ツルツルアスレチックで機動力を奪われ、スペシャル超急登歩荷でスタミナも大消耗してしまったBBGチーム。試合開始からのガッキーの巧みな試合運びについていくのがやっとの状態。そんな中、最近のUL浮かれですっかり体力不足となったユーコンカワイがいよいよダウン寸前の中、ガッキー仕上げの「ツンデレ右ストレート」が炸裂する!果たしてこの激戦を勝ち抜くのはガッキーか、それともBBGか?第4ラウンドのゴングが、今高らかに北アルプスに響き渡った!
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餓鬼岳ピストン 1泊2日雪中テント泊 後編
第4ラウンド
大凪山を越えてから、多少道は通常になって来た。
しかしここからはやたら頭上に張り出した木が多く、いちいちしゃがんで突破するのが地味にしんどい。
しかしここに来て裏ガッキーもガッキーらしい美しさを見せはじめて来た。
ついに樹氷ゾーンへと足を踏み入れたのである。
そして徐々に空が開けて来て、まだ景色こそ見えないが久々に蒼井そらが登場。
感動に打ち震えるユーコンカワイ。
信越トレイル80km間で一度も日の光を浴びなかった男にとって、これはもういつまでも見ていたい光景だ。
しかしここでももちろん普段から「晴れ慣れ」してるアツシオガワは無感情でスタスタ先に進んで行ってしまう。
結果青空を全く堪能することなく、再び「グフ…グフ…オエっ…」とおにぎりを吐き出しそうになりながら下を向いてハイクアップ。
ガッキーもその思いに応えるように、地図に「百曲がり」と書いてあるほどの長い長いつづら折りの登りを二人に強要。
改めて思うが、ここはテン泊装備(雪山用&テスト用の服いっぱい&追加水2L)担いで来るところじゃない。
で、気づいた頃には30曲がりほど先にアツシオガワで、
背後には壮大に置き去りされるユーコンカワイ。
餓鬼岳に全然人が来なくて、みんな燕岳行っちゃう理由がよくわかる。
ここまで全然大した景色も見れないし、北アルプスの山ってより南アルプスのマニアックな山を登ってるような気分だ。
報われなさが半端ない。
やがて最後の急登をボロボロになりながら登り詰めて行くと、
ついに本日のテン場、餓鬼岳小屋に到達。
すでに待ちくたびれて防寒具に身を包んでるアツシオガワの「チッ」ていう舌打ちが風に乗って聞こえて来たような気がする。
いつか彼にも来るであろう「老い」の時、思いっきり彼を置き去りにしてやることがユーコンカワイの夢だ。
しかしその頃にはユーコンはさらなる老衰で寝たきりになってる可能性が高い。
ここまで来てやっと樹林帯がなくなって、ようやく眼下に雲海を見ながらの素敵ガッキータイムが展開。
ここまで散々ツンツンして来たサディスティック女が、突然デレデレと優しく我等を包みだす。
しかし持ち前のクールさは相変わらずで、ここに来て「あれ?雪山ってこんなに寒かったっけ?」ってくらい猛烈に寒くなって行くテン場。
本来はテントを建てた後で餓鬼岳に行くつもりだったが、一回テント内のぬくぬくの快楽に溺れてしまった二人は「もう明日でいいんじゃね?」と完全な引きこもり生活に突入。
そしてそのまま一緒に飯を食うこともなく、夕日も星空も見ることなく各々さっさと眠りに落ちて行った。
第1から第4ラウンドまでに蓄積されたダメージは相当だったようだ。
第5ラウンド
朝がやって来た。
一晩じっくりと一緒に過ごし、ガッキーに対して優しいピロートークをかましてやったのが功を奏したのか。
朝になるとガッキーはすっかり昨日までのサディスティックな一面を失い、ついに美しき新垣結衣へと昇華していたのである。
ユーコンカワイは「年に2回も北アルプスでご来光が見れるなんて…誰か身内が死んだのか…」とプルプル震えて感動している。
反対側を見れば燕岳に延びる稜線と、遠く槍ヶ岳まで続くモルゲンロート。
しかし猛烈に寒くてじっくり見てる余裕もなく、とりあえずそそくさと準備をしていざアタック開始。
なぜ昨日アタックしなかったのか?と思うくらいの早さで、たった5分で山頂へ。
すごい!背景が真っ青だ!
ユーコンカワイは生まれて初めて「努力ってやつが報われるって…知らなかった…」と現実を受け止めきれない様子。
サングラス自体も久々すぎてどうかけて良いのかわからなかったほどだ。
前方を見れば八ヶ岳と南アに囲まれた富士子ちゃん。
そっから左を見れば、妙高火打と、こないだ白とゲリにまみれた信越トレイル。
さらに左を見ればデデンと立山と劒岳。
そしてそこから延びる裏銀座縦走コースがあって、
槍ヶ岳に伸びて行く素敵な稜線がずどーん。
ガッキー…素晴らしすぎる….。
血反吐を吐いて登って来るだけの価値がある山だ。
でもなんだか事が順調に運びすぎている気がする。
何か悪いことが起きなきゃ良いが…。
さあ、今回わざわざこのガッキーに来たのは、何もベースレイヤーのテストだけじゃない。
この寒風吹きっさらしの山頂で、パタゴニアの各種インサレーションの着比べテストも兼ねているのだ。
もう衣装チェンジする時が寒いのなんのって。
気温は-3℃くらいで、風があるから体感はかなり低いというマゾ行為。
各ウェアを着ては、その極寒地に数分間放置。
知らない人が見たら宇宙人と交信してる怪しい奴か、やたら思いつめて飛び降り自殺でもしそうな雰囲気。
そんなテストをひたすら繰り返し、クソ寒い山頂に1時間くらい滞在するという2匹の餓鬼。
そして全てのテストを完了し、さあ帰ろうとしたその時!
