人は誰だって山と街を行き来する生き物である。BBG的には山専門のギアがイチオシなのであろうが、このところの大寒波にも到底及ばない冷え切った懐事情で年中過ごす身としては、山でも街でもなんなら家でも使えるギアってのがあるとそんな心温まる話はないのである。そこでだ。そんな都合のいいウェアが山と道から出てるっていうんで、そいつと過ごした冬の話をしてみたい。(文・Nature Boy)
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はじめまして
みなさまご機嫌いかがでしょうか。
Best Buy Gearにて初めて記事を書かせいていただく、無添加食品オタクのNature Boyと申します!
っと思ったらCEOから…
そんな横文字オサレネームがBBGで通じるとでも?You ネチャ男(ねちゃお)にしちゃいなYo。
とパワハラを受け、有無も言わさず「ネチャ男(ねちゃお)」をあ、ありがたく襲名…。
というわけで、改めまして ネチャ男と申します!よろしくお願いします!押忍!(T_T)
のっけから私は悶々としている。
なぜなら、超絶マゾ道を最短距離で直登するBBG一味と比べると、私など圧倒的に生ぬるい微マゾだからである。こんな私がこの生き馬の目を抜くようなマゾ集団の中で生き抜いていけるのだろうか、、、考えただけでゾクゾクしてくるではないか。
そんな不安はさておき、私の送る初めてのお便りは、もはやマゾの気など全くないウェアレビューであるが、一献お付き合い願いたい。
山と道 5-Pockets pants
冬も佳境に差し掛かっているこの頃ではあるが、今冬最大のmy推しアイテムについて一筆とりたいと思う。
本日その姿をご覧に入れるのは、ご存知「山と道」の送る「5-Pockets pants」である。
山と道といえばそのミニマリズム的ルックスの美しさと機能性の高さで、日本のウルトラライトハイキング業界を代表する選手である。
思慮深く設計され、徹底的にテストされたそのアイテムの持つ完成度の高さはもはや国内最高クラスであり、大手ブランドをも軽く凌駕するものだ。
そんな彼らの送るヒットアイテムの一つに「5-Pockets pants」があるが、これはごく控えめに言って“逸品”なのだ。
このパンツを今シーズン手に入れた私は、2日に1回は履いていたのではないであろうか。
そんな私が「5-Pockets pants」と共に過ごした冬を振り返りながらご紹介したい。
インプレッション
何と言ってもまず最初に触れねばならぬのは、その軽快な履き心地であろう。
このパンツの本分はハイキングパンツであるからして、最も重要な資質は機能性である。
足を通した時にまず感じるのはその軽さとカッティングの秀逸さだ。
野暮ったくならないように適度にタイト、動きを妨げないように適度にルーズ。
その塩梅は“絶妙”である。
では、順を追って紹介していこう。
生地について
「5-Pockets pants」のカラーは全部で7種類【navy, olive, black, cub, chocolate brown, deep forest, DWC】どれを選ぶか迷ってしまうだろぅ?
私のチョイスは「cub」。チノパンルックな見た目で、カジュアルにも履けるしシャツなんかと合わせれば少しくらいの会議なら出られてしまうのではないかという目論見である。
しかし買ってから気づいたが、私はかしこまった会議に出席する機会が年に1回ほどしかない…。
そんな滅多にない機会をアウトドアパンツでやり過ごそうとしている魂胆がもはや寂しいではないか。
この生地は、メーカーによるとコットンに似た風合いのDWR(耐久性撥水加工)を施したタスランナイロンとやらを使用しており、薄く軽快だ。(追記:タスラン®ナイロンは日本ヘバライン株式会社の登録商標で、正しくは生地ではなく糸のことを指します)
ただし、実際のところはコットンに見えるということはないと思う。
履いた感触としてはシャカシャカというよりはシャリシャリしているといったほうがしっくりくる。
また、この生地は速乾性と耐風性がウリであるが、洗濯して部屋干し3時間くらいで本当に乾いてしまうのだから恐れ入る。
私はわりと遠征の多い生活を送っているのだが、万が一出先で汚してしまっても、水と洗剤でゴシゴシ手洗いして適当に干しておけば、寝てる間に乾いているのである。
これはとても重宝している。
機能美について
このパンツには、その名の通りポケットが5つある。
前後2つずつの一般的なポケットに加え、右前の横にスマホ専用のポケットを備えるのである。
これは使ってみるとその便利さには舌を巻くこと請け合い。
歩く際に足の動きを妨げず、中で暴れすぎることもない絶妙な位置にスマホを置いてくれるこのポケットは、私にとって影の主役である。
私は行動中にパンツのポケットに物を入れるのが好きではないタチだが、こいつだけは本当に重宝している。
そして定位置が決まっていると、どこに何を入れたかわからなくなってあたふたすることもない。
収まるべきところに収まってくれる安心感は絶大なのだ。
いつもあたふたしているユーコン氏には是非使っていただきたい。
オンザハイク
さて、肝心のフィールドにおける機能であるが、これはもう言うまでもなく合格であろう。
足さばきを邪魔しないので快適そのもの、段差のある登り下りも軽快にパスできる。
行動中にストレスを感じることは皆無だろう。
ちなみに私はヨガともストレッチともつかぬ全身伸展運動を習慣としているが、四股を踏もうが開脚をしようが、動きを妨げることもなく股が破れそうになることもない。
生地自体はストレッチしないのだが、内股に設けられたガゼットクロッチというマチがこの動きを可能にしているのだろう。
対応できる温度帯については、3000m級の山では試したことがないが、1000m程度の低山ハイクであれば行動中は問題なかった。
