とうとうBBGが禁断の世界「洞窟」にその足を踏み入れた!目指すは幻の珍獣「ムギ」の発見!そして洞窟最深部「神の滝」への到達!その神秘の光景を映像に残すため、今ここに“マゾ口浩探検隊”が結成された!壮絶な戦いの末に彼らが見たものとは一体何か!?悲惨な人たちを見て満足したいサドな人、擬似体験でゾクゾクしたいマゾの人は、ふるってこの魅惑の洞窟世界をご堪能して欲しいのである!(文・ユーコンカワイ)

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古戸風穴ケイビングアタック!

第1章 集結!

「幻の珍獣が目撃された!」

その情報をキャッチした我々水曜スペシャル取材班は、一路愛知県東栄町の奥地へと向かった。

地元の原住民の情報によると、その珍獣はとある洞窟内に潜んでいるらしく、非常に獰猛で恐ろしい姿をしており、すでに村人の数人が犠牲になっているらしい。

果たしてその幻の珍獣「ムギ」は実在するのか?

そして洞窟再奥にあると言われる「神の滝」を見ることができるのか?

 

まず我々は、集落の入口で衝撃的な光景を目の当たりにすることとなった。

珍獣ムギによる被害なのだろうか?

なんとそこには、原住民らしき男の死体が転がっていたのである!

脇腹をひと突きされ、一瞬で絶命したのは明白だ。

しかしよく見たらこの男、原住民ではなくマゾ口浩探検隊の「鯉隊員」だった!

知らない人から見たらよっぽどこっちのが珍獣感溢れているが、なんせこの男は現場前泊における「地面ダイレクト寝」のエキスパート。

「車中泊?テント?タープ?そんなものはまとめて丸めてベンキマンにでも流してしまえばいい!」というのが彼の持論。

漢たるもの、常に通報の危険と隣り合わせの中、いかにその土地の息吹を直に全身で感じられるかが勝負。

彼はむくりと起き上がり、「西にカーブして向かって来た台風12号とがっぷり四つで戦いながら奈良からここまで来ました。まだ洞窟探検始まる前ですが、すでに一番の核心部を越えて来た心境です。」とニヤリ。

さすがマゾ口隊の隊員、彼には彼なりのここまでのおマゾな道のりがあったようである。

 

ちなみにユーコンカワイ隊員も、ここに来る運転中に突然肩甲骨付近が「ピキッ」ってなって戦う前から追い込まれていたりする。

これから狭い洞窟に行こうっていうのに痛すぎて背中を曲げることができず、ずっと狂言師のような歩き方をしている。

隊員達のマゾな仕込みは万全のようだ。

やがて鯉隊員同様、前回オトノリ男塾の生存者の一人「テスリンY隊員」が合流。

そして初登場となる「スノージャンキーH隊員」(左)と、我らが隊長・洞窟探検家の「アガタ隊長」(右)も合流。

スノージャンキーH隊員は年間70日以上も雪山に出没し、ゲレンデやバックカントリーを堪能する雪狂いの男。

夏はリバーSUPで川を下り、そろそろパックラフトにも手を出そうかと思案中というドラクエで言ったら高レベルの「遊び人」である。

アガタさんは言わずと知れたJET(Japan Exploration Team)の副隊長で、日本を代表する洞窟探検エキスパート。

その一方で「変態的マゾ」&「まろやかサド」というハイブリッドな二面性を持つ危険な男。

今回はマゾい隊員が多いこともあって持ち前のサド精神が発動し、洞窟の詳細を事前に一切隊員に説明しないという一手に打って出た。

洞窟内で「聞いてないよ!」と叫びながらもがき苦しむ隊員たちを眺めては、ニヤリとするのが今回の彼の目的なのである。

 

隊員達はそもそもこれからどこに行くのかも、どんなレベルの洞窟なのかも、どのくらい寒いのかもさっぱりわからない。

ユーコン隊員に至っては「さすがに初心者をいきなりハードなとこには行かせないだろう。」と軽い洞窟体験会程度に考えている。

しかしその思いは、数時間後にスーパーハードに打ち砕かれることになることを彼はまだ知らない。

 

それは血で血を洗い、闇をマゾで塗りつぶして行く魅惑の洞窟探検。

命をかけた決死の戦いが、今まさに始まろうとしているのである!

 

第2章 突入!

