「オシャレ調理に用はない!俺は一人分のアルファ米やラーメン用のお湯が沸きさえすればそれで良いんだ!」という硬派なUL野郎どもに朗報。今ここに「軽量+湯沸かし」だけにこだわり、その上で徹底的に主役(カップ+アルコールバーナー)を引き立てる6人の名脇役たちがいる。良い映画に良い脇役あり、良い湯沸かしにも良い脇役あり。それゆけ!湯沸かしバイプレイヤーズ!!(文・ユーコンカワイ)

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それゆけ!湯沸かしバイプレイヤーズ!

「湯沸かし」

それはアウトドアにおいて最もミニマムなアクティビティであり、かつ命をつなぐ為に編み出された人類の叡智。

湯沸かしとは、ヒトがまだウホウホ言ってた頃から綿々と受け継がれてきた大河ドラマなのである。

そのドラマの主役はもちろんいつだって「器と火」だった。

 

そしてUL全盛期の現代。

「器と火」は進化と原点回帰を繰り返しながら、軽量さとシンプルさにこだわって一つの答えに到達した。

それが以前、アツシオガワがウホウホ言いながら解説した、エバニューの器「Ti570cup&400FD」であり、

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BBGでも検証をした「軽量アルコールストーブ」の世界なのである。

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特に「400FD」に関してはULシーンにおいて不動の地位を築いており、海外のハイカーたちにも熱く支持されている。

言ってみればこれらの主役セットは、UL界の「渡辺謙」と言っても過言ではないのである。

 

そんな渡辺謙だけでも十分にお湯は湧くんだが、そこに「良い脇役」が加わることによって作品(湯沸かし)はより良いものへと昇華する。

なので今までこの渡辺謙を主役で使ってきた監督たち(ハイカーさんね)は、皆試行錯誤を繰り返しながらいろんな脇役をキャスティングしてきた。

例えば風防の場合だと評価の高い「カルデラコーン」などが挙げられるが、あれは使えるクッカーが限られる上に収納が嵩張る。

引用:TrailDesigns

じゃあ汎用性があって嵩張らない演技ができる奴ってなると、例えば僕が今まで使って来たToaksの「チタニウムウィンドスクリーン」あたりなんだが、なんかもう見た目が美しくなくて萎えてしまうのである。

広げる時は巻きグセが鬱陶しいし、ピンを失くしたら「あーもう!」ってなるし。

他にも今まで400FDにはフタがなかったから他メーカーのフタで代用したり、運搬時の強度アップのためのスタッフサックを自作したりと、各監督たちは随分と脇役たちのキャスティングに苦労して来たのである。

 

しかし2018年。

ついに渡辺謙が所属する事務所(エバニュー)が、これでもか!とばかりに強烈な「渡辺謙専用脇役陣」を送り込んで来たのである。

それはまさにUL湯沸かし界においては待望のニュースだった。

しかしである!

例えば風防で言えば、メーカーサイトを見るとこんな感じ。

さすがは「アウトドア界の高倉健」と言われるエバニューさん。

相変わらず「余計なことは言わない。男は黙って辛口一献!」的な、控えめで不器用すぎるこの説明。

やたら商品の性能以上のことを必要以上に大げさに表現するアウトドアメーカーが多い中、この健さんスタイルは非常に好感が持てる。

しかしこれでは不器用すぎるあまり、ユーザーさんが「発売されたことにも気づかない」恐れがあるため、再びBBGが解説者として立ち上がったのである。

 

さあ、今こそ湯沸かしバイプレイヤーズたちに光を!

エバニューの湯沸かしセットを中心に、他にも見逃せない脇役にもスポットを当てて行きます。

 

Tiフーボー/役:遠藤憲一

渡辺謙は、ああ見えて意外と風と寒さに弱い。

そこでサポートとして登場させたい脇役は「風防」

風防は地味ながらも外部からの風をシャットアウトし、主役の力を引き出しつつ演技(湯沸かし)に集中させる役だ。

先ほども書いたが、今まではここにどんな役者をキャスティングするかが監督の腕の見せ所だった。

 

しかしもうそんなキャスティングは必要ない。

ついにTi570cup&400FDをメイン使用と想定した、渡辺謙専用風防が本家エバニューより登場。

それがこの遠藤憲一が演じる「Tiフーボー」なのである!

それなりにスタイリッシュな見た目なのに、あえて間の抜けたネーミングで三枚目を演じているあたりはさすが名脇役。

思わず森永製菓の名作「ぬ〜ぼ〜」を思い出し、マーシーのCMに想いを馳せてしまったのは私だけではないはずだ。

そんな三枚目のTiフーボーだが、実際は「二枚」で構成されている。

その薄さはオカモトもびっくりのわずか0.1mmの極薄チタン!

