九死に一生スペシャル 後編〜浮かれた先にはマゾ来たる〜

魅惑の滝つぼで竿をしならせるユーコンカワイ。しかしこのトップ画像は、実はさも釣れてるように見せかけたただの根がかりの姿だったりする。しかも初日の写真を使ってるのは、この二日目にまともに写真を撮っていないからだ。
勝負の二日目、果たして彼は念願の「尺童貞卒業」を果たすのか?それともまさかの「人生卒業」まっしぐらなのか?本厄男に忍び寄る九死に一生スペシャル。その時は刻一刻と彼に迫りつつあったのである。



木曽川水系某谷 九死に一生マゾ釣行 2日目

第4章 渾身のシャクレ野郎

2017年9月28日。

事件当日。

 

勝負の二日目がやってきた。

この日は早朝には雨が止むという予報で、雨後の絶好の釣り日和。

なんせアマゴは「雨後(アマゴ)」っていうくらいで、雨の後は特に活性が良くなる。

昨日はめざしイワナ1匹&土砂降りスモーク地獄のユーコンさんだったが、本当の意味でのパラダイスは今日から始まると信じていた。

 

で、期待に胸を膨らませて朝起きてみると、

バシャ降りじゃねえか!

 

早朝には雨上がるんじゃなかったのかい?

これじゃ雨後(アマゴ)じゃなくて雨中(アマチュウ)じゃないか。

イワナ&アマゴが釣りたいだけであって、別にポケモンの新種をゲットしにきたわけじゃないのに。

 

本来なら「雨後の朝まずめ」というゴールデンタイムになるはずが、仕方なく虚しくコーヒー飲んで凌ぐ二人。

そこからは雨漏りタープの下で長い長い避難生活を余儀なくされた。

多少の雨なら釣りする気も起きるけど、さすがにバシャ降りじゃあやる気が起きない。

天気予報通りの天候回復を祈ってそこから長時間、我慢の時間が続いた。

はるばる桃源郷まで来て、ひたすら狭いタープ内で暇を持て余す厄年のおっさん二人。

で、結局我慢ならんくなって、バシャ降りの中で釣りスタート。

幸い昨日からの雨でも大した増水もしてない。

しかしここで二人は気づくべきだったのだ。

「増水してない」ではなく、「なぜ増水していなかったのか」ということに。

 

ひとまずユーコンさんは昨日同様、一度下流の方にガッツリ下ってから釣り上がるスタイルをとった。

今日は時間があるからと、昨日よりさらに下流に下ってロングに釣り上がり、大量のイワナと尺イワナのダブルゲットを目論んだ。

 

そして釣りを開始してから1時間。

多少雨が落ち着いて来た時点で、まさに「雨後のアマゴ」が姿を現し始めたのだ。

慎重に魚影に忍び寄り、その鼻先に毛ばりを落とすユーコンさん。

するとついにその時が!

しゃ..しゃ..しゃ..シャクれてるゥッ!

シャクレアマゴさんだ!

昨日のめざしイワナとは明らかに違うこのずっしり感。

残念ながらサイズの方は「26cm」と尺れてはなかったが、それでも満足感は半端ない。

クワッとした顔で「やめてくれー!」と嫌がるアマゴさんに、無理やりキッスを…

でも、尺じゃないからお預けほっぺチュー。

この時のユーコンさんは「浮かれの頂点」だった。

しかもいよいよ雨も上がり、昨日あれほど見えなかった魚影も出て来て、まさに「よし!ここからだ!」という一番コーフンする時間帯に突入。

昨日の負けを取り戻すビッグチャンス到来!

尺を釣るのも時間の問題だ!

 

この浮かれが全ての引き金となった。

ユーコンカワイお得意の「浮かれた後にはマゾきたる」

雨の後にアマゴの活性が上がるように、浮かれた後にはユーコンさんのマゾ活性もグンと上昇する。

このアマゴとほっぺチュウした瞬間、そのはるか上流の方で「その弾丸」はまさに発射されたのである。

 

第5章 生き残れ!

