そろそろ重量級バックパックを卒業して軽量化を図りたい!かといっていきなりフレームレスのUL系バックパックに行く勇気もない!ってなそこのあなた!スイスから送り込まれた「ティラノザウルスの背骨を持った雷光野郎」が、今あなたの山ライフにバチコーン!とどハマるのかもしれないですよ。見た目もクールなそんな雷光バックパック、あなたの代わりにBBGが要チェック致します!(文:ユーコンカワイ)

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EXPED「LIGHTNING 45」

忘れられなかったアイツ

今を遡ること1年以上前。

当時僕は「買物王に俺はなる!」と叫び、自分用のファストハイク用のバックパックを探す大航海に出かけていた。

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この時は最終的にハイパーライトマウンテンギアの「2400ウィンドライダー」に辿り着いたわけだが、そこに至るまでに数多くの強敵たちと戦った。

中でも「四皇」と称される4つのバックパックは、ほぼ買う寸前にまで追い込まれるというギリギリの戦い。

特にその四皇の中で最も僕を追い詰めたのが、エクスペド海賊団が送り込んで来たこの「ライトニング45」なのである!

こいつの存在を知った時はそれこそ稲妻に打たれた気分だった。

しかし当時なぜこいつを買わなかったかというと、それは単純に発売からだいぶ時が経っていたから(2012発売)。

BBGで記事として取り上げるにはいささか鮮度的に物足りないという、たったそれだけの理由でワンピースになり損ねた無念のバックパックなのである。

 

しかしあれから時が経った今でも、時折僕は「ああ…アイツ元気してるかなあ…」「あの時告ってたら今頃…」「一度でいいから抱いてみたかった…」などと未練がましく思い出すこと度々。

今カノのウィンドライダーには大満足しているが、男とは昔チャンスがあった女にこそ未練を抱いてしまう生き物。

しかも彼女は今だに現役バリバリであり、発売から6年経った今でも変わらず支持され続けているのである。

 

これは「良い物は良い!」のスタンダードアイテムとして、旬じゃなくても取り上げるべきではないか?

あの石原さとみだってデビューから6年くらいはパッとしなかったが、今最高じゃないか。

ってことで、だいぶ遅ればせながらだけど、今こそこの「ライトニング45」にアタックチャンスなのである!

 

エクスペド海賊団とは

アタックチャンスの前に、まずはライトニング45を擁する「エクスペド海賊団」に触れねばなるまい。

あなたにも「理由はよくわかんないけどなんとなく好き」というアウトドアブランドがあるだろう。

僕にとってそれがまさにこの「エクスペド」というメーカーなんですよ。

シンプルなゴシック系のロゴも好き。出典:EXPED

昔は読み方すらわからず、1年くらい堂々と「エックスペッド」と読んでいた(今考えるとなんか恥ずかしい響き)。

比較的マイナーな部分はあるけど、今では山やってる人ならそこそこご存知のはず。

ショップとかではスタッフサックやドライサックとかで目にする機会が多いだろう。

スリーピングマットにダウンを封入しちゃったりして、そっちの分野でご存知の人もいることでしょう。

 

でもここ、日本では知名度低いけどテントやらバックパックやら結構総合的に作ってたりするんです。

そしてそのどれもが独創的なアイテムが多く、欧州ではいろんな分野で賞を取ってたりするんですよ。

「シンプルかつ他とはちょっと違う・でも作りしっかりしてる・あんま使ってる奴がいないレア感」という、なんとも僕好みなスイスの山道具メーカー。

そもそも「EXPED」って「EXPEDITION EQUIPMENT(遠征道具)」の意味でコンセプトもとてもシンプル。

元々は色んなメーカーを扱う販売店からスタートしており、その知識をもとに突き詰めてものづくりを始めてるからソツがない。

 

そんなエクスペドが6年前に作り上げ、当時「OUTDOOR INDUSTY AWARD 2012」を受賞したのがライトニング45。

その名作、積年の募った想いとともに、じっくりと観察して行ってみようではないか。

 

LIGHTNING45  仕様

重量

ライトニング45の重量はメーカー公称1150g、実測では1092g。

ガッツリ系のものに比べたら相当軽いが、600g〜900gあたりが主流のUL系バックパックに比べたらやや重い部類(それでも十分軽い)。

しかし軽さだけが突出しててもBBGは見向きもしない。

大事なのはあくまでも総合力。

軽いことは大前提として、どこまで背負い心地や利便性を突き詰められるかがメーカーの腕の見せ所。

さあ、それではその稲妻の威力、見せてもらおうか。

T-Rexサスペンションシステム!