この極薄二枚構造がもたらすのが、このハイパーすぎる収納性!

もはや「え?風防どこにいる?」と言ってしまいそうなほど、徹底的に存在感を消し去る名演技。

5cm以上の深さがあるクッカーなら、内径に沿ってぐるっと収納できて全く場所を取らないという秀逸さ。

この程度ならToaksのやつみたいに巻きグセに悩まされることもない。

 

で、さっきの状態に戻って見ていくと、Tiフーボーにはそれぞれ2つの爪が存在しており、風防の径サイズを2段階で調整できるようになっている。

クッカーの大きさに合わせて、こんな感じでぐるっと回してその爪を引っ掛けるんですね。

ピンで留めること思うと随分楽だし、見た目も美しい。

で、この二枚を、4箇所に設けられたスリット同士を噛み合わせて連結。

以上、完成。簡単ですね。

脇役でありながら、実に男心くすぐる工業的な出で立ち。

主役の中にあっても抜群の存在感を誇り、

そのくせ重量はわずか「17g」で、カルデラコーンの半分、Toaksとほぼ同重量という素晴らしさ。

で、こんな感じでアルコールストーブにセットして、

主役の渡辺謙と合体!

専用設計だけに美しくフィッツ!

三角に切れ込んだ部分から渡辺謙の取っ手が干渉しない工夫がされているのだ。

まさに主役の演技を邪魔しない計算され尽くした名演技。

そして渡辺謙が小さい演技をする時(400FD)も、さっきの爪部分を内側でセットしてやれば、径が狭くなって同じように美しくフィットする。

そしてこのフィット感と、風防効果がもたらす効果はもちろん沸騰スピードの速さ!

アルファ米用の160mlの水が、約2分でボッコボコに沸騰だぜおい!

名脇役のおかげで演技に熱が入りまくる渡辺謙さん。

これは単純に風防として風が抑えられてるのはもちろんだが、やはりその形状から来る「煙突効果」で炎が効果的に上昇しているからだ。

下部に空いた穴から効果的に空気を取り込む。

そして風防の輻射熱によってさらに内部に熱が溜まり、今までのように「点」ではなく底面から側面に至るまでの「面」が満遍なく熱せられるのだ。

下からも横からも!ザ・ニンジャも驚きの焦熱地獄だ。

こうして沸騰時間が超早くなるおかげで、持っていく燃料も節約できるというメリットも。

中に熱がこもるこの形状なら、外気温が低下する秋冬の低山でも安心してアルコールストーブが使えるという利点もある。

さすがは何役もこなしつつ主役を盛り立てる遠藤憲一。実に無駄がない。

 

しかし一つ難点があり、彼はたまに演技に熱が入りすぎて主役を食ってしまう時があるってこと。

非常に密度の高い炎がクッカーに沿って上昇してくるため、勢い余って取っ手のゴムを焦がしてしまうというとんでもないアドリブ演技をかます時があるのだ。

まさに脇役が主役を食ってしまった瞬間の図。特に400FDは下までゴムがあるからやられがち。

アルコールストーブメインの場合で400FD使う人は、いっそ下部のゴムをTi570みたいにカットするとかした方がいいかもね。

どっちみちここにゴムあってもあっついしね(見事にヤケドしました)。

あと注意したい点としては、風が強い時、Tiフーボーを組み立てる前にあらかじめクッカーに水を入れておくこと。

なぜならTiフーボーはクソ軽いから、重しがないと空のクッカーもろともぶっ飛んでいって追いかける羽目になる(実際に猛ダッシュで追いかけた)。

主役だろうと脇役だろうと、突然の文春砲(春の突風)には要注意なのであります。

 

さあ、そんな遠藤さんですが、もちろん主役が渡辺謙じゃなくても対応可能。

アルコールストーブが渡辺謙じゃなく、役所広司(フリーライトFREVO R)の場合でもちゃんと使えました。

相手が背の低い岡田准一(固形燃料)でも大丈夫。

巧みにセパレートして、一枚スタイルでしっかりサポート。

ゆえに固形燃料メインの人は、Tiフーボーが半分で済むから「8.5g」というハイパーライトさ。

もはや持ってないに等しい重量だ。

 

ということで、一応Tiフーボーは基本設計が渡辺謙(Ti570&400FD)に合わせてあるが、他のクッカーでも径が合えば問題なく脇役を演じてくれる。

大の内径:約11.5cm/小の内径:約10.5cm

お手元のクッカーに合いそうであれば(メーカー公称:Φ95〜125mmのクッカー対応)、ぜひ共演させてみてはいかがだろうか?

