今、“最も危険な遊び”と恐れられるセルフSMプレイがあることをご存知だろうか?その名も「一人ノンフィクション」。それは無駄と徒労と虚脱感を全力で楽しめる者だけに許されたデスゾーン。BBGが提案する新たなる登山の楽しみ方。さあ!今こそみんなも張り切ってレッツ・ロンリー動画遊戯!──今年の夏は孤独がアツい!

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藤原岳-御池岳ロンリーミステリー

ここに一つの動画がある。

製作者の名はユーコンカワイ。

彼はこの動画を撮った後、謎の衰弱死を遂げている。

彼はこの動画で一体何を世に伝えたかったのか?

そして何がしたかったのか?

今となってはわからない。

 

ただ一つわかっていること。

それはこの動画を、彼は全て「一人で撮影している」ということ。

これは真実に基づいた実話ムービー。

その孤独な背景を頭の片隅に置いた状態で、覚悟してご覧いただきたい。

※スマホの人はsafariやcromeなどのブラウザ上で(アプリじゃなくて)YouTube画面右上の設定をPCモードに切り替えてから視聴(https://youtu.be/fTsJvoD-OIM)してください。

 

彼はなぜ一人でこのような悲しい自傷行為に及んでしまったのか?

何気にこの藤原岳〜御池岳コースは通常約8時間のコース。

普通に歩くだけでそこそこしんどいのに、なぜ途中で無駄にジャンプとかマイケルとかしてるのだろうか?

彼が残したメイキング映像とともに、彼の死の謎を紐解いていこうと思う。

 

プロローグ. そもそもの動機は?

生前の彼が残したスケジュール表を見ると、もともと彼はこんなことをする予定ではなかったようだ。

本来なら彼はこの日、「王様」として北岳を登っているはずだった。

BBG読者は記憶に新しいだろうが、実はこの日があの「北岳ダイエット王タイトルマッチ」のご褒美登山の日だったのである。

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3ヶ月に及ぶ過酷なダイエットを耐え抜き、見事-6.4キロという減量を達成して「初代BBGダイエット王」の称号を手にした彼。

これによって敗者のアツシオガワが二人分の荷物を3,000mまで担ぎ上げ、ダイエット王のユーコンは悠々と軽装で鼻歌登山をするはずだったのだ。

 

しかしその北岳に向かう途中。

出口まで後少しっていう中央道駒ヶ根IC付近で、まさかの事故渋滞に巻き込まれる二人。

我々のわずか数台先のトラックが中央分離帯に乗り上げ、見事なまでに2車線を完全閉鎖。

そっから2時間が経って日が昇っても車は微動だにせず、奴隷になる予定のアツシオガワも呆然と立ち尽くす。

ついには3時間経ってもピクリとも動かせてはくれない中央道。

ただただ途方にくれる「王になる予定だった男」。

所詮本厄男が王になって鼻歌登山しようなんざ分不相応だったのである。

 

結局通行止めが解除された頃には、広河原行きのバスに完全に間に合わなくなり「北岳延期」が決定された。

こうしてダイエット王は、中央道の景色を3時間半たっぷり楽しんだだけで帰って行った。

もちろんこの日が燦々と晴れていたことは言うまでもない。

 

でも今回の登山でどうしてもテストしなきゃならんアイテムがあったから、結局ダイエット王だけが翌日一人寂しく近所の山に行くことに。

で、ただ普通にテストだけで登ってもつまらない、っていう軽い思いつきだでこの動画を撮るに至ったのである。

のちに散々後悔することになるとも知らずに。

 

それではそんな「王になり損ねた男」の、切なすぎる撮影の模様をじっくり見ていこう。

 

メイキング1. ストリートファイター編

今回は鈴鹿山脈の藤原岳〜御池岳までの縦走コース。

本来ならこの時間帯は北岳の山頂で優雅にご来光を眺めているはずの王だったが、ジメジメと蒸し暑い低山にてスタンバイ。

それではまず、ここから藤原岳山頂までの彼のメイキング映像を見ていこう。

これからいくつかに分けてメイキングを流して行くが、基本的にハンカチ無しでは直視できない切ない映像が続きます。

「ああ、これを一人でやってんだ…」っていう暖かい目で見てあげてください。

かわいそうとか思ってはダメです。

思いつきで始めてしまった「竜巻旋風脚」が、思いのほか彼の体力を奪って行った模様。

そして「昇竜拳」を四十肩持ちの右腕でやってしまったことにより、猛烈に肩を痛めている。

この時点で彼はこの企画を始めてしまったことにかなり後悔しています。

しかも何気にこんな時期に生足で突入して行ったことで、途中で3匹のヒルに血を吸われていたりします。

 