すっかり浮かれたユーコンさんは、比較的大きめな淵で戦っていた。

目の前には明らかに「尺オーバー」と思われる魚影が周回している。

まさにその尺物とユーコンさんの一騎打ち。

もう夢の尺童貞卒業まで、時間の問題だ。

 

その時である。

さっきまで周回してた魚影が急に姿を消した。

そして小滝の上からなんだか妙に「葉っぱ」が流れてくる。

で、その数秒後には、さっきまでグリーンで透明だった淵が、徐々にクリーム色に。

さらには妙に泡立って来た。

この間わずか10秒ほど。

 

「あれ?なんか変だぞ」と思った瞬間、一瞬で景色が変わった!

本当に一瞬だった。

さっきまで穏やかななちょろちょろ清流だったのが、突然ものすごい水流と水量の濁流と化したのである!

「鉄砲水だ!」

 

一気に血の気が引くユーコンさん。

たったの数十秒で、パラダイスだった桃源郷は一気に地獄絵図と化した。

大慌てで竿をしまい、必死の形相で上流の野営地を目指すユーコンさん。

しかしこの場所に来るまで、途中で3度「渡渉ポイント」があったんだが、もちろん簡単に対岸に渡れたその区間は濁流の中に埋没。

 

まさに絶望だった。

一瞬でこの沢に閉じ込められてしまったユーコンさん。

両側は切り立った崖で、逃げ場は一切存在しない。

救いだったのが大量の流木を含む土石流じゃなかったこと。

おそらく自然決壊というより、上流にある取水堰から溢れ出た水が一気に流れ出たものと思われる。

 

なんとか巻き気味に上流を目指すユーコンさん。

しかしどうしても渡渉しなくては進めない1個目の渡渉ポイントに差し掛かる。

来る時はほとんど水がなかったところだが、今はものすごい勢いだ。

写真では迫力が伝わりにくいが、現場は大轟音だ。

無理すれば渡れなくはなさそうだが、このすごい水圧に耐えれるのか?

少しでも足を持って行かれたらそのままこの濁流に飲み込まれてしまう。

「水が引くまでビバークするべきか、それとも行くべきか…」

 

長年の川経験をもとに何度も頭の中でシュミレーションをし、なんとか川の中の石の配列の中に行けそうなルートを見出す。

そして意を決して一歩一歩、岩下のわずかなエディをキャッチしながら必死の渡渉。

やがて喉をカラカラにしながらなんとか渡りきったが、もう生きた心地はしなかった。

 

そして次は2つ目の渡渉ポイントへ。

もう写真すら撮ってないが、完全にそこは「渡渉アウト」の状態だった。

この時の絶望感ったらもう…。

 

辺りを見渡すと、かろうじて10mくらいの崖の上に「空」が見えた。

「多分あそこは尾根になってる。あそこまで行ければ高巻けるかもしれない!」

 

尾根までは70度くらいの脆い土の超急斜面。

一手一手木の根っこなどの確実なホールドを探しつつ、足で土を蹴り掘ってステップを刻む。

しかし当然腐った木が多く、ルート取りは困難を極めた。

万一掴んだ木がポッキリ行った日には落ちてしまう。

しかも尾根まで行ける保証はないし、行ったとしても降りれる保証もない。

 

でも行くしかない。

こういう時、人は本当に火事場のくそ力が発動される。

フンガフンガと登りきり、なんとか尾根上に到達。

そしてそこから野営地のブルーシートを発見!

あと少しだ!