T-Rexといえば「20th Century Boy」の印象的なあのギターリフが頭をよぎる。

しかし21世紀のT-Rexもかなり印象的なバックボーンで我々の背負い心地をサポートしてしまう。

それがこのライトニング45最大の特徴、「T-Rexサスペンションシステム」なのである!

背面に「T」の字にフレームが入ってるのがお分かりだろうか?

上部には横にw22cmxφ1cmほどのスタビライザー的パイプが這っていて全体のバランスを維持させ、

縦に走るセンターフレームは、まさに「背骨」の役目を果たして腰への加重をサポート。

「センターだと本当の背骨に干渉しちゃうじゃん」って思ってしまうが、ちゃんと体の形状に合わせて湾曲しているため一切体に当たることはない。

赤線の感じに湾曲してます。

このシステムにより、腰骨の上に加重がジャストで乗ってくるため「腰で背負ってる感」がしっかり感じられる。

おまけに腰の部分はこの猛烈な厚みのモリモリ腰パットがあるため、加重をしっかり受け止めることが可能。

しかもこのモリモリ腰パッドのおかげで背中とバックパックとの間に隙間ができ、接地面が減って風通しも良かったりするのだ。

UL系のバックパックは背中にベターっとくっつくものが多いから、夏場でも蒸れにくいってのは大きなメリットだ。

 

このT-Rexサスペンションシステムのおかげで、メーカー公称の推奨耐荷重量はなんと24kg

背面パッドやステーがあるUL系バックパックだとせいぜい10kg〜15kg(ウィンドライダーでも18kg)ってこと考えると、まさに「T-REX(ティラノザウルス)の背骨」と言っても過言ではないだろう。

これならまだ荷物の軽量化があまり進んでない脱初心者の人でも安心して採用することができる。

 

さらーに!

このT-Rexサスペンションシステムは無段階でミリ単位の背面調整が可能!

調整方法はいたって簡単。

腰のモリモリパッドをベリベリべり!と剥がし、

ストラップを引いたり緩めたりして、

ショルダー部分を上下に動かして調整するのみ。

これ実際にやると本当に簡単なので、山での休憩中とかでもサクッと調整することができるのが良い。

しかも無段階なので、本当に自分の背面長にピターッと合わせることができ、丁度いいポイントを見つけた時は、それこそ雷光に打たれたような気持ち良さがある。

なので体型の異なるSHIMちゃんに貸し出しても、しっかり彼の体にもフィットさせることができた。

さらにはショルダーストラップの取り付け位置も上下2段に配置されてる心憎さで、体の大きい人や胴長の日本人に嬉しい仕様。

もはやこのT-Rexサスペンションシステムで体にフィットしない奴なんて、日本ではのびーるくんくらしかいないんじゃないだろうか?

 

そしてこのT-Rexサスペンションシステムは、さらに「腰可動」という面でも優れた威力を発揮する。

「背骨一本」が腰中心で支点になることによって、ウェストが柔軟に上下に動くのだ!

わかりやすく全体像を見せるとこんな感じね。(赤マルが支点)

先ほどのフィット感に、この可動性が加わっちまったらもうパーフェクトよ。

さすがは無駄を省きながらも一つの隙も見せないエクスペド。

長年数多くの有名バックパックメーカーの販売もしてきただけのことはある着眼点なのである。

 

ショルダーとウエスト

ショルダーのパット自体はそこまでの厚みはない。

なので実際24kg背負って何時間も歩けばそれなりに負荷を感じそうだが、T-Rexシステムは腰で背負う感じがあるのでそこまで大げさにする必要はないとの判断だろう。

実際17kg程度なら丸二日歩いても特に痛くなることもなかった。

チェストストラップはこんな感じで、こちらも無段階で上下に調整可能。

これ取り付け箇所がセンターに寄りすぎてたりすると、ショルダーパッドが内側に鋭角に入り込んで胸が痛くなったりするが(HMGのウィンドライダーがそんな感じ)、ストラップの形状が絶妙な鋭角さでぴったり体にフィットして痛さは感じない。

非常に地味な部分だが、僕のようにおっぱいが大きい人間にとってはありがたい優しさなのである。

一方、ウェスト部分のパッドの厚みはライト系バックパックとは思えないほどかなりしっかりしている。

腰がしっかり包み込まれてる感があり、T-Rexシステムと相まって腰で背負ってる感が感じられる。

グレゴリーとかと比べちゃ酷だけど、わずか1kg程度の重さでここまで気の利いたウエストパッドは他にはあまりないだろう。

 