しかもである。

この日は天気予報で晴れマークが踊っていたからわざわざ鈴鹿に来たのに、彼の眼前は一筋の光すら存在しないホワイトワールド。

ボールドもびっくりの驚きの白さ。

後悔とともに目から流れ出るものを堪えるので精一杯。

不意に「俺は一体何をしているんだ…」という疑念が湧いてしまう厳しい時間帯。

北岳にさえ行けていれば…

しかしこの男にとって、後悔も白い世界もある意味いつも通りのベストコンディション。

オープニングからかなり痛々しいが、昇竜拳から先の彼の世界もしっかりと見ていこう。

 

メイキング2. マイケル・ジャクソン編

藤原〜御池の縦走路前半は、動画でどれだけの人に伝わったか不明だが、一応彼はマイケルジャクソンになっている。

それは「ムーンウォーク→斜め45度→スリラー」のマイケル三本立て。

のちに自分でこの動画を見た本人は、自分が思っていた以上にクオリティが低くて凹んだという。

それではそんな彼のマイケルっぷりを見ていこう。

周りに人がいないから良かったが、もし近くに猟師がいたら即座に撃ち殺されてる可能性大だ。

しかも本人は完全にうろ覚えでやってるため、全然スリラーのダンスと違う動きに。

どっちかというとキョンシー状態になってて収拾がつかなくなっている。

やってる本人は大真面目なんだが、正直この時点で体力の半分程度が持って行かれた模様。

前半の竜巻旋風脚と昇竜拳が確実に尾を引いてる。

それでも彼は愚直に前に進んで行くのである。

 

メイキング3. MCコマネチマン編

天候は一切回復の兆しを見せないばかりか、もはやホワイトアウトか?ってくらいに先が見えなくなって行く。

稜線上の鉄塔に至っては何やら巨大な生き物のように見え、まるでモンスターハンターの一コマのような状況に。

リアルにエスケープルートからの撤退が頭をよぎったが、それでも歯を食いしばって演技を続行する。

王たるもの、そうやすやすと諦めてはいけない。

やるとなったら最後までやり抜く。

ここで彼は己に喝を入れるため、あえて全身運動三段活用の「MCハマー→ランニングマン→コマネチ」というアクティブな試練へと突入して行ったのである。

御池岳頂上では、いよいよ足元がヨロヨロになって来ている。

そもそも本編上で、あれがMCハマーのダンスだったんだと気づいた人が何人いるだろうか?

ランニングマンも思い出すまでに時間がかかっており、最初の方はほとんどウサイン・ボルトだ。

しかし悪いことばかりではない。

「コマネチの森」ではこの山特有の苔が美しく、晴れた日では味わえないこの荘厳なる雰囲気。

こんなもののけ姫的な美しい世界で、平日の昼間に一人でコマネチし続けるという新手のもののけ感。

知らない人が見たら、タタリ神に変貌してしまった山神に見えたことだろう。







 

メイキング4. 土俵入り&阿波踊り編

御池岳山頂から少し行ったところに「ボタンブチ」という展望抜群の場所がある。

しかしもちろん本厄クソ野郎がそんなご褒美にありつけるはずもなく、そこにはただただ絶望という展望が広がるのみ。

何度も言うが、本日の天気予報は「晴れ」である。

 

そんな御池山頂からボタンブチまでの「土俵入り」、そして「昼飯イッキ喰い→阿波踊り→ジャンパー」という関連性ゼロの戦いの模様を見ていこう。

もう最後の方は終了間際のAV男優のように「ウッ」「クッッ」と声が漏れてしまっている。

それほどこのジャンプは疲弊した体には相当きつい作業。

土俵入りの行為も含めて、これらがのちに甚大な全身筋肉痛の原因へと繋がって行くのである。

 