ユーコンさんはまずは自分の無事を伝えるべく「うおおおおおおオイィィィッッッッ!!ジャンダラすぁーーん!」と大絶叫。

しかし轟音にかき消され、その声は全く届かない。

ちなみに後に野営地から撮った写真でいうと、ユーコンさんは今ここにいる。

脱出箇所は野営地横の一箇所のみ。

まずはここから崖を降り、最後の渡渉を経て野営地へと生還するのだ。

 

そしてここからの下降がまたハードだった。

登り同様70度くらいの斜度で、地面もかなり脆い。

こういうの、写真で伝わらないのよね…

しかし比較的要所要所に頑丈な木が確認でき、ユーコンさんは木から木に飛び降りるような形でなんとかこの下降を成功させた。

あと少しだ!生き残れ、ユーコンさん!

不安と戦ってる最中の顔って本当に顔色が青ざめてるのね。

やがて野営地の対岸まで到達。

ジャンダラKさんもユーコンさんの無事を確認してホッと安堵の表情。

しかし最後の渡渉ポイントも、「とてもじゃないけど無理です」ってな状況に様変わりしていた。

それでもなんとか渡らないと脱出できない。

こんなに近いのにお互いの声が聞こえないから、二人はジェスチャーでやり取りをする。

そしてジャンダラKさんは長めのお助けロープの先端に石をくくりつけ、対岸へスロー。

それを受け取ったユーコンさんは、ロープで体を固定し、意を決して濁流へとジャンプ!

 

着水するなり、すごい水圧で下流へ流されるユーコンさん。

しかしジャンダラさんがしっかりロープを固定して、なんとか対岸へと渡り切ることに成功!

そしてジャンダラさんの手につかまり、「ファイトー!」「イップァーッッツ!!」と引き上げられた。

 

そしてついにユーコンさん生還!

最終的にはずぶ濡れボロボロの状態で見事なるフィニッシュ。

たった一度の「浮かれ」が、とんでもない大スペクタルマゾを生んでしまった。

 

ウキウキ気分で「尺童貞卒業だ!」とやってきた沢で、まさかの「鉄砲水童貞卒業」

一番気をつけてる事ではあったが、いざ目の当たりにすると相当な恐怖だった…。

 

もう今後は少しでも雨予報になってる沢には入らない。

雨が降った後でも水かさが増してなければ即座に撤収。

ベースキャンプがあっても、釣りに行くときは1日はビバークできる用意をする。

そう心に強く誓ったユーコンさんなのでした。







 

第6章 脱出!

もう尺イワナとかどうでもい。

さっさとこの沢から脱出しなくてはならない。

両側が崖ってことは、黒部渓谷同様さらに水かさが増す可能性がある。

ユーコンさんは、もうずぶ濡れのテントもシュラフもそのまま雑にバックパックの中に押し込み、さっさと撤収準備。

そして雨で重量アップした荷物を背負って、一気にこの世界からの脱出を図る。

途中、朝の時点で優雅に釣りをしてた滝を見る。

朝出発する時は、滝はこのくらいの感じだった↓

それが今やこうである。

 

風光明媚な滝だったが、今や荒くれたナイアガラ状態。

もう釣りどころではない。

とにかく逃げろ!

脱出だ!

昨日散々苦労して下降してきたところを、今度は重量アップの荷物抱えての根性クライムアップ。

ガレ場の落石にも注意しながら、

雨のせいで土が脆くて歩きにくい。

なんだか身に覚えのない怪我とか打撲とかも多数あるが、もう痛みすら感じない。

とにかく上へ上へ!

娑婆の光はすぐそこだ!

そして最後の超急登を登りつめ、ついに林道へゴール!!

脱出成功!!