注意点として、径が合ったとしても取っ手部分の形状によってはそこが引っかかるんでその辺も計算に入れるといいでしょう。

エバニューのチタンクッカー1は径は合うけど取っ手が引っかかった。使用には問題ないけど。

参考に、取っ手部分のアップも載せておきます。

ついで情報として、アルコールストーブと固形燃料以外はどうか?

SOTOのストームブレーカーみたいなやつだと、径は足りないけど風上の防御だけはちゃんとできました。

で、当たり前ですけどガスバーナーはてんで届かないんで、ただの飾りとして機能いたします。

さあ、以上が遠藤憲一の解説でしたが、なんとこのTiフーボーの魅力はこれだけでは終わらない!

次はさらにいぶし銀な名脇役をご紹介していこう。



Tiフーボーのケース/役:田口トモロヲ

遠藤憲一を購入すると、なんともれなく「田口トモロヲ」が付いてくる!

それがこのTiフーボー付属の「ケース?パッケージ?(正式名称がない)」なのである!

「なんだ、ただのケースじゃないか?」と思うなかれ。

何役もこなせてこそ名脇役、田口トモロヲの真骨頂。

例えばあなたが「今日はデイハイク!メシはリフィルラーメンだけだから、最低限お湯を沸かすためだけの最小セットで行きたい!」となった時、旅の相棒は400FDだけでいいはずだ。

となると、必要なのは以下のセット内容となる。

400FD、Tiフーボー、チタンアルコールストーブ、チタンゴトク、mulTIdish。

そう、実は田口トモロヲは、この「最小湯沸かしセット」がピッタリと収納できるサイズに設計されているのである!

PPの密封ケースで中身もバラつかず軽量、かつ強度の弱い400FDの保護にも持ってこい。

この「最小湯沸かしセット」の重量、わずか「148g」

リフィルラーメンやアルファ米メインの、切り詰めたファストパッキングスタイルには持ってこいの湯沸かしセット。

しかもである!

ただフーボーケースと保護ケースの二役で終わらないのがトモロヲのトモロヲたる所以。

このケースは100℃の耐熱温度を誇り(耐冷は-20℃)、「食器」としても機能してしまうのである。

このケースが食器になることで、保護以外にも多くのメリットが生じる。

まず今まで400FDだけでもリフィルラーメンを調理して食うことができたんだが、なんせ容量がギリギリなんで食いにくかった。

しかもアルコールストーブだと取っ手のところも口つける所も熱々で、「ラーメンを食う」というより「ラーメンと戦う」という展開に陥ることもしばしば。

しかしこのケースをお椀として使うことで、400FDを湯沸かしだけに専念させることができるようになったのだ。

これなら大きな器で悠々とラーメンが食える!

しかも湯沸かしに専念した400FDは汚れてないから、そのまま綺麗な状態で食後のコーヒーが作れる!

もう醤油風味やカレー風味のコーヒーを飲まずに済むのである!

 

もちろん戻したアルファ米をトモロヲに入れ、400FDで親子丼とかカレーの素とか作ってアルファ米にかけて食うのも良いだろう。

僕の場合だと、お湯を作りがてら乾燥野菜を戻し、それごとトモロヲ内のラーメンにぶっかける。

こんなこと、今までの400FDだけの環境では絶対にできなかった。

しかーも!

密閉蓋できるから、3分待つ間でも冷めにくいのである。

完全密閉されてる分、心なしか圧力効果で麺が美味しかったような、まあそうでもないような。

こんな最小セットなのにラーメンが悠々と食えるという幸せ。

ただPP素材なんでそのまま手に持つと熱々だから、お手持ちのコジーだったり手ぬぐいなんかを添えて食うといいでしょう。

で、お次の役者は、さっきからさりげなくトモロヲを優しく包み込んでいる黒い人。

そう、今は亡きスーパー名脇役、大杉漣さんのご紹介なのである。



NPクッカーケース/役:大杉漣

主役だけでなく、同じ脇役仲間すらその優しい包容力で包み込んだ大杉漣さん。

そんな蓮さんが演じるのは、主役をしっかりと保護する「NPクッカーケース」なのである。

NPとはネオプレンの略で、その名の通り保護力の高いネオプレン製のクッカーケース。

今までも渡辺謙専門メッシュ袋はあったんだが、作りがルーズで美しくない上に保護力も皆無だった。

渡辺謙はあの見た目のくせに繊細なボディの持ち主で、薄手のチタン製ゆえに打撃に弱いのだ。

山行中に転んで、後でバックパック内の謙さんを取り出したらベコベコなんて事になったらその作品(湯沸かし)はお蔵入りである。

そこでこの脇役には「渡辺謙の美しさに完全にフィットしつつ優しく包み込む演技力」が求められ、2018年、満を辞して大杉漣さんがその役を演じることになったのである。

薄手チタンの繊細渡辺謙セットも…
スポーンとジャストフィッツ!

