雨に唄えば〜ティートンブロス「ブレスジャケット」〜

I’m singing in the rain(雨の中で歌ってるんだ)
Just singing in the rain(ただわけもなく歌ってるのさ)
What a glorious feelin’(なんて晴れやかな気分)
I’m happy again(また嬉しさがこみあげる)
I’m laughing at clouds(頭上の黒雲を)
So dark up above(笑ってやるさ)
The sun’s in my heart(僕の心は太陽がいっぱい)
And I’m ready for love(恋の準備はできている

─映画「雨に唄えば」より



Singing in the rain.

そのジャケットは歌っていた。

まるで呼吸をするかのように。

僕の体から排出されるムンムンの熱気をメロディーに変えて。

その歌声は、美しく歌うためだけの機能が研ぎ澄まされており、一切の無駄が排除されていた。

ミニマムかつ快適なギリギリ絶妙ライン。

雨といえば不快な世界と相場は決まっているのに、僕の心はハッピーで体はサラサラ。

多雨多湿の日本の山で、今まで散々雨の中で悲惨な目に遭って来た僕にとって、その歌声はまさに天使のささやきの如し。

もう「雨にマゾれば」だった日々にはサヨウナラなのである!

 

軽量レインジャケット

2017年、BBGは「軽量レインジャケット」のカテゴリーに注目して4つのレインジャケットをピックアップした。

選考基準は以下の4点。

  1. ファストパッキング&スピードハイクを想定して軽量であること
  2. 注目の素材(3レイヤーのもの)を使用していること
  3. 話題性やプロダクトとしての鮮度があること
  4. 試し甲斐があるちょっと攻めた商品であること

 

そんな中、まず素材の面から検討に検討を重ねた結果導き出されたのが、「C-KNIT(Cニット)」eVent DV-STORM」「ドライエッジ™ ティフォン 50000」、そして「NeoShell(ネオシェル)」だった。

その中でさらに検討を重ねた結果、C-KNIT代表として選出されたのがノースフェイスの「クライムベリーライトジャケット」、eVent  DV-STORM代表としてOMMの「イーサースモック」、オリジナル素材ドライエッジ™ ティフォン 50000有するミレーの「ティフォン 50000 ストレッチ ジャケット」をチョイス。※これらは改めてレビューいたします!

そしてNeoShell代表として選ばれたのが、今回ご紹介するティートンブロスの2017年新作「ブレスジャケット」なのである!

ティートンブロスの代表的なレインウェアと言えば、日本ブランドとして初めてAPEX AWARDを受賞した「ツルギジャケット(290g)」。

それを軽量化したのが「ツルギライトジャケット(260g)」で、それをさらに軽量化しちゃったのがこの「ブレスジャケット(210g)」だ。

ブレスジャケットはひたすら無駄なものを排除し、必要最低限な機能を研ぎ澄まして「マウンテンランニングに特化したレインウェア」という位置付けで登場。

シルエットはよりタイトになり、脇下にベンチレーションの穴が追加されて換気効率もアップした。

ネオシェルの素材自体が「多少防水性は落ちても、透湿性重視なんだ!」という尖った素材なだけに、そこからさらに色んな部分を研ぎ澄ました挑戦的なレインウェアとなった。

 

元々はパンツの方が先行して世に出ており、その「ブレスパンツ」は以前BBGでも絶賛させていただいたことは記憶に新しい。

息するレインパンツ〜ティートンブロス「ブレスパンツ」〜

2017.05.24

今回BBGとしては、「パンツは最高だったけどより熱がこもる上半身に着るジャケットはどうなの?」ってのと、「ランに特化した商品だけど、そんなに換気性能がいいなら積極的にファストパッキングのアイテムとして山で使えるんじゃないの?」という2点を確かめたかったのである。

それではそんなブレスジャケットを、現場検証を元にした感覚的な部分と、細かい仕様の部分に分けてじっくり検証してみよう。

現場検証

防水性はどうなのよ?

