富士山のような美しい形容の山。
今日は麓から円を描くように頂上へと至るシンプルな登山道をピストンします。
いつもクライミングの時に履いている、スポルティバのアプローチシューズ「TX4」ちょっとした登山ならこれ一足でオッケー!
以前アツシオガワ氏もミドルカットのレビューを書いてましたね。
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昨日に引き続き、アハハでウフフな気持ちよい登山道に再び「私は自由だ・・・私は自由だ・・・」と夢遊病者のようにつぶやく怪しすぎる独女の目に、信じられない光景が目に飛びこんできた。
海だがね!!!!!
アルプスでは考えられない”山から海が見える”という光景にテンションは最高潮に達し、「私がオバさんになっても、泳ぎに連れてくの?♪」と誰も聞いちゃいないカラオケの十八番を大声で撒き散らす公害っぷり。
歌に夢中すぎて、デカデカと書いてある注意書きにぶつかってしまった。
犬のう○こだって、「落ちてるよ」と教えてもらっても踏んづける。それが鬼ころしSという女、ご理解いただけましたでしょうか。
標高を上げて行くとロープや岩場も登場。オラ、わくわくして来たぞ!
依然として眼下にはパーフェクトすぎるブルーがチラチラと見えている。ここらでそろそろ、声高らかに宣言させて頂きましょう。オホン・・・
BBG読者の皆さまご覧くださーーーい!私は晴れ女ですよーーーーーー!!
ユーコンさんの呪いは解けたようだね♪しかし、進んでいくとなんだか見たことのあるような光景が現れた。
ほぼ垂直に架けられたハシゴ。。
つい最近もどこかでこの光景を見たような・・・そう、甲斐駒ヶ岳「男塾」黒戸尾根だ!
この高度感!黒戸尾根かよ!!
さらに襲い来る崖とロープ!やっぱり黒戸尾根かよ!!
チャッピー求めて最南端まで来たっていうのに、こんな男塾聞いてないよ。。
しかしホワイトアウトも流血事件もなく無事に三座目、開聞岳!
・・・あれ?さっきの海は??
きっと開聞岳は「登る」よりも「眺める」方がより魅力的な山なのでしょうね。
なんとも言えない山頂の眺望を楽しんだ後は、時間に追われている事を思い出し今日も今日とて走って駆け下りる。
下山中にすれ違った地元の方に「山頂でロケット見なくていいの?」と声を掛けられ、数時間後にロケットの打ち上げが行われることを知った私。
その後すれ違う人全員に「今日のあなたラッキーですね!山頂でロケット見られますよ!」とロケットの押し売りを繰り返し勝手にいい事をした気分をゲット。
そして下山後はいつものグショ子が完成。
胸汗世界地図。この辺りがきっとユーラシア大陸やと思うね。
温泉へ向かう道は、満開の菜の花畑と開聞岳の絶景ドライブ。日本に生まれて、良かった!
ここ指宿(いぶすき)の名物は、温泉が湧き出る砂浜で全身を砂に埋めて蒸し温めるという「砂むし温泉」。
私もそんな砂むし温泉を初体験すべく、さっさと浴衣に着替えちまいましょうかね。
恥を忍んだ渾身の自撮りも「浴衣?中学生か!黒戸尾根46のセクシー担当なら、入浴シーンでも撮って来やがれ」というゴリ・・・アツシオガワ氏の指示を受けひと肌脱ぐことに。
↓以下、18歳以上の方のみお進みください。
ちょっと刺激的すぎたかな!?
春を売り払いゲットした小銭を手に、鹿児島の夜の街を縦走しようと決めた私。市内へ移動してこの旅で初めての贅沢、ビジネスホテルへピットイン。
このホテルのロビーでは「鬼ころしSの奇妙な冒険」で有名なあの立ちポーズが見られるのだという。
セゴゴゴゴ・・・「西郷(せご)どん立ち」!!!
犬ッ!見るがいいッ!隣は私のスタンドの姿『ノー・ジョブ』だ!!