生地

生地は210Dのダイニーマリップストップで、軽量で引き裂き強度に優れ耐摩耗性もある。

ってのは言葉上の話で、見た目はちょっと頼りなさはあるし、実際にこの生地のものを色々使ってきた感想としてはあまり長期でハード使用の人には向かない印象。

とはいえ本国メーカーは5年保証を謳っており、数多くのULバックパックでも実績がある素材だけに安心感は高い。

ちなみにボトム部分まで継ぎ目なくこの素材。

縫製箇所が少ない分防水性は高まるが、ボトム部分は厚手の生地で補強しても良かったかなーとは思う。

ただあくまでハイクカテゴリーのアイテムだし、ボトム部分にはクローズドセルマットとかくくりつけたりするからこれはこれでいい割り切りだとも思う。

一方防水性に関して言えば、生地の裏側にPUコーティングが施されており、メーカー公称耐水圧は1,500mm。

でもシーム処理とかもされてないんで、あくまでも簡易的な防水性と認識しておくといいでしょう。

このPUコーティングも数年経つと剥がれて来たりします。

大雨の時は別売りの「パックライナーUL50」とかで濡れ対策するか、そもそも山には行かないで家でおとなしくBBGでも読んでましょう。

 

ポケットとリザーバー

サイドのポケットは容量多めで、ペットボトルなら2本は入る。

ポケット生地も伸縮性のあるものだから、ある程度のものなら無理やりねじり込むこともできる。

体の柔らかい人なら背負ったままここのボトルがギリ取れる感じだが、僕のような四十肩野郎だと無理でした。

いててててて。

ウエスト部分にも、同素材でそこそこ大きめなポケットが両サイドに付いてます。

日本はサコッシュ文化が進んでるからこの部分省かれたりすごく小さかったりするけど、サコッシュが苦手なユーザーとしては実にありがたい。

そしてバックパック内側にはとても大きなメッシュポケットがあるが、

キーリングもここにある。

実はこれただの内部ポケットではなく、このようにズルンと出すとわかるけど袋状になってます。

じゃあこの袋にはどうやってアクセスするかというと、なんと外からアクセスできるんですよ。

ロールトップ式のバックパックって内部へのアクセスが面倒で、ちょっとした小物出すのも億劫だけど、これのおかげで素早くアクセス可能。

もちろんバックパックの中身が詰まってる時は大して物が入るわけじゃないけど、ヘッデンとか手ぬぐいとか行動食入れとくのに便利。

僕の場合、荷物が少ない時はここを「スティックパン待機所」として利用し、休憩のたびにこっからパン抜いて食ってました。

で、実はこの場所、別にポケットの役割がメインではなく、本来は「リザーバーポケット」なんです。

当然防水性能は少し落ちちゃうけどね。

このようなロールトップ式のバックパックにリザーバーポケットがあること自体素晴らしいし、外から入れるってのも独創的だ。

荷物が少ない時はパッキング後からでもねじり込むことができるのもありがたい。

2018.7.31追記:本国サイトの写真がこの上部ポケットからリザーバーホース出してたからてっきりここから出すもんだと思い込んでましたが、よ〜〜〜〜く見ると左ショルダーの脇に、生地と完全に同化したちっちゃな穴が!目が節穴すぎて全然見つけられなかったっす。ってことを追記しておきます。

 

