奈良吉野の奥地に「前鬼(ぜんき)ブルー」と呼ばれる超清流が存在する。そこは古くから修験者たちの清めの場として崇められてきた聖地でもあり、技術的に難しい箇所も少ないことから沢登り経験の浅い者たちの修行の場としても愛されてきた名渓だ。そこで今回BBGの二人は、沢経験値アップと汚れきってしまった心身の浄化のためその前鬼ブルーへと挑戦した。いざ、エクストラコールドな前編である!

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前鬼川本谷(孔雀又谷)沢登り 前半戦

いざ!前鬼ブルーへ!

奥深い吉野の山中。

日本の滝百選に数えられる、壮大な七段の滝「不動七重滝」のさらに奥地に…

くたびれた中年アトムが着地した。

100万馬力だったあの頃の面影はなく、自慢の鉄腕も四十肩になってしまって欠陥だらけのぷよぷよロボット。

とてもこれからハードな沢登りなんてできそうにない雰囲気だが、それでも心だけは少年のままの彼は「前鬼ブルーと戯れたいんだ!」とやる気満々。

そしてこの人相の悪い黒ひげ科学者を相棒にして、

いざ、冒険の世界へと出発!

修験道の聖地らしく、のっけからパァァァっと朝日が差し込む荘厳な世界観。

山での縦走中では一切陽の光を浴びることなく、日頃家庭内でも全くスポットライトが当たらないアトムはすでに感動に打ち震えている。

しかし慣れない光に目をやられたのか。

アトムはスタートからわずか3分で大転倒をかまし、岩で猛烈に弁慶を強打。

相変わらず余計なセルフマゾ仕込みに余念のないアトムは、あまりのその痛さに「俺はもうダメかもしれない」と早くも正念場に突入。

これ以降、彼は最後までこの弁慶の痛みとともにこの前鬼川を戦い抜くこととなる。

 

痛みに耐え、最初の支沢を下降してやがて前鬼川本谷に合流すると、沢の水は一気にスーパースケスケ状態に。

日本各地のズルムケ清流を見てきたアトムも、「こりゃスケるにもほどがあるぜ!」と絶賛の嵐。

ヘドロのような心を持つ悪の黒ひげ科学者も、この汚れなき世界にはただただ感動。

今回が本格的な沢登り初体験となる彼だが、いきなりこんないいもん見ちゃったら今後他の沢で満足することはできないだろう。

それはある意味、童貞野郎がいきなり峰不二子を抱いてしまったようなもので、今後彼はちょっとした美人にも一切反応できなくなること請け合いだ。

そんなビューティー前鬼をさらに進んでいくと、

とうとう黒ひげ科学者のコーフンはマックスになって、彼は突如「アラーキー・オガワ」へと変貌し、

写真は魂のデッサンだぁぁ!っと叫んで不二子ちゃんに突っ込んでいった。

美しい沢は、どんな悪の科学者でも即座にピュアな少年に戻してしまう。

しかしここはまだまだ序の口だった。

さらに進んでいくと、ついに「前鬼ブルー」がその本領を発揮し始めたのである!

いよいよその青さは冗談レベルへ。

これにはたまらずシンクロナイズドアラーキーと化す黒ひげ科学者。

しかし水はミネラルウォーターのように美しいが、その冷たさは氷水レベルのエクストラコールド。

アトムは「やばい、心臓がキュッってなった。俺はもうダメかもしれない。」と言いながらも、マゾなので自然と笑みがこぼれてしまう。

そんな中、微妙なスライダーがあったので、寒さに震えながらも果敢にアタックするアトム。

 

もはや冷たすぎて「痛い」という世界。

美しいバラには棘があるのと同様、キレイすぎる沢には信じられないほどのクールさが備わっている。

さすがは峰不二子である。

 

蒼き滝つぼとナメ床パラダイス

その後も前鬼の深部へと足を進めていくアトム&アラーキー。

やがてこのルートの見どころスポット「2段10m滝」と、その美しすぎる滝つぼが登場。(後で滝の上から撮った写真↓)