ついに今まで大人しかったガッキーの猛烈な右ストレートが炸裂!!
ユーコンカワイが見事に己の一眼カメラを落下させ、このような大惨事に!
その場で泣き崩れるユーコンカワイ。
「だから嫌な予感がしたんだ…晴れたから…晴れたからだ….」と後悔が止まらない。
ツンツンした後で、デレデレして来て油断したところで渾身の右ストレート。
吐き気という事前代償で初日の晴れを勝ち取り、二日目はレンズの保護フィルターをバキバキに割るという事後代償。
しかも衝撃でフレームが歪んでしまい、保護フィルターも外せず要修理に。
ユーコンは「私みたいなもんが一瞬でも青に浮かれたのがいけなかった…。自惚れてしまった…」とうなだれる。
人はやはり「分相応」な生き方をしないとこういう目に遭うのである。
そしてこの瞬間から餓鬼岳から風は止み、平和な登山日和が訪れたのである。
最終ラウンド
結局白だろうが晴れだろうが悲惨な目に遭うのは変わらない。
こんなに気持ちいい山日和なのに、なぜかユーコンカワイの顔からは笑顔が消えている。
流石に不憫に思ったのか、アツシオガワがユーコンのために木彫りのクマを掘り始めた。
と思ったらリンゴだった。
極寒地で食うクールリンゴの果てしない美味さったらもう。
若干知覚過敏に苦しみながらも、うめーうめーと喜んで貪り食う餓鬼。
しかし今彼に必要なのはリンゴではなくグルコサミンだった。
下山開始早々「やばい!めちゃくちゃ膝が痛い!」と窮状を訴え始めたのである。
信越トレイルで酷使した膝はもはや全治2ヶ月レベルで、この段階で早くも彼は生まれたてのC-3POに。
もちろん踏ん張る力が極端に下がってる彼は、早速ガッキーの猛ラッシュを食らって2度目のダウン!
なんとか10カウント以内に立ち上がる。
しかし昨日の急登ゾーンがそのまま「膝殺しの急降下ゾーン」と化して、そのヨレヨレおじいちゃんに襲いかかる。
一歩一歩足を下ろすたびに「グウッ!」「ヌウウッ!」といちいちうるさいユーコンカワイ。
それでもロキソニンを飲んで、痛みをごまかしながらの熾烈なファイト。
そんな根性だけで動き続ける彼に対し、サディスティックガッキーの容赦ない右フックが炸裂!
濡れた木で思いっきり足を滑らせて臀部を強打。
もはやいつレフェリーが止めに入ってもおかしくない状態。
こんな時は頼れる相棒のアツシオガワが助けに…
あーーっと!ダウン!
油断していたところにガッキーの強烈なボディーが突き刺さった。
そして間髪入れず、自らの膝を幹に思いっきりぶつけて勝手に負傷していく男。
自滅するアツシオガワをよそに、いよいよガッキーがとどめを刺しに来た。
ガッキーのアッパーカットが炸裂し、ユーコンカワイは濡れた岩場で4度目のダウン!
もはやいつタオルが投入されてもおかしくない状態。
しかしヘロヘロと立ち上がってはファイティングポーズを取って「まだやれる!」と訴える。
その後も何度も何度も膝にガッキーのデンプシーロールを食らいながらも、根性で試合を進めていくBBG。
やがて二人が真っ白な灰になりかけた頃。
カンカンカンカン!と試合終了のゴング。
そして全てをやりきった彼らは、静かに判定の結果を待つ。
判定10-0でガッキーの勝利!
やはりユーコンカワイの4度のダウンが響いたのか、判定の必要もないほどのガッキーの圧勝だ!
これにてガッキーは、BBGが認定する「もう二度とテン泊装備担いで登りたくないサド名山」の栄冠に輝きました!
おめでとう餓鬼岳!
さすがはマゾな登山者の来訪に飢えた鬼の山。
みんなが浮かれて燕岳ばっかに行くもんだから、ふてくされてとんでもないサド山になってしまっていたようだ。
これにより自信が粉々に打ち砕かれたユーコンは、「もう重量級登山は引退します。私は今後UL日帰り低山担当として生きていきます。」とすっかり自身喪失。
せっかく晴れたのに素晴らしい敗北感である。
もう時期的に登るのは厳しくなってくるとは思いますが、来年雪が溶けたら皆さんもテン泊装備担いでガッキーにチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
良質なマゾが味わえることをBBGが保証いたします。
それではまた、膝が治ったら山でお会いしましょう。
メイウェザーオガワ&パッキャオカワイでした。