犬「さすが鬼ころしS!恥ずかしくて出来ないロビーの顔ハメ看板を平然とやってのける!そこに痺れるワン!憧れるワン!!」
威風堂々とホテルのフロントのお姉さんからカメラを受け取った後は、夜の繁華街へ。
1軒目は炭火焼とタタキの二種類で頂く薩摩地鶏!コリコリとした歯ごたえと脂の甘味に、ビールが止まらない♪
2軒目はようやくエースの登場、鹿児島黒豚!ミミガーに軟骨、串焼きと色々な部位のお味を堪能。ハイボールが合う〜♪
満たされた3軒目はラーメン屋さんへ。九州で食べるラーメンはどれもシメにぴったりなあっさり系。さて、ホテルに帰・・・
とり天・・・180円・・・だと・・・
私がとり天を欲していたのではない。とり天が私を欲していたのだ。というわけでラストに1杯だけ、プシュ♪
第4部 大分は砕けない
翌日は再び悪天候の予報。今も入山規制が続く阿蘇山周辺をドライブするため、熊本へ向けて220kmのドライブ。
途中のサービスエリアでは鬼ころし・ジョースターS家の一家が揃ったので、一人ずつ紹介しよう。
「パイレーツ・ジョースターS」特徴の凛々しい眉毛には背が届かないが「だっちゅーの」を連発しながらはだけた胸元でハニートラップを仕掛ける、鬼ころしSの師匠。
「シーマン・ジョースターS」人語を理解し話す人面犬。その口の悪さと腹立たしい表情は某人面魚の会話ゲームを彷彿とさせるため、出会った人をイラつかせる。
「ツッパリ・ジョースターS」軍人だがその童顔ゆえに学ランのリーゼントにしか見えない悲劇の人物。背中に「愛羅武勇」の刺繍を背負い、グレていても親への感謝を忘れない。
「ダスキン・ジョースターS」立派な口ヒゲは役職の証だが、ホルモンの関係上思うようにヒゲが伸びずモップを装着し威厳を保っている。家庭用は月額1,890円。
立ち並ぶ顔ハメ看板の誘惑に捕まり、このサービスエリアに無駄に長居することになった上に左の首の筋がつってしまいしばらく動けなかった。
さて、ランチタイムなのでちょっと寄り道して熊本名物の「馬刺し」頂いちゃいましょう♪
これは・・・う、馬ーーーーーい!!
長野の馬刺しとはひと味違うね。ヒヒーン!!
腹ごしらえの後は阿蘇山のドライブコース「ミルクロード」を経て大観峰へ行こうと思った。
思ったのだが、阿蘇山が見えない上になんだかゴロゴロ聞こえて来たので今日はやめておこうと一瞬で決めた。人生諦めが肝心だって、30年も生きてたら学んだからね!
その後は予想通りバケツをひっくり返したような大雨になってしまったので、温泉に入ってセルフSMタイム。
自分を追い込み追い込まれ・・・じゃなくてホットアイマスクでのんびり癒されている所。
明日からくじゅう連山に入ろうと思っていたのに、これは1日延期だなぁ。と涙で座席のシートを濡らしながら車中泊。
ようやく雨が止んだのは翌朝になってから。山を諦めてのんびり観光しようと思い、大分に向けて100kmの移動。
人気のお寿司屋さんの開店時間に合わせて行列に並んでみたので、オープンと同時に「数量限定ジェットストリームアタック」を仕掛けることにした。
関サバ!
関アジ!!
中トロ「お、俺を踏み台にしたぁ・・・!?」
大分の新鮮な魚に舌鼓を打ちまくっていると、みるみる外が晴れてきたのでスケジュールに余裕があれば行きたいと考えていた”由布岳”への登山を決行する事にした。
時刻は12時、寿司をノドに詰まらせつつ急いで登山口へ。
近くにつれ由布岳にかかる黒ーーーい雲の存在は見て見ぬフリをしていたものの、車のドアを開けた瞬間にドアが全開へ持っていかれるほどの強風・・・
さっきまでめちゃくちゃ晴れていたのに、もう嫌な予感がプンプン。
とりあえず防風対策もしたので、出発してみようかね。
ぐぬおおお!風が強すぎて、真っ直ぐ進めない!!私はまっすぐ歩いているつもりなのに、気づけばルートを外される。
あまりの強風に息をするのも苦しくて、ゼェゼェハァハァ言いながら中腰で進むという見えない戦い。
しかも不快なのが、バシバシっと何者かに頬を強く殴られ続けているが、周りには誰もいない。
その後ももはや新手のスタンド攻撃か!?というぐらいの恐怖の連続ビンタを受けたのち、それが強風に煽られた「ザックの余ったベルト部分」だと気づいた瞬間、ヘタレの鬼ころしSは腰を抜かして開始5分で最速の撤退を決意した。
渾身の実況も聞こえないほどの爆風。(本人は聞こえると思って一生懸命喋っております)
必死すぎて記憶は定かではないけれど、「撤退します。こんなのやってらんねぇぜ。別府温泉に入ってビール飲んで寝ます」と言っている模様。
今までにないほどのマッハの逃げ足で、別府温泉名物”地獄めぐり”へ逃げ込みここで本日は終了。
アンタ、可愛いからって黒戸尾根46センターの座は譲らないわよ。
後編へ続く!