メイキング5. うつ伏せ前進&土下座編

そろそろ体力的に彼の限界が近い。

ほぼ休むことなく、もうすでに6時間も孤独な一人ノンフィクションが続けられている。

ジャッキーじゃあるまいし、正直本厄を迎えた中年にこれ以上の撮影は困難だ。

そもそも子持ちの立派な大人がやるような事じゃない。

 

しかし彼は老体に鞭を打ってその撮影をやめようとしない。

ここから先は己との戦い。

「くるくるジャンパー→股間強打→うつ伏せ前進→土下座」で一気にクライマックスだ。

変態度の高い股間強打の一幕からの、自衛隊の訓練並みのうつ伏せ前進。

おそらく彼はここで残りのパワーを全て使い果たしたと思われる。

しかしそこからは、最後まで取っておいた彼の十八番「土下座」が炸裂。

普段から「嫁に土下座させたら右に出る者なし」と謳われるだけあって、その所作は実に美しい。

 

こうして彼はこの過酷な撮影を乗り切った。かに思われた。

すでに虫の息の彼だったが、そこはさすがプロマゾヒスト。

ここから最後の追いマゾを発動し、肉体破壊の総仕上げなのである。

 

メイキング6. マトリックスジャンプ編

映画マトリックスのあの印象的なシーン。

ジャンプした人を中心に、ドゥワーっと画面が回転するあれ。

本来なら何台ものカメラを演者の周りに配置して撮影するもの。

しかしどうしてもそれをやりたくなった彼は、一人で、そして一台のカメラで撮影する画期的な方法を編み出した。

それが「セルフストップモーション撮影法」と呼ばれる彼独自の手法だ。

8時間マゾリ続けてきた果てに行うには少々ハードな撮影法。

全く必要のないシーンだったが、毒を食らわば皿まで精神が彼を突き動かしたのである。

 

エピローグ. そしていつもの世界へ

下山した彼がスタート地点目指して自転車に乗って行くと、空は「待ってました」とばかりに大快晴に包まれた。

毎度おなじみの下山後の光景。

さっきまでの真っ白な世界が同じ日の出来事とは思えない。

今更予報通りに晴れたところでもう絶景など出てこないし、むしろ自転車移動が灼熱で苦しいだけである。

 

しかし彼は負けずに呟く。

「どんなに辛い事があっても、どんなに体が疲れてても、どんなに理不尽な目に遭おうとも構わない。最後に気持ち良い温泉に入れれば、全てを洗い流せるのである。」と。

8時間白い世界でマゾり続けてきた戦士には、温泉は何よりのご褒美だ。

彼は最後の力振り絞り、この周辺に一つしかない温泉までたどり着いた。

するといつものように「赤い文字」が目に飛び込んできてしまう。

その瞬間、彼は「フッ」と静かに微笑んだかと思うと、その場で膝をついた。

そしてこの辺りから彼に謎の「耳痛」が襲いかかる。

彼はそのまま温泉ではなく、耳鼻科へと病院送りとなった。

中耳炎と外耳炎を併発していたのである。

 

北岳でダイエット王として君臨するはずだった男の、結局いつも通りの末路。

所詮その身に染み付いた奴隷気質は簡単には拭えない。

ボロボロになって帰宅した彼は、そのまま泥のように眠り、そしてもう2度と目覚めることはなかったのである。

信じられないほど全身が筋肉痛だったという。

これが彼の「過度な過労による衰弱死ミステリー」の顛末だ。

 

あまりにも危険な遊び「一人ノンフィクション」。

残るのは後悔と疲労と虚しさのみ。

それでもあなたも是非この危険な遊戯にトライしてみてほしい。

何か嫌なことがあった時や、人生に絶望した時がおすすめだ。

色んな事がどうでもよくなることでしょう。

 

さあ、今年の夏は孤独がアツい!

自分と向き合う夏にしよう!

 

おまけ

実は以前にもこの御池岳で、一人ノンフィクションやったことあったりします。

その時の動画と記事もおまけで載せておくんで、おヒマな人や、哀しい人を眺めて元気になりたい人は併せてご覧くださいませ。

※こちらもスマホの人はPCモードにてご覧ください。

「デキる男のビジネス新書〜必殺仕事人のスマートな一日〜」

 

それではまたお会いしましょう。

これやってる時に山で出会っても通報しないでください。

ユーコンカワイでした。