精魂尽き果てたドブネズミ。

なんとか生き残った。

まさに九死に一生スペシャルだった。

 

ただ「尺が釣りたい」という純粋な気持ちしかなかったユーコンさん。

本厄のくせに家でおとなしくしてないとこういうことになるのである。

とはいえ、今回は「運が悪かった」ってとこもあるけど、むしろ「運が良かった」と考えたほうがいいだろう。

鉄砲水が土石流だったら…

最初の渡渉が無理だったら…

あの高巻きルートがなかったら…

ロープがなかったら…

 

よくわからないが、とりあえずツイていたってことにしておこう。

ってことで生還後の記念写真です。

今回のパートナーが経験豊富なジャンダラKさんで良かった。

とは思うものの、よく考えたら彼と泊まりで出かける時は毎度ひどい目に遭っている。

冬に御池岳行った時は、猛吹雪&ホワイトアウトだったし…

こんな「持ってる人同士」が、本厄の状態で沢に来たらそりゃ鉄砲水ですわ…。

 

まあいいさ。

奇跡の生還を果たし、ジャンダラKさんとも別れた僕はそのまま温泉に向かった。

ここまでビチョビチョのボロボロともなれば、温泉は生き返るのに最高のご褒美だ。

いつもこういう時は休館日だったりするが、ちゃーんと一つだけ通年営業の温泉があるのを確認済み。

 

で、わざわざ遠回りしてそこに行くと…

今日…一番死ぬかと思ったぜ。

よくよく見ると、どうやら年にたったの6日だけ休館になるらしく、私は見事にこの最高に体が冷え切った状態でその6/365にぶち当たったのである。

もう踏んだり蹴ったりが多すぎて涙すら出やしない。

 

そして冷えた体を車の暖房で暖めながら風呂にも入れず帰路につく。

ガタガタと震えながら運転する私の頭上には、今朝までのバシャ降りが嘘のような青空が広がっていた。

もはや

何も言うまい。

 

こうしてユーコンさんの今シーズン最後の源流釣行は終了した。

「大量のアマゴが詰まった浴槽に入って両脇に尺イワナ嬢をはべらす」という妄想とは遠く遠くかけ離れた旅だった。

尺までの道のりはなんて過酷なのだろうか。

これでまた来年、卒業できないまま4年目の童貞シーズンを迎えることになった。

しかも鉄砲水のせいですっかり忘れがちだが、結局彼がこの二日間この桃源郷で釣ったのはわずか「2匹」

やればやるほど釣れなくなってるばかりか、釣り以外のことに巻き込まれてしまうというマゾさ。

もう、向いてないんだろうか…。

 

それではみなさん。

沢での急な増水には十分気をつけましょうね。

また来シーズン、沢でお会いしましょう。

チェリーカワイでした。

 

 

2 件のコメント

  • いつも楽しく読ませてもらっています。

    「第5章 生き残れ!」のタイトルだけで、その後の怒濤の展開を予想してしまい、失礼ながら爆笑してしまいました。

    そして最後に温泉に立ち寄るという展開に、これはもしや…と期待していたら、でた!やっぱり休館日!もはや職人芸の域です。

    では、これからも楽しくてためになる記事をよろしくお願いいたします。

    • kaichiさん、いつも読んでいただきありがとうございます!
      そうですよね、普通ただの釣行記で「生き残れ!」なんてタイトルつきませんから。ガンダムじゃないんだから。
      どうも数奇な運命というか、運が悪いのか運が良いのか、毎度映画のようにスペクタクルな展開に巻き込まれて楽しい人生でございます。
      もう最近では温泉がちゃんとやってると宝くじにでも当たった気分になりますよ。
      これでも毎度ちゃんと営業してるかスマホで調べてから行ってるんですよね…
      だいたい休館日のパターンと改装中のパターンと臨時休業のパターンと廃館ってパターンのローテーションです。
      さすがにこの日だけは入りたかった…。

      今後もためになる記事と全くためにならない本厄野郎の数奇な人生をお楽しみください!

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    ユーコンカワイ

    低体温・低血圧・低収入というギアレビューにもってこいの人体サンプル。いつも顔色は土色だったり汗冷えのスペシャリストだったりするが、今日も持ち前のマゾん気を武器に山に川にと出没する。 素材がどうとかの専門的な事より、フィーリングやロマン重視のあまり役に立たないギアレビューを得意とする男である。