我々水曜スペシャル取材班は、早速ジャングルの奥地へと侵入してその洞窟の入口を突き止めた。

洞窟入口付近には数百年前に原住民によって建てられたと思われる看板があり、古代文字で何かが書かれている。

我々には到底解読できないが、おそらく珍獣ムギに関する危険な情報が書かれているに違いない。

そしてその看板の奥に目をやると、薄暗い空間の中に不気味に浮かび上がる洞窟の入口が。

もはや罪人を投獄しておく石牢にしか見えず、隊員達に恐怖の動揺が広がって行く。

中を覗くと漆黒の闇が奥の方へと続いており、ユーコン隊員などは「本当にここ行くんすか…。僕は閉所恐怖症な上、暗闇も苦手なんですが…」とドン引いている。

しかもこの段階で「冷房の前に立ってるのか?」と思うほどに冷んやりした空気を感じる。

正直ここのところ災害レベルの猛暑が続いていたこともあり、大した防寒対策もしていない(すげえ寒いって聞いていないからね)ユーコン隊員は早くも心を折られかけている。

隊員達に広がる動揺に対し、アガタ隊長はしてやったりのニヤリ顔で「じゃ、行きますか。」とコンビニにでも行く気楽さで隊員を先導する。

そしてついに我々取材班は洞窟内部へと突入したのである。

想像以上の寒さにひるむ隊員たち。

外界が40度超えの猛暑でわあわあ言ってる中、洞窟内の温度は20度もない感じで涼しいを通り越してもはや冷蔵庫。

そして中は想像していたよりも狭く、穴も前後左右上下に点々と存在していて、どこにどう進んでいいのかもわからない。

高まる緊張感。

しかし我々には頼りになる男、洞窟のプロのアガタ隊長がいる!

そう思っている隊員に対し、開始わずか10分ほどでアガタ隊長が隊員達に驚きの指示を出す。

「ハイ。じゃあこっからは自分達だけで好きなように探検してください。」と。

隊員達は一様に「は?」という表情となり、「この人は一体何を言ってるんだ?」と軽いメダパニ状態に。

まだホイミもリレミトも覚えてないLv1の状態で、いきなりボス戦手前のダンジョンに置き去りにされた気分。

しかし「え?いや…あの…隊長?」って言ってる間に、アガタ隊長は暗闇の中に消えて行ったのである。

 

第3章 発見!

洞窟初体験にして、唐突に命の岐路に立たされたLv1の4人パーティー。

このまさかの洞窟内放置プレイに対し、隊員たちの顔からあっという間に笑顔が消えた。

無数にある穴のどれが正解でどれが地獄への入り口かもわからない中、勇者・鯉隊員が「いのちだいじに!」と叫んで果敢に攻めて行った。

この恐怖と不安が一体どこまで伝わるだろうか?

隊員達は「こっちで合ってんのか?」「いや、俺に聞かないで」「これ絶対落ちるよね?」「だから俺に聞くなって」「今地震起きたらどうなるんだろう?」「やめろ!」などと大騒ぎしながら進んで行く。

そして不意に穴の奥からバサバサバサー!とコウモリが飛び出してきて「うおおおおおおっ!」と叫ぶ鯉隊員。

もはやパニック状態で心臓バクバクの勇者御一行。

でもこいつら、よくよく見るとフサフサで丸っこくて結構可愛かったりするのである。

逃げ遅れてバレないように息をひそめるドラキー。

そんなコウモリドッキリを振り切りながら、何度も元の場所に戻ったり行き詰まりながら進んで行くと…

何と早くも我々はその瞬間を迎えることになった!

そう!

突然、幻の珍獣「ムギ」が我々の前に姿を現したのである!

 

ついに我々水曜スペシャル取材班は、幻とされていた珍獣の撮影に成功した。

禍々しく獰猛で恐ろしいその姿は、見るもの全てを恐怖で凍りつかせる。

これが世界で初めて撮影された「珍獣ムギ」の全貌である!

しばらくの間、全く状況が掴めなかった隊員達。

アガタ隊長は洞窟のことはおろか、この日他のJET隊(女性4名)が来ることすら事前に教えてくれていなかったのだ。

他に人はいないと思ってる状況の中、突然洞窟内で獣らしき存在を見つけてしまった時のユーコン隊員の驚きを想像していただけるだろうか?

彼はのちに「リアルに見つけちゃいけないUMAに遭遇した気分で死を覚悟しました。」と振り返る。

 

ちなみにこのワンちゃんは「むぎ」という名前で、JET所属の「洞窟探犬」だ。

カヤックやスノーボードをはじめあらゆるアクティビティをこなし、なおかつ人気ユーチューバーとしても名を馳せるLv50くらいのスーパードッグである。(YouTubeチャンネル:わんこと車中泊

恐ろしいどころか、相当愛くるしい珍獣だったのであった。

 

第4章 出産!

