最近やたらシューズのグリップ力にうるさいBBG。そこで、「すべらねぇ子はいねが!?軽量なのにひたすらグリップの効くシューズはいねが!?」となまはげレベルのしつこさで探し当てたのが、多くのクライマーや山岳ガイドたちを虜にするファイブテンのアプローチシューズ「ガイドテニー」。その実力のほどを、クライマーでもないガイドでもない、ただの山好きおっさんがレッツテストなのである!

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FIVETEN(ファイブテン)「GuideTennie Mid Gore-Tex(ガイドテニーミッドGORE-TEX)」

選定において

BBGは悩んでいた。

これまで「グリップ力最高!」というメーカーの謳い文句を信じて数々の軽量系シューズを試して来たが、そのどれもが「ううむ…す…滑るんですけど….」と言ったものばかり。

唯一ビブラム社の「メガグリップ」を採用し、接地面積少な目のソールパターンを展開したホカオネオネのシューズだけは「おお!滑らねえ」ってなったけど、BBGはまだまだ貪欲にグリップ力を追求したかった。

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メガグリップを超える奴はいないか?

オリジナルラバー素材で高評価な奴はいないか?

 

そこでBBGは以下の基準で新たなシューズ探しの旅に出た。

  • ビブラム社以外のオリジナルラバーソールを使用
  • 世間的にも高いグリップ力だと高評価を得ているもの
  • アルプス登山想定でミッドカット&防水のもの
  • 岩稜帯でも歩きやすい硬いソールとしっかりしたアッパー
  • それでいて軽量なもの

 

で、ビブラムに対抗するオリジナル素材最後の牙城としてチョイスしたのが、ファイブテンの開発した「ステルスソール」

いろんな情報サイトや個人ブロガーの記事を見ると、「吸い付くようなフリクション!」「グリップ効きすぎて足首痛めちまいそうだぜ!」という絶賛の嵐。

そのステルスソールを採用し、長く不動の人気を誇っていたのが「ガイドテニー」というシューズ。

そしてそれのミッドカット&防水仕様だったのが、この「ガイドテニーミッドGORE-TEX」だったのである。

カテゴリーとしては「アプローチシューズ」になるわけだが、ミッドカットで防水仕様となったことで、より登山向きのアイテムとして発表されたもの。

ソールのグリップ力はもちろん、「アプローチシューズは積極的に登山で使用できるのか?」といったあたりも気になってたんでこいつを選んだのであります。

一般登山者というより、クライマーや岩稜帯をメインフィールドとする山岳ガイドに愛されるこのガイドテニー。

じゃあ、ただ山が好きなだけの歩き方も下手な普通の厄年おっさんが使っても快適なのか?ってあたりも合わせてしっかり見ていくとしよう。

 

仕様を見ていこう!

まず重量からだが、片足27.5cmで実測「485g」

同タイプのミッドカットのシューズとしてはなかなかの軽量さ。

軽量さはアプローチシューズとしての利点でもあるが、この軽さにして全体的に作りは堅牢な印象。

今までのファストハイク系のアッパーは、それこそトレランシューズの延長ってな感じのヤワさだったが、ガイドテニーは硬めでしっかりしている。

と言っても一般的登山靴よりは柔らかい感じ。

岩場での使用がメインなので、つま先のガードはかなり硬くしっかりしたもので、まさにクライミングシューズに近い感覚。

素材はヌバックレザーが使われており、非常に高級感のある仕上がりだ。

ステッチなどのデザインもやはりクライミングシューズっぽさが残り、形状としてはぼってりした印象があるが中々にカッコいい。

 

そして肝心のソールはというと、滑らねえと評判の「ステルスラバー」がデカデカと表記された、こんな感じのもの。

この独特なソールパターンを初めて見たときは、「いや、滑るでしょ?」って思わず突っ込んでしまったが実際はどうか?

一般的な登山靴のソールパターンに慣れてる身としては不安になってしまったが、こと岩場に関しては有効なパターンなのだろう。

ソールは比較的硬めである。

そして、つま先の方はフラットになっていて、まさにクライミングシューズのような形状。

元々が「アプローチシューズだけど、簡単なクライミングはこれで済んでしまう」っていう用途なんで、まさに岩稜帯が多い場所においては有効な仕様となっている。

 