内部へのアクセスはロールトップクロージャー式。

天気のいい日などは内部へのアクセスが容易な一本締めもできれば、

両サイドの二本締めでスッキリ収めて、防水性や安定性を高めることも可能。

ちなみに二本締め用のストラップは使わない時は、サイドポケットの中に収納しておくことができるから見た目もスッキリですね。

コンプレッションベルト

お次は見た目にも特徴的なコンプレッションベルト。

荷物が少ない時は、左右二本のベルトを引っ張るだけでバックパック全体を圧縮することが可能だ。

これによって荷物が内部で振られることなく安定する。

もちろんこのベルトがあることでいろんなものを挟み込んで外付け可能。

トレッキングポールはもちろん、
ワカンとかだってこの通り。
SHIMちゃんみたいに引っ掛けるパターンでも。

ただあくまでもコンプレッションベルトとしてがメインであり、便利そうに見えて意外と外付け用としてどう使っていいかは悩んでしまうところ。

調整ベルトが上下で分かれてるわけじゃないから、荷物取り付けるのが結構面倒だったりする。

この部分での外付けはあくまでも便利なオプション的に考えといたほうがいいだろう。

その他外付け

トップには一本締めベルトがついてるから、マットや脱いだウェアの固定などに持ってこい。

黄金の鍋だってご覧の通りバッチリ固定。

ポールが折れるほどのずっこけでも鍋は落ちてない。

一方、ボトム部分には引っ掛け用のループが4箇所あり、この部分にショックコードやストラップギアでマットやテントポールなどを固定可能。

ちょっとしたことなんだけど、これがあるだけでものすごく拡張性が高まる。さすがエクスペド。

後はピッケルホルダーが2箇所あり、

このような固定用のゴムバンドが付属されてるから、上部でしっかり固定可能。

他にはチェスト上部にDリングついてるんで、チェストパックとか拡張アイテム使う人にはありがたいですね。







現場テスト

いやあ、仕様だけ見ていくとほんと素晴らしいバックパックですね。

さすがは四皇の一角として僕を悶々とさせただけのことはある名品です。

では実際に何度か現場で使用した感想を。

まず背負い心地に関してだけど、最初は独特な背面形状(特に腰パッド)に違和感(存在感)を覚えたけど、すぐに慣れてきた。

ただ人によってはその違和感が気になってしまう人もいるだろうとも感じる。

背面に関しては何度か調整していくうちにジャストポイントに到達し、それ以降はいい感じで腰で背負えてる感じがあってうまく重さを分散できてたように思う。

感覚的には2kgレベルのバックパックと遜色ない背負い心地。

水含め17kgくらいの荷物だった時も肩が痛くなることなく、さすがは耐加重24kgを謳うだけのことはあった。

ちなみにSHIMちゃんの感想としては、荷物の中身の固いものが背中に当たって違和感を感じたこともあったようだが、パック内部にマットを入れたらシンデレラフィットしたようだ。

他に気になったのは荷物が17kgくらいあると、歩くたびにT-Rexのショルダー調整部分が軋んで「ギュム、ギュム」と音を出し始めるってこと。

サスペンションが効いている証拠でもあるんだが、気になり出すとちょっと鬱陶しい。

一方、そのサスペンションと例の腰を支点とした可動効果で、激し目な動きをしてもピタリと体の動きに追随してきてくれた。

他メーカーの可動が効きすぎるバックパックは逆に荷物が左右に振られすぎて安定感に欠けてしまうが、ライトニングの腰可動は「ちょうどいい」レベル。

これなら通常ハイクから岩場の多いアルプスまで安心して使用できると感じた。

 

荷物が少ない時や、アタック時の使用時も、コンプレッションベルトで圧縮して荷物の揺れも感じずに安定していた。

全体的な背負い心地やフィット感に関しては、軽さも含めて総合的に優秀な感じ。

ただ一点だけどうしても改善して欲しい点がある。

それはコンプレッションベルトがペラく軟弱なせいで、何度もグネってなって「ああ、もう!」っていうストレスになるってところ。

適当に引っ張ったりすると、なんかもうこんなことになってうまく引っ張れないし見た目も残念なことに。

もう少しコシのあるものか、いっそダイニーマスペクトラのガイラインでもいいんじゃないかと思ってしまった。

このコンプレッション部分の形状も、デザイン的なアクセントにはなってるんだが、正直通常の上下別々のパターンの方が使い勝手いいかも。

後はオプションで外付け可能な大きめフロントポケットなんかもあれば何かと便利だと感じた。

(※追記:ユーザーさんのご指摘でわかったけどオプションの外付け売ってた!FLASH PACK POCKETってやつ。さすがエクスペド、ソツがない。)

 

まとめ

兎にも角にも、この軽さでここまで調整できて24kgに耐えうる背面システムがあるバックパックは他に見当たらない。

シンプルでカッコいいし、何より他の人と被らないってのも魅力的。

2kgクラスのバックパックからの軽量化を図りたいけどフレームレスパックに抵抗がある人。

まだ荷物の軽量化が進みきれてない人。

余計なものをたくさん持っていきたいUL派の人。

なかなか自分の背中に合うバックパックに出会えない人。

 

初心者から脱初心者の人にまで勧められる「ULに寄りすぎてないちょうどいいバックパック」。

それがライトニング45なのであります。

アイテム名 Lightning 45 Lightning 45 Women’s
アイテム画像
重量 1,150g 1,100g
耐荷重 24kg 24kg
適応背面長 41-58cm 36-53cm
カラー black・deep sea blue・lichen green black・terracotta
メーカー価格 22,000+税 22,000+税
BUY NOW

 

値段も非常に良心的なのも素晴らしい。

ライトニングは45Lの他にも60Lもあります。

荷物の多い冬季使用も想定してる人は60Lを選ぶといいでしょう。

 

さあ、どうでしょう?あなたのハートに松田聖子ばりの「ビビビ」な稲妻は疾走しましたか?

頭の中に20世紀少年のギターリフは鳴り響いちゃってますか?

もしそうだとしたら雷光の速さで買ってしまうがいい!

 

それではまた山でお会いしましょう。

家では黄金聖闘士(嫁)の放つ「ライトニングボルト」を浴び続けてるアルミ聖闘士。

ユーコンカワイがお送りしました。

押忍!