そんな猛獣の追撃を振り切った我々取材班。

その後も勇者・鯉隊員は得意のM字開脚をしながら各穴を調査して行く。

こんなとこでも迫り来るインリンオブジョイ鯉。

中には「え!ここ行くしかないの?」っていうような狭い穴もくぐり抜けて行かざるを得ない状況に。

どうもイメージしていたチャッピー体験会と違っているようだ。

そんな緊迫した状況の時、突然別の穴の隙間から猛獣がヌッと飛び出してくるから心臓が破裂しそうになる。

急に出てこられるとドキッっとする。穴は縦横無尽につながっているのだ。

やがて足元の下の方から、アガタ隊長の「おーい、こっち。ここ降りて来て。」の声。

よく見ると、狭い隙間の下の方に隊長の姿が。

聞けばこの下はうまく着地しないと別の穴に落ちちゃうから下で受け止めると言う。

しかもユーコン隊員が「え?ロープないっすよ。」と言えば、アガタ隊長は「腕と背中を壁に押し付けながらズリズリ落ちてください。」と嬉しそうに言うではないか。

体験会気分で来てる初心者なのに、展開が非常にスペクタクルだ。

そんな初心者どもがその穴から救出される模様は、もはや「出産風景」のようなのである。

 

次々と生まれてくる逆子のおっさんたち。

隊員たちは4,50年ぶりに胎児気分を味わい、今日を生きている事に再感謝するのである。

 

やがて不安な戦いと難産を経て、すっかりヘロヘロになった隊員たちに対してアガタ隊長は静かに言う。

「まだ準備運動ですらないですよ。これからやっとスタートです。」と。

これを聞いた逆子4兄弟は「え?もう十分なんですが…」と言おうとしたが、そのか細い声はアガタ隊長の「じゃ、行きましょう!」にかき消された。

 

相変わらず隊員たちにはこの先がどういう事になってるかの情報は開示されない。

だんだん洞窟よりもアガタ隊長に恐怖を覚え始める隊員たち。

「人を襲って食べる珍獣とはアガタ隊長のことじゃないのか?」と不安が蔓延する中、隊員たちの本格的な洞窟探検が始まってしまうのである!

 

第5章 救出!

お役人によって地下牢に連行される囚人気分で「本番の穴」に入って行く取材班。

そこにはさっきまでが「準備運動ですらない」ということに十分納得できる世界が待ち構えていた。

あなたも「ちょっとした体験会に来たつもりなんです」という、当時の隊員たちと同じ気分でその様子を観てみるといいだろう。

想像をはるかに越える「THE洞窟探検」の世界。

一瞬「これはNHKスペシャルなのか?」と思ってしまうような世界観。

まさかヘルメットも通らないようなハードな場所に連行されるなんて夢にも思っていなかった隊員たち。

この状況なんて、もはやちょっとした心霊現象である。

地面を這って迫り来る関西弁の巨体ゾンビの迫力。

鯉隊員は体がデカイから誰よりも不利な状況で、いつしか「鯉さんが通れるなら俺も通れる」という一つの基準になって行った。

 

そんな素人どもにさらなる予期せぬ試練が訪れる!

なんとLv50の洞窟探犬むぎちゃんが、ここでまさかの「穴に挟まって動けない」というビッグプレイを炸裂させて事態はさらにスペクタクルな展開に!

なんとか挟まった穴からは抜けたものの、彼はユーコン隊員とスノージャンキーH隊員の中間で立ち往生してしまったため、そのど素人二人で救助する事に。

タイの少年救出のような緊迫のレスキュー風景がこれである。

まさか自分の人生の中で、「洞窟内で犬を救助する」という事が起こるなんて夢にも思ってなかった二人。

絵面もシュールすぎて、自分達が今どのような状況下に置かれてるのかもうよくわからない。

なに、この状況?

しかしこのプレイにより、ユーコン隊員とスノージャンキー隊員はLv2へとレベルアップ。

何気に最後部で「みんなから取り残されたら俺は死ぬ」という恐怖で戦っているテスリンY隊員もLv2に。

鯉隊員に至っては、何度も挟まれてすでにLv3。

 

不安と恐怖の中、もう戻れないという追い込まれた状況の中で確実に成長をして行く探検隊。

しかし過酷な試練はまだ始まったばかりなのである!

 

第6章 約束!

