三重県と滋賀県の間に連なる鈴鹿山脈。その最深部に「イワナの楽園」があるという情報をキャッチした我々は、今密かなブームとなっている山釣りと、ロングハイク&バリエーションをミックスさせた「BBG的山旅ファストパッキング」を敢行。彼らを待ち受けるは桃源郷なのか、それともただのSMの館なのか?今、二人の挑戦がマゾヒスティックにスタートするのである。

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ドゲザースタート

我々が目指すのは、最深部の「鈴鹿の上高地」と呼ばれる水晶谷のさらに奥。

地図上には破線ルートすら記されていない峠を越え、その先にあるという桃源郷を目指すのだ。

しかも遠回りと知りつつ、あえて「雨乞岳」を経由するというロングハイクである。

 

で、そんなハードな挑戦は、なぜかユーコンカワイの美しい土下座から華々しくスタートする。

この男、これから山を登ろうというのに、まさかの「登山靴を家に忘れてきた」というビッグサプライズを炸裂させたのだ。

しかも今回は新調したファストパッキング用のシューズのテストも兼ねていたにも関わらず、肝心のそのシューズを家に置いてきたという大失態。

これではレビューできるのはシューズの性能ではなく、四十を越えた男のスカスカ脳の深刻さのみだ。

とりあえずゴール地点に置いといた敏腕社長の車まで戻り、たまたま乗っていた予備のトレランシューズを借りてなんとか最悪の事態だけは回避できたが、1時間の余計な遅れとシューズテストの断念という苦いスタートとなった。

大ボケダメ社員に対して呆れて天を見上げる社長と、それだけの失態をかましておきながら堂々とした出で立ちのユーコンカワイ。

いざ、これより雨乞岳経由、1泊2日の山釣りファストパッキングのスタートである。

束の間浮かれハイカーズ

雨乞岳は「鈴鹿セブンマウンテンズ」と呼ばれる7つの名峰の中でも最も奥地に存在する山。

なのでその山に至るまでの道のりはやたら長いが、実に気持ちの良い新緑のロングハイクが楽しめる。

しかし気持ちがウキウキして来たところで、いきなりガッツリと急登させられるという飴と鞭も展開。

瞬く間に男たちの「グヘァッ!ドゥハッー!」という荒ぶる喘ぎ声が鈴鹿の山中にこだまする。

しかし1泊装備とはいえ、そこは軽装のファストパッキングスタイル。

足取りも軽快に、早々に東雨乞岳に到達。

改めて荷物の軽さ(お互い水・食料含め11kg程度)による恩恵を噛みしめる二人。

かつて「歩荷鬼六」とまで恐れられたヘビーハイカーだった社長も、このファストパッキングという軽快なスタイルに満足げだ。

そして足取りも爽やかに笹の海の中を進んで、

雨乞岳の山頂に到達!

しかしここはあくまでも無駄に寄っただけなので、そのまま裏側にある水晶谷に向けて歩みを進める。

しばらく降下して杉峠を越え、

かつて鉱山集落があったという、キャンプ敵地だらけの素敵な区間を抜け、

めちゃめちゃ気持ちいいルートが続き、

愛知川源流では魚影に誘われ、思わず竿を繰り出しながらの移動。

そして「鈴鹿の上高地」に到達すると、山奥とは思えないこの雰囲気。

新緑の木漏れ日の中、美しい沢筋に沿って移動する気分はまさに上高地。

そして要所要所に焚き火跡もある垂涎もののキャンプ敵地も豊富。

「アルプスの男塾登山もいいけどこういう低山ULハイクも悪くないなあ。軽いし楽だし気持ちいいし天国だねえ。」と完全に浮かれまくる二人。

しかし「浮かた先にマゾ潜む」のことわざ通り、ここから奥はほとんど人が立ち入らないマゾの領域。

ファストパッキングの一般的な理論は「軽くなったぶん遠くまで移動できる」だが、BBG流ファストパッキングは「軽くなったぶんよりハードに己を痛めつけられる」というファストマゾヒスティングなのである。

スズカ女王様のハッスルタイム

鈴鹿の上高地でだけで終わっておけば天国ハイキング。

しかしその先に踏み入ろうものならたちまちSMの館へのご入館。

入館料を支払って中に入ると「あのぅ…これ…どこが道でしょうか?」といったTHE不明瞭な店内が展開。

そしてその質問には誰も答えてくれず、突然現れたスズカ女王様による崖キワキワでの有無を言わさぬ枝ムチの嵐。

スズカ女王様は「お前たち、さっきまで随分浮かれてたじゃねえか。その根性、あたいが叩き直してやるよ!」と最初っから本気モード。

社長は見事に女王様の仕掛けた「落ち葉踏み抜きトラップ」を思いっきり踏み抜き、そのまま滑落!

…かに思われたが、漫画みたいに枝につかまって間一髪セーフ。

「ヒイイ、許してください!」と必死で助けを求めるが、「口答えするんじゃないよ!」と容赦ない罵倒が降り注ぐ。

なんとか這い上がって必死に先に進むが、要所要所に仕掛けられた踏み抜きトラップにことごとくはまって行く敏腕社長。

その度に「あああああッッ!」と叫ぶが、スズカ女王様は「もっと!もっとだぁ!」と高笑いをするだけ。

こんなプレイが1時間以上続き、敏腕社長はすっかり虚ろな座頭市状態に。

そんな我々に対し、女王様は「よぅし、そろそろウォーミングアップは終了だよ!お前たちの本当の鳴き声を聞かせておくれよ!」とVIPルームへご招待。

そう、ここからは破線ルートすらない完全なバリエーションルートによる峠越え。

不明瞭かつハイパー大急登のハッスルタイムが始まったのである。

店内には激しい音楽が鳴り響き、ミラーボールがくるくる回る中、二人は一歩一歩這って上がって行くようにハッスルハッスル。

延々と延々と延々と延々と続くスズカ女王様による罵倒とムチと足蹴のサービスタイム。

これにはたまらず「ブヒ!ぐえぇ…ブ..ブヒィィ…」と嗚咽が止まらない二匹の白ブタたち。

ついさっきまで上高地で散々「ULハイク最高!」と浮かれていた白ブタどもが、早くも「SMハイヒール最高!」とマゾヒスティックモードに。

やがてMajiでGeroする5秒前の状態を1時間ほど堪能すると、ようやく峠に辿り着いた。

絵に描いたような「虫の息エクスタシー」で、その場に倒れこんでピクリとも動かないユーコンカワイ。

今ボディブローを食らったら、たとえ相手がミッキーロークの猫パンチだとしても余裕で嘔吐して病院送りだ。

それほどギリギリの状態の中、今度は超絶ハードな谷へのハイパー急降下。

横綱朝青龍ですら土が付きまくりのスリップ攻撃の嵐。

どこをどう歩いても、「お前たちのような虫ケラはずっと地を這ってな!」と女王様に足を取られてしまう。

踏んだり蹴ったりのファストファッキング。

やがてようやく峠越えを完了し、SM館から出る頃にはもはやぐったりとボロ雑巾状態なのである。

実に恐ろしい館だった。

鈴鹿の低山なのに、三日三晩アルプスを大縦走したかのような疲労度だ。

このくらいの苦労なくして桃源郷には到達できないのである。







桃源郷とイワナちゃん

苦心のSM館を突破した我々の前には素敵な世界が待ち受けていた。

目の前は美しい沢、小さな滝と美淵、そして整地されたキャンプ場のような高台と沢屋が残した焚き火跡。

そんなこれ以上ない場所に我々はベースキャンプを設置した。

さあ、ここからはいよいよイワナ嬢ちゃんたちとニャンニャンする珠玉の山釣りタイム。

そんな「さあ!これからだ!今までの苦労はこの瞬間のためにあった!」という段階で、またしても例のダメ社員がビッグサプライズを炸裂させる。

なんと彼はタープ設営中に、地面に置いてあった社長の釣り竿を「踏んで折りやがった」のである。

平謝りするダメ社員は、顔面蒼白になりながら必死で折れた竿を割り箸とガムテームで無理やり補修。

そしてその竿を渡され、社長はプルプル震えながら必死でブチギレそうな己を制御。

イワナを釣るために必死な思いで到着した現場で竿を折られるという、他には真似のできないBBG流のバリエーションプレイ。

ダメ社員はこの桃源郷で殺されるのを覚悟したが、とりあえず竿は振れたので修理代弁償ということで今後も生きることを許してもらった。

おなじみの快晴代償は何も私物の破壊だけとは限らない。

他人も巻き込むのが本厄男ユーコンカワイの威力なのである。

 

そしてこの日はSM館で時間を潰しすぎたせいで、大して釣りをする時間もなく日没サスペンデッド。

疲れた体に鞭打って、せっせと焚き火の準備。

ここでもユーコンカワイは13年使い倒してきたプラティパスの水筒を破壊。

これによってBBGユーザーのみんなに、「プラティパス水筒の寿命は13年」という長期製品テストの結果が発表できて本当に良かった。

そして「おひとり様用アルミポットで炊けるの米の最大量は何合?」というテスト結果は約1.7合とも判明。

さらに「カメムシが彼氏にしたい男No.1は誰?」というテストでは、社長がぶっちぎりのNo.1だった。

無理に取っ払えば屁をこくから迂闊に刺激ができない。

それでも何度も何度も遠くに追いやってみるが、なぜかまた再び社長の元へと帰ってくる。

しまいには調教に成功して「手乗りカメムシ」という一芸を手にいれた敏腕社長。

最近登山に行くのに登山靴忘れてきたり、釣りの現場で竿を折ってくる社員に悩まされていた彼は、「信頼できるのはお前だけだ」と愛おしい目でカメムシを眺める。

やがて社長とカメムシは、二人で暗闇の森に消えていって熱い一夜を過ごしたという。

 

そんなこんなで翌朝。

朝一から釣りに出かけた二人。

そして結果は…

ちゃんといた!!

桃源郷というには全体的に小ぶりなイワナだらけだったけど、20cmくらいのイワナ嬢を4人もお持ち帰りしてきたユーコンカワイはウハウハのうれしはずかし朝帰りなのです。

朝飯分のイワナを早速塩焼きに。

その間、割り箸タックルでもしっかり同じような釣果をあげた社長も満足げにコーヒーをミル挽き。

やがてイワナとコーヒーという画期的な食い合わせの「鈴鹿桃源郷モーニングセット」が完成。

そして生焼けのイワナをしっかりと堪能し、社長は釣り続行、満足したユーコンは二度寝の贅沢。

新緑の森という母体に包まれた赤子のような気分の、本厄四十肩のおじさん妖精が眠る風景。

やがてひとしきりこの桃源郷を堪能した二人は、再びSM館の峠にご入店。

昨日よりはまともなルートだったが、この日は焦熱地獄かと思ってしまうような酷暑。

二人して汗だくになりながらヘロヘロで峠越え。

やがて愛知川(神崎川)の本流に到達した途端に狂ったように川に突入。

社長は祖国でサッカーしてたのがバレて頭をかかえる朝青龍的な状態になり、

ダメ社員は土下座の最上級技「水下座」の鍛錬に余念がない。

それでも体が涼むのはこの一瞬で、そこから再び灼熱の中での別の峠越え。

意識も混濁としてしまうような酷暑の中、ふらふらと二匹のゾンビが鈴鹿の山中を彷徨う。

やがてヒロ沢を登り詰めて源流部の湿地帯を抜けると、羽鳥峰(はとみね)に到達。

久々にまともな登山道に出て、やっと下山開始。

そして長く辛く、そしてロマンあふれる充実の鈴鹿最深部山釣りファストパッキングが幕を閉じたのである。

地元の低山だから舐めてかかっていたが、結果的には南アルプス大縦走級に燃え尽きた山旅だった。

しかしこのまますんなり終わらないのがBBG流。

ここまで散々ヘマばかりするダメ社員に呆れていた社長だったが、ここに来て「ああ!僕の車の鍵、ユーコンさんの車の中に置きっぱなしだ!」と叫んだのである。

そう、

車2台で来てスタートに僕の車、ゴールに社長の車を置いてある状態で、ゴールの車の鍵がないというスペシャルサプライズ。

こうして二人は車2台で来たにもかかわらず、あえて高額なタクシーを呼ぶという「新種のバリエーションルート」に突入したのである。

 

タクシー代金しめて5,800円。

荷物のUL化にこだわるあまり、勢い余って財布の中身までストイックに軽量化に成功。

 

「荷物は軽く、気持ちは重く」

必要なのは靴でも竿でも金でもない。

一握りのロマンと大さじ1杯のマゾ心があれば誰でもできる!

さあ!

そんなBBG流の山釣りファストパッキング、

あなたも是非トライしてみよう!

 

 

鈴鹿最深部 山釣りファストパッキング 〜完〜

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