そりゃあもう尋常じゃないほどの透明度。

水中からはこんなスッケスケ状態で、

滝つぼ中の青さったらもう…

そしてその冷たさったらもう…

外は暑いから泳ぎまくりたいんだが、正直1分が限界だ。

そしてこの滝の左岸を直登気味に高巻いて行き、

そこを乗り越えたら、滝頭を対岸へと飛び移るという恐怖スポットの連続。

ここで滑ったら、もれなくそのまま10mの滝を真っ逆さまにパワーボムだ。

アトムは終始「俺はもうダメかもしれない。今後のBBGはアツシ君に託した。」と弱音を吐き続けたが、なんとか慎重にその難所を突破。

すると頑張ったアトムたちの前にはご褒美が。

それがこの嘘みたいな、広くて長くてキレイな「ナメ床パラダイス」なのである。

何気に初ナメ床の二人は、この前鬼川のあまりの床上手さにただただ脱帽するばかり。

もちろん穏やかな区間が終わればハードアタックも待っているが、

そこからはしばしナメ滝などが続いてひたすら二人を癒してくる前鬼川。

二人は「チクショウ!散々ナメまくりやがって!」と言いながらも、自然と笑顔がこぼれてしまう。

美しき峰不二子(淵)と癒しのなめ猫(ナメ床)が次々と乱舞する前鬼川前半戦。

二人はすっかりこの沢に魅了されて行ったのである。







 

清めのコリトリバ

これでもかと続く峰不二子の波状攻撃。

滝つぼの下に現れる「前鬼サイダー」に包まれ、至福の遡上が続いて行く。

ほんと、三ツ矢サイダーの中に飛び込んでしまったかのような気分。

そのあまりの爽やかさに、思わず鼻毛も爽やかに飛び出てしまうほどだ。

そんな巻き気味の鼻毛を携えながら、高巻きをして行くと、

湧水の元になっている、三重(みがさね)の滝の落ち口へと到達。

そりゃあもう幻想感が溢れまくり、まるでディズニーランドのような作り物のような世界。

その造形は嘘くさいほど神秘的で、多くの滝が織りなす霧が陽光に照らされ、そりゃあもう美しいの美しくねえのってあんた。

今にも映画アバターのあの青い人たちが大量に出てきそうな雰囲気。

とは言え絶景に浮かれてばかりはいられない。

ここは汚れた心を清める聖地であり、また修行の場でもある。

最近記事が下品だとお叱りを受けたアトムは、「お下劣ですんませんしたぁ!」と自ら滝行へと突入して汚れた心を浄化して行く。

湧き水による氷水滝行によって彼の煩悩はギャバン並みのスピードで拭い去られ、滝行が終わる頃には彼のイチモツはうずらの卵サイズに。(結局下品)

そしてついに前半戦の最終地点「垢離取場(こりとりば)」に到達!

ここは修験者たちが首まで浸かって心身の浄化を祈るという神聖な場所。

「垢離(こり)」とは「身についた罪・穢(けが)れ」のことで、あの悪徳金融業者のような黒ひげの垢離(こり)もみるみる剥がれて行き、

水から上がる頃にはご覧のすがすがしい表情。

それはもはや「きれいなジャイアン」以来の爽やかビフォーアフター。

あの1ヶ月前の前科50犯だった頃の面影はもはや存在しないのである。

おそるべし、垢離取場(こりとりば)の威力。

鬼畜ヒカルだった彼も、すっかり人間の心を取り戻したのである。

 

こうして前半戦でバッチリ身を清めることに成功したアトムとアラーキー。

本来であれば多くの人がこの垢離取場(こりとりば)で、遡行を打ち切って引き返して帰って行く。

しかし彼らはさらなる肉体と精神の浄化を図るべく、その先の修行の場へと突入して行った。

 

しかしそこで彼らを待ち受けていたのは「後悔」と「修行」のわんこそば。

吉野の山中に「ファイトァッー!」「イップァーッツッッ!」という男たちの奇声がこだまする。

血で血を洗い、前鬼ブルーを赤き血で染め上げる肉弾戦。

前鬼の修行はまだまだ始まったばかりなのである。

 

 

後編「アトム&アラーキーの青鬼男塾」へ  〜続く〜