思いがけない救出劇の末、一旦広い空間に出たマゾ口探検隊。

しかし安堵したのも束の間、状況はマゾ一刻と危険な方向へと隊員たちを誘って行く。

ここに来て生き生きとし始めるアガタ隊長の軽めの口調が余計に不安を煽る中、隊員たちは「約束の地」へと向かって行くのである!

暗闇に響き渡る、男たちの阿鼻叫喚の叫び声。

お約束という名の拷問を浴びせる時のアガタ隊長の楽しそうな顔は、かつてのナチスの拷問担当者の顔を連想させるほど。

しかもただでさえクソ寒い洞窟内、この水の冷たさと言ったらユーコン隊員の嫁レベルの冷たさ。

いよいよ「お気軽チャッピー洞窟体験会」という言葉が1mmも入り込む余地のない世界に。

テスリンY隊員に至っては、巨大な岩に押し潰された浄瑠璃人形のような鬼気迫る状況に。

ここは生き地獄なのか?

今まさに現世で背負った罪(遊びすぎ)を償わされてるのだろうか?

 

第7章 核心!

蟹座のデスマスクが仕掛ける積尸気冥界波の世界をたっぷり堪能する隊員たち。

しかしそんな隊員たちに向かってアガタ隊長は「これでウォーミングアップ終了です。ここからが本番です。」と言い放つ。

その言葉でたっぷりと絶望を味わった段階で、隊員たちは「これ本当に初心者が行っていいところなの?」という世界に突入させられるのである!

もうめちゃくちゃである。

途中で完全に鯉隊員の体はロックされ、

その後続のスノージャンキーH隊員からは「だめだ!本当にだめ!挟まった!」という悲痛な叫び声。

助けに行きたくても振り向くことすら難しい状況で、悲壮感にまみれる隊員たち。

ユーコン隊員も「一度心が恐怖に支配されたら終わりだ。」と、できるだけ「私は今楽しいことをしてます。楽しいことをしてます。楽しいことをしてます。楽しいことをしてるんです。」と新興宗教の人のように連呼して己を鼓舞するのに必死である。

 

そしてそんなギリギリの隊員たちに対して、アガタ隊長は「いよいよ核心部です。ここが一番狭い場所です。」と追い打ちの一言。

その核心部がこれである!

途中で「あれ?俺って何かから逃亡してるんだっけ?」と思ってしまったほどのこの状況。

アルカトラズからの脱獄の一コマのよう。

顔を一部水没させながら、息を吐いて胃を小さくした段階でズリズリ進んで行くというスペシャルマゾプレイ。

ヘルメット外してるから頭に岩がガンガン当たって、スノージャンキーHさんに至っては頭部数カ所から流血をしていたほど。

そして前方で響き渡るサディスト隊長のご機嫌な笑い声がこの異質な世界観に変態的な彩りを添える。

 

終わらない「アガタズブートキャンプ」。

もう神秘の泉やら神の滝やらなんてどうでも良くなってきて、隊員たちの目標は「生還」一本に絞られた。

しかし我々取材班はあくまで洞窟最奥の神の滝を目指し、愚直に前に進み続けるのである!

 

第8章 最奥!

キンキンに冷えた水でずぶ濡れとなり、冷蔵庫の中に居続けるような状況に対していよいよガタガタ震えだすユーコン隊員。

動き続けて体を温めないと低体温症まっしぐらな危険な状況の中、確実に精神が破壊されていく。

何かが一周しすぎて笑い方がおかしくなっているユーコン隊員。

そんな感じでたっぷりと体が冷え切った段階で、わざとなのか偶然なのか、ここで突然アガタ隊長による「ロング立ちトーク」が始まったのである!

何やら東南アジアの洞窟に行った時のお話をしているようだが、低体温症で死の手前にいるユーコン隊員の頭にはまるで入ってこない。

彼は体を小刻みに震わせながら窮状を目で訴えるが、アガタ隊長のトークがノリにノッテしまっていて動けない。

時間にしたら5分くらいの立ちトークだったが、もうユーコン隊員の唇は紫で顔色もデスラー総統レベルに。

しかし隊長から、「安心してください。ここからは嫌でも体が温まります。」と、ありがたいような不安になるようなお言葉。

やがてそれを具現化するような世界が展開する。

ロープを使って這い上がって、ケツを岩に固定してよじ登って狭い隙間に侵入したり、

洞窟の中のくせに急登パラダイス(ぬるぬるに滑る泥付き)を堪能したり、

ふと頭上を見上げれば、コウモリがコウモリにぶら下がって密集してる状況を見て「キャアアアアッ!」ってなったり。

ドラキーは集まってキングドラキーになった。

確かに嫌でも体はホットになった。

そして最後に急登をよじ登って行くと、ついにこの洞窟の最深部へ到達した!