まずレインウェアとして最も大事な防水性。

ネオシェルの耐水圧は10,000mmで、45,000mmほどあるゴアテックスなどの素材に比べると耐水圧ははるかに劣る。

しかし10,000mmは雨を防ぐ分には十分な数値で、最低限内部を濡らさずに、その分優れた透湿性で内側の汗を排出した方が結果的にドライでいられるという考え方だ。

超人強度95万パワーのキン肉マンでも、1000万パワーのバッファローマンに勝ててしまうというその原理と一緒だ。

どんなに超人強度が強くても、要は内側の火事場のくそ力をどれだけ排出できるかが鍵なのである。

 

実際に現場テストしてみると、スタート時や小雨程度ならもちろんこのようにしっかりと水を弾いている。

しかし雨脚も強まり、1時間以上経ってくると徐々に撥水性は落ちてきて、ウェアの表面で滲んだような感じになってくる。

バックパックのショルダー部分など干渉が多く水が留まる場所は特にそんな感じ。

こうしてみるとやはり耐水圧的には弱い感じはするけど、表面上そう見えるだけで内部への浸水は全くない。

実際に雨の中を2時間歩いてから30分ほど雨に打たれ続けてみたが、内部はサラサラだった。

体はサラサラでも、さすがに雨の中一人で30分ぼーっと立ってると気持ちは滅入る…。

そして暴風雨の吹きっさらしの稜線でテストした時も、表面上は滲んで見えても内部への侵入はナッシング。

数日にわたって土砂降りの中を歩き続けた時にどうなるかは未知数だが、通常使用ならまさに必要十分な防水性だ。

 

じゃあ透湿性の方はどうなのよ?

高い耐水圧数値でどんなに表面で雨を弾こうと、透湿性が悪かったら内部の汗が抜けて行かずに結果体は汗で濡れてしまう。

ネオシェルは耐水圧が必要最低限な分、透湿性が非常に優れた素材と言われている。

 

まず汗をかきやすい樹林帯でのハイクアップ時はどうか。

通常のゴアテックス素材のものに比べたら素晴らしい抜けの良さだった。

しかし一方で、激しいハイクアップが続くと透湿が追いつかず首元にモワッと熱気が上昇してくるのを感じたのも事実。

肌も汗でじんわりして来て、全く不快じゃないかと言えば嘘になる。

なので「驚くほど透湿性が凄いわけじゃないが通常の素材よりかは全然優秀」といった感じが正直な感想。

 

同日にC-KNIT素材のクライムベリーライトジャケットも着て同条件で試してみたが、透湿性だけで言えばC-KNITの方が優れていると感じた。

ただ一方でC-KNITの方が透湿性が良すぎてなんとなく外気の涼しさを感じるんです。

その面では防風性ってところでブレスジャケットの方が優れている感じがするし、樹林帯のハイクアップを抜けた稜線上では、外気を取り込まない分汗びえの予防にもなる。

事実、樹林帯を抜けて稜線の暴風雨にさらされた時はむしろ内部は「ちょうどいい状態」になった。

透湿性・防風性・防水性・僅かな保温性というシェルとしてのバランスや安心面を考慮すると、ブレスジャケットの方が「アルプスでも安心して使える」と感じた。

むしろ樹林帯のハイクアップ時に雨からスタートするのも稀で(そんな状況は大抵登山中止してるからね)、大概稜線上で急な雨に降られたり下山時に雨が降ることの方が多いしね。

生地の強度的にもクライムベリーより厚めで安心感がある。

そう考えた時、僕はブレスジャケットの透湿性は「最強とは言えないけど最適」と評価したいのであります!

 

着心地やフィット感はどうよ?

ネオシェルの透湿性以外の特徴としては、生地がしなやかで裏地もサラッとしているということ。

さすがに地肌に直でもサラッサラって訳にはいかないが、長袖のベースレイヤーを着ていれば快適そのもの。

そしてこのブレスジャケットはランニングに特化して作ってあるためタイト目に作られているんだが、生地がしなやかなので全然突っ張る感じがなく動きもスムーズ!

通常のレインウェアのようなダボつきもなく、小太りの僕でも多少はシュッとして見える。見える?