これで「ぬののふく」だった渡辺謙が「レンのよろい」を身につけたことで防御力が格段にアップだ。

このネオプレンの生地には伸縮性もあるから、Ti570内にガス缶だったりミニハンドルだったりを入れてフタが閉まらないような時↓でもすっぽりと収めることも可能。

多少はみ出した演技でも、漣さんならしっかりカバー!

なので、通常通りTi570+400FDを入れた状態で、クッカーとケースの間にライターだったりカトラリーだったりをねじり込ませたりしてもいいだろう。

他にも例えばTi570をベースキャンプに置いて、400FD+コーヒーセットだけを持ってピークハントする場合があったとする。

そんな時はアルコール燃料やコーヒーなどひとまとめにパッケージして持っていけるからとても便利だ。

Ti570専用設計だけど、伸縮性があるからその用途はあなたのアイデア次第。

ちなみにTiフーボーのケースもピッチリ収納可能なんだが、この場合はピチピチすぎてジッパーが締めにくい。

しかしご安心を。

何役もの役をこなすことができる大杉漣さんには4つの顔があり、今回の「Ti570」の他に、大きいものだと「#1」「#2」、小さいものだと「500」というサイズ展開がある。

「#1」は直径13cmまでのクッカー、「#2」は直径14cmまでのクッカー、「500」はこちらもUL界ではおなじみのチタンマグポット500がすっぽり収まるサイズ。

ってことで、さっきのフーボーケースを余裕持って入れたい場合は#1がオススメ。

この#1の場合だと、例えば「チタンクッカー1(or チタンウルトラライトクッカー1)+Ti570」くらいのサイズのクッカーがすっぽり収まる感じ。

当然サイズが合えばエバニューのクッカー以外でもちゃんと入りますよ。

例えば#2だと、アルミポットを中心とした僕の炊飯セットもスッポリ収納。

「もうとにかく全てをひとまとめにしてえ!」なんていうオールインワンマニアの人は、主役の渡辺謙だけでなく音声さん(アルコール燃料)やカメラマン(リフィルラーメン)も全部まとめて#02に収納して持っていくなんてことも可能だ。

一方小さい方の「500」に関しては、400FDと並んでUL界でファンの多い「チタンマグポット500」がすっぽり入る大きさなんだけど、

500の役割はそれだけじゃなく、例えば「400FD+mulTidish+110gガス缶+小型ガスストーブ」のスタッキングにもバッチリ対応。

もちろんガス缶ではなく、「アルコールストーブ+アルコールボトル」という選択肢もありだ。

このように大杉漣さんは、色んな状況に対してそれぞれ別の顔を演じ分けつつ、その柔軟な演技は監督の工夫次第で色んな役をこなすことができる。

さすがは名バイプレイヤー、大杉漣である。

 

もちろんこのまま話が終わったら「なんだかんだ言ってもただのケースじゃねえか」で終わってしまうところだが、もちろんケース以外の役もこなすのが大杉漣。

ネオプレン製であるってことは保護力があるってことだけではなく、「保温力」も存在するから「コジー」にもなることを意味している。

例えばアルファ米を入れたジップロックにお湯を入れ、こいつを大杉漣さんで包み込む。

で、15分放置。

するとアルファ米があまり冷めることなく、ホカホカの状態でいただけてしまうのである。

ケースだけじゃなく、コジーにまでなってしまう大杉漣のバイプレイヤーっぷり。

このおかげでアルファ米の専用袋(遮熱製アップ加工やスプーンとか入ってて重くてかさばる)を使わず、ジップロックでアルファ米を持ってこれるから荷物の軽量化にも貢献。

さらには例えばさっきの田口トモロヲの時に紹介したリフィルラーメンを食う時でも、

トモロヲに蓋をし、さらに大杉漣でカバーリングしてやると保温力は倍率ドン、さらに倍!なスペシャルコジー状態に。

このおかげで3分後も温かいままラーメンが食える。

しかも大杉漣に入れたままなら、PP素材のトモロヲを持っても手が熱くないィィッ!

やさしい!やさしすぎるぜ漣さん!

このスタイルはビバークレーションとか食う時でも活躍しますね。

 

ってことで彼のこの保温力と保護力をどう生かすかはまさに監督であるあなた次第。

例えば冬季に寝てる間に消耗しがちなスマホやカメラバッテリーを、ホッカイロと一緒に漣さんに入れとけばバッテリー長持ち!