地下水が流れる音がザザザーっと響き渡る中、ぽっかりと広い空間に抜け出たのである。

ついに神の滝とご対面!

 

っと思われたが、隊長が「あれ?なんか今日あんま滝になってないっすね。」とまさかな一言。

そう、我々取材班は、ここまで苦労して最奥の地に辿り着いた挙句に「滝がなかった」という事実に直面したのである!

 

まさに骨折り損のマゾ儲け。

しかしこのような報われなさも洞窟探検というものだ。

何より大事なのは、あの壮絶な苦難を乗り越えたという達成感なのである!

そんな達成感に打ち震える隊員たちに対し、アガタ隊長は言う。

隊員たちの誰もが薄々自覚しながらも、できるだけ口に出さないようにしてきたその一言を。

「じゃ、また同じルートで同じことしながら帰りましょう。」と。

 

この時スノージャンキーHさんは言った。

「僕こないだ黒部五郎岳を日帰りでピストンしたんですよ。その時は下山がもう辛すぎて死にそうだったんですけどね…。正直今はその時以上に絶望的な気持ちです。」と。

その言葉には皆一様に納得し、諦めの表情で静かに頷き合ってまた同じ拷問場へと帰って行ったのである。

 

第9章 生還!

あの「幻の神の滝」から一体どれほどの時間が経っただろうか?

もうすでに冷えすぎてGoProのバッテリーが無くなって、その間の映像は残されていない。

しかしその帰路の壮絶さを1枚の写真が物語っている。

それがこの洞窟の出口で撮影された、折り重なる隊員たちの生還姿である。

まさにボロ雑巾状態。

腕はもうプルプルで上がらず、全身には謎の痛みが発症し、色んなところに身に覚えのない流血があり、リアルに低体温症寸前。

彼らが出口の光を見つけた時は、「着いた!」ではなく「助かった!」と口々に叫んでいたほど。

外は猛暑のはずなのに、体が冷え切ってるのと暗闇が長すぎたせいで「ああ!もっと!もっと光をぉぉ!!」とジャコウのように絶叫して日光を求める4人の男たち。

 

ちなみに鯉隊員は帰路の途中でツナギに穴が空き、それが岩にひっかかって進めなくなったことがあった。

その時、「ユーコンさん!僕の足のツナギを引き裂いてください!」と叫び、それを後方のユーコン隊員が「わかったぁ!」とビリビリに引き裂くというワイルドな一コマがあった。

その時の壮絶な余韻がこの1枚に表現されている。

大地ごろ寝で始まり、ビリビリのドロドロで終わるという、相変わらず本宮ひろ志的な鯉の世界。

しかも彼は途中で泥水が目に入り、コンタクトレンズが目の裏側に入り込んで片目しか見えてなかったという。

彼は今日、Lv1からLv20くらいに一気にレベルアップしたのは間違いないだろう。

 

やがて日光でなんとか息を吹き返した一行は、出口付近の川にて泥を落とす。

ここはガンジスなのか?

洞窟内の水が冷たすぎた事もあり、川の水がぬるま湯に感じるほどに温かい。

それほどまでに体が冷え切って追い詰められていたということなのである。

 

こうして我々水曜スペシャル取材班の戦いは幕を閉じた。

事前情報があまりにもなかったため、最初は「チャッピー洞窟探検」と思っていたのに、終わってみれば「生きるか死ぬかの世界」となってしまった。

「ちょっとした飲み会だよ♪」と誘われて普段着で行ったら、そこはまさかの「極道界の重鎮だらけの兄弟盃の現場」だったという気分である。

 

後に鯉隊員から送られてきた写真は、この時の戦いの壮絶さを如実に物語っている。

数十人のヤンキーから根性焼きを食らったかのようなアザの数々。

 

しかしこのような努力の末、我々は「珍獣」の撮影にも成功し、枯れてたとはいえ「神の滝」にまで到達した。

その功績は永遠に語り継がれて行くことになるだろう。

辛かったが、終わってみるとまた洞窟が恋しくなっている自分たちに気づかされる。

世界にはまだまだ未発見、未調査の洞窟が山ほどある。

今の地球上、人力で行ける人跡未踏の地は洞窟だけ。

そこには夢とロマンとマゾがある!

人類はまだまだ夢を見れる!

ゆけ!マゾ口浩探検隊!

 

 

それではまたいずれ山や川や沢や海や洞窟でお会いしましょう。

ご視聴ありがとうございました。

ナレーションはユーコンカワイでお送りしました。

押忍!