しかし冬場に停滞するとやはり冷えるので、中に薄手のタイツを履くことを強くお勧めする。
タイツが保温してくれると、このパンツの持つ耐風性と合わさって非常に暖かい。
レイヤード次第ではどんなシチュエーションにも対応できるオールテレインアウトドアパンツである。
ただし、これでランニングやトレランというのは少し難しいところである。
ハイク程度の行動スピードに適した作りだけあって、走り始めると生地のシャリ感、通気性のなさ、ルーズさが気になり始める。
他のアクティビティでは、その耐風性を生かそうとロードバイクに乗ってみたが、本格的にライドするには少し物足りない。
風の抵抗と裾の具合が気になり、ライドに集中できないのだ。
街を徘徊する程度なら全然問題ないので、シーンを選んで履かれたい。
一方マウンテンバイクではそれらの点はあまり気にならなかった。
ガシガシ漕ぐようなコースではなく、ゆったりペースの里山ライドなんかではそのリラックスした雰囲気ともベストマッチである。
インザシティ、インザハウス
これは究極的には好みの問題であるが、私は街中もこのパンツでズンズンと闊歩している。
「5-Pockets pants」が醸し出すのは、ハイキングパンツらしからぬ大人の雰囲気である。
そこには、アウトドアウェアにありがちな機能ゴリ押しテクニカルウェア感は微塵も感じられない。
さらに、カラーバリエーションはどれも少しかすれた感じの落ち着いた色合いであり、それはアウトドアたるは大人の嗜みなのであるという余裕をすら匂わせる。
シルエットも絶妙で、少しテーパードがかかっているので、モッタリしすぎずいい感じに裾が収まってくれる。
その上適度なルーズさもあるので中にタイツを一枚履いてもパツパツにならずにすっきりと見える。
全体としてスポーティーすぎないので、ネルシャツやタートルネックなどと合わせると立派なオシャレアウトドアウェアである。
さらに、私は自宅兼事務所で仕事をすることも多いのだが、そんな時に大活躍するのがこいつなのだ。
パジャマのスウェットじゃ仕事をするのに気持ちが締まらないけど、カチッとしたパンツなんて履きたくない。
そんな時にオンとオフを繋げてくれるコイツは、まさに理想のパンツなのだ。
そして挙げ句の果てに、私はこれを履いたまま寝てしまうこともある。
妻からは「よくそんなシャカシャカしたパンツで寝られるね」と冷ややかな言葉をかけられるが、彼女は知らぬのだ、この快適な履き心地を。
物申す
ここで敢えて注文をつけるのであれば以下を挙げたい。
サイズ
普段の私はなにかにつけてMサイズである。
海外のものではSサイズも視野に入れる。
スペックでいうと身長173cm、体重68キロ。ガッチリ体型だ。ちなみにどれだけ足が短いのかを公衆に晒すほどマゾではないので股下は割愛する。
そしてこのパンツ、試着せずにSを買ったのだが、少し大きいのである。
諸君も学生の頃、大好きだったあの娘が、実は自分のことを好きなんじゃないかと少し、ほんの少しくらい期待したことがあっただろう?だけど傷つきたくない乙女な自分を戒めるために、期待はほんの少しにしておいたことがあるだろう?それくらいわずかにシルエットにゆとりがあるのだ。
メーカーサイトでも少し言及されているにしても、普段Mの人間がSを履いて少し大きいというのは悩みどころではないか。かといってXSというと今度は丈が短すぎるのだろうから混迷を極める。
不安を抱えた私は、ともすれば周囲に野暮ったく映っているのではないかと不安にかられ、ショーウィンドウの前を通るたびに自らを見つめてしまう。
そんな悩みを抱えた諸君のために、メーカーはS・M・Lサイズにおいて通常より少し足の長いtallバージョンも用意してくれている。しかし何故かXSにはこのtallがなく、私はこの恩恵に預かれない、、、悶々とする。
テープベルト
サイズが大きめということもあり、ウェストに合わせてテープベルトを締めると、ベルトの端がだらんと長く垂れる。
テープベルトがだらんとしているのが見えると、いかにもアウトドアパンツ感が押し出てくるのだが、これは個人的にあまり好みではない。
防寒性
冬場に一枚ではさすがに寒い。
風はほとんど通さないものの、生地自体は厚くはないために保温性はない。
また、裾がさほどタイトではないので空気が入ってきやすく、歩き続けることのないシチュエーション、例えば街中でこれ一枚ではチト心許ない。
低山ハイクなどでは単体で履くと熱がこもらずにちょうど良い温度をキープできるので、ハイキングパンツという本分を考慮するとこれはこうあるべきなのであろう。
街中では中にタイツを履くことをお勧めする。
入手困難さ
大抵の「山と道」製品と同様、この「5-Pockets pants」も基本的には常に品薄状態である。
年に一度の販売時期(9月頃)、オンラインストアは予約開始数日ですぐに売り切れ、店舗入荷分も早々にお嫁に行ってしまう。
常に耳をそばだててメーカーからの予約開始情報を待つしかない。
それを逃したら次のチャンスは一年後である。
ただしこのレアさ加減は裏を返せば所有する優越感をもたらす媚薬のようなものであり、一度手に入れてしまえばそれは永遠の満足を保証することであろう。
まとめ
画像クリックでメーカーHPへ
いささか注文はあるにしても、5-Pockets pantsの完成度の高さは特筆ものであり、太鼓判を押したい。
山でも街でもシームレスにサラッと履けてスタイリッシュ。
都会派にも田舎者にも優しいのであるからして、買わない理由が見当たらない。
ただし、すでに書いたように入手経路は限られている。
残暑の9月に、やがてくる冬を思いながらメーカーサイトかFBをチェックする日々を送ったものにのみ、この幸せはやってくるのである。
以上、男塾新入塾生「ねちゃ男」がお送りしました!
押忍