すぐには飲まないビールなぞ入れとけば、多少〜は冷えた状態をキープ。

保温や保冷だけじゃなく、調理中に散らばりがちな物を入れておく場所としても。

バイブレイヤーズたちが優秀なのは、とにかく一個の役目だけで終わらないっていうこと。

物の制限が多い山において、それはとても重要なことだと思うのであります。



mulTIdish/役:松重豊

さあ、風防、パッケージ、ケースの次は「蓋」だ。

地味なアイテムが続いて「そろそろ誰も読んでねえんじゃねえか?」と不安でいっぱいだが、そんなものは無視して突き進む。

まだ残ってくれてる人は湯沸かしロマンのある素敵な人である。

そんなあなたのために紹介したいのが、400FD用の「蓋」として登場した「mulTIdish(マルチディッシュ)」なのである。

UL野郎どもからの400FD用の蓋の要望は多く、これが出るまでは皆他メーカーの蓋などで代用してきた。

しかしこいつは専用設計だけあって、気持ちいいほどビシィーっと400FDにジャストフィット(760FDにも対応)。

しかも以前紹介したTi570のフタ同様上から被せるタイプの蓋なので、運搬時にはクッカー本体の強度もアップ。

当たり前だが、蓋をすることでさらに沸騰スピードは早くなる。

 

ただここで「おや?」と思ってしまうのが、蓋なのにツマミがないってこと。

これを見てロマンのない奴は「これじゃ沸騰後に熱くて蓋が取れないじゃないか!」などと文句を言うのだろう。

しかしこんなものはその辺の枝だったり、デコピンではねのけてやればいいだけのこと。

何でもかんでも人に頼るんじゃない!

そんな事言ってたら男塾なら切腹ものだぞ!

 

ULである以上、これくらい気持ちのいい割り切りを楽しむ心が必要だ。

じゃあなんでツマミがないのか?フラットなのか?そもそも商品名が「400FDのフタ」ではなく「mulTIdish」なのか?

その辺りにこのマルチ脇役、松重豊の渋さの秘密が隠されている。

まずこのmulTIdishは蓋って言うより、むしろ「土台」という役目の方が使用頻度が高かったりする。

とかく地面の形状によって不安定になりがちのアルコールストーブにとって、この松重豊が一枚噛むだけで一気に安定感アップ。

ゴツゴツした岩場や雪の上などでも安定感のある演技が光る。

軽量化しすぎるあまり安定感が不足しがちな他のアルコールストーブにとってもありがたい存在。

五徳の方に金や重量かけるくらいなら、この13gの松重豊を連れてったほうがよほど主役の演技を安定したものにしてくれる。

しかも主役が渡辺謙(アルコールストーブ)ではなく、岡田准一(固形燃料)だった時などは、その土台としてそまま主役級の活躍を見せつける。

脇役仲間であるチタンゴトクTribeTi(小日向文世)と共演。

さらに、彼は「蓋」「台」の2役を演じた後、ついにその名の通り「皿」として主役に躍り出るのである。

パーティで酒のツマミなどを共有する時など地味に便利。

端の方に一味マヨネーズなど添えれば、アタリメも進むこと進む事。

そんなほろ酔い笑顔の登山者の中心で、いつだって松重豊さんは微笑んでくれているのである。

皿には縁が立ってるため、醤油などの液体系でも大丈夫。

皿のくせにそのまま火にもかけれるから、軽く焼きながら食う感じでもオツだろう。

 

このように「蓋」「台」「皿」「パン」にもなってしまう松重豊のマルチっぷり。

なんなら暇つぶしにフリスビーとして使ってもいいし、限界ギリギリのアキラ100%に挑戦してみてもいいだろう。

流石にその時は色んなものがはみ出る危険性をはらんでいるが、宴会芸としては持ってこいだ。

 

そんなマルチっぷりなのに、持っていっても全然気にならない軽さの13g。

しかしそんなことより何よりも、たかが皿をチタンでここまで美しく作ってしまったという謎の男気に私は乾杯したい。

ロマンある監督にぜひ使って欲しい名脇役なのである。

 

フリントライター/役:寺島進

さあ、ここまでは回し者のようにエバニュー推しできたが、そろそろ別の事務所の役者にもスポットを当ててみよう。

ここまで「UL湯沸かしセット」が固ってくると、他の付随アイテムもとことん削って行きたくなるのが人情。

で、ライターの軽量化として「アルコールに火花が飛びさえすれば良い」って人は多いだろう。

そんな人にとっては、以前アツシオガワがウホウホと説明していたオプティマスの「スパーキー」なぞはかなり便利なアイテムだ。

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しかしさらに軽量化したい人にオススメなのが、着火役が似合う寺島進。