ちなみに171cmの腹の出た胴長短足の僕でMサイズであります。

 

ただし一箇所だけどうしても動きがスムーズじゃなくなる部分がある。

個人的にはこのブレスジャケットの一番惜しい点。

それは「顔デカ野郎はフードが突っ張る」ってところ。

元々ランニング用にフード部分もタイトに作ってあるようなんだが、僕は松井秀喜級に顔がでかいからどうも突っ張ってしまい、それが続くと結構なストレスになってフードを脱ぎたくなってくる。

もう少しだけこの部分を伸ばすか調整可能にしてもらえたら顔デカ族も満足できます。(↓アツシオガワは顔小さいからちょうどいいけど)

ってことで、当然ヘルメットをかぶるような山行には向かず、そういう局面が多い人や顔デカ族の人はタイト目じゃないツルギライトジャケットの方が最適かもしれませんね。

一方で満足感が高いのが襟の高さ。

とかく顔デカ族たちは、中途半端な襟の高さだと顔全体が「ドゥイッ」とはみ出して、襟が顎下に移動して不快な感じになる。

ブレスジャケットはそれがないから個人的はとっても嬉しいのです。

 

速乾性はどうだい?

やたら良い。

実に乾きが早い。

前述した2時間歩き+30分棒立ち直後に、パンパンパンと表面上の水分を払ってテントに入ると、少し落ち着いた頃にはもう適度に乾いているのだ。

普通ならボタボタを雫を垂らして…なんてことになるが、レインウェアを着たままテントで適度に乾いてくれるのはとても助かった。

実際に同条件でずぶ濡れになったクライムベリーと一緒に乾かした時も、ブレスジャケットの方が乾きが早かった。

アルプスのテン場で翌朝しっとり乾いてないジャケットを着るのと、さらっと乾いたジャケット着るのとでは気分が違う。

地味だけど個人的には高ポイントです!

 

仕様検証

ベンチレーション

それでは続いて細かな仕様の部分を見ていきましょう。

元々が高い透湿性を誇るネオシェル素材だけど、いくつかのベンチレーション(換気機能)を駆使すれば内部の熱をいち早く外部に放出することが可能。

まずこのブレスジャケットには、脇下にあらかじめ換気口の穴が空いているのだ!

両腕を前後に動かす度に、ここから内部の熱気がバフバフと排出されていくのだ!

と言ってもものすごく排出されていくって感じはなく、ほんのりと熱気が逃げていく感じ。

これによってわずかながら脇下の熱が放出されていくが、穴の位置が下めなので若干脇の熱は首元まで上がってくることもあった。

ただ脇下のムレよりも恩恵を実感できたのはむしろ背中の方のムレ。

僕の背負っているHMGの2400ウィンドライダーのように背中にぴったりして風通しのないバックパックの場合、背中の熱がここから排出されてていくのは大きな利点だった。

本来なら背中に熱気がこもってしまう状況でも、ちょっと背筋を伸ばしてからバフッと背中を丸めれば背中の熱気が逃げていく。

ただバックパックによっては、ショルダーハーネスがちょうどこの穴の部分をこのようにふさいでしまうことがあるので、その辺だけは注意が必要だ。

そしてその他のベンチレーションとして、フロントジッパーがダブルジッパーになっているから、下からガバッと開いてやれば大きなベンチレーションとなる。

通常よくある脇下ジッパーのベンチレーションと比べて、ここが位置的に無理なく開けることができるから楽ちん。

しかもメーカーさん曰く「動脈が体表近くにある腋下で効率的に冷却を図るために最適な位置」ってことで、人体の構造上的にもベストポジションらしい。

体感的にもこもった熱の排出とともに、熱を帯びた体が冷却されるのを早く感じた。

またアツシお母さんにとっても授乳にもってこいの位置。

これで嵐の中でも体を濡らさずに授乳が可能だ!

さらには右胸ポケットも内部がメッシュでベンチレーションの機能を果たす。

これらのベンチレーションの機能をフル活用すれば、僕が「最適」と評価した透湿性も「最強」に近づいちゃうのだ。

こうした一つの素材だけに依存せず、プラスアルファの調整で全体のバランスを取っていくプロダクトはとても使い勝手がいい。

 

ちなみに各ジッパーは止水ジッパーなので当然硬めです。

ただ形状的に段々になっているのでそれなりに指で持ちやすく、比較的開閉もスムーズ。

それでもごわついたグローブとかつけてる時は開けにくいから、そんな人は別でこのように延長の持ち手(これはホイッスルになるやつ)などつけてやるといいでしょう。

ただ先端に穴が空いてないんでこれはこれで少し開け閉めがスムーズじゃない。

できれば最初からこのような仕様だったら嬉しかった(ラン特化なのでぶらつき防止って面もあるかと思うけど)。

 

カフ(袖口)

カフに関してはベルクロで留めるタイプではなく、ゴム留めのタイプ。

小憎いのが、ゴム部分が半分だけなのでその分わずかながらに軽量化が図られているということ。

また腕時計などを見る際に、上部はゴムじゃないから下げおろしも引っかかりがない。

ただもちろんベルクロのようにしっかりと密閉できるわけじゃないので、この部分から徐々に手から伝った雨が多少侵入する。

長時間雨にさらされても体はサラサラなんだが、どうしても手首周辺は不快感が伴う。

雨が想定される場合、袖口長めのレイングローブがあったほうが安心だろう。

 

絞り調整

裾やフードの調整は全てシンプルに簡易的なドローコード調整。

軽量化のため留め具がプラスチックのバネ付きのものではないため、どうしても長時間使うと緩んできてしまうが別に気になる範囲ではない。

そういった「気になる範囲ではない」という要素を取っ払って、軽量化と各機能強化を図ったのがブレスシリーズなので全然許容範囲だ。

 

まとめ

とかく無駄で余計な機能がこれ見よがしについているレインウェアより、ここまで機能を絞ってなおかつシンプルにまとめられたブレスジャケット。

まさに必要最低限な「絶妙快適ライン」のスレスレを、見事な計算によって導き出した芸術品。

そして何よりも「カッコいい」っていう重要要素を満たしている。

今までは雨が降ったら「チキショー」なんて思っていたが、これがあれば「ブレスジャケットが着れる!ナイス雨!」なーんて気持ちになれるかもしれない。(なれるか?)

まさに「雨に唄えば」的に小躍りしながら山中をスキップしちゃうのです。

 

それではそんな小躍りしながら嵐の中でおまとめレポート撮ってきたんで、華やかなミュージカル映画でも観るような気持ちでご覧ください。

途中「ティートンブロスのぉぉ!」ってのが「空前絶後のぉぉ!」に聞こえたり、「頭がデカイからぁぁ!」ってのが「あなたが好きだからぁぁ!」に聞こえたりしますが、本人はいたって必死です。

映画のようなハッピーさはゼロですが、逆にこの嵐の中でここまでやる余裕があるほどブレスジャケットの必要十分な機能性は伝わったのではないでしょうか?

 

Teton Bros.(ティートンブロス)「BREATH JACKET(ブレスジャケット)」

出典:Teton Bros. ※画像クリックでメーカーサイトへ

素材 Polartec NeoShell
重量 210g(Size M)
サイズ XS、S、M、L、XL
カラー Green、Oasis Yellow、Orange、Black Olive、Blue

今年積極的にスピードハイクやマウンテンランニングをやって行こうとしているそこのあなた。

軽量で透湿性に優れたレインウェアを探しているそこのあなた。

何より個性があってカッコいいジャケットを求めているそこのあなた。

こいつを着て雨の中で愛を歌ってみませんか?

 

いずれこのブレスジャケット含め、ノースのクライムライトベリージャケットと、OMMのイーサースモックと、ミレーのティフォン50000ストレッチジャケットの「軽量レインウェア比較」やりますんでお楽しみに!

ユーコンカワイでした!

 

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ユーコンカワイ

低体温・低血圧・低収入というギアレビューにもってこいの人体サンプル。いつも顔色は土色だったり汗冷えのスペシャリストだったりするが、今日も持ち前のマゾん気を武器に山に川にと出没する。 素材がどうとかの専門的な事より、フィーリングやロマン重視のあまり役に立たないギアレビューを得意とする男である。