キャンプ4との比較

ちなみに同社の製品で、ガイドテニーと同じく人気を博しているのが「キャンプ4」というシューズ。

ガイドテニーかキャンプ4かで猛烈に悩む人もいるだろうから(BBGがそうでした)、簡単に違いを説明しておきます。

こちらが「キャンプ4ミッドGORE-TEX」

デザイン的にはこっちのがシンプルで、よりハイク寄りなイメージ。

重量は実測「532g」と、ガイドテニーよりは47gほど重い。

ソールに関しては、ガイドテニーの「ステルスC4」に対し、

キャンプ4は「ステルスS1」が採用されていて、より溝が深くなってクライミングゾーン(つま先の固くフラットな部分)は少なめだ。

こちらもステルスラバーなんで当然グリップ力は良く、溝が深いから泥や砂利にも強い仕様となっている。

そして両者で大きく違ってくるのがソールの形状。

真横から見るとわかりやすいが、フラットな形状のガイドテニー(右)に比べて、キャンプ4はかなり反った形状(左)となっている。

この辺りが、よりハイク寄りを意識したキャンプ4と、クライミング寄りなガイドテニーとの大きな違いって感じ。

キャンプ4は足先の設置面積が大きく、形状的にも推進力をサポートして蹴り出し時にグリップ力を発揮。

一方、硬くフラットなガイドテニーは、つま先だけで体重を支えられるからやはり岩場で安心感が増す仕様。

そして両者は足型にも違いがある。

左がキャンプ4で右がガイドテニーだが、ガイドテニーの方が明らかに細めのワイズ設定。

これもやはりクライミングシューズの考えで、岩場をスムーズに登るためにタイトなフィット感が追求されているから。

この点で、ガイドテニーを選ぶ場合は試着必須。幅広な人は特に。

僕の場合は甲低・幅細め(ワイズE・ギリシャ型)の実測26.5cmで、普段は27か27.5cmを履いているが、27cmだとピッチリジャストで27.5cmだとやや余裕ありげだった。

岩場メインなら27cmだったが、長め行程のアルプス登山使用を考えて余裕のある27.5cmをチョイスした。

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一方でキャンプ4の方は広めのトゥーボックスで足先に余裕があり、やはりハイク向きな感がある。

一般登山者向きなのはキャンプ4な感じだったが、やっぱどうしても「そんなに支持されるガイドテニーってどんなもんなんだい?」ってのが知りたい人が多いと思い、今回はガイドテニーを選んだのである。







 

フィールドレビュー1:グリップ力

さあ、ではレッツ現場テスト!

今回は比較的岩場が多く距離も長めの「北ア唐松岳〜五竜岳縦走」と「高妻山」、そして「沢へのアプローチシューズとして」&「通常日帰り低山」の4シチュエーションでテストしてみた。

 

まずファーストインパクト。

「あ…あれれ…。す…滑るじゃないのよ….。」

一発目が砂礫帯からのスタートってのもあったんだが、どうも登り時に蹴り出しの足がズルッとなる事が何度か。

砂礫帯で滑らないシューズはそうそう無いもんだが、一緒に歩いてたアツシオガワのスポルティバTX4はそこまで滑ってなかった。

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これには2つの理由があると思うんだけど、まず1つは溝が浅いからこの手の砂礫地や泥地なんかはどう考えたってやっぱ不利。

そして2つ目はさっきの写真見て分かる通り、蹴り出す時に設置面が極端に少ないから砂礫地では踏ん張りも効かないのだ。

左:キャンプ4 右:ガイドテニー

特に僕は歩き方が下手で後方に蹴り出してしまう癖があるんで、どうしてもこのような砂礫帯だとズルッとなっちゃうんですね。

ただ砂礫帯以外の通常路でも、めちゃめちゃってわけじゃないけどそこそこ滑った…。

「グリップ効きすぎて足首痛めちまいそうだぜ!」なんて言うから過剰に期待してた分、「ううむ…そこまでのものは感じないぞ」ってのが感想。

「よっぽど僕の歩き方に問題があるのか?」「俺はツルツルの実の能力者なのか?」と思って自信喪失していたが、正直止まった状態で試してみても滑るんですよ。

ほら、こんな感じで。

これじゃあ歩き方うんぬんの話じゃ無い。

同じような岩でビブラム・メガグリップ使ってるTX4はしっかりグリップしていたし…。

正直「岩へのグリップ力」を相当期待してただけに、「またか…」と肩透かし感があったのは厳然たる事実。

ただ砂礫帯のあとだったんで、ラバー表面が細かい砂でコーティングされて極端にグリップ力が落ちていたとも考えられる。

それでも条件はTX4も一緒だったし、アルプスではこのようなシチュエーションは多いわけだから、やっぱちょっと滑るかなぁ。

とは言えよ。

やたらグリップにうるさいBBGが過度に期待したからそう感じるのであって、「吸い付くような」ってのは無いけど、一般的なシューズって意味では普通にグリップは高めであることには違いないんです。