SOLのファイヤーライトに“おまけ”で付いてくる「名もなきフリントライター」なのである。

要するに火打部分しかないライターで、メジャーどころでいえばバーゴの「チタニウムフリントライター」などがあるが、これはそれより1g軽い「実測7g」

値段も3300円くらいするバーゴのに比べ、本体である着火ティンダー付きで1800円くらいと超お得。

バーゴのやつみたいに石の交換はできないが、5000回火花を飛ばせるんだから十分だ。

男ならこういうビックリマンチョコ的な「本体よりもオマケの方が活躍し続ける」アイテムってなんだかソソらないか?

しかもスパーキーのような「電圧式」より、こっちの「フリント式」のが高所や濡れにも強い。

それでいて、ここまで目立たない脇役スタッキング。

別にこの湯沸かしセットに限らず、普段でもガスバーナーの着火がダメになった時用のアイテムとしてエマージェンシーセットの中に忍ばせておいても気にならない重さ。

実際に僕も通常のライターだけじゃなく、緊急用にいつも持ち歩いている。

 

まあとは言え、チャッカマンやスパーキーみたいに着火口が伸びてるわけじゃないから着火はしにくいよ。

擦った勢いで「ズギャン」ってアルコールストーブに指が当たって中の燃料をぶちまけることもあるさ。

しかしまあそれも寺島進の味のある個性派演技だと思えば良いだけのこと。

割り切り派の監督にはぜひ検討していただきたい名脇役なのである。

 

ユニテンシル/役:光石研

さあ、鬼才派監督であるあなたは、もうここまで来ちゃうとカトラリーすら超軽量にしくなってるはずだ。

で、なんとかこのUL湯沸かしセットの中にスタッキングできる「脇役カトラリー」のキャスティングに奔走するのだろう。

かく言う僕も、400FDの内径(9.5cm)に収まるカトラリー(スポークタイプ)を探しまくった。

で、色々探すと大体17gほどのものがいくつかみつかり、そのどれを選んでも間違いはない選択と言えた。

しかしどうせならもっと存在感が薄く、かつ軽〜い役を演じていただきたい。

そんな難しい役を演じられるのはやはり光石研さん。

それがこの天知る地知るユニテンシルの「オールインワンカトラリー」なのである。

もはや「給食のヨーグルトについてきたスプーンか?」と思ってしまう頼りなさ。

その薄さはたったの1mmで、重量に至っては驚異の「5g」

もはや羽毛である。

 

そんな軽さのおかげで、一見頼りない使い捨て感が漂っているがさにあらず。

日本でもかつてマイ箸ブームがあったように、こいつが作られた経緯はアメリカのスプーンやフォークの大量消費の環境問題が背景にある。

そこで「誰もが気軽に持ち運べて安心して使い続けられるものを」と考案されたのがこのオールインワンカトラリーで、長く使用できるように耐久性はバッチリ。

しかも熱湯や食洗機にも対応した耐熱性があり、なおかつBPAフリー(人体に悪影響がない素材)なので安心して使用できる優れものだ。

 

まずこいつは携行用にこんな感じの3gのケースに入った状態。

環境問題が発端だから山ヤとしたらこのケースすらいらなかったんだが、普段持ち歩く人にはありがたいだろう。

で、そいつから本体を出すとこんな感じ。

もう持ってる感覚すらないほどの軽さ。

そしてTiフーボー同様、全くスペースを取らないという驚異的な収納能力。

で、こいつをサッと取り出して真ん中でボタンを留めたらハイ完成。

ご覧のように、片側がフォーク、もう一方がスプーン。

見た目が頼りない感じだし軽さ重視だろうで使い勝手は期待してなかったが、実際に使うと全然これで行けるレベルだった。

特にフォークは結構切れ込みが深いので、他のスポークみたいな「とりあえず」な感じもなくしっかりとブッ刺さる。

これなら突然熊に襲われたり、嫁に目を突かれそうになっても対抗凶器として十分に役目を果たしてくれそうだ。

で、山野郎どもに重要なラーメンはと言えば、当然しっかり引っ掛けてはくれないけど、まあ別に困らないレベル。

むしろ困ってしまうのは、持ち手の方が低くなってしまうと、スープが手に伝ってくるってことね。

油断して上げすぎると、手がスープまみれになってしばらくは醤油味になるからご注意されたし。

ちなみにですが、何気にフォーク側にはナイフ用のギザギザがあります。

これもわりかしよく切れるんだが、

日本人である以上、正直こいつの出番はほとんどやって来る気はしていない。

 

このように「そこにいることすら忘れてまう」という絶妙な演技をする光石研。

しかし彼は「影を薄くする」という演技がうますぎて、雪上で使うと完全にスクリーンから姿を消してしまう。

ボタンに色がついてなかったら絶対に見失ってしまうという諸刃の演技。

酔っ払った状態だと高確率で失くしちゃうんで気をつけなはれや。







 

華麗なる共演

「お湯を沸かすこと」だけに特化した脇役たちの名演技、実に素晴らしかったですね。

ということで、あなたがどんな作品(湯沸かし)をしたいかでこのバイプレーヤーズたちのキャスティングが決まって来ます。

日帰りが多かったり最小ULハイクを目指したいあなたはこの「最小湯沸かしセット」がオススメ。

【渡辺謙セット】合計:97g

 アイテム名 チタンカップ400FD RED チタンアルコールストーブ チタンゴトクtrive Ti
アイテム画像
サイズ 径9.5×深さ5.8cm / 容量400ml 外径7.1(内径3.9)×高さ4.2cm 長さ81×高さ40mm 厚さ1mm
素材 チタニウム チタニウム チタニウム
重量 50g 34g 13g
メーカー価格 ¥1,800+税 ¥3,800+税 ¥1,200+税
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※画像クリックでメーカーサイトへ

【バイプレイヤーズ】合計:64g

 アイテム名 Tiフーボー  mulTIdish NPクッカーケース#1
アイテム画像
サイズ 40.5×5.0cm、組立時:H86mm 径12.4cm・径10.8cm(0.1mm厚) 外径104×高さ55mm 径13x7cm
素材 チタニウム チタニウム ネオプレン
重量 17g 13g 34g
メーカー価格 ¥4,500+税 ¥3,800+税 ¥1,900+税
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※クッカーケースをピチピチで行きたい人は570用を。手ぬぐいとか持っていけばクッカーケース自体必要なし。

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数泊のロングハイクから山行までをオールラウンドにカバーするスタイルなら、こちらの「UL湯沸かしセット」だ。

【渡辺謙セット】合計:174g   ※スマホの人は横スクロールで見てね

アイテム名 Ti570 Cup Ti570 Cup フタ チタンカップ400FD RED チタンアルコールストーブ チタンゴトクtrive Ti
アイテム画像
サイズ 外径120(内径110)×高さ61mm 外径125(内径120)×高さ13mm 径9.5×深さ5.8cm / 容量400ml 外径7.1(内径3.9)×高さ4.2cm 長さ81×高さ40mm 厚さ1mm
素材 チタニウム チタニウム チタニウム チタニウム チタニウム
重量 55g 22g 50g 34g 13g
メーカー価格  ¥2,400+税  ¥1,400+税  ¥1,800+税  ¥3,800+税  ¥1,200+税
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【バイプレイヤーズ】合計:62g

 アイテム名 Tiフーボー  mulTIdish NPクッカーケース570
アイテム画像
サイズ 40.5×5.0cm、組立時:H86mm 径12.4cm・径10.8cm(0.1mm厚) 外径104×高さ55mm 径12x6.5cm
素材 チタニウム チタニウム ネオプレン
重量 17g 13g 32g
メーカー価格 ¥4,500+税 ¥3,800+税 ¥1,800+税
BUY NOW 

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そして以上のセットに癖のある演技を加えたい時はこの二人を連れて行くといい。

メーカー名 SOL ユニテンシル
 アイテム名 ファイヤーライト オールインワンカトラリー
アイテム画像
重量 7g 5g
メーカー価格 ¥1,836+税 ¥800+税
BUY NOW 

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また、今あなたが持っている主役が渡辺謙じゃない場合(別メーカーのクッカー)は、対応力抜群の大杉漣さんに出演してもらえば優しい包容力で包み込んでくれるだろう。  ※スマホの人は横スクロールで見てね

アイテム名 NPクッカーケース500 NPクッカーケース570 NPクッカーケース#1 NPクッカーケース#2
アイテム画像
サイズ 径10x9cm 径12x6.5cm 径13x7cm 径14x8cm
素材 ネオプレン ネオプレン ネオプレン ネオプレン
重量 27g 32g 34g 43g
メーカー価格   ¥1,700+税  ¥1,800+税  ¥1,900+税  ¥2,000+税
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ちなみに僕の場合は、軽さと使い勝手のバランスを考慮して以下のセット。

以前から使ってる「チタンクッカー1セラミック」に「Ti570」「Tiフーボー」「FREVO R」「オールインワンカトラリー」「mulTIdish」をスタッキングして、「Ti570フタ」を被せ、大きめの「NPクッカーケース#02」でライターと固形燃料をねじり込む感じかな。

こんな感じで自分の用途に合わせて自由に組み合わせられるのがバイプレイヤーズたちの魅力。

さあ、あなたも自分だけの湯沸かしスタイルを確立してみよう。

エバニューの製品(特にチタンのもの)は職人さんの手作り少数生産なので常に在庫薄。

検討中の人は、売ってるの見かけたら速攻でゲットするべし!

 

Tiヨーボー(要望)

今回のバイプレーヤーズの活躍で、UL湯沸かしセットは一つの完成形に至った感がある。

しかし人類がウホウホ言ってた時代から脈々と受け継いで来たこの大河ドラマに終わりは存在しない。

ってことで今後の湯沸かしロマンへの期待を込めて、いくつか無理矢理にでも要望点を炙り出してみる。

 

まずアルコールストーブを使った時の最大の問題点はやっぱり「取っ手アツアツ問題」。

取っ手にゴムが付いててもやっぱり湯沸かし直後はチンチンだし(東海地区限定用語)、なんなら高確率でそのゴムは焦げてしまう。

なので結局ハンドルを持って行く事になったりするわけだが、これがやっぱり嵩張ってしまう。

このエバニューの「ハンドルショート」はかなり小さいんだが、Ti570の中にアルコールストーブと一緒だと綺麗にスタッキングできない。

って事でこれより薄型軽量のハンドルができたら最高(かなり難問)。

つい最近発表されたMSRのトレイルミニソロクックセットの付属ハンドルがアツそうだが、こいつがスタッキングできるかは謎だ。(ハンドルだけでは売ってないんだよねえ…)

メーカー名 MSR
 アイテム名 トレイルミニソロクックセット
アイテム画像
サイズ 鍋/10.5×11cm(0.75L)、ボウル/10.5×6.8cm、収納/12×11cm
アルミ
重量 182g
メーカー価格 ¥5,500+税
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もしこのハンドル問題が解決された暁には、やはりTi570+400FDの「取っ手なしバージョン」もしくは「気軽に取っ手を付けたり外せたりできるぜバージョン」が出るとさらに良い。

トレイルミニソロクックセットもそうだが、アウトドアクッカー界もティファールの鍋のように「取っ手いらない時代」が来る気がしてならない。

ちなみに取っ手の部分もゴムとかじゃなくて「カーボンフェルト(瞬間耐熱1300℃/連続使用温度250℃)」で巻けたりしたら、焦げたり熱かったりしないのでは?と素人は思ってしまう。

まあアルコールストーブ派の人はゴム取って、5cm角くらいのカーボンフェルトで掴んで持ち上げればいいだけのことだけどね。

ミニ香皿用程度のもん持って行くといいかもね。

 アイテム名 カーボンフェルト
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NPクッカーケース持っていってればカーボンフェルトも必要ないでしょう。

 

あと、NPクッカーケースのジッパーの持ち手部分がちょっと強度的に不安がある。

キツキツなものを入れた時は割と力を入れてしまうところなんで、「パキッ」って逝ってしまいそうで怖い。

 

あとできるできないは別として、勝手に要望を言う分にはタダなのでもう一つ。

Tiフーボーの「ウッドストーブバージョン」が出たら最強だと思う。

カルデラコーンのウッドストーブ版で「サイドワインダー Ti-Tri」なんてのがあるが、

引用:TrailDesigns

このような原理でTiフーボーの収納性の高さが生かされたらパーフェクトなウッドストーブになる気がする。

 

あと最後にもう一つ要望があるとすれば、最近僕の体重が増えてお腹がかさばって来たので軽量薄型の「Tiユーコン」を作って欲しい。

まあ…そればっかりは燕のチタン職人でもどうすることもできんだろうけど…。



まとめ

さあ、あなたはどんな脇役キャスティングで、どんな作品(湯沸かし)を作って行きますか?

いい作品にはいい名脇役あり。

たかが湯沸かし、されど湯沸かし。

湯沸かしを制するものはアカデミーを制す。

湯沸かしはロマンだ!

 

というかこんな地味なテーマで、実に13000文字も費やしてしまいました…。

高倉健さんが不器用すぎるので、ついつい語りすぎてしましましたね。

これ、最後までちゃんと読んでくれた人いるんでしょうか?

 

長文にお付き合いいただきありがとうございました。

それではまた、山でお会いしましょう。

湯沸かし愛が止まらないアウトドアギアレビュー界のバイプレイヤー。

ユーコンカワイがお送りいたしました。

お湯!