「魅力編」では川旅の素晴らしさに触れ、「準備編」では最低限必要なものが見えて来ました。もうすっかり自分の中に眠っていた少年が目覚めて心が川の方に向いちゃってませんか?ロマンチックが止まらない状態になってる感じですか?
今回は、そんな身悶えしてハァハァ言ってるあなたに向けた「実践編」。具体的にどこにどう行って、どんな注意点があって、川下った後の車の回収のこととかどーすんの?などの情報をお伝えできればと思っています。

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川旅の時期

川旅におけるベストシーズンは「夏」と思われがちだが、実は一番快適なのは「5月」だったりする。

極端な話、もうその1ヶ月で全力で川を旅して、他の月は登山に集中しちゃってもいいくらい。

なぜなら…

  1. 6月から10月まで川は鮎釣り師さんだらけで快適に下れない
  2. 潜るには寒いけど川下り中は快適な気候
  3. 夜は焚き火の暖かさが気持ち良い
  4. 虫が少ない
  5. 雨が少ない
  6. 時期的にアルプス登るのが中途半端な時期だからその間の繋ぎで

 

ってな感じの理由で、僕は毎年4月末から6月の鮎釣り解禁までは狂ったように川に繰り出している。

気兼ねなく下れる鮎釣り解禁前はまさにパドラーズパラダイス!こんな美しい川も独占です!亀尾島川。

で、10月頃に鮎釣りシーズンが終わると川旅のセカンドシーズンだ。

紅葉を愛でながらの川旅は実にオツなものがあり、この時期もまた焚き火が猛烈に気持ちいい。

秋は決まって餃子入りうどんを食って温まった後で焼き芋を食べるのだ。高時川。

そして何気に最近好きなのは冬の川旅。

もちろんフルドライスーツなどの防寒装備が必要にはなってくるが、人もおらず静かで独占的な川旅ができるのがたまらない。

適切な装備で挑めばほとんど寒さは感じない。むしろ中途半端な秋より快適だったりする。根尾東谷川。

じゃあ夏はどうなのよって話だが、鮎釣り文化の根強い日本では気兼ねなく川下りできないのが実情だ。

ただ夏でも下れる川もいくつかあり、鮎がいない川や観光船が通ってる川(釣り人も川は船が通るものと認識しているため)が狙い目だ。

例えば鮎の少ない北海道の川や、海から距離があって鮎が遡上してこない千曲川上流部(犀川・万水川・高瀬川など)、観光船が通ってる長瀞(埼玉)・天竜川(静岡)・熊野川(和歌山)・保津川(京都)などは夏でも快適に下ることができる。

正直ウォータースポーツなんだから夏の時期に思いっきり潜って遊び倒したいんだが、僕は単純に気を使ってまで川を下りたくないし、どうせ6月から10月までは夏山シーズンだから割り切って山に登っている。

もしくは鮎釣り師のいない源流部までパックラフトを担いで行って、そこで漕いで思いっきり潜って遊んでいる。

三重の秘境大杉谷。気持ちよすぎて川下りというよりほとんど潜っていた。

このように年中川旅はできるが、やっぱりオススメは5月なのである。

鮎釣り師とカヤッカー

先ほども触れたが、川下りをする上で鮎釣り師さんとの話は切っても切れない部分なので少しだけ触れておきます。

基本的に遊漁券を買ってるからって釣り師さんに川の占有権はないので、川を下っても一切問題はない。

しかし過去に一部のマナーの悪いカヤッカーと、川の占有権があると思い込んで文句を言う一部の鮎釣り師との攻防戦があったせいで、両者の間で長く誤解の中での冷戦があったことは否めない事実。

「ハイカーvsMTB」「ハイカーvsトレイルランナー」問題同様、マイノリティの新興アクティビティはなかなかマナーの徹底と相互理解に時間を要します。

ただそこはお互いに自然を遊び場とする者同士、しっかり理解を深めてマナーを守れば共存は可能。

夏に川下りする時は川が広ければできるだけ迂回をし、どうしても前を通らなきゃいけない時は早めに自分の存在を知らせ、通る時は必ず挨拶を欠かさないことが大切だ。

お互いに理解しマナーを守れば、このように川好き同士で話は尽きない。大塔川。

自治体としても鮎釣り師とカヤッカーの共存を目指している地域もあり、例えば和歌山の古座川などは上流部が鮎釣り区間で下流部が川下り区間と区分けしていたりします。

川の情報収集

僕が川下りを始めた頃は下れる川の情報収集は非常に困難な作業だったが、今ではいろんな人がブログなどに川情報をアップしているからそれを参考にするのが一番早い。

「河川名 カヌー」とかで検索すれば、メジャーな河川は大体スタート敵地からゴール敵地まで記載されてるからとても助かる。

ただ川の状況は刻々と変化するので、増水していたり、流れが変わっていたり、以前なかった場所に倒木が引っかかってて塞いでる可能性もあるから完全に鵜呑みにせずに基本情報として認識しよう。

 

山と違って当日に天気が良くても前日まで雨が降ってたりすると増水している可能性もあるから、事前にこのサイトや「河川名 水位」で検索してリアルタイム水位を調べてから行くのもいいだろう。

はるばる現場まで行ったはいいが大増水で下れないなんてことも…これ結構ショック。赤木川。

増水で下れないパターンは結構あるので、僕は念のため登山道具も持って行っている。

そうすれば川を諦めて近隣の山登りにシフトが可能だ。

回送方法

魅力編で少し触れたが、川下りをしていて一番多く受ける質問が「川を下った後はどうやって戻るんだ?」ってもの。

複数人で川下りをする場合は車2台で行って1台をゴールに停めておき、もう1台に乗ってスタート地点へ移動して川下りスタート。

で、ゴールしたら停めてあった車でスタートの車を取りに行くっていうパターンが一般的だ。

ゴール後スタートの車を取りに行ってる間に、留守番組は艇を洗って乾かしている。気田川。

これが単独行だったり車が一台だった時はどうするか?

方法としては「電車」「バス」「観光船」「自転車」「自力」などがある。

 

まずメジャー河川沿いは結構電車やバスが並走している場合がある。

背負って行けるパックラフトなら、現地まで電車で行って、川下り後そのままゴール付近の駅から電車に乗って帰宅するなんてことも可能。

北海道の釧路川、長野の千曲川、静岡の大井川、京都の保津川、山口の錦川なんかが電車回送で利用したことがある川だ。

川下り後にSLに乗ってスタート地点に戻るという贅沢を味わえることも。大井川。
バス待ちの間、地元の人と川の話をしたりするのも川旅の醍醐味だったりする。板取川。

ただ電車もバスもいずれも本数が少ないこともあって、時間に縛られてしまうのが欠点だ。

パックラフトの場合は、ゴールに車を停めて荷物背負って先に電車やバスで上流に移動してから下った方が後々まだ気が楽である。

電車とバス以外では、若干変化球だが和歌山の熊野川の場合は観光ジェット船が運行されてるから積極的に利用してみるといいだろう。

片道切符を買ってスタート地点までジェット船で。この格好で観光客に混じるのは若干恥ずかしいが…。
観光ジェット船で川を遡上してからパックラフトで川を下る。それが熊野川スタイル。

電車やバスなどがない川は、僕の場合基本的に自転車回送が基本だ。

ゴール地点に自転車を停めておき、川下り後に自転車でスタート地点の車の場所まで戻る。

自転車回送が一番時間に縛られないし、単純に気持ちがいい。神崎川。

逆に初めての川の場合とかはゴールに車を停めて、じっくり自転車で下見しながら遡上してスタート敵地に自転車置いて川を下る。

下り終わったら車で自転車を取りに行くって感じだ。

後は距離が短い川などは、もう自転車すら使わずに自力でどうにかしてしまうのが一番手っ取り早い。

荷物を置いて猛ダッシュで車を取りに行く。盗まれないことを願って…。赤木川。
距離が短ければ川を見ながらのんびり歩いて行くのもオツだ。地元の人とも立ち話なんかしたりしてね。安居川。

このように方法はいくらでもある。

別にスケボー使って戻ってもいいし、タクシーでもいいし、モンキーみたいなミニバイク使ってもいいだろう。

海外ではファットバイクで荒野に分け入って、そのままそれ乗っけて帰ってくるなんてオツな下り方もありますよ。

僕もいつかは軽量な折りたたみ自転車でトライしてみたい。出典:adventure-journal.com

川下りのコツ

今回は大筋の説明なんで細かい漕ぎ方がどうだなどの話は割愛します。

と言うか「右漕げば左へ、左漕げば右に進む、以上!」ってなもんで、激流に行かない川旅程度のものは特に難しく考える必要なんてない。

子供でも湖でパックラフトとパドル渡しておけば、何も教えなくても1時間後には基本の動きをすっかり習得している。

理屈で頭でっかちになるより、まずは安全な場所で楽しむ事から始めよう。青木湖。

僕はずっと自己流でやってきたし「技術がどうの」って世界が好きじゃないんで、まずは安全な場所から体で感じて覚えて行って欲しいところがある。

そりゃもちろんスクールに入ったり、体験会に参加したりするのが安全で早いんで不安な人は是非参加してみよう。

準備編で紹介した、白馬にあるアルパカラフト代理店のサニーエモーションさんあたりは積極的にツアーをやっているし、最近ではパックラフトのツアー会社もいくつか出てきたんでそこを利用してみてもいいだろう。

 

ここで操船について理屈を語ってもピンとこないだろうから、どっちにしても現場でしっかり体験してみて欲しい。

安全第一なので、具体的な漕ぎ方の詳細知りたい人はガイド本か他サイトでじっくり研究してみてもいい。

ただ操船も大事だが、川の流れを読むことの方がもっと大事で、こればっかりは経験でしか掴むことはできない。

激しくてもストレートな瀬は比較的簡単。厄介なのは急カーブや隠れ岩だ。櫛田川。

カーブを曲がるにしても、どこから侵入して、どのタイミングで船首を旋回させ、どの位置から一気に漕ぎ抜けるか?とかは机上論では中々合点がいかないだろう。

逆にそんなものを書いて「なんだか難しそう」って思われては困る。

難しく考えず、厄介そうな場所はヒョイっと陸上から回避してしまえばいいだけのこと。

とにかく理屈は一旦捨てて楽しむことだ。

川旅は、ブルース・リー風に言えば「Don’t Think !! Feeeel !!」な世界なのである。

ちなみにテトラポッドと倒木は突っ込むと非常に厄介なことになるので、そういう場所は迷わず陸上回避でヨロシク。







野営について

川旅において、正直川下りよりもメインイベントである「野営」。

スペースが限られる山のテン場と違い、川はそのフィールド全てがテン場。

どこに張ろうが自由!誰にも気兼ねなく夜遅くまで騒げる!もちろん無料!

この北極圏に広がる広大な川原全てが本日の我がテントサイトだ!コユクック川。

ただしどこに張ってもいいだけに、どの場所に張るのかは全てが自己責任。

その数日間の天候や地形などから、常に増水の可能性を頭に入れて場所を選ぶ必要がある。

特に上流部になるほど鉄砲水の可能性は高まるので、可能な限り高い場所、かつ避難が容易な場所を選ぶといい。

中流域で広い川は、できるだけ川に近く一段上がった場所で風も防げるような場所が最高だ。

川から1段上がってて風上に対し盛り土的になっていてしかも流木が豊富。完璧なテン場だ。熊野川。
味気ない場所だったが高台に張ったおかげで夜中の増水からの被害から免れた。錦川。

ちなみに川旅中の川原で野営するのが一番楽しいが、ゴールの川原で張っても荷物庫である車があるので豪華な野営が可能になって楽しい。

仲間との川野営は最高だ。焚き火を眺めながら酒を飲んで夜遅くまで語らう。保津川。

ちなみに焚き火についてだが、焚き火台なるものを使わないと色々言う人がいるが僕は使わない。

地中の微生物を死滅させてしばらく草木が生えてこないというのが理由らしいが、芝生整地されたキャンプ場ならまだしも、太古の昔から人類が行ってきた焚き火に重大な環境破壊があるとは思えない。

それよりももっと別の大きな環境問題に目を向けるべきで、無駄なダムを作ったり川を直線にしてコンクリまみれにしてる方がはるかに有害だ。

気仙沼市沖ノ田川。これが自然環境に配慮した工事だと言う。生物が死滅した地獄絵図である。画像は引用。

川原に草木は生えてないし、焚き火跡も一回増水したら川が洗い流してくれる。

無知なキャンパーが荒らしたものでない限り、焚き火跡を不愉快に感じたこともない。

焚き火台を使いたければ使えばいいし、使わない人はやってるときも終わった後も美しくあること(いろんな意味で)を心がけて欲しい。

個人の見解によって色々意見が割れる問題だけど、そもそも山でも川でも人間が分け入って遊ぶこと自体一つの環境破壊。言い出したらきりがない。

その中で、自分の中でいかにルールと責任を確立してその信念を貫き通せるかが大切だと思います。

焚き火は常に人間の歴史とともにそこにある。だからなのか、いつまで眺めていても飽きないし心が溶けて行く。

さあ、川旅の世界へ!

「魅力編」「準備編」「実践編」の3編に分けてお送りしてきた川旅への招待状、しっかり受け取ってくれましたか?

パックラフトの登場で再び川旅がメディアでも注目され、それでなんとなく興味を持っていた人や、これから始めようと思っていた人の助けになったのなら最高です。

そして「今まで山しかやってなかったけどこれ読んで川もやりたくなった!」って人がいたとしたら、これ以上の喜びはありません。

僕からしたら、これから川旅を始める人に対して「ああ、今からあの体験やあの経験を味わえるんだ…いいなあ」と単純に羨ましくなってしまいます。

登山もそうですが、やり始めの頃が一番新鮮で発見と喜びに満ちた体験がわんこそば状態ですからね。

 

独学と15年の現場体験に基づいた中での個人的な見解も多く、色々指摘される部分もあるかもしれませんが言いたいことはたった一つ。

とにかく気楽に川旅楽しんで!ってこと。

だってすげえ楽しいし、理屈抜きの超絶癒し体験なんで、人に勧めないわけにはいかないんですよ。

 

僕でわかる範囲の事ならコメントなどでの質問も受け付けてます。

そしていつかどこかの川原で会えたら一緒に美味しい酒でも飲みましょう!

 

それではみなさん、良い旅を!