アツシオガワも履いてみたが、「まあ確かに滑りますけどそこまで気になんないっすね。」ってのが彼の感想だ。

実際僕も岩稜帯に入ってからは、ソールの硬さも手伝って非常に快適に行動することができた。

全く滑らないってわけじゃないが、それなりに安心感がある。

高妻山では濡れた岩場の直登などが多かったけど、やっぱり岩場での安心感はあった(ここも決して滑らなかったわけではない)。

この日一緒に登っていた低血圧Mちゃんのソールはだいぶ減ってて、それこそガイドテニー並みに溝が薄い状態だったが、そんな彼女がツルンツルン滑る場面でも、

ガイドテニーはそれなりに踏ん張ってくれた。

それはイコール、このラバー自体のグリップ能力が高いってことの証明でもある。

 

沢へのアプローチで使用した際は、うっすら濡れた苔の生えるような岩ではやっぱそれなりに滑った。

これも「じゃあ通常のラバーだったら?」ってことになればもっと滑ってた場面。

ってことでそれらを総合すると、「それなりにはちゃんとグリップ力あるけど、過度な期待はしちゃダメよ。」ってのがBBGの結論だ。

使う状況や個人の力量の問題もあるが、やはり現時点ではビブラムのメガグリップ(ソールパターンにもよる)の牙城を崩すことはできなかったなぁ…。

 

フィールドレビュー2:フィット感&クッション性

グリップに関してはちょっと期待はずれの感はあったが、ことフィット感に関しては抜群に良かった。

細めの足型だからってのもあるが、ほんとクライミングシューズみたいに全体がぴっちりと足に沿って包み込んでるっていう感じがある。

狭い間隔でつま先付近までしっかり絞り込めれるシューレース部分が、このフィット感調整に一役買ってる感じがする。

そのおかげで岩場で安定感を感じるわけね。

しかも今回の4度のテストにおいて、足が痛くなったり靴擦れしたりなんて事は一度もなかった。

 

しかし痛くなる事はなくても「疲れる」って事はままあった。

そこはあくまでもアプローチシューズってのもあるし、クライミング寄りって事でクッション性もほとんどないからしょうがないところ。

長い距離歩くと、足裏全体が「疲れる」って感覚になってしまう。

高妻山で11時間歩いた後の図。

別に痛いわけじゃないんで歩行に大きな影響はないが、当然荷物が増えれば増えるほど、距離が長くなればなるほど疲れを感じるかもしれない。

クッション性を求めるのなら、やはりキャンプ4の方が多少有利だろう。

 

フィールドレビュー3:耐久性

お次は耐久性。

ファイブテンのシューズ自体は、決して耐久性のあるものが多いわけじゃない。

その辺は、「グリップ力最高!」って言ってるブロガーさんたちも口を揃えて言う部分。

実際に今回もまだ4回しか使ってないが、早くもトゥガード部分の端っこがめくれてきてしまっている。

ソールの減りに関しても、やはりちょっと早めな感じはする(グリップ力の高いラバーは減りも早いんです)。

ソール自体も剥がれやすいって言う声もあり、決して耐久性の高いシューズではない。

ちなみに1つ改善点を要求させてもらうとすると、ここに「STEALTH」の文字はいらない。

詰まった砂を除去する作業が大変なのでありますよ!(特にAの中)

これを登山後の疲れた時にちまちまと爪楊枝で掃除する、と言うなんとも地味なしんどさったらもう…。

 

まとめ

それでも山岳ガイドさんとかは、ガイドテニーを毎回指名買いするほど人気がある。

それはやはり岩場での適度なグリップ(強烈なとは書かない)と、硬さとフィット感のバランスの良さから来る安定感がそうさせているのだろう。

そしてやはり、そう長くないアプローチからのクライミングっていう使用においては、そちらに寄ったシューズであるだけに使い勝手は良いだろうと感じた。

色々書いたけど、総合的に「うん、シューズとしてはやっぱしっかりしてるよね」ってのがBBG二人の共通意見だ。

 

一方で「溝の深いソールパターン+つま先の接地部分に余裕あり+ゆったり目」っていう所で、キャンプ4の方のが一般的な登山での使用には向いていると感じた。

ファイブテン購入を検討されてる方は、自分がどっちのスタイルか見極めた上で選ぶと良いでしょう!

アイテム名 ガイドテニーミッドGORE-TEX キャンプ4ミッドGORE-TEX
アイテム画像
重量 実測485.5g(片足) 実測532g(片足)
アッパー ヌバックレザー CORDURA
ソール ステルスC4 ステルスS1
サイズ US6〜11(24〜29cm) US6〜11(24〜29cm)
価格 26,000円+税 26,000円+税
BUY NOW

 

って事で、今回もとんでもねーグリップ力には出会うとこはできなかった。

BBGによる、究極のグリップ力追求の旅路はまだまだ終わりそうにない。

そもそもこの世界、完璧なもんは無いからいつまでも答えが出ないのはわかってるんだけどね。

それでもこれからも貪欲にいろんなシューズ試していきます!

 

それではまた山でお会いしましょう。

歩き方が下手なくせにやたらグリップにうるさい男、

滑リスト・